ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょと、ヾ(ω` )/ハイヨお馴染みの零斗でーす」
「ハジメです」
「カム・ハウリアです。以後お見知りおきを」

「さて、前回はカム達と合流したな」
「……そうだね」
「ハジメ殿、死んでしまった者達の事はもう……大丈夫です、だからそう気を負わないでください」
「はい……分かっています……」


「……今回はシアの心情とハルツィナ樹海の話だ」
「楽しんでいってください」

「「「シアの心情とハルツィナ樹海!」」」


シアの心情とハルツィナ樹海

 Side 零斗

 

 七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ハジメが魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が、それなりに早いペースで平原を進んでいた。

 

 ハジメの方の二輪には、ハジメ以外にも前にユエが、後ろにシアが乗っている。当初、シアには馬車に乗るように言ったのだが、断固として二輪に乗る旨を主張し言う事を聞かなかった。ユエが何度叩き落としても、ゾンビのように起き上がりヒシッとしがみつくので、遂にユエの方が根負けしたという事情があったりする。

 

「……零斗さんはなんであんなに躊躇いなく人を殺せるんですか?」

「どうした? 藪からスティックに?」

「いえ……その……なんというか」

 

 モゴモゴと言い籠もるシア。まぁ、そりゃそうだよな。見た目は同い年か少し歳上くらいだろうし……実際はユエとほぼ同じ年齢なのは言わないでおこう。

 

「……そうだな、じゃあ先ずは俺たちがこうなった理由から話そうか」

 

 特段隠すことでもねぇし、暇つぶしにいいだろうと、これまでの経緯を語り始めた。結果……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

 号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。そして、さり気なく、俺の服で顔を拭いてくる。どうやら、自分は大変な境遇だと思っていたら、俺達が自分以上に大変な思いをしていたことを知り、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。

 

「シアさん……ホントに地獄みたいな体験をしたのは零斗なんだよ」

「え? どういう事ですか?」

「……零斗、話してもいい?」

「別に良いが……聴いていて気持ちのいい話じゃないぜ?」

「大丈夫です……貴方達の事をもっと知りたいですから!」

 

 俺の前世での話をした。研究施設で実験台として扱われた事、組織での活動、人理修復に空想樹の伐採……体験した事を話した。その結果……

 

「「「「……」」」」

「こんな感じの人生だったな……組織にいた頃にはもう人を殺す事には躊躇は無かったな」

 

 前世の事を教えたハジメでさえ口を閉じ、少し俯いている。

 

「だがな……あれでよかったのさ」

「え?」

「後悔はあるさ……『やり直し』だって何度も望んだ……でもな、あの選択でよかったんだよ。こうしてハジメ達に出逢えたからな……ってどうした?」

 

 自分の過去を語っていると、エトは俺の頭を無言で撫で、オスカーは肩を叩いてくるし。周りを見てみると数十人の兎人族が目に涙を浮かべている。

 

「おいおい……ほんとにどうしたんだよ?」

「零斗の過去……思ったよりも辛かった」

 

 ユエの言葉に兎人族全員がうんうんと頷いていていた。

 

 しばらくメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。

 

 

「ハジメさん! 零斗さん! 私、決めました! 皆さんの旅に着いていきます! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向にお二人を助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達は仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

 

 勝手に盛り上がっているシアに、エトとユエが実に冷めた視線を送っている。

 

「シアさん、気持ちは嬉しいけどね。今の君じゃ僕や零斗……全員の足手まといになっちゃうからその提案は断らせてもらうよ」

「お前は旅の仲間が欲しいだけだろ?」

「ウッグ!」

 

 俺の言葉に、シアの体がビクッと跳ねる。

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ? そこにうまい具合に"同類"の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか? そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしな」

「……あの、それは、それだけでは……私は本当に……」

 

 図星だったのか、しどろもどろになるシア。連れて行くのは別に良いが……せめてある程度の戦闘能力は欲しいよなぁ。

 

「……今の()()お前を連れては行かないが()()お前を連れて行かないとは行ってないぞ?」

「え? そ、それは……」

「零斗殿……そろそろ着く頃です」

「お、いよいよか!」

 

 ────────────────────────

 

 遂に【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

「それでは、皆様。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お二人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

「ああ、聞いた限りじゃ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

 カムが、俺達に対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った"大樹"とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には"大樹ウーア・アルト"と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

 カムは、俺の言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をして周りを固めた。

 

「皆様、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

「了解した。オスカーは霊体化で大丈夫だが……ユエは大丈夫か?」

「ん、問題無い」

 

 ハジメは技能の"気配遮断"で、エトと俺は持ち前の技術で、ユエは奈落で培った方法で気配を薄くし、オスカーは霊体化で気配を断つ。

 

「ッ!? これは、また……ハジメ殿。できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

「このぐらいですか?」

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

「……零斗とエトさんは?」

 

 うわっ……俺達の気配、薄すぎ? 

