ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょと、ハロ│ᐛ )۶お馴染みの零斗さんだ」
「ハジメでーす」
「久しぶりの登場!幸利だ」

「前回は幸利のスパイ工作とデビットの抹殺だったな……つーか、俺がティオの記憶読んでなかったらどうするつもりだったんだ?」
「それは……決めてなかったな」
「え?アホなん?」
「……返す言葉もございません」

「ハァ……今回はウィル坊を連れてフューレンまで戻る話だ……楽しんでくれ」

「「「再びフューレンへ!」」」


再びフューレンへ

 Side 零斗

 

 ウルの町での一件から、一日が経過した。今はウィル坊を連れてフューレンまで移動する所……なんだが……

 

「グッ……うぅぅ……」

「どうしました?さっさと来なさい」

 

 本来ならもう出発してる時刻なんだが……ブリーゼのエンジンに異常があったみたいで修理が必要らしく、待っている間は暇だからウィル坊に訓練を付けることにした。

 

「まだやれますね?」

「はい!」

 

 うむ、気合い十分だな。才能も技量も十分ある……この子も磨けば光る原石みたいだな。

 

 そんな事を考えながら俺はウィル坊との訓練を再開する。ちなみに俺とウィル坊以外のメンバーは全員町の観光に出掛けている。なんでもこの町には有名な観光地があるらしい。

 

「そこ!足下がお留守になっていますよ!」

「はいッ!!」

 

 ────────────────────

 

 しばらくすると、ようやくエンジンの修復が終わったのか、ハジメが疲れきった顔をして来た。

 

「やっと終わった……」

「お疲れ様です、ハジメ。ところでどこの辺りに異変が?」

「エンジンの一部がちょっと砕けてたからそこの修理だけだったよ」

 

 そう言うとハジメは運転席に乗り込む。観光を終えたユエ達も戻ってきたし、そろそろ出発するか……

 

「ちょっと待ってくださいー!」

 

 声の方を見ると、町の入り口に愛ちゃん達がいた。その後ろにはチェイス達……護衛騎士の姿もある。

 

「ハジメ、町の外で待っていてください」

「……わかった。じゃあ後で」

 

 そう言ってブリーゼから降り愛ちゃん達の元へ歩み寄る。ハジメは指示通り町の外に出て行った。

 

「どうかしたんですか?愛ちゃん」

「いえ、昨日助けてもらったお礼を言おうと思いまして……本当にありがとうございました」

「別にいいですよ。あれくらい大したことないですし」

「それでも、私達は嬉しかったのです。あの時あなたがいなければきっとこの町は滅んでいたでしょう」

 

 まぁ、作戦とはいえ、あんな魔物の大群に襲われたらひとたまりもなかっただろうな。そして愛ちゃんの後ろに控えていたチェイスと目が合う。チェイスは軽く会釈をして来たのでこちらも返す。

 

「零斗君、一つだけ聞かせてください」

「何ですか?」

「貴方はクラスメイトであろうとも……友人であろうとも裏切り者なら必ず殺すと言いましたよね?」

「はい」

「それはつまり、敵対する者には容赦しないということでしょうか?」

 

 ……随分と鋭い質問をするんだな。でも答えなんて決まってる。

 

「もちろんです。たとえ誰であっても裏切るような人間なら私は容赦なく殺します」

 

 そう答えると、クラスメイト達が目を見開き、そして愛ちゃんは悲しげに目を伏せた。

 

「私には……いえ、私達には何故貴方がそんなにも『寂しい生き方』を強いられているかは分かりません」

「…………」

「でもこれだけは言わせてください。もし何か困ったことがあったら遠慮なく私達を頼って下さい。私達はクラスメイトです。仲間です。友達です。それが例えどんなことがあっても変わることはありません」

 

 真っ直ぐな瞳だった。俺の目を見て、はっきりと自分の意思を伝えるようにそう言った。俺より年下の女の子なのに、凄く強い意志を感じる。ふっと頬が緩む。今までこういう経験は無かったけど、悪くないかもな。

 

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」

「えぇ!任せてください!」

 

 そう言って、愛ちゃんが微笑みかけると他の皆も笑顔になる。その様子を見ていたチェイスが口を開いた。

 

「先程から気になっていたのだが、愛子と随分と距離が近い様だが?一体どういう関係なのだ?」

「え!?わ、私達の関係ってそんなに深いものじゃないですよ!!ただの教師と教え子です!!」

 

 慌てて否定する愛ちゃんだったが、逆に怪しい反応に見えるぞ……今、ちょっと悪い事思い付いちった……早速実行としますかね!

