「畑山 愛子です」
「園部 優花よ」
「前回は、愛ちゃん達と再会したな……つーかそろそろ離してくれない?」
「「……もう少しだけ」」
「へいへい」
「今回は愛ちゃん達との話し合いだ、楽しんでくれ」
「「「☆O☆HA☆NA☆SI☆!」」」
Side 零斗
「落ち着きましたか?」
抱きついきた愛ちゃんと園部の頭を撫でながら話しかける。未だに反応が無い……後ろにいる、エトからの視線と玉井達の近くにいる騎士から視線がすんごい痛い。
「……すいません、取り乱しました……」
「……ごめん」
「大丈夫です。流石にビックリしましたけどね」
暴走気味だった事を自覚し頬を赤らめる愛ちゃんと園部、俺からそっと距離をとり、遅まきながら大人の威厳を見せようと背筋を正す愛ちゃんは……背伸びした子供のようだった。
「良かったです、元気な姿を見れて……所で後ろにいる女性達は一体誰です?」
「食事をしながらでも、大丈夫ですか?依頼のせいで一日以上ノンストップでここまで来たんです。久しぶりの米料理なのでじっくり味あわせてください。それと、この方達は……」
視線でエト達に自己紹介を促す。
「……ユエ」
「シアです」
「アルテナ・ハイピストと申します」
「エト・フレイズです」
「「ハジメ(さん)の女(ですぅ)!」」
「ハジメさんの……こ、恋人で……す……あぅ」
「……レイトの女です」
「そして私が! 超絶美少女魔法使いのミレディで~す☆」
色々とツッこませろ……特にエト、何時から俺はお前と恋仲になった!?
愛ちゃんが若干どもりながら「えっ? えっ?」とハジメと『ハジメの女』発言をしたユエ達を交互に見る。上手く情報を処理出来ていないらしい。後ろの生徒達も困惑したように顔を見合わせている。いや、男子生徒は「まさか!」と言った表情でユエ達を忙しなく見ている。徐々に、その美貌に見蕩れ顔を赤く染めながら。
「みんな何を言って!?」
「そんなっ! 酷いですよハジメさん。私のファーストキスを奪っておいて!」
「そ、そうです!私達の告白を受けて取ってくれましたよね!?」
「受けたけども!僕には香織さんがいるから気持ちには答えられないかもしれないて言ったよね!?」
「エトさん、何時から私の女になったんですか?」
「……こうした方が色々と面倒事を避けられると思っただけです」
「南雲君、零斗君」
シアの〝ファーストキスを奪った〟という発言に、遂に情報処理が追いついたらしく、愛子の声が一段低くなる。やべぇ……完璧キレてら。
「説明させてk『そこに直りなさい!』……はい」
顔を真っ赤にして、ハジメの言葉を遮る愛子。その顔は、非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた。
「女の子のファーストキスを奪った挙句、三股なんて! 直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか! もしそうなら……許しません! ええ、先生は絶対許しませんよ! お説教です!零斗君もです!刀華さんや鈴仙さん、それに、わ、私という人がありながら……貴方もお説教です!」
「はい」
きゃんきゃんと吠える愛子を尻目に、床に正座する。はぁ……やっちまったなぁ……
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愛ちゃんのありがたい説教を受け終わり、他の客の目もあるからとVIP席の方へ案内される。そこで、愛ちゃんや優花達生徒から怒涛の質問を投げかけられつつも、ハジメ達は目の前の今日限りというニルシッシルに夢中で聞いていない。
Q、橋から落ちた後、どうしたのか?
A、色々と頑張った
Q、なぜ仮面をしているのか
A、面倒事を避けるため
Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか
A、特に戻る理由がない
そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。全く、迫力がないのが物悲しい。が、これはあくまでも演技だろう……というかそうであってくれ、教会の人間がいるからこうやって聞いてきていると思いたい。何回かは連絡してるし大丈夫だよね?ね?
その様子にキレたのか、金髪の顎のデカいオッサンが拳をテーブルに叩きつけ、怒鳴り散らかし始めた。皿がひっくり返たらどうしてくれるんですかねぇ(憤怒)。
「おい、お前! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」
ハジメは、チラリとパツキンのオッサンを見ると、はぁと溜息を吐いた。
「今は食事中ですよ?騎士ともあろう方がテーブルマナーすらまともに覚えていないんですか?」
青筋を額に浮かべながら、淡々とオッサンを煽るハジメ。やるじゃない。
オッサンは我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないハジメと俺から矛先を変え、その視線がシアとアルテナに向く。
「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう」
侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアとアルテナはビクッと体を震わせた。
「……貴方バカですね」
「き、貴様!今私をバカと言ったな!」
「えぇ、言いましたね。教会の騎士ともあろう者が食事の場でその様なくだらない話題を出して他者を貶す行為を平然とするなど……教会の正当性など笑い話にもなりませんね」
教会を引き合いに出され、しかも愚弄されたオッサン達は一斉に立ち上がり、こちらを睨んでくる。おー怖い怖い。
「だいたい、貴様もバカだろう!貧相な首巻きと耳飾り等身に付け、それで着飾っているつもりか?そんな薄汚い物など燃やしてくれるわ!」
「てめぇ、今なんつった?」
貧相な首巻きに耳飾り?薄汚い物?