 

「ここに居るぞ〜」

「……少しやり過ぎでしたか」

 

 流石にこのレベルの気配遮断を見抜くのはハジメやユエでも無理か……もっかい気配の掴み方の訓練でもするか。(訓練内容→零斗が気配を消す→それを目隠しした状態で探す。→時間に探し出せなければ零斗がケツを竹刀でフルスイングする)

 

「まぁ、問題無いだろ。警戒とかは俺らがすっから気にしなくていいぞ」

「は、はぁ……分かりました。では改めて、出発しましょう」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。

 

 しばらく、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。理由は分かっていないが、亜人族は、亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。

 

 順調に進んでいると、突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。魔物の気配だ。当然、感知している。どうやら複数匹の魔物に囲まれているようだ。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべている。

 

「さて、ここの魔物はどんなもんかな?」

 

 懐に仕込んでいた投げナイフを3つほど投げ、様子を見る。

 

 ドサッ、ドサッ、ドサッ

「「「キィイイイ!?」」」

 

 三つの何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえた。そして、慌てたように霧をかき分けて、腕を四本生やした体長六十センチ程の猿が三匹踊りかかってきた。

 

「弱いな……発砲音でバレたくねぇしナイフだけで殺るか」

 

 投げたナイフを回収しもう一度投げる。やべ1本折れてら……

 

 一匹は近くの子供に向かって、鋭い爪の生えた四本の腕を振るおうとする。子供は、突然のことに思わず硬直し身動きが取れない。咄嗟に、近くの大人が庇おうとする。

 

「ハジメ〜残り一体任せた」

「分かった」

 

 ハジメが残った一体を素手で掴み、そのまま地面に叩き付ける。叩き付けられた魔物は頭部を失っていた。

 

「お兄ちゃん、ありがと!」

 

 子供(男の子)が窮地を救われ礼を言う。男の子のハジメを見る目はキラキラだ。

 

 

 ──────────────────────────

 

 ちょくちょく魔物に襲われたが、俺とエトが静かに片付けていく。樹海の魔物は、一般的には相当厄介なものとして認識されているのだが、何の問題もなかった。

 

「全員、止まれ」

「……何か来てるね」

 

 今までにない無数の気配に囲まれ、歩みを止める。数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

 

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

 

 樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族……だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

 威圧で虎の亜人を黙らせる。

 

「お前らにゃ要は無い……この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか……だ」

「……その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めて尋ねてきた。視線で話を促す。

 

「……何が目的だ?」

 

 端的な質問。しかし、返答次第では、ここを死地と定めて身命を賭す覚悟があると言外に込めた覚悟の質問だ。虎の亜人は、フェアベルゲンや集落の亜人達を傷つけるつもりなら、自分達が引くことは有り得ないと不退転の意志を眼に込めて気丈に睨みつけてきた。

 

「樹海の深部、大樹の下へ行きたい」

「大樹の下へ……だと? 何のために?」

 

 てっきり亜人を奴隷にするため等という自分達を害する目的なのかと思っていたら、神聖視はされているものの大して重要視はされていない"大樹"が目的と言われ若干困惑する虎の亜人。"大樹"は、亜人達にしてみれば、言わば樹海の名所のような場所に過ぎない。

 

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリア族はその為に雇っている」

「本当の迷宮? 何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「いや、それはおかしい」

「なんだと?」

 

 妙に自信のある俺の断言に虎の亜人は訝しそうに問い返した。

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

「弱い?」

「そうだ。大迷宮の魔物ってのは、どいつもこいつも化物揃いだ。少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

「なんだ?」

「大迷宮というのは、〝解放者〟達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ? それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

「……」

 

 話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。俺達の言っていることが分からないからだ。樹海の魔物を弱いと断じることも、【オルクス大迷宮】の奈落というのも、解放者とやらも、迷宮の試練とやらも……聞き覚えのないことばかり……普段なら、〝戯言〟と切って捨てていた筈だろう。

 

 だがしかし、今、この場において、適当なことを言う意味はないのだ。圧倒的に優位に立っているのは俺達の方であり、言い訳など必要ないのだから。しかも、妙に確信に満ちていて言葉に力がある。本当に亜人やフェアベルゲンには興味がなく大樹自体が目的なら、部下の命を無意味に散らすより、さっさと目的を果たさせて立ち去ってもらうほうがいい。

 

 虎の亜人は、そこまで瞬時に判断した。しかし、俺達程の驚異を自分の一存で野放しにするわけには行かない。この件は、完全に自分の手に余るということも理解している。その為、虎の亜人は提案してきた。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すということが異例だからだろう。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えてくれよ?」

「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。何時でも抜刀出来るようにしていた血狂いから手を離し、威圧も解いた。訝しそうな眼差しを向ける虎の亜人。中には、"今なら! "と臨戦態勢に入っている亜人もいるようだ。その視線には気ずいているので警告をしておく。

 

「お前等が攻撃するより、俺の抜刀の方が早い……試してみるか?」

「……いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」

「わかってるさ」

 

 包囲はそのままだが、ようやく一段落着いたと分かり、カム達にもホッと安堵の吐息が漏れた。だが、彼等に向けられる視線は、俺達に向けられるものより厳しいものがあり居心地は相当悪そうである。

 

「……つーかそろそろ飯時だな」

「そう言えばそうだね」

「ここにいるのは……ざっと80人くらいか」

 

 樹海へ入ったのが昼前ぐらいだった筈だから……ちょっと遅めの昼食とするかねぇ……

 

「一応お前達の分を作るが……食うか?」

「……頂こう」

「よし、ちょっと待ってろ」

 

 異空間収納から大鍋を取り出し、調理を始める。メニューはシチューとトマトのファルシーだ。(トマトの中にサラダを詰めたもの)

 

「うっし……出来たぞー」

「おかわりも有りますからね」

 

 重苦しい雰囲気が周囲を満たしていたが、上手い飯のお陰で少しずつ空気が弛緩していく。隣でシアが「負けた……」と落ち込んでいるがキニシナイー。

 




大将首だ!!
大将首だろう!?
なあ 大将首だろうおまえ
首置いてけ!! なあ!!!(訳:こんばんは いい夜ですね)
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