ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょと、│ᐛ )۶ハロお馴染みの零斗さんです」
「ティオ・クラルスじゃ!よろしくの」
「エトです」

「前回はティオがハジメにフルボッコにされてたな……ケツパイルはちょっと引いたけどな」
「あれは新感覚じゃた……」
「………………」

「今回は戦闘準備回だ……楽しんでくれ」

「「「諸君……戦争は好きか?」」」



諸君……戦争は好きか?

 Side 零斗

 

「おい、バカ!恭弥に運転任せたの誰だよ!?」

「知らないわよ!恭弥が勝手に運転席に座って……きゃァァ!」

 

 道無き道を猛スピードで下る魔道四輪。整地機能が追いつかないために、天井に磔にしたティオにはひっきり無い衝撃を、荷台の男子生徒にはミキサーの如きシェイクを与えていた。

 

「お前、本当に運転免許持ってんだよな!?」

「問題ない!私は騎乗スキル持ちだ、この世界に乗りこなせない物は無い!」

「バッカ!そっちがke……言ったそばから突っ込んでんじゃねぇー!」

 

 物理法則に叛逆してんじゃねぇよ!

 

 

 

 ────────────────────────

 

「……二度と君には運転させない……絶対に」

「すまない……久しぶりなもので少々興奮していた」

 

 あの後も、恭弥が猛スピードで帰り道を爆走し、山脈の麓からウルの町まで戻ってきた。戻ってくる際、デビッドたち騎士連中に遭遇したが、無視して町まで走ってきたのだ。愛ちゃんが怒ったのは言うまでもない。

 

 言うまでもなく全員がグロッキー状態でとんでもねぇ地獄絵図になっている。何名かは気絶してしまった……絶対に運転させない。

 

 ちなみに、車体に括りつけられたティオが、ダメージの深い体を更に車体の振動で刺激され続け恍惚の表情を浮かべていたのだが、愛ちゃんも騎士達も見なかったことにしたらしい。

 

 更に言えば、この後町に着いた際、ティオの醜態を知ったユエは、「……これ、竜人族?」と僅かにショックを受けたような表情になった。北の山脈地帯で初めて竜化を解いたティオを見たときから微妙な心境だったのだが、どうやら痛みで〝感じている〟らしいティオの姿に、竜人族に抱いていた憧れと尊敬の気持ちが幻想の如くサラサラと砕けて消えてしまったようである。

 

「とりあえずは町長に報告とギルド支部長に協力を要請……いや、ギルドの方は必要無いですね」

「信じて貰えるかな……」

「大丈夫だろ、なんたって『豊穣の女神』様が報告するんですから」

「な、なな、なんでそれを知ってるんですか!?」

 

 愛ちゃんをからかいながら、町長のいる場所へ歩いていく。役所に到着して、現状を簡潔に説明すると騒然とし始めた。ウルの町のギルド支部長や町の幹部、教会の司祭達が集まっており、喧々囂々たる有様である。皆一様に、信じられない、信じたくないといった様相で、その原因たる情報をもたらした愛子達やウィルに掴みかからんばかりの勢いで問い詰めている。

 

「ハジメ、ウルを取り囲む様に外壁を錬成で作成してください……恭弥は現在の魔物の場所と進行速度を逐一報告してください、それ以外の方達は住民の避難をお願いします」

「貴様!勝手にしき……」

「こんな状況で貴方達が冷静な判断と提案が出来ますか?そもそも何名かは逃げる算段をしていますよね?」

「!?」

 

 あら、カマ掛けただけなのに当たっちた……まぁ、こんな絶望的な状況だもんな。

 

「……総員行動開始……迅速に、そして的確に行いなさい」

「「「「了解!」」」」

 

 ──────────────────────

 

 翌日の早朝、ウルの町には昨夜までは存在しなかった〝外壁〟に囲まれて、異様な雰囲気に包まれていた。

 

