ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、(´-ω-`)ドウモ清水 幸利です」
「久しぶりね、園部 優香よ」
「畑山 愛子です!」

「前回は零斗の戦闘だったな……やっぱりあの人やべぇよ」
「人間じゃ到底出来ないような事を平然とやってるだもん……」
「ま、まぁ、迷宮を攻略出来たんですから万事解決!……じゃ、ありませんね」

「コホン……今回は俺たちがメインの話だ」
「楽しんでね」

「「「愛ちゃん親衛隊!」」」


幕間の物語:愛ちゃん親衛隊

 Side 三人称

 

 畑山愛子、二十五歳。社会科教師。

 

 彼女にとって教師とは、専門的な知識を生徒達に教え、学業成績の向上に努め、生活が模範的になるよう指導するだけの存在ではない。もちろん、それらは大事なことではあるのだが、それよりも〝味方である〟こと、それが一番重要だと考えていた。具体的に言えば、家族以外で子供達が頼ることの出来る大人で在りたかったのだ。

 

 それは、彼女の学生時代の出来事が多大な影響を及ぼしているのだが、ここでは割愛する。とにかく、家の外に出た子供達の味方であることが、愛子の教師としての信条であり矜持であり、自ら教師を名乗れる柱だった。

 

 それ故に、愛子にとって現状は不満の極みだった。いきなり、異世界召喚などというファンタスティックで非常識な事態に巻き込まれ呆然としている間に、クラスの良心の様な生徒に話を代わりにまとめられてしまい、気がつけば大切な生徒達が戦争の準備なんてものを始めている。

 

 何度説得しても、既に決まってしまった〝流れ〟は容易く愛子の意見を押し流し、生徒達の歩を止めることは叶わなかった。

 

 〝ならば、せめて傍で生徒たちを守る〟と決意するも、彼女の天職は〝作農師〟。戦いとは無縁の能力だった。おまけに、その有用さから農地改善及び開拓の任務を言い渡される始末。

 

 必死に抵抗するも、生徒達(1部を除く)自身にまで説得され、愛子自身、適材適所という観点からは反論のしようがなく引き受けることになってしまった。

 

 毎日、遠くで戦っているであろう生徒達を思い、気が気でない日々を過ごす。聖教教会の神殿騎士やハイリヒ王国の近衛騎士達に護衛されながら、各地の農村や未開拓地を回り、ようやく一段落済んで王宮に戻れば、待っていたのはとある生徒の訃報だった。

 

 この時は、愛子は、どうして強引にでもついて行かなかったのかと自分を責めに責めた。結局、自身の思う理想の教師たらんと口では言っておきながら自分は流されただけではないか! と。もちろん、愛子が居たからといって何か変わったかと言われれば答えに窮するだろう。だが、この出来事が教師たる畑山愛子の頭をガツンと殴りつけ、ある意味目を覚ますきっかけとなった。

 

 〝死〟という圧倒的な恐怖を身近に感じ立ち上がれなくなった生徒達と、そんな彼等に戦闘の続行を望む教会・王国関係者。愛子は、もう二度と流されるもんか!と教会幹部、王国貴族達に真正面から立ち向かった。自分の立場や能力を盾に、私の生徒に近寄るなと、これ以上追い詰めるなと声高に叫んだ。

 

 そうして、愛子は勝利をもぎ取ったのだ。戦闘行為を拒否する生徒への働きかけは無くなった。だが、そんな愛子の頑張りに心震わせ、唯でさえ高かい人気が更に高まり、戦争は出来そうにないが、せめて任務であちこち走り回る愛子の護衛をしたいと立ち上がる生徒達が現れた事は皮肉な結果だ。

 

「戦う必要はない」「派遣された騎士達が護衛をしてくれているから大丈夫」そんな風に説得し思い止まらせようとするも、そうすればそうするほど一部の生徒達はいきり立ち「愛ちゃんは私達(俺達)が守る!」と、どんどんやる気を漲らせていく。そして、結局押し切られ、その後の農地巡りに同行させることになり、「また流されました。私はダメな教師です……」と四つん這い状態になってしまったことは記憶に新しい。

 

