ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ドーモ(。・ω・)ノ柊人です」
「悠花です!」
「皆様はじめまして。リリアーナと申します」

「さて、前回は僕達がハイリヒ王国に戻ったところだったね」
「そ、そうだね」
「?悠花さん顔が少々赤いですが⋯⋯熱でしょうか?」
「だ、大丈夫だよ!?」
「ええ、そうですよリリアーナさん。ちょっと昨晩の事を思い出していただけですから」
「あぅ⋯⋯」
「?」

「さて、今回はいよいよヘルシャー帝国の使徒との接触だよ」
「楽しんでいってくださいね」

「「「帝国と勇者!」」」


幕間の物語:帝国と勇者 後半

 Side 三人称

 

 柊人達が帰還してから、三日、遂に帝国の使者が訪れた。

 

 現在、柊人達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままギルガメッシュ王⋯⋯の代わりのシドゥリさんと向かい合っていた。

 

「使者様、よく参られました。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられる筈です」

「この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

「では紹介させて頂きましょう。光輝さん、前へ出てくれますか?」

「はい」

 

 シドゥリさんと使者の定型的な挨拶のあと、早速、天之河達のお披露目となった。陛下に促され前にでる天之河。召喚された時から時間が大分経っているため皆、顔つきが大人びている。

 

 そして、天之河を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

 

 使者は、天之河を観察するように見やると、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干、疑わしそうな眼差しを向けた。使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。

 

「えっと、ではお話しましょうか? どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

 

 天之河は信じてもらおうと色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっと、俺は構いませんが……」

 

 天之河は若干戸惑ったようにシドゥリさんの方へ振り返る。シドゥリさんは天之河の視線を受け、少し思案する。

 

「光輝さん受けなくても「構いませんとも」は?」

「何か問題でも?」

「あまり勝手な行動はしないで貰えますか?」

「帝国の方々に光輝殿を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単ですが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断しただけです」

「⋯⋯いいでしょう、光輝さんお願いします」

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

 こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだった。

 

 

 

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 天之河の対戦相手は、普通の平凡そうな男だった。高くもなく低くもない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失いそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。

 

 持っている刃引きした剣もだらんと無造作にぶら下げており、構えらしい構えもとっていなかった。 

 

 その行動に、天之河は舐められていると些か怒りを抱き、初撃で度肝を抜けば真面目にやるだろうと考え、最初の一撃は半分本気で打ち込むことにした。 

 

「いきます!」

 

 天之河が風となる。〝縮地〟により高速で踏み込み豪風を伴って唐竹に剣を振り下ろした。並みの戦士なら視認も難しいかもしれない。もちろん、天之河は寸止めするつもりだった。だが、その心配は無用。その代わり、舐めていたのは天之河の方だと証明されてしまう結果となった。

 

 バキィ! 「ガフッ!?」

 

 飛んだのは天之河の方だった。男は剣を掲げるように振り抜いたまま天之河を睥睨している。寸止めのため一瞬、力を抜いた刹那にだらんと無造作に下げられていた剣が跳ね上がり天之河を吹っ飛ばしたのだ。俗に言うカウンターである。

 

 まさに一撃必殺。これが戦場ならば既に天之河の命はないだろう。天之河は地滑りしながら体勢を整え、驚愕の面持ちで護衛を見つめる。寸止めに集中してたのもあるが、男の攻撃がほぼ認識できなかったのだ。

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか? まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

 平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。その表情には失望が浮かんでいた。

 

 確かに、天之河は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。天之河は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

「戦場じゃ"次"なんてないんだがな」

 

 天之河は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

 

 唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と〝縮地〟を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。その速度は既に、並の人間には認識困難なほどの物だった。天之河の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

 

 しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。時々、天之河の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

「……それが今や〝神の使徒〟か」

 

 チラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると護衛は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

 護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。光輝程の高速移動ではない。むしろ遅く感じるほどだ。

 

