ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょと、‪( ˙꒳˙ᐢ )ヨッスお馴染みの零斗さんでーす」
「ん、ユエ」
「エトです」

「さて、前回はエト達の買い物だったな……にしても色々あったな」
「零斗が駆けつけてくれたお陰で楽が出来ましたね」
「大儀であった」
「そりゃよかったよ」

「今回はライセン大渓谷にある迷宮の攻略だ……楽しんでくれ」

「「「このクソッタレな迷宮に終焉を!」」」


このクソッタレな迷宮に終焉を!

 Side 零斗

 

 現在、ライセン大渓谷には『死屍累々』と言う言葉がぴったりな程の地獄絵図が広がっていた。ある魔物はひしゃげた頭部を地面にめり込ませ、またある魔物は頭部を粉砕されて横たわり、更には全身を炭化させた魔物……自分で言うもんじゃねぇけどエグい事してんな。

 

「一撃必殺ですぅ!」ズガンッ! 

「……邪魔」ゴバッ! 

「道を開けろ、ゴミ共」ドパァン! 

 

 一体一体は弱いがかなりの数で襲ってくるため面倒な事この上ない。

 

「ふぅ……今日はこの辺りで休むか」

「日も大分落ちてきたね」

 

 ブルックの町から出発して3日程が経っていた。未だに迷宮の入口らしきものは見つからず、立ち往生している。

 

「ライセンの何処かにあるってだけじゃあ、大雑把過ぎね? オスカーも詳しい場所は知らないんだろ?」

「あぁ、ミレディが此処に迷宮を創ったのは覚えているのだが……正確な場所までは知らない」

「まぁ、大火山に行くついでなんですし、見つかれば儲けものくらいでいいじゃないですか。大火山の迷宮を攻略すれば手がかりも見つかるかもしれませんし」

「まぁ、そうなんだけどな……」

「ん……でも魔物が鬱陶しい」

「ユエさんには好ましくない場所ですものね」

 

 

 愚痴を言いながら、その日の野営の準備を始める。野営テントを取り出し、夕食の準備をする。町で揃えた食材と調味料と共に、調理器具も取り出す。この野営テントと調理器具、実は全てハジメ謹製のアーティファクトだったりする。

 

 野営テントは、生成魔法により創り出した〝暖房石〟と〝冷房石〟が取り付けられており、常に快適な温度を保ってくれる。そんで、冷房石を利用して〝冷蔵庫〟や〝冷凍庫〟も完備されている。さらに、金属製の骨組みには〝気配遮断〟が付加された〝気断石〟を組み込んであるので敵に見つかりにくい。

 

 調理器具には、流し込む魔力量に比例して熱量を調整できる火要らずのフライパンや鍋、魔力を流し込むことで〝風爪〟が付与された切れ味鋭い包丁などがある。スチームクリーナーモドキなんかもある。どれも旅の食事を豊かにしてくれるハジメの愛し子達だ。しかも、魔力の直接操作が出来ないと扱えないという、ある意味防犯性もある。

 

 〝神代魔法超便利〟

 

 調理器具型アーティファクトや冷暖房完備式野営テントを作った時の言葉だ。まさに無駄に洗練された無駄のない無駄な技術力である。

 

「出来たぞ〜」

「今日は私が作りました!」

「え? 大丈夫なの?」

「補佐で俺が付いたからモーマンタイ」

 

 ちなみに、その日の夕食はクルルー鳥のトマト煮である。クルルー鳥とは、空飛ぶ鶏のことだ。肉の質や味はまんま鶏である。この世界でもポピュラーな鳥肉だ。一口サイズに切られ、先に小麦粉をまぶしてソテーしたものを各種野菜と一緒にトマトスープで煮込んだ料理だ。

 

 シンプルだが、純粋に料理の腕がでる一品だ。シアは家事全般は出来るが無駄遣いが多い……アルテナはシア程ではないが料理は出来るがこちらも無駄遣いが多い、だがシアと違い裁縫ができるのでまだ許容範囲だ。

 

 そろそろ就寝時間なので寝る準備に入る。最初の見張りは俺だ。テントの中にはふかふかの布団があるので、野営にもかかわらず快適な睡眠が取れる。と、布団に入る前にシアがテントの外へと出ていこうとした。

 

「どこ行くんだ?」

「ちょっと、お花摘みに」

「……ごゆっくり〜」

 

 トイレの暗喩だとわかってるので適当に手を振る。

 

「み、皆さん〜! 大変ですぅ! こっちに来てくださぁ~い!」

 

