ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょと、ヾ(ω` )/ハイヨォお馴染みの零斗さんだ」
「ハジメです」
「鏡花よ」

「前回は山脈地帯でウィル坊の捜索を開始したな」
「道中でポーカーやったけど、一勝もできなかった……」
「フフ……エトちゃんはイカサマしてたわよ?」
「え?」
「シャッフルの時に自分の手持ちに良い配役が回ってくるようにして混ぜてんだよ……ハジメ達相手だとイカサマし放題だしな」

「今回はウィル坊の捜索の続きだ」
「楽しんでいってね」

「「「みんな大剣は持ったな!」」」


みんな大剣は持ったな!

 Side 零斗

 

 あれからしばらくして、再び、オルニスが異常のあった場所を発見した。東に約三百メートルいったところに大規模破壊の後があったのだ。全員を促してその場所に急行した。

 

 着いた場所は大きな川だった。上流に小さい滝が見え、水量が多く、流れもそれなりに激しい。本来なら真っ直ぐ麓に向かって流れているのだろうが、現在、その川は途中で大きく削られており、小さな支流が出来ていた。まるで、横合いから二本のレーザーか何かに抉り飛ばされたようだ。

 

「……ここら一帯で強めの魔物つったらブルータルぐらいだが……こんな風に地面が抉れる程の力は無い筈なんだが」

 

 ブルタールとは、RPGで言うところのオークやオーガの事だ。大した知能は持っていないが、群れで行動することと、〝金剛〟の劣化版〝剛壁〟の固有魔法を持っているため、中々の強敵と認識されている。普段は二つ目の山脈の向こう側におり、それより町側には来ないはずの魔物だ。それに、川に支流を作るような攻撃手段は持っていないはずである。

 

「……下流に行ってみるか」

 

 オルニスを上流の方へ飛ばす。ブルタールの足跡が川縁にあるということは、川の中にウィル達が逃げ込んだ可能性が高いということだ。ならば、きっと体力的に厳しい状況にあったであろう彼等は流された可能性が高い。

 

 しばらく歩いていると、先ほどのものとは比べ物にならないくらい立派な滝に出くわした。滝横の崖を降りていき滝壺付近に着地する。滝の傍特有の清涼な風が気持ちいい。

 

「……!零斗、滝壺の中に人の気配がある!」

「お!良くやった!」

 

 愛ちゃん達も驚いている。ま、当然か。生存の可能性はゼロではないとは言え、実際には期待などしていなかったしな。ウィル達が消息を絶ってから五日は経っているのである。もし生きているのが彼等のうちの一人なら奇跡だ。

 

「ユエ、頼んだ」

「……ん。〝波城〟 〝風壁〟」

 

 滝と滝壺の水が、紅海におけるモーセの伝説のように真っ二つに割れ始め、更に、飛び散る水滴は風の壁によって完璧に払われた。

 

 薄暗い空洞を見渡すと、奥の方に人が横倒れになっているのが見えた。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年だった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。だが、それほど怪我もなく、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけのようだ。

 

 何度か揺すったり、ペチペチと頬を叩いてみるが起きる気配は無い。しゃーないか……

 

 ドパァン!「うわぁぁぁぁ!」

「起きましたね」

 

 悲鳴を上げて目を覚まし、耳を抑える青年。何をしたかって?耳元でエルガーをぶっぱなしただけさ、もちろん弾は抜いてあるので空砲だ。

 

「君がウィル・クデタ君かな?」

「えっと、はい。私がウィル・クデタですが……?」

「よかった。私は湊莉 零斗と申します、フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来ました。生きていて良かったです」

「イルワさんが!? そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

 尊敬を含んだ眼差しと共に礼を言うウィル。どこぞのブ男と違って中々見所のあるやつらしい。

 

「何があったか話して貰えますか?」

 

 ウィルの話を要約するとこうだ。

 

