ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、(´-ω-`)ドウモハジメです」
「エトです」
「ん、ユエ」

「前回は迷宮の攻略を始めたね」
「トラップだらけですし、その度に煽ってくるのは流石に陰湿ですね」
「……この迷宮創ったやつは1発ぶん殴る」

「アハハ……えっと、今回はボス戦だよ」
「楽しんでください」

「「「ミレディ?コイツが?」」」


ミレディ?コイツが?

 Side ハジメ

 

「ハァ……ハァ……流石に危なかった」

 

 イ〇ディ・ジョーンズみたいに転がる大岩が迫ってきたり、溶解液のプールに落下しかけたり、最初の部屋まで戻されたり……ミレディはぜってぇぶっ殺す。

 

「ここはこの前の……また包囲されても面倒だね。扉は開いてるんだし一気に行くよ!」

「んっ!」

「はいです!」

 

 ゴーレム騎士の部屋に一気に踏み込んだ。部屋の中央に差し掛かると、案の定、ガシャンガシャンと音を立ててゴーレム騎士達が両サイドの窪みから飛び出してくる。出鼻を抉いて前方のゴーレム騎士達を銃撃し蹴散らしておく。包囲される前に祭壇の傍まで到達した。ゴーレム騎士達が猛然と追いかけてくる……でも僕達が扉をくぐるまでには追いつけそうにない。逃げ切り勝ちだ。

 

 だが、ゴーレム騎士達も扉をくぐって追いかけてきたからだ。しかも……

 

「ウソォ!?」

「天井を走って来ている!?」

「……びっくり」

「重力さん仕事してくださぁ~い!」

 

 そう、追いかけてきたゴーレム騎士達は、まるで重力など知らんとばかり壁やら天井やらをガシャンガシャンと重そうな全身甲冑の音を響かせながら走っている。

 

「……ここの神代魔法てもしかして」

「重力ですね」

「避けてください!」

 

 天井を走っていたゴーレム騎士の一体が、走りながらピョンとジャンプすると、まるで砲弾のように凄まじい勢いで頭を進行方向に向けたまま宙を飛んできた。

 

「うわぁ!」バゴォン! 

 

 何とか回避してドンナーで飛んできたゴーレム騎士の兜と肩を破壊した。ゴーレム騎士は頭部と胴体が別れ、更に大剣と盾を手放す。しかし、それらは地面に落ちることなく、そのまま僕達に向かって突っ込んできた。

 

「回避!」

「んっ」

「わきゃ!」

「くっ!」

 

 猛烈な勢いで迫ってきたゴーレム騎士の頭部、胴体、大剣、盾を屈んだり跳躍したりして躱していく。通り過ぎたゴーレム騎士の残骸は、そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。

 

「皆! 耳塞いで!」

 

 ドンナー・シュラークを太もものホルスターにしまう。そして〝宝物庫〟からオルカンを取り出す。

 

 初めて見るオルカンの異様にシアさんとアルテナさんが目を見張る。ユエとエトさんは、走りながら耳を塞いだ。シアさんのウサミミはピンッと立ったままだが、この状況下では気にしていられないからオルカンの引き金を引いた。

 

 バシュウウウ! 

 

 そんな音と共に、後方に火花の尾を引きながらロケット弾が発射され、狙い違わず隊列を組んで待ち構えるゴーレム騎士に直撃した。

 

 次の瞬間、轟音、そして大爆発が発生する。通路全体を激震させながら大量に圧縮された燃焼粉が凄絶な衝撃を撒き散らした。ゴーレム騎士達は、直撃を受けた場所を中心に両サイドの壁や天井に激しく叩きつけられ、原型をとどめないほどに破壊されている。再構築にもしばらく時間がかかるだろう。

 

「ウサミミがぁ~、私のウサミミがぁ~!!」

「耳が……耳がァ……」

 

 ウサミミをペタンと折りたたみ両手で押さえながら涙目になって悶えているシアさんとプルプルと耳を抑えながら震えるアルテナさん。兎人族と森人族……それは亜人族の中でも聴覚に優れた種族だ。

 

「だから耳塞いでて言ったのに……大丈夫?」

「ええ? 何ですか? 聞こえないですよぉ」

「……ホント、残念ウサギ……」

「面目ありません……」

 

 再び落ちて来たゴーレム騎士達に対処しながら、駆け抜けること五分。遂に、通路の終わりが見えた。通路の先は巨大な空間が広がっているようだ。道自体は途切れており、十メートルほど先に正方形の足場が見える。

 

「皆! 掴まって!」

 

 背後からは依然、ゴーレム騎士達が落下してくる。それらを迎撃し、躱しながら通路端から勢いよく飛び出した。身体強化された跳躍力はオリンピック選手のそれを遥かに凌ぐ。世界記録を軽々と超えて目の前の正方形に飛び移ろうとした。

 

 が、思った通りにいかないのがこの大迷宮の特徴。何と、放物線を描いて跳んだ僕達の目の前で正方形のブロックがスィーと移動し始めたのだ。

 

「ダニィ!?」

 

 目測が狂いこのままでは落下する。チラリと見た下は相当深い。咄嗟にアンカーを撃ち込もうと左手を掲げた直後、ユエの声が響いた。

 

「〝来翔〟!」

 

 発動した風系統の魔法により上昇気流が発生し僕達の跳躍距離を延ばす。一瞬の効果しかなかったが十分だった。未だに離れていこうとするブロックに追いつき何とか端に手を掛けてしがみつくことに成功する。

 

「な、ナイスだよ。ユエ」

「ユエさん、流石ですぅ!」

「……もっと褒めて」

 

 墜落せずに済んだことに思わず笑みを浮かべて、ユエに賞賛する。ユエも魔力の消費が激しく少々疲れ気味だが得意げな雰囲気だ。

 