 と、シアが、魔物を呼び寄せる可能性も忘れたかのように大声を上げた。シアの声がした方へ行くと、そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れおり、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアは、その隙間の前で、ブンブンと腕を振っている。その表情は、信じられないものを見た! というように興奮に彩られていた。

 

「こっち、こっちですぅ! 見つけたんですよぉ!」

「わかったから、取り敢えず引っ張るな。身体強化全開じゃねぇか。興奮しすぎだろ」

「……うるさい」

「シアさん、魔物が寄ってきちゃうからちょっと落ち着いて? ね?」

 

 シアに導かれて岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在した。そして、その空間の中程まで来ると、シアが無言で、しかし得意気な表情でビシッと壁の一部に向けて指をさした。

 

「「「は?」」」

 

 〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪ 

 

 壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。〝! 〟や〝♪ 〟のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

 

「……オスカー、ミレディてのは昔からこうゆう事やりそうな人物か?」

「……やる」

 

 はい、決定! こいつはぜっっっってぇ面倒くさい事になる。迷宮内とかで絶対煽ってくるじゃん。

 

「いやぁ、それにしても本当にあったんですねぇ。おトイ……お花を摘みにきたかいがありました」

 

 能天気なシアの声が響く。元気なのはいい事だが、この状況では命取りになる。

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね? 奥も行き止まりですし……」

 

 シアは、入口はどこでしょう? と辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている。

 

「おい、シア。あんまり……」

 ガコンッ! 「ふきゃ!?」

 

 壁の一部が忍者屋敷の如く回転し、巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。

 

「……嘘でしょ?」

 

 虚しい呟きがやけに響く。とりあえずはシアの消えた辺りの壁を触る。扉の仕掛けが作用して、扉の向こう側へと通される。中は真っ暗で辺り一体が見えない……

 

 ヒュヒュヒュ! 

 

 無数の風切り音が響いたかと思うと暗闇の中をこちら目掛けて何かが飛来した。飛来した物を血狂いで弾く。

 

「なるほど、入ったら飛んでくる仕組みか」

「かなりの速度だね、並の人間なら今ので蜂の巣だろうね」

 

 周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。奥には真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

 〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

 〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

「うぜぇ……今すぐにでもぶん殴りたい」

 

 わざわざ、〝ニヤニヤ〟と〝ぶふっ〟の部分だけ彫りが深く強調されているのが余計腹立たしい。

 

「あ、シアの回収忘れてたわ」

 

 とりあえず回転扉を半分ほどに留めてシアを回収する。

 

「うぅ、ぐすっ、ハジメざん……見ないで下さいぃ~、でも、これは取って欲しいでずぅ。ひっく、見ないで降ろじて下さいぃ~」

 

 何というか実に哀れを誘う姿だった。シアは、おそらく矢が飛来する風切り音に気がつき見えないながらも天性の索敵能力で何とか躱したのだろう。だが、本当にギリギリだったらしく、衣服のあちこちを射抜かれて非常口のピクトグラムに描かれている人型の様な格好で固定されていた。ウサミミが稲妻形に折れ曲がって矢を避けており、明らかに無理をしているようでビクビクと痙攣している。もっとも、シアが泣いているのは死にかけた恐怖などではないようだ。なぜなら……足元が盛大に濡れていたからである。

 

「着替え置いて置くからね……早めにね」

「うぅ……優しいがしみますぅ……」

 

 そして、シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ! と意気込み奥へ進もうとして、シアが石版に気がついた。顔を俯かせ垂れ下がった髪が表情を隠す。しばらく無言だったシアは、おもむろにドリュッケンを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 

 よほど腹に据えかねたのか、親の仇と言わんばかりの勢いでドリュッケンを何度も何度も振り下ろした。 砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

 〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!! 〟

 

「ムキィ──!! 

 

 シアが遂にマジギレして更に激しくドリュッケンを振い始めた。部屋全体が小規模な地震が発生したかのように揺れ、途轍もない衝撃音が何度も響き渡る。

 

「オスカー、何か一言どうぞ」

「……うちの者が済まない」

 

 どうやらライセン大迷宮は、オルクス大迷宮とは別の意味で一筋縄ではいかない場所のようだった。

 

 フォン「まーたこれかよ」

「零斗!?」

 

 足元を見ると案の定転移の魔法陣が浮かんでいた。転移はもうオスカーの迷宮でやったのよ……ハジメが手を伸ばして掴もうとするが、その前に、俺はどこかへと転移されせられたのだった。

 




腰が痛い。
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