 ウィル達は五日前、俺達と同じ山道に入り五合目の少し上辺りで、突然、十体のブルタールと遭遇したらしい。流石に、その数のブルタールと遭遇戦は勘弁だと、ウィル達は撤退に移ったらしいのだが、襲い来るブルタールを捌いているうちに数がどんどん増えていき、気がつけば六合目の例の川にいた。そこで、ブルタールの群れに囲まれ、包囲網を脱出するために、盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。それから、追い立てられながら大きな川に出たところで、前方に絶望が現れた。

 

 漆黒の竜と紅黒の鎧を纏った大柄の男だったらしい。その黒竜は、ウィル達が川沿いに出てくるや否や、特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルは吹き飛ばされ川に転落。流されながら見た限りでは、そのブレスで一人が跡形もなく消え去り、残り二人も後門のブルタール、前門の鎧の男に挟撃されていたという。

 

 ウィルは、流されるまま滝壺に落ち、偶然見つけた洞窟に進み空洞に身を隠していたらしい。

 

 ウィルは、話している内に、感情が高ぶったようですすり泣きを始めた。

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」

 

 洞窟の中にウィルの慟哭が木霊する。園部達は悲痛そうな表情でウィルを見つめ、愛ちゃんはウィルの背中を優しくさする。ウィルの目の前まで歩み寄り、目線を合わせる。

 

「……生きたいと願う事は悪い事ではありません、それが人間の本能ですからね。ですが、貴方が貴方自身の生を否定してはいけません……それでも死んでしまった人が気になるのなら生き続けなさい。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けなさい。そうすれば、いつかは……今日、『生き残った意味があったって』そう思える日が来るでしょうから」

「……生き続ける」

 

 過去は戻らない、死んでしまった人は蘇らない。どんなに望んでも、願ってもその現実は変わらない。だからその現実を背負って生きていくしかない、それが残された者の責務だ。

 

 前世で学んだ事がある。……大事な物は失って初めて気づく、そして……その大事な物は簡単に壊れてしまう。そして、怖くなる、大事な物と絆を深めてめもまた失ってしまうんじゃないかと……今もその恐怖は背を這っている。

 

「……零斗、私の目を見てください」

「え?」

「私達は……いえ、私は貴方の前からいなくなったりしません」

 

 エトの目は吸い込まれそうなほど綺麗だった、曇りなく、澱みなく……真っ直ぐな瞳だった。

 

「……フフ、ありがとうございます」

「ん、レイトはもう家族」

「そうです!レイトさんはもう私達の家族なのです!貴方が嫌と言っても離れてあげません!」

「それは遠慮しておこう」

「なんでですか!?私今、結構いい事言いましたよね!?」

 

 皆の暖かい言葉がなんだかこそばゆくて、頬をかきながら視線を外す……が直ぐに戻されてからかわれる。

 

 

 ────────────────────────

 

 ブルタールの群れや漆黒の竜の存在、鎧の男の存在は気になるがウィルや他のクラスメイト達が足でまといになるのが目に見えているので下山する事にした。

 

 だが、事はそう簡単には進まない。再度、ユエの魔法で滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。

 

「グゥルルルル」

 

 低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった。

 

「……剥ぎ取り出来ますか?出来ないのであれば牙を数本折って素材にしましょうかね」

「やたらと物騒だね!?」

 

 竜の牙が枯渇してるんだ……狩らなきゃ(使命感)。

 

 竜の体長は七メートル程。漆黒の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。

 

「……洗脳されている?しかも幸利の魔力反応?」

 

 竜の魔力から僅かに幸利の魔力と闇魔法が使用された痕跡が読み取れた。

 

「あ……あぁぁ……あぁぁああ……」

「こんなのがなんで居るんだよ……」

「カテルワケガナイヨ……」

 

 後ろにいる愛ちゃん達は蛇に睨まれた蛙のごとく硬直してしまっている。特に、ウィルは真っ青な顔でガタガタと震えて今にも崩れ落ちそうだ。

 

「ミレディ、落とせ」

「りょーかい!」

 

 何処ぞの空の王者()の様に我が物顔で飛んでいる羽付きトカゲをミレディの重力魔法で地面に叩き落とす。

 

「ハジメ、大剣は持ちましたね?」

「……うん」

「では……イクゾー!」

 

 デッデッデデデ!(カーン!)デデデ!(迫真)

 

 キュゥワァアアア!!