「ッ!?」

 

 気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。天之河は慌てて飛び退る。しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が天之河を襲った。

 

 不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、〝先読〟で辛うじて対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。〝縮地〟で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。次第に天之河の顔に焦りが生まれてくる。

 

 そして遂に、天之河がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

 

「穿て──〝風撃〟」

 

 呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、光輝の片足を打ち据えた。

 

「うわっ!?」

 

 踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す光輝。その瞬間、壮絶な殺気が天之河を射貫く。冷徹な眼光で天之河を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

 

 ──────────────────────

 

「アイツの負けだね」

「うん、そうみたいだね」

「さて、龍太郎ここで1つ問題」

「え!?」

「アイツに無くて、あの護衛にあるものは?」

 

 突然の質問に困惑する龍太郎。しばらく頭を捻るがまったく回答が出てこないようだ。

 

「正解は⋯⋯"経験"だよ」

「"経験"?」

「うん、あの人はステータスだけだと天之河以下だけど戦場で戦った"経験"が山ほどある。それが天之河と護衛の人の差だよ」

 

 ズドンッ! 「ガァ!?」

 

 先ほどの再現か。今度は護衛が吹き飛んだからだ。護衛が、地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して天之河を見る。天之河は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

 

 護衛の剣が振り下ろされる瞬間、天之河は生存本能に突き動かされるように"限界突破"を使ったのだ。これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する主人公らしい技能である。

 

「莫迦が⋯⋯それは悪手だ」

「どういう事だ?」

「アイツは"限界突破"を勘違いしているんですよ。あれは決して無敵になれる訳じゃない、一時的な強化でしかない。魔力が尽きれば使用出来ないし、使用したあとは必ずツケがまわってくる」

 

 天之河の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

 

 そんな天之河の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ハッ、少しはマシな顔になったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

「ビビリ顔? 今の方が恐怖を感じます。……さっき俺を殺す気じゃありませんでした? これは模擬戦ですよ?」

「だからなんだ? まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ってたのか? この程度で死ぬならそれまでだったってだけだ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ? その自覚があるのか?」

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができんだ? 剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな? 最初に言ったろ? 気抜いてっと……死ぬってな!」

 

 護衛が再び尋常でない殺気を放ちながら天之河に迫ろう脚に力を溜める。天之河は苦しそうに表情を歪めた。

 

 しかし、護衛が実際に踏み込むことはなかった。なぜなら、護衛と天之河の間に光の障壁がそそり立ったからだ。

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 

 イシュタルが発動した光り輝く障壁で水を差された〝ガハルド殿〟と呼ばれた護衛が、周囲に聞こえないくらいの声量で悪態をつく。そして、興が削がれたように肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

 

 すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。

 

 四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

 

 その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

 

「ガ、ガハルド殿!?」

「皇帝陛下!?」

 

 そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。まさかの事態にシドゥリさんは眉間を揉みほぐしながら尋ねた。

 

「どういうおつもりですか? ガハルド殿」

「これは、これはシドゥリ殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

 謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。

 

「戦いたかっただけでしょうあの人」

「そうみたいだね⋯⋯」

 

 うんざりと言った表情で呟く柊人と苦笑い気味に反応を返す悠花。

 

 

「では、これで模擬戦を終わり……」

「いや、待ってくれ。一つ頼みがある」

 

 終わりを告げようとしたイシュタルに、護衛の人が制止の声をあげた。一体何かとガハルド皇帝の人を見るイシュタル。

 

「頼みたいこととは?」

「ああ……おい、そこのお前。俺と戦え」

 

 そう言って、ガハルド皇帝は観戦していた一人を指差した。自然と全員がそちらの方を見る。そう⋯⋯我らが柊人さんである。

 

「あ、面倒なので嫌です」キッパリ

「ククク⋯⋯肝が据わってんなお前」

「僕は『NO』と言える日本人なので」

 

