「フェルよ」
「ミレディちゃんです!」
「前回はあのブ男を殺ったな」
「流石に殺すのは不味かったんじゃない?」
「殺し方も大分優しい物でしたしね」
「え?あれで優しいの??」
「そうですよ?前世なんて相手のピッーーーをピッーーーーして、ピッーーーーーーして殺したなんて事もあったよ?」
「フェルさん、フェルさん表現が生々し過ぎて規制音が入ってます」
「今回はギルドでの事情聴取だ……面倒なことこの上ないな」
「まぁまぁ……それじゃ、楽しんでね」
「「「面倒な依頼!」」」
Side 零斗
ハジメ達と一旦別れてギルド内の個室に通される。事情聴取でもされんのかねぇ……メンド。
個室に通されて、きっかり十分後、遂に、扉がノックされた。返事から一拍置いて扉が開かれる。そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性と先ほどのドットだった。
「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。レイト君……でいいかな?」
簡潔な自己紹介の後、名前を確認がてらに呼び握手を求める支部長イルワ。握手を返しながら返事をする。
「えぇ、そうです。名前は渡した手紙に?」
「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」
ちなみに手紙は此処へ案内される前にドットさんに渡していた。
「トラブル体質……ね。確かにブルックではトラブル続きでしたね。それで、身分証明等は手紙だけで大丈夫なんですか?」
「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」
どうやらキャサリンさんの手紙は本当にギルドのお偉いさん相手に役立に立ったようだ。随分と信用がある。キャサリンさんを〝先生〟と呼んでいることからかなり濃い付き合いがあるように思える。
「キャサリンさんは一体何をしていたんですか?」
「ん?本人から聞いてないのかい? 彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が……」
「……あの人只者では無いとは思っていましたが、かなりの重役じゃ無いですか」
想像していたよりずっと大物だったらしい。
「……それで私の処分は?」
貴族の一人を殺ったんだ、それ相応の罰はある筈だよな。しかし、イルワは、瞳の奥を光らせると「少し待ってくれるかい?」とお茶を濁された。何となく嫌な予感がする。
イルワは、隣に立っていたドットを促して一枚の依頼書を目の前に差し出した。
「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」
「……私は刑罰を聞いているのですが?バカにしているんでしょうかねぇ?」
軽く威圧しながらイルワを睨む。隣のドットは汗を大量に掻いている。
「ふむ、取り敢えず話を聞いて貰えないかな? 聞いてくれるなら、今回の件は不問とするのだが……」
「は?不問?」
え?お咎めなしになる可能性あんの?アイツてこの街有数の貴族の息子だよね?それを殺っといて無罪放免になんの?ワケガワカラナイヨ……
「一体どうゆう事ですか?あのブタは貴族の一人なんですよね?それを殺害したのに無罪放免?」
「まぁ、殺害した事に関しての刑罰がこの依頼とでも思ってくれ……それに、ハジメ君?だったかな、彼の話によれば神の使徒の畑山 愛子様を強姦した様だからな。彼はどの道処刑される筈だったのだよ」
イルワさんの話を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。無罪放免とは行かないが依頼をこなすだけで刑罰を無くすって高待遇過ぎん?