 

 不思議な音色が夕焼けに染まり始めた山間に響き渡る。

 

「全員、私の後ろに下がりなさい!"英霊憑依"ルーラー"ジャンヌ・ダルク」

 

 さぁて、根比べと行こうか!

 

ここに祈りを捧げましょう……。我が友、我が仲間を守らせ給え──『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!

 

 直後、竜からレーザーの如き黒色のブレスが一直線に放たれた。音すら置き去りにして一瞬で俺に到達したブレスは、轟音と共に衝撃と熱波を撒き散らす。

 

「流石に重いな……だが、耐えられないほどでは無い!」

「〝禍天〟」

 

 黒竜の頭上に直径四メートル程の黒く渦巻く球体が現れる。見ているだけで吸い込まれそうな深い闇色のそれは、直後、黒竜を地面に叩きつけた。

 

「グゥルァアアア!?」

 

 豪音と共に地べたに這い蹲らされた黒竜は、衝撃に悲鳴を上げながらブレスを中断する。しかし、渦巻く球体は、それだけでは足りないとでも言うように、なお消えることなく、黒竜に凄絶な圧力をかけ地面に陥没させていく。

 

「ナイスだ、ユエ」

 

 地面に磔にされた空の王者は、苦しげに四肢を踏ん張り何とか襲いかかる圧力から逃れようとしている。が、直後、天からウサミミなびかせて「止めですぅ~!」と雄叫び上げるシアがドリュッケンと共に降ってきた。激発を利用し更に加速しながら大槌を振りかぶり、黒竜の頭部を狙って大上段に振り下ろす。

 

 ドォガァアアア!!!

 

 その衝撃は、今までの比ではない。インパクトの瞬間、轟音と共に地面が放射状に弾け飛び、爆撃でも受けたようにクレーターが出来上がる。

 

「……硬いな」

 

 超重量の一撃をまともに受けた者は深刻なダメージは免れないはずだ。そう、まともに受けていれば……

 

「グルァアア!!」

 

 黒竜の咆哮と共に、ドリュッケンにより舞い上げられた粉塵の中から火炎弾が豪速でユエとミレディに迫った。ユエは、咄嗟に右に〝落ちる〟事で緊急回避する。だが、代わりに重力球の魔法が解けてしまった。ミレディは火炎弾を左に〝落とす〟事で難なく防いだ。

 

「さぁて、どう攻めましょう──ハジメ!しゃがめ!」

「え?」

『…………』

 

 音も無く、気配すら感じなかった……紅黒い鎧を身に纏った大柄の男が槍を構えてハジメを刺殺さんとしていた。

 

「チィイ!」

 

 辛うじて首筋を狙った刺突を避けたが、頬から血が滴り落ちた。

 男は、そのままの勢いで体を回転させ、遠心力の加わった強烈な横薙ぎを放つ。

 

 それを後ろに飛び退きつつ、血狂いで受け止めた。金属同士がぶつかったとは思えない轟音が響き渡る。そして、男はそのまま手に持つ槍ごと蹴り飛ばしてきた。

 

「ぐっ!?」

 

 ガードしたにもかかわらず、吹き飛ばされる。なんとか空中で一回転して着地するが、腕が痺れている。

 

(なんて馬鹿げた威力だよ)

 

 内心毒づきながらも油断無く構えを取る。

 

「エト、鏡花!俺達で鎧の方をやるぞ!ハジメ達はその竜に集中しろ!ヴェノム、オスカー!ウィル達の保護を頼む!」

 

 俺は、後ろにいるハジメ達に指示を出す。この場にいる全員があの男の実力を感じ取っているようだ。俺の言葉を聞いた面々はそれぞれ動き出した。

 

 鎧の男の腹に渾身の蹴りを入れ、数キロ程飛ばす。それを追って俺、エト、鏡花の三人で追撃する。奴もただやられるつもりはないようで、手に持った槍を振るい牽制してくる。しかし、そんなものは無視し、一気に距離を詰める。