 心底面倒と言う表情をする柊人にくつくつと笑うガハルド皇帝。周りの人間はザワザワとしている。

 

「それに貴方程度では僕には勝てませんよ⋯⋯僕はそこに転がっている勇者(笑)よりも強いですよ」

「こりゃ随分とプライドの高い坊主だな」

 

 天之河を罵倒する事を忘れない柊人と罵倒された天之河は睨みつけるが柊人の隣にいる悠花の威圧で直ぐに引っ込む天之河。うーん小物。

 

「ハハハハハッ! そうもあっさりと勇者を弱いと言うとはな! 俄然やる気が出た……俺と戦ってくれるかい?」

「まぁ……退屈していた所ですし、いいでしょう」

 

 椅子から立ち上がった柊人は、訓練場のステージに上がると上着を脱ぎ、黒地のインナー姿になる。そして、太腿に付けるているホルスターから主武器の"デスペラード"と"レゾナンス"を取り出す。

 

「ほぉ……いい武器だな」

「えぇ、愛用の武器です」

 

 "デスペラード"を逆手に持ち、"レゾナンス"を順手に持つと言った持ち方をする。

 

「では……始めましょうか」

「あぁ……行くぞ!」

Comn on! I'M YOUR NIGHTMARE! 

 

 それだけ言うと柊人は耳にイヤホンを嵌めて、魔改造スマホで音楽を流す。傍から見れば舐めてかかっているがこれが柊人本来の戦い方で音楽に合わせて攻撃と回避をし、相手を翻弄する。まぁ、本人はそっちの方が楽しいからとか言っているんですけどね。

 

「ハッ! 確かにあの勇者よりかは強いな!」

「──♪ ───♪♪」

 

 鼻歌交じりでガハルド皇帝の猛攻を易々と躱す。今のところ反撃する様子は無く、攻撃する様子は見られない。

 

「おいおい! 躱すのが精一杯てっか?」

「────♪」

 

 少しずつ反応速度が上がり躱すのではなく弾くようになる柊人。そろそろサビに入る頃だろう。

 

「──────♪」ガキィン! 

「な!?」

 

 ガハルド皇帝の大振りな一撃を弾くと持っていた大剣を蹴り飛ばし、ガハルド皇帝の首筋にナイフを当てる。

 

「……降参だ」

「────……まだ1番サビの途中ですね。まぁ、中々いい運動になりましたよ」

 

 それだけ言うとステージから降り、脱いだ服の埃を払い着直す。流石に洗った方がいいじゃないかな? 

 

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 その晩、柊人達と食事を共に、悠花に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。〝神の使徒〟である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

「それで、あわよくば試合で始末つもりだったの……と?」

「あぁ? 違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

 どうやら、皇帝陛下の中で天之河達勇者一行は興味の対象とはならなかったようである。無理もないことだろう。彼等は数ヶ月前までただの学生(1部の人間は違うが)。それも平和な日本の。歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのである。

 

「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」

「ええ、分かっています」

 

 そんな評価を下されているとは露にも思わず、天之河は、翌日に帰国するという皇帝陛下一行を見送ることになった。用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。随分とフットワークの軽い皇帝である。

 

 ちなみに、早朝訓練をしている八重樫を見て気に入った皇帝が愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあった……が謎の殺意が周囲一帯を包み込んだ。その後、八重樫も『私には心に決めた人が居るので』と丁重に断ったら割りとすぐに皇帝様は引っ込んだ。

 

 なんでもありとあらゆる手段で殺され続ける幻覚を見たらしい。怖い事もあるなぁ。




改めてお気に入り登録300件突破&UA50000突破、誠にありがとうございます。お気に入り300件突破の記念に企画が2つあり、その詳細は活動報告の方に書いてあります。https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=271631&uid=353160
柊人くんのセリフの元ネタ分かる人いるんかな?
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