 生徒達の危機意識は、道中の賊や魔物よりも、むしろ愛子の専属騎士達に向いていた。その理由は、全員が全員、凄まじいイケメンだったからだ。これは、愛子という人材を王国や教会につなぎ止めるための上層部の作戦である。要はハニートラップみたいなものだ。それに気がついた生徒の一人が生徒同士で情報を共有し「愛ちゃんをイケメン軍団から守る会」を結成した。

 

 だが、ここで生徒側に一つ誤算が生じていた。それは、ミイラ取りがミイラになっていたということを知らなかったことだ。イカれちまったメンバーを紹介するぜ!左から

 

 神殿騎士専属護衛隊隊長デビッド

「心配するな。愛子は俺が守る。傷一つ付けさせはしない。愛子は……俺の全てだ」

 

 神殿騎士同副隊長チェイス

「彼女のためなら、信仰すら捨てる所存です。愛子さんに全てを捧げる覚悟がある。これでも安心できませんか?」

 

 近衛騎士クリス

「愛子ちゃんと出会えたのは運命だよ。運命の相手を死なせると思うかい?」

 

 近衛騎士ジェイド

「……身命を賭すと誓う。近衛騎士としてではない。一人の男として」

 

 だ!さぁ、存分に罵詈雑言を浴びせてやれ!

 

 この時、生徒達は思った。「一体何があった!? こいつら全員逆に堕とされてやがる!」と。つまり、最初こそ危機意識の内容は愛子がハニートラップに引っかかるのでは? だったのだが、このセリフを聞いた後では「馬の骨に愛ちゃんは渡さん!」という親的精神で、生徒達は愛子の傍を離れようとしなかったのである。

 

 なお、彼等と愛子の間に何があったのかというと……話が長くなるので割愛するが、持ち前の一生懸命さと空回りぶりが、愛子の誠実さとギャップ的な可愛らしさを周囲に浸透させ、〝気がつけば〟愛子の信者になっていたという、まぁそんな感じの話だ。語り出せば、短編小説が書けるが……皆興味無いだろ?

 

 そんなこんなで現在では、【オルクス大迷宮】で実戦訓練をつむ光輝達勇者組、居残り組、愛子の護衛組に生徒達は分かれていた。

 

 そしてちょうど、ハイリヒ王国に帝国の使者が来訪して二ヶ月と少し、愛子達農地改善・開拓組一行は、馬車に揺られながら新たな農地の改善に向かっていた。目的地は湖畔の町ウルである。

 

「愛子、疲れてないか? 辛くなったら遠慮せずに言うんだぞ? 直ぐに休憩にするからな?」

「……それ以上彼女に近づかないで貰いましょうか。先程も注意しましたが畑山先生は軽度の男性恐怖症を患っています、男の貴方が軽々しく近寄ろうとしないでください」

「恭弥くん大丈夫ですよ。平気です、デビッドさん。というかついさっき休憩したばかりじゃないですか。流石にそこまで貧弱じゃありません」

 

 広々とした大型馬車の中、愛子専属護衛隊隊長のデビッドが心配そうに愛子に近寄ろうと歩み寄るがそれを威圧で止める恭弥……それに対する愛子の返答は苦笑いが混じっていた。

 

 愛子の男性恐怖症はレイプが原因により発症してしまったものだ零斗を初めとした数人は大丈夫な様だがデビットや他の護衛騎士達には拒否反応が出てしまう様だった。

 

「そのダンセイキョウショウ?と言うのは知らんが私はただ愛子が心配で……」

「ケアは私達の方でも出来ますから……と言うか隊長である貴方と副隊長のチェイスさんが此処に居る必要は無いと思いますが?」

「それは愛子の身に何かあるk「私達が居るので問題ありません」……貴様!」

 

 デビットに食って掛かる恭弥、その態度が気に食わないのか今にも斬りかかりそうなデビットである。まさに一触即発と言った雰囲気の中「ゴホンッ!」という咳払いと鋭い眼光に止められる。止めたのは愛子の斜め前に座っている女子生徒の一人園部優花である。〝愛ちゃんをイケメン軍団から守る会〟のメンバーだ。馬車の中という密室にイケメン軍団と愛子だけにしていては何があるかわからないと他にも数名のメンバーが乗り込んでいる。

 

「おやおや、睨まれてしまいましたね。そんなに眉間に皺を寄せていては、せっかくの可愛い顔が台無しですよ?」

 