「中々いい仕事じゃないか、ハジメ……これなら完全な要塞都市でも作れんじゃね?」

「僕の錬成範囲が半径六メートル位で限界だから、これ以上は無理だよ……」

「ま、鍛えればもうちょい拡がるかもな……恭弥、現状はどんなもんだ?」

『……後四十分くらいで姿が見える様になる筈だ……距離は約五kmだ』

 

 現状、俺らはハジメの作った外壁の上に居る。町の住人達には、既に数万単位の魔物の大群が迫っている事が伝えられている。

 

 当然、住人はパニックになった。町長を始めとする町の顔役たちに罵詈雑言を浴びせる者、泣いて崩れ落ちる者、隣にいる者と抱きしめ合う者、我先にと逃げ出そうとした者同士でぶつかり、罵り合って喧嘩を始める者。明日には、故郷が滅び、留まれば自分達の命も奪われると知って冷静でいられるものなどそうはいない。彼等の行動も仕方のないことだ。

 

「零斗君、準備はどうですか?何か、必要なものはありますか?」

「問題ありませんよ、愛ちゃん」

 

 愛ちゃんの頭を撫でながら答える、愛ちゃんは撫でられて気持ちいいのか目を細めている。俺の様子が気に食わないのか……あ、誰だけか?オッサンが食ってかかってくる。

 

「レイト君、君は愛子が……君自身の恩師が話しかけているのになんです?その態度は……本来ならば、貴方の持つアーティファクト類の事や、大群を撃退する方法についても詳細を聞かねばいけないところを見逃してやっているのは、愛子が頼み込んできたからですよ?少しは……」

「チェイスさん。少し静かにしていてもらえますか?」

「……承知したしました……」

 

 しかし、愛ちゃんに〝黙れ〟と言われるとシュンとした様子で口を閉じる。その姿は、まるで忠犬だ。亜人族でもないのに、犬耳と犬尻尾が幻視できる。つーか何下の名前で呼んでるわけ?本当に殺っちゃうよ?

 

「さて、黒ローブの少年ですが……恐らくは清水君でしょうね」

「……彼はどうするつもりなんですか?」

「そうですね……理由を聞いてから判断すると思いますよ」

 

 なんでこんな面倒な事をしてんのか小一時間問い詰めたい……こっちの負担を考えて欲しいもんだよ、全く……つーかパツキンのオッサンが見当たらないだよなぁ……ま、いっか。

 

「ふむ、レイト殿。主に話が……というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」

「ティオさんですか……大体は予想付きますが、どうぞ」

「えっとじゃな、お主は、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けて、また旅に出るのじゃろ?」

「えぇ、そうですが……」

「うむ、頼みというのはそれでな……妾も同行させてほし……」

「ハジメに聞いてください、私には決めかねますから」

 

 ……この変態だけは相手にしたくない、絶対にしたくない……のでハジメに押し付ける。

 

「……えっと、ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど遠慮して欲しいかなぁ……なんて」

「よ、予想通りの即答。流石、ご主……コホンッ! もちろん、タダでとは言わん! これよりお主を〝ご主人様〟と呼び、妾の全てを捧げよう! 身も心も全てじゃ! どうzy」

「結構です!」

 

 両手を広げ、恍惚の表情でハジメの奴隷宣言をするティオに、土下座でもしそうな勢いで断るハジメ。それにまたゾクゾクしたように体を震わせるティオ。頬が薔薇色に染まっている。どこからどう見ても変態だった。周囲の者達も、ドン引きしている。特に、竜人族に強い憧れと敬意を持っていたユエの表情は、全ての感情が抜け落ちたような能面顔になっている。

 

「そんな……酷いのじゃ……妾をこんな体にしたのはご主人様じゃろうに……責任とって欲しいのじゃ!」

 

 ……え?ハジメそんな事してたの?まさかそういう趣味が……これは白崎に伝えて置かないとな。

 

「ハァハァ……ごくりっ……その、ほら、妾強いじゃろ?里でも、妾は一、二を争うくらいでな、特に耐久力は群を抜いておった。じゃから、他者に組み伏せられることも、痛みらしい痛みを感じることも、今の今までなかったのじゃ」