「ハッ!図星か?この程度の事実で逆上するなど……たかがしている!異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる!」
「死ぬのは……てめぇだよ」
「へ?」
「どうした?俺を殺すんだろ?」
「あ……あぁぁぁ!わ、私の腕がァ!」
「腕の1本がどうした?それでも教会直属の騎士か?」
「き!ぎざまぁ!殺してやる!」
あぁ、面倒だ……ほんとに面倒だ…………いっそ教会ごと消し去ってしまおうか……
「零斗、そこまでです」
「何故、止める」
「その一線は超えてはいけない……これ以上相手にする必要はありません」
「ダメだ、その男を殺さなくてはならない。俺の家族を貶した事への報復しなければならない。だから邪魔をしないでくれ」
『家族』を貶され、形見を蔑まれたのだ、この男だけは何としてでも殺さなげればならない。血狂いを男の方に向けながら近ずいて行く。
「零斗、ゆっくりと呼吸して……」
「フゥー……フゥー……」
「そうそう……ゆっくり、ゆっくり」
男の数歩手前で、エトに手を引かれ胸に顔を埋めさせられる。そして、そのまま頭を抱擁される。
「すみません、取り乱したみたいで…………」
次第に吹き上がっていた怒りも収まり始め、殺意で埋め尽くされていた思考もゆっくりと元に戻っていった。
「大丈夫です⋯⋯後の事は私に任せてください」
「⋯なに⋯を⋯⋯⋯し⋯⋯て⋯」
エトが俺を視界を手で塞ぐと、強烈な眠気が襲ってくる。何とか意識を保とうとするが、抵抗虚しく意識が落ちる。
●○●
Side エト
殺意に支配されかけていた零斗を落ち着かせて、魔法で眠らせる。零斗を椅子に座らせて、近くでぷるぷると震えていたシアさんとアルテナさんに声をかける。
「シアさん、アルテナさん、零斗の事を宿まで連れて言って貰えませんか?」
「わ、分かりました……」
シアさん達に零斗を任せて、片腕を失った騎士まで歩み寄る。私とて、少なからずこの者に怒りを抱いている。この者だけは許してなるものか。
「私は貴方達がどうしようとどうでも良いです。ですが彼を……仲間を愚弄する事だけは許しません。それに私達は依頼が目的でここに来ているんです、それが終わればお別れです。別れた後に貴方達がどこで何をしようが、勝手です。でも、私達の邪魔をする様でしたら……次はありません」
その場にいる全ての人間が凍りつき、青ざめていた。威圧を近距離で受けていた騎士達はガタガタと震え、失禁している。
「行きましょう、皆さん」
「少し⋯待っては⋯⋯くれませんか……」
その場を去ろうとした時、一人の騎士が話しかけて来た。
「なんでしょうか?」
「エト君でいいでしょうか?先程は、隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」
何を今更……
「……話はそれだけですか?無いのなら失礼します」
それだけ告げて宿を後にする。
●○●
Side 三人称
夜中。深夜を周り、一日の活動とその後の予想外の展開に精神的にも肉体的にも疲れ果て、誰もが眠りついた頃、しかし、愛子は未だ寝付けずにいた。
「少しだけ夜風にあたりにいきましょう」
愛子は、宿を出て少し歩いた先の湖の畔にやってきた。湖の水面は月明かりに照らされキラキラと輝いていた。
「こんな夜更けに女性一人とは……危ないですよ?」
「零斗君!?」
ギョッとして声がした方へ振り向く愛子。そこには、仮面をとり素顔を晒した零斗がいた。驚愕のあまり舌がもつれながらも何とか言葉を発する愛子。
「ど、どうしてここに?」
「少し夜風にあたりたくてね……そっちは?」
「私も……です」
零斗は湖の近くまで歩き、その場に座り込む。そして、自分の横をポンポンと叩いて座るように促す。
「体の調子は……」
「問題無い」
「そ、そうですか。良かったです」
「「……」」
二人の間に気まずい空気が流れる。ふと、零斗が亜空間収納からワインボトルと二つのグラス、そして小さな包みを取り出した。
「軽く飲まない?ちょっとは話しやすくなるだろ?」
「零斗君は未成年でしょう!絶対、ダメです!」
「今更じゃない?」
「……それでもです!」
プリプリと怒る愛子。それを見て頬を緩める零斗。
「……他の生徒達は怖がっていたか?」
「え?」
「いや……あんな所見せちまったからさ、怖がってるんじゃないかと思ってさ。俺もかなりの短気だよな、マフラーとイヤリングを貶されただけであそこまでするなんてさ……」ギリ
言葉を紡いでいく事に拳に力を込める零斗、手からは血が滴り、顔は酷く歪んでいる。そんな姿を見た愛子は零斗の頭を抱き寄せて、ゆっくりと撫でる。
「そんなに無理しなくても大丈夫。ここには私しかいないから……『つらい』ってこぼしていいの、『くるしい』って言っていいです……大丈夫ですから」
「……もう少しだけこのままで居させてくれ」
「えぇ、いいですよ」
時間にして一分ほどで零斗が愛子の腕を軽く叩く。もう大丈夫だと言うことだろう。
「ありがとうな、愛ちゃん」
「だから愛ちゃんでは無く……んむぅ!」
「ちゅ……ちょっとしたリップサービス。宿まで送るよ」
「は、はひ…………」
ブチ切れ零斗君でした。感想お待ちしております。