 だが、そんな和やかな雰囲気は空飛ぶゴーレム騎士達によって遮られた。そう、ゴーレム騎士達は宙を飛んでいるのである。おそらく重力を制御して落下方向を決めているのだろう。凄まじい勢いで未だぶら下がったままの急速接近してくる。

 

「全員、登れ!」

 

 乱雑な口調になりながらも指示を出すと同時にドンナーを抜くと迫り来るゴーレム騎士達に連続して発砲する。ユエ達が、ハジメの体を伝ってブロックの上に登りきり、倒立する勢いで体をはね上げてブロックの上に移動した。直後、ぶら下がっていた場所にゴーレム騎士が凄まじい勢いで大剣を突き刺す。一瞬、技後の影響で硬直するゴーレム騎士にハジメは頭上から銃撃し撃ち落とした。

 

「死ぬかと思ったよ……にしても完全に重力を無視した動きだよね。ここの神代魔法が重力魔法なのはほぼ確定だね」

「あはは、常識って何でしょうね。全部()()()ますよ?」

 

 シアさんの言う通り、周囲の全ては浮遊していた。

 

 僕達が入ったこの場所は直径二キロメートル以上ありそうな超巨大な球状の空間だった。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしているのだ。完全に重力を無視した空間である。完全に重力を無視した空間である。だが、不思議なことにしっかりと重力を感じる。おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。

 

 そんな空間をゴーレム騎士達が縦横無尽に飛び回っていた。やはり、落下方向を調節しているのか、方向転換が急激である。生物なら凄まじいGで死んでいてもおかしくないだろう。この空間に近づくにつれて細やかな動きが可能になっていった事を考えると、おそらく……

 

「ここに、ゴーレムを操っているヤツがいるってことかな?」

 

 ゴーレム騎士達は何故か僕達の周囲を旋回するだけで襲っては来ない。ここが終着点なのか、まだ続きがあるのか分からない。だが、間違いなく深奥に近い場所ではあるはずだ。

 

 〝遠見〟で、この巨大な球状空間を調べようと目を凝らした。と、次の瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響く。

 

「逃げてぇ!」

「「「「!?」」」」

 

 シアさんの警告に瞬時に反応し弾かれた様に飛び退いた。運良く、ちょうど数メートル先に他のブロックが通りかかったので、それを目指して現在立っているブロックを離脱する。

 

 直後、

 

 ズゥガガガン!! 

 

 隕石が落下してきたのかと錯覚するような衝撃が今の今まで僕達がいたブロックを直撃し木っ端微塵に爆砕した。隕石というのはあながち間違った表現ではないだろう。赤熱化する巨大な何かが落下してきて、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

 

「ハ、ハハハ……冗談キツいよ……」

「シアさん、助かりました。ありがとうございます」

「……ん、お手柄」

「えへへ、〝未来視〟が発動して良かったです。代わりに魔力をごっそり持って行かれましたけど……」

 

 僕の感知より早く気がついたのはシアさんの固有魔法〝未来視〟が発したからのようだ。〝未来視〟は、シアさん自身が任意に発動する場合、シアが仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだが、もう一つ、自動発動する場合がある。今回のように死を伴うような大きな危険に対しては直接・間接を問わず見えるのだ。

 

 つまり、直撃を受けていれば少なくともシアさんは死んでいた可能性があるということだ。

 

 そうしてる間に、下の方で何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。一瞬の間にハジメ達の頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光で僕達を睥睨した。

 

「嘘でしょ……?」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

「あんな大きな物体がどうやって浮いているんでしょう?」

 

 目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 

 巨体ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来し、周囲を囲むように並びだした。

 

「……戦闘態勢を整えなさい」

「了解……」

 

 それぞれが武器を構えて臨戦態勢を敷く。動いた瞬間、殺し合いが始まる。そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは……

 

 ……巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。

 

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~♪」

「「「「「は?」」」」」

 

 凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。全員が、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。

 

 硬直する僕達に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

「あ、ごめんなさい……僕は南雲 ハジメと言います。初めまして、ミレディさん」

「うんうん! 君はいい子だねぇ!」

 

 キャピ! と言う効果音が聞こえそうなポーズを取るミレディ? さん。

 

(オスカーさん、この人? がミレディで合ってる?)

(……間違い……ない)

(ありがとうございます……もしかしてだけど感動してる?)

(……ちょっとだけ)

 

 涙声になっているオスカーさんでした。

 

「あの〜オスカーさんの手記にミレディさんは人間の女性て書いてあったですけど……」

「オスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「あ、はい一応……」

 

 巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。本当に人間臭い動きをするゴーレムである。ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達に気が気でないのかそわそわしている。

 

「私は、確かにミレディ・ライセンだよ! ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決! もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」

「ですよねぇ……」

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」

 

 今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。ユエが隣で「……中身だけが問題」とボソリと呟いている。

 

「よぉ~し! 今度はこっちの質問に答えてもらうよ」

 

 最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。

 

「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」

 

 嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディさん。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーさんが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。

 

「……故郷に帰る為。それと僕達をここに呼んだあのクソゴミをぶっ殺す為でもある」

「うわぁー☆この子澄ました顔でとんでもない事言ってるぅ☆よし、ならば戦争(クリーク)だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

「脈絡が無さすぎる……あ、そうだ。貴方の神代魔法て重力魔法であってます?」

 

 ミレディは、「んふふ~」と嫌らしい笑い声を上げると、「それはね……」と物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。その姿は、ファイナルアンサーした相手に答えを告げるみの○んたを彷彿とさせた。

 

「教えてあ~げない!」「……ぶっ殺す」




そろそろ零斗の話に移らないと余計にグダグダになるので色々と省きました。
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