 

 まずは、エトが拳を繰り出す。が、それはあっさりと受け止められてしまう。続けて繰り出された回し蹴るも同じように止められる。そこで俺と鏡花が同時に攻撃を行う。俺の刀による斬撃と、鏡花の短剣による攻撃を同時に行う。だが、それも簡単に避けられてしまい、逆にカウンターを食らってしまう。俺と鏡花は、即座に距離を取り、体勢を立て直す。

 

「……やっぱり恭弥と同じ戦闘スタイル」

「あぁ、そうだな」

 

 カウンターに重きを置いた戦闘スタイルに槍の欠点さえも生かす技量……そして何よりも鏡花にだけは反撃していない。

 

「……私には興味が無いってことかしら」

「いや、違うな……今の恭弥は狂化状態だ、本能で動いているに近い……だからこそお前を攻撃しないんだろうさ」

 

 そう言って今度はこちらから仕掛ける。再び接近戦に持ち込むと、先ほどと同じように攻撃を捌かれ、隙を見て攻撃を仕掛けてくる。だが、それは全て見切っている。

 

 しばらく攻防を続けていると、突然恭弥が頭を抑えて呻き声を上げた。それに気を取られていたせいか、一瞬反応が遅れる。先程よりも獣の様に鋭い動きになった恭弥が突っ込んで来る。しまったと思った時には既に遅く、槍の先端が眼前に迫ってきていた。

 

「っと……カッハハハ!いいねぇ!面白くなって来たぜぇ!」

「まったく……相変わらずの戦闘狂なんですから」

 

 ここまでの強敵を相手するのはかなり久しぶりだ。自然と口角が上がる。

 

「私では貴方達の戦闘にはついていけそうにありませんね……私はハジメ達の援護に行きます」

 

 そう言うと、エトはハジメの方へ駆けていった。これで邪魔は入らないだろう。

 

「こうしてツーマンセルで戦うのは随分と久しぶりだよな、鏡花」

「えぇ、そうね……足引っ張らないでね、坊や?」

「ハッ!ほざけ、小娘が……お前こそ足引っ張んなよ!」

 

 血狂いを納刀して居合の構えをとる。鏡花は左手に短剣、右手に金属糸の付いた手袋を装着した。

 

All right! IT'S SHOW TIME!(さぁ!思う存分楽しもうか!)

SHALL WE DANCE?(踊り明かしましょう?)

 

 お互い不敵な笑みを浮かべながら挑発すると、恭弥は再び襲いかかってきた。恭弥は、今までとは比べ物にならない程の速さで突きを放ってくる。それを紙一重で避け、すれ違いざまに斬りつけるが、ガキンッという音と共に弾かれる。

 

「硬ぇな」

「そうね……でもこれならどうかしら?」

 

 鏡花が指を動かすと、金属糸が蛇のようにうねる。そしてそのまま恭弥の腕に絡みついた。恭弥は、それを強引に引き千切る。その瞬間、俺は恭弥の懐に入り込み、抜刀術を放つ。紅い刃が恭弥の首元に迫る。それを恭弥は槍の石突部分で受け止めた。そのまま槍を振り上げ、俺の身体を吹き飛ばした。

 

「いいねぇ!そう来なくちゃな!」

「えぇ、そうね……It is the beginning of a wonderful time!(楽しい時間はこれからよ!)

 

 そこから先は戦いというよりも、演武のようなものだった。お互いに相手の攻撃を受け流し、時に弾き、時に避ける。そして時折放たれる一撃必殺の攻撃をギリギリのところで回避する。

 

「フッ!」

「シッ!」

 

 俺の斬撃に合わせて鏡花の蹴り技が決まる。その衝撃で恭弥の槍が大きく逸れた。俺はそのまま恭弥の心臓目掛けて刺突を放つ。しかし、それは男の槍によって防がれてしまった。

 

「カハッ!?」

「零斗!」

 