「はぁ……それで依頼とはなんですか?」
「聞いてくれるようだね。ありがとう」
「……いい性格してますね、貴方」
「君も大概だと思うけどね。さて、今回の依頼内容だが、そこに書いてある通り、行方不明者の捜索だ。北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者一行が予定を過ぎても戻ってこなかったため、冒険者の一人の実家が捜索願を出した、というものだ」
イルワの話を要約すると、つまりこういうことだ。
最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになった。
この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。
「伯爵は、家の力で独自の捜索隊も出しているようだけど手数は多い方がいいと、ギルドにも捜索願を出した。つい、昨日のことだ。最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」
「それを何故ランク〝青〟の私に?私以上の適任はいる筈でしょう」
そこまでの実力はないと伝えるもイルワはまるで取り合わない。
「さっき〝黒〟のレガニドを瞬殺したばかりだろう? それに……ライセン大峡谷を余裕で探索出来る者を相応以上と言わずして何と言うのかな?」
「! 何故知って……手紙?でも、彼女にそんな話は……」
ライセン大峡谷を探索していた話は誰にもしていない。イルワがそれを知っているのは手紙に書かれていたという事以外には有り得ない。しかし、ならば何故キャサリンさんが、それを知っていたのかという疑問が出る。
「……シアさん達ですか。全く毎度トラブルを起こしてくれますね」
頭が痛いよ、もう……そんな俺の様子を見て苦笑いしながら、イルワは話を続けた。
「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」
懇願するようなイルワの態度には、単にギルドが引き受けた依頼という以上の感情が込められているようだ。伯爵と友人ということは、もしかするとその行方不明となったウィルとやらについても面識があるのかもしれない。個人的にも、安否を憂いているのだろう。
「……報酬の内容によりますが、お受けしましょう」
「報酬は弾ませてもらう。依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に〝黒〟にしてもいい」
「金は最低額で構いません。ランクは現在の青で問題ありません」
「なら、今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな? フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ? 君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」
「大盤振る舞いですね……友人の息子相手にしては入れ込み過ぎでは?」
イルワが初めて表情を崩した。後悔を多分に含んだ表情だ。
「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね……だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」
イルワの独白を聞きながら、少し思案する。思っていた以上に、イルワとウィルの繋がりは濃いらしい。すまし顔で話していたが、イルワの内心はまさに藁にもすがる思いなのだろう。生存の可能性は、時間が経てば経つほどゼロに近づいていく。無茶な報酬を提案したのも、イルワが相当焦っている証拠なのだろう。
「はぁ……メンドくせぇなほんとに」
「……それが君の本来の性格かい?」
「そっちが腹の中を露呈してくれたんだ、ならこっちも本性を見せてやろうと思ってな……つーか、そんな事はどうでも良い」
俺としては町に寄り付く度に、エト達の身分証明について言い訳するのは、いい加減うんざりしてきたところであるし、この先、お偉いさんに対する伝手があるのは、町の施設利用という点で便利だ。なにせ、聖教教会や王国に迎合する気がゼロである以上、いつ、俺以外の仲間が異端者の烙印を押されるかわからない。
「報酬を二つ追加して貰っていいか?」
「無理のない程度の物なら構わないが……」
「ああ、そんなに難しいことじゃない。四人分のステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、更に、ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、出来る範囲で構わない、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」
「……あぁ、分かったよ」
一つ目の要求は恐らくは問題無いだろうが、二つ目の要求はかなり厳しい物だろうな。何せ犯罪者を庇護する様なもんだからな、教会の連中からの厄介事も増えるだろうが、あくまでも無理のない範囲での助力を求めた。