 

 ポツポツと語り出すティオ……もう嫌な予感しかしない……

 

「それがじゃ、ご主人様と戦って、初めてボッコボッコにされた挙句、組み伏せられ、痛みと敗北を一度に味わったのじゃ。そう、あの体の芯まで響く拳! 嫌らしいところばかり責める衝撃! 体中が痛みで満たされて……ハァハァ」

 

 一人盛り上がるティオだったが、彼女を竜人族と知らない騎士達は、一様に犯罪者でも見るかのような視線をハジメに向けている。客観的に聞けば、完全に婦女暴行である。「こんな可憐なご婦人に暴行を働いたのか!」とざわつく騎士達。

 

「つまりはハジメが新しい扉を開いてしまった……っと」

「その通りじゃ! 妾の体はもう、ご主人様なしではダメなのじゃ!」

「もうやだぁ……」

 

 若干涙目になっているハジメ……うーん、どっかの水晶鈴がいたら襲い掛かりそうだな。

 

「それにのう……」

 

 ティオが、突然、今までの変態じみた様子とは異なり、両手を自分のお尻に当てて恥じらうようにモジモジし始める。

 

「……妾の初めても奪われてしもうたし」

 

 おっと?空気が変わったぞぉ!これはこれは……修羅場になりそうだねぇ。ハジメは頬を引き攣らせながら「そんな事していない」と首を振る。

 

「妾、自分より強い男しか伴侶として認めないと決めておったのじゃ……じゃが、里にはそんな相手おらんしの……敗北して、組み伏せられて……初めてじゃったのに……いきなりお尻でなんて……しかもあんなに激しく……もうお嫁に行けないのじゃ……じゃからご主人様よ。責任とって欲しいのじゃ」

 

 お尻を抑えながら潤んだ瞳をハジメに向けるティオ。

 

「……ハジメ、諦めなさい」

「イヤだ……イヤだ……」

「ハジメ、この手の変態は泥水を啜ってでも付いて来ます……ささっと諦めなさい」

 

 おれ、しってる、このじんしゅ、めんどくさい……前世でも今世でもこの手の連中はかなり相手してるから、もう対処法が分かるだよ……諦めればいいのさ()

 

「……もう好きにして」

「お? おぉ~、そうかそうか! うむ、では、これから宜しく頼むぞ、妾のことはティオで良いからの! ふふふ、楽しい旅になりそうじゃ……」

 

 死んだ魚の目になったハジメに、嬉しそうに笑うティオ。それに護衛隊の騎士達が憤り、女子生徒達が蛆虫を見る目をハジメに向け、男子生徒は複雑ながら異世界の女性と縁のあるハジメに嫉妬し、愛子が不純異性交遊について滔滔と説教を始め、何故かウィルが尊敬の眼差しをハジメに向ける。

 

『零斗、来たぞ。魔物の総数は約11万、接敵まで後三十分だ』

「了解……総員、準備を怠らない様に」

 

 不安そうな表情をして、ローブの端を掴んでくる愛ちゃん。

 

「大丈夫ですよ、幾ら数が増えても問題ありませんから。予定通り、万一に備えて戦える者は〝壁際〟で待機させてください。まぁ、出番はないと思いますけどね」

「わかりました……君をここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが……どうか無事で……」

 

 愛子はそう言うと、護衛騎士達が「ハジメに任せていいのか」「今からでもやはり避難すべきだ」という言葉に応対しながら、町中に知らせを運ぶべく駆け戻っていった。残ったのは、俺達以外には、ウィルとティオだけだ。

 

 ウィルは、ティオに何かを語りかけると、ハジメに頭を下げて愛子達を追いかけていった。疑問顔を向けるハジメにティオが苦笑いしながら答える。

 

「今回の出来事を妾が力を尽くして見事乗り切ったのなら、冒険者達の事、少なくともウィル坊は許すという話じゃ……そういうわけで助太刀させてもらうからの。何、魔力なら大分回復しておるし竜化せんでも妾の炎と風は中々のものじゃぞ?」