 そう言ってイケメンスマイルで微笑むチェイス。普通の女性なら思わず頬を染めるだろう魅力的な笑みだ。だが、それに対する優花の反応は、今にも「ペッ!」とツバ吐きそうな表情である。

 

「愛ちゃん先生の傍で、他の女に〝可愛い〟ですか? 愛ちゃん先生、この人、きっと女癖悪いですよ。気を付けて下さいね?」

 

 優花は、惚れた女の前で他の女に〝可愛い〟なんて言葉を使うヤツはろくでもないと考えている。彼等も自分達が愛子に対するハニートラップ的な意味で上から付けられたということを理解しており、それは即ち自分達の容姿が女性をときめかせるものだと重々承知しているということだ。それをわかっていながら、敢えて微笑むチェイスに優花はイラっとした表情を向け、ささやかな反撃をする。

 

「そ、園部さん。そんなに喧嘩腰にならないで。それと、せっかく〝先生〟と呼んでくれるようになったのに〝愛ちゃん〟は止めないんですね……普通に愛子先生で良くないですか?」

「ダメです。愛ちゃん先生は〝愛ちゃん〟なので、愛ちゃん先生でなければダメです。生徒の総意です」

「ど、どうしよう、意味がわからない。しかも生徒達の共通認識? これが、ゆとり世代の思考なの? 頑張れ私ぃ、威厳と頼りがいのある教師になるための試練よ! 何としても生徒達の考えを理解するのよ!」

 

 一人で「ふぁいとー!」する愛ちゃん先生に、恭弥の優花 VS チェイスのやり取りでギスギスしていた空気がほんわかする。それこそ愛子が〝愛ちゃん〟たる所以なのだが、愛子は気がつかない。威厳のある教師の道は遠そうである。

 

「「「「グォォオァォ!」」」」

「……仕事ですか」

「ふ、どうやら私達護衛騎士の出番の様だな……まぁ任せておけ。愛子心配せずとも私達……いや!私が!」

「恭弥、片付けて来なさい」

「了解……邪魔なので寝ててくださいね」

「「グオ!」」

 

 恭弥がデビット達を気絶させて、馬車を降りる。そして、馬車の周りでは魔物の群れが寄ってくるのが見える。

 

「さっさと終わらせますか……」

 

 恭弥はニエンテを取り出し構えると、一瞬にして姿を消した。

 

 それから数分後……気絶から覚めたデビット達は血溜まりの中に立つ一人の青年の姿がを見た。

 

「だから言ったでしょう?必要無いと……」

「グッ……」

「鏡花、タオルと替えの服ください」

 

 血まみれの恭弥が馬車内に戻ってくる、それを見た愛子が卒倒し、鏡花からお叱りを受ける恭弥だった。

 

「最早、日常光景と化して来たな……」

「慣れちゃいけないんだろうけど、慣れちゃたよね……」

 

 そう呟くのは護衛隊メンバーの宮崎奈々、相川昇である。ちなみに今回同行した愛ちゃん護衛隊の生徒は園部優花の他、菅原妙子、宮崎奈々、相川昇、仁村明人、玉井淳史、清水幸利、西園寺 鏡花、佐野 恭弥の九人である。

 

 大半は者は愛子の傍にいたかったという単純な理由から同伴しているようだが恭弥達は零斗からの指示と情報収集を目的として同行している。

 

 ────────────────────

 

 更に馬車に揺られること四日。

 

 イケメン軍団が愛子にアプローチをかけ、愛子自身、やけに彼等が積極的なのは上層部から何か言われているのだろうなぁと考えていたので普通にスルーし、実は本気で惚れられているということに気がついていない愛子に、これ以上口説かせるかと生徒達が睨みを効かせ、度々重い空気が降りるなか、やはり愛子の言動にほんわかさせられ……ということを繰り返して、遂に一行は湖畔の町ウルに到着した。

 

 旅の疲れを癒しつつ、ウル近郊の農地の調査と改善案を練る作業に取り掛かる。その間も愛子を中心としたラブコメ的騒動が多々あるのだが……それはまた別の機会に。

 

 そうして、いざ農地改革に取り掛かり始め、最近巷で囁かれている〝豊穣の女神〟という二つ名がウルの町にも広がり始めた頃、再び、愛子の精神を圧迫する事件が起きた。

 

 生徒の二人が失踪したのである。

 




一体誰が失踪したんだろうなぁ(棒読み)
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