「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう……これ以上の譲歩は無理だ。どうだろうか?」
「あぁ、それでいい。あと報酬は依頼が達成されてからでいい。お坊ちゃん自身か遺品あたりでも持って帰ればいいだろう?」
エト達用のステータスプレートを手に入れるのが一番の目的だ。この世界では何かと提示を求められるステータスプレートは持っていない方が不自然であり、この先、町による度に言い訳するのは面倒なことこの上ない。
問題は、最初にステータスプレートを作成した者に騒がれないようにするにはどうすればいいかという事だったのだが、イルワの存在がその問題を解決した。ただ、条件として口約束をしても、やはり密告の疑いはある。まぁ、そん時は密告した奴ごとギルドを潰せばいいか。
「っと、そうだ。そのお坊ちゃんの似顔絵とかあるか?」
「これです」
ドットさんから幼稚園生の似顔絵以下のウィル・クデタの絵を渡させる。かろうじて金髪の男だとわかる程度で、俺から見てもふざけて描いたとしか思えないクオリティだ。しかも日本語だとひらがなに該当する文字で、「たずねびと うぃるくん」って書いてある。
「え?巫山戯てるの?」
「至って真面目ですよ!」
「はぁ……紙とペン持ってこい。描き直すから」
程なくして持ってこられた紙とペンを受け取り、イルワさんにウィル・クデタの特徴を聴きながら絵を描いていく。
「んで、次は?」
「えっと、綺麗に切りそろえられた金髪で……っていうかめっちゃ絵上手くないか君!?」
「我、
ほんの五分程度で、さっきの落書きみたいな似顔絵とは雲泥の差の絵が出来上がった。イルワさんが「本物と変わりないぞ……」と驚いている。
「君の秘密が気になってきたが……それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。君の言う通り、どんな形であれ、ウィル達の痕跡を見つけてもらいたい………………宜しく頼む」
イルワは最後に真剣な眼差しで俺を見つめた後、ゆっくり頭を下げた。大都市のギルド支部長が一冒険者に頭を下げる。そうそう出来ることではない。キャサリンの教え子というだけあって、人の良さがにじみ出ている。
「任せておけ」
その後、支度金や北の山脈地帯の麓にある湖畔の町への紹介状、件の冒険者達が引き受けた調査依頼の資料を貰い、部屋を出た。
●○●
Side 三人称
バタンと扉が締まる。その扉をしばらく見つめていたイルワは、「ふぅ~」と大きく息を吐いた。部屋にいる間、一言も話さなかったドットが気づかわしげにイルワに声をかける。
「支部長……よかったのですか? あのような報酬を……」
「……ウィルの命がかかっている。彼ら以外に頼めるものはいなかった。仕方ないよ。それに、彼等に力を貸すか否かは私の判断でいいと彼等も承諾しただろう。問題ないさ。それより、彼らの秘密……」
「ステータスプレートに表示される〝不都合〟ですか……」
「ふむ、ドット君。知っているかい? ハイリヒ王国の勇者一行は皆、とんでもないステータスらしいよ?」
ドットは、イルワの突然の話に細めの目を見開いた。
「! 支部長は、彼が召喚された者……〝神の使徒〟の一人であると? しかし、彼はまるで教会と敵対するような口ぶりでしたし、勇者一行は聖教教会が管理しているでしょう?」
「ああ、その通りだよ。でもね……およそ四ヶ月前、その内の二人がオルクスで亡くなったらしいんだよ。奈落の底に魔物と一緒に落ちたってね」
「……まさか、その者が生きていたと? 四ヶ月前と言えば、勇者一行もまだまだ未熟だったはずでしょう? オルクスの底がどうなっているのかは知りませんが、とても生き残るなんて……」
「だが、召喚された者の中に逸脱した少年少女がいたらしいんだ。その中の一人が未知の技術を使い、ベヒモスを単独で倒したらしいよ」
「ベヒモスを一人で…………ですか。信じられませんね」
ドットは信じられないと首を振りながら、イルワの推測を否定する。しかし、イルワはどこか面白そうな表情で再び零斗達が出て行った扉を見つめた。
「でももし、彼らが本当に元『神の使徒』なら、なぜ勇者達と合流しないのか……彼らは奈落の底で『何』を見たのか……それは、教会と敵対することも辞さないという決意をさせるに足るものだ。それは取りも直さず、世界と敵対する覚悟があるということだよ」
「世界と……」
「私としては、そんな特異な人間とは是非とも繋がりを持っておきたいね。例え、彼が教会や王国から追われる身となっても、ね。もしかすると、先生もその辺りを察して、わざわざ手紙なんて持たせたのかもしれないよ」
「支部長……どうか引き際を見誤るようなことだけは」
「ああ……わかっているさ」
スケールの大きな話に、目眩を起こしそうになりながら、それでもイルワの秘書長として忠告は忘れないドット。しかし、イルワは、何かを深く考え込みドットの忠告にも、半ば上の空で返すのだった。
FGOで140連してジュナオが一体も来ないてどうゆう事なの?(困惑)すり抜けで玉藻の前と良い文明さんは来たけどさ……嬉しくねぇのよ……