 俺の腹部に強い痛みを感じる。恭弥の槍が俺の腹を貫通していた。恭弥はそのまま槍を引き抜こうとする……が、そんな事はさせない、千載一遇のチャンスだ。槍を掴み、思い切り握る。

 

 俺の腹からは大量の血液が流れ出ている。だが、それでも構わない。このまま力任せに引き抜くつもりらしいが、そんな事をさせるわけがない。

 

「つーか……いい加減に目ェ覚ませ、こんのインテリヤクザ!」

 

 恭弥の頭を引き寄せ、頭突きを入れる。ビシッと音を立てて鎧に罅が入る。恭弥が怯んだ隙に、槍を手離す。

 

「目ェ覚めたか?」

 

 恭弥は膝を着き、槍は地面に転がった。恭弥はよろめきながらも立ち上がる。だが、どうやら限界が来たようだ。血を流し過ぎたのか?それとも狂化の影響なのかは分からないけど、もうフラフラだ。俺は鏡花に支えられながら立ち、恭弥に向き合う。

 

「……恭弥、目ェ覚めたか?」

 

 もう一度聞くと、恭弥は無言で貫手を放ってきた。それを受け流すと、次は回し蹴りを放ってきた。俺は、それを屈んで避け、足払いをかける。バランスを崩した恭弥はその場に倒れ込んだ。

 

「てめぇこの野郎!あぶねぇだろ!?」

「……のだ……」

「あぁ?」

「ボクのだぞ!」

 

 恭弥はそう叫びながら起き上がる。そして、再び襲ってきた……バリバッリに狂化状態じゃねぇか!

 

「いい度胸だな、てめぇ!その余裕ぶっこいたツラ粉砕してやるよ!」

 

 恭弥の攻撃を避けつつ、カウンターで攻撃を入れていく。俺と恭弥の様子を見て鏡花は呆れた様な表情をして眺めてくる。

 

「まったく……まるで子供の喧嘩じゃない」

 

 そう言いつつも鏡花も楽しそうだ。それからしばらく攻防を続けていると、突然恭弥の動きが変わった。先ほどまでの不規則な動きではなく、しっかりと俺の攻撃を捌いているのだ。

 

「とっと……正気に戻らんかい!こんのど阿呆!」

 

 恭弥の拳を避けて、顎に掌底を叩き込む。すると、ガクンと崩れ落ちた。

 

「今度こそ目ェ覚めたか?」

「……あぁ、すまない事をした」

 

 そう言って恭弥は大の字のまま答える。鎧が粒子となって消えていく。どうやら正気に戻ったようだ。

 

「大丈夫なのか?」

「あぁ、問題ないさ。それより君の方が重傷だろ?」

 

 恭弥はそう言いながら立ち上がり、手を貸そうとしてくる。だが……

 

 バチン!「…………」

「……」

 

 乾いた音が鳴り響く。恭弥は驚いた表情をしている。それもそうだ、いきなり頬を叩かれたんだから。

 

 そして、目の前には涙を流す鏡花の姿があった。

 

「……本当に……心配してたのよ……バカ」

「すみません……でももう大丈夫です、ありがとう、鏡花」

 

 そう言って恭弥は優しく抱きしめる。なんだか見てるこっちまで恥ずかしくなってきたな。まぁ、とりあえず一件落着ってところか? 鏡花はしばらく泣いていたが、落ち着いたのか、ゆっくりと離れる。

 

「……ごめんなさい」

「いえ、私も少しやり過ぎました」

 

 恭弥はこちらを向いて深々とお辞儀をする。

 

「迷惑をかけてすまなかった」

「気にしなくていいさ、お前さんにも色々事情があるみたいだし、それに……」

「それに?」

「なんでもねぇよ、ハジメ達と合流するぞ」

 

 俺はそう言うと、立ち上がり、ハジメ達の居る方へ歩き出す……と思ったのだが、身体に力が入らない。そのまま、地面へと倒れ込んでしまった。

 

「……悪い、運んでくれ」

「フフフ……はいはい、よっいしょと」

 

 恭弥に担ぎあげられてハジメ達の居る方に向かう。




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