「そうかい、んじゃ期待はしないでおくわ」

 

 自己主張の激しい胸を殊更強調しながら胸を張るティオに、ハジメは無言で魔晶石の指輪を渡した。疑問顔のティオだったが、それが神結晶を加工した魔力タンクと理解すると大きく目を見開き、ハジメに震える声と潤む瞳を向けた。

 

「ご主人様……戦いの前にプロポーズとは……妾、もちろん、返事は……」

「そういうのじゃありません!魔力の補給様に使ってください!」

「ツンデレだねぇ、ハジメは……」

「……なるほどこれが黒歴史」

 

 ユエがぽつりと呟く、思考パターンが変態と同じであることに嫌そうな顔で肩を落としている。

 

「ハジメ、予定通りにお願いします」

「……本当にやるの?」

 

 こっちの方が後々楽になるし、面白いからね、やるに決まってんじゃん!

 

 ハジメが錬成で、地面を盛り上げながら即席の演説台を作成する。全員の視線が自分に集まったことを確認し、声を張り上げる。

 

「聞け! ウルの町の勇敢なる者達よ! 私達の勝利は既に確定している!」

 

 いきなり何を言い出すのだと、隣り合う者同士で顔を見合わせる住人達。そんな彼等を尻目に演説を続ける。

 

「なぜなら、私達には女神が付いているからだ! そう、皆も知っている〝豊穣の女神〟愛子様だ!」

 

 その言葉に、皆が口々に愛子様? 豊穣の女神様? とざわつき始めた。護衛騎士達を従えて後方で人々の誘導を手伝っていた愛ちゃんがギョッとしたようにこちらを見る。すまんな愛ちゃん、利用させて貰うぜ……

 

「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない! 愛子様こそ! 我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である! 私は、愛子様の剣にして盾、彼女の皆を守りたいという思いに応えやって来た! 見よ! これが、愛子様により教え導かれた私の力である!」

 

 普通に殺ってもいいんだが……もうちょいインパクトがある方が良いよな。

 

「"冥府の扉は開かれ 供物を捧げん 輪廻の扉は閉じられ 罪人は赦されず 己が死をもって贖罪とせん 死を忘れること無かれ(メメント・モリ)"」

 

 極光が先陣の魔物達を包み込む……光が収まり、視界がハッキリとした時……魔物は塵一つ残す事無く消滅していた。

 

 魔物を駆逐し終わり、悠然と振り返る。そこには、唖然として口を開きっぱなしにしている人々の姿があった。

 

「愛子様、万歳!」

 

 最後の締めに愛ちゃんを讃える言葉を張り上げた。すると、次の瞬間……

 

「「「「「「愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳!」」」」」」

「「「「「「女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳!」」」」」」

 

 ウルの町に、今までの様な二つ名としてではない、本当の女神が誕生した。どうやら、不安や恐怖も吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせ愛子を女神として讃える雄叫びを上げた。

 

「……零斗、さすがにやり過ぎじゃない?」

「三分の一くらい消えましたよ?どうなってんです?」

 

 口々に俺に『やり過ぎだ』と言ってくるハジメ達。それを横目に町の方に視線を向けると、遠くで、愛ちゃんが顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。その瞳は真っ直ぐに俺に向けられており、小さな口が「ど・う・い・う・こ・と・で・す・か!」と動いている。

 

 まぁ、色々と理由はあるが、面倒事を圧殺する位の発言権を持つ人物が欲しかった所だったし、俺ら個人の実力に恐怖や敵意を持たれにくくするためってのが理由になるかな。

 

「恭弥、スナイパーで援護をお願いします。ハジメ達は散らばって魔物達の掃討を……では、各員、戦闘開始!」

「「「「了解!」」」」

 

 さぁ、諸君戦争をしよう!大戦争を!!一心不乱の大戦争を!!

 




FGO……スカディに1万突っ込んだけど……ワルキューレが一体だけって……(´;ω;`)
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