 

「愛ちゃん、嘘はいけませんよ?」

「へっ!?う、嘘なんかついてないですよ!!」

 

 真っ赤になりながら反論するが説得力がないな。さてどうなるかな? 俺がニヤリと笑うと、愛ちゃんの顔がどんどん赤くなっていく。

 

「うぅ~!!」

「あはは、冗談ですよ。そんなに怒らないでください」

「もう!零斗君のバカ!!」

 

 ポカポカと横腹の辺りを殴ってくる愛ちゃん。

 

「それで……結局お前と愛子の関係はなんなんだ?」

「……こういう関係ですよ」

 

 俺は腕を伸ばして愛ちゃんを抱き寄せる。突然の事に驚く愛ちゃんを無視してそのままキスをした。

 

「んっ!?」

 

 一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに受け入れてくれる。唇から伝わる感触は柔らかく、甘い匂いが鼻腔を満たす。しばらくしてからゆっくりと離れると、顔をトマトの様にした愛ちゃんがいた。

 

「彼女は私の物ですから……渡しませんよ?」

「き、きき、貴様ァ!」

 

 激昂して剣を抜き放つチェイスとそれを必死に止める騎士達。それを横目に愛ちゃんの頭を撫でてやる。

 

「あっ……」

「可愛いですね。ではそろそろ行きますのでこれで失礼します」

 

 そう言ってその場を後にしようとすると、後ろから服を引っ張られた。

 

「あ、あの……また会えますか?」

「ええ、勿論ですよ……再会した時はゆっくりとお茶でもしましょう」

「そう……ですか」

 

 嬉しそうに呟く愛ちゃん。さっきまでの強気な態度はどこに行ったのか、今は恋する乙女の様な雰囲気だ。

 

「あぁ、それと……胸の所よく見て見てくださいね」

「?胸ですか……ふぇ!?」

 

 愛ちゃんがちらりと胸元を除くと、昨日付けたキスマークがくっきりと残っていた。まぁ、他の所にも付けてるんだけね。

 

「フフフ……では、私はこの辺りで失礼しますね。次は途中でトバないで下さいね?」

「ひゃ、ひゃい……♡」

 

 ─────────────────────────

 

 北の山脈地帯を背に魔力駆動四輪が砂埃を上げながら南へと街道を疾走する。何年もの間、何千何万という人々が踏み固めただけの道であるが、ウルの町から北の山脈地帯へと続く道に比べれば遥かにマシだ。サスペンション付きの四輪は、振動を最小限に抑えながら快調にフューレンへと向かって進んでいく。

 

 もっとも、前の座席で窓を全開にしてウサミミを風に遊ばせてパタパタさせているシアは、四輪より二輪の方が好きらしく若干不満そうだ。何でも、ウサミミが風を切る感触やハジメにギュッと抱きつきながら肩に顔を乗せる体勢が好きらしい。

 

 運転はハジメに代わっている。助手席はユエだ。後部座席に、他のメンバーと俺が乗っている。

 

(寂しい生き方……ねぇ)

「……どうかしましたか、零斗。先程から何か考え込んでいるようですが……」

「昨日の疲れが少し残っているだけですよ……気にしないで下さい」

 

 適当にはぐらかしてからエトの頭を撫でる。にしても『寂しい生き方』と言われとはねぇ……まぁ、傍から見ればそう感じるかもだよなぁ。人を殺すことに躊躇いは無いし、友人であったしても敵となれば殺す事も辞さないしな。

 

「……そうですか。なら、私の膝を貸すので少しの間寝ていてください」

「遠慮しておきます」

「休んでください」

「ですから遠ry「休・ん・で」……はい」

 

 エトの膝に頭を乗せて瞼を閉じる。眠気が一気に押し寄せてくる、何とか堪えようとするが抵抗虚しく、意識が解けて行く。

 

 

 ●○●

 

 Side エト

 

「…………」パタリ

「案外早く寝てしまいましたね」

「よっぽど疲れてたみたいですね」

 

 零斗の頭を軽く撫でながらブランケットを取り出して、零斗の身体に掛ける。

 

「にしても、零斗さんって何でも出来ますよねぇ……」

「ん、確かに」

 

 シアさんの呟きにユエさんが同調する。確かに零斗は何事もそつなくこなして、完璧にやってのける。

 

「……あまり無理はしていけませんよ」

 

 零斗に言い聞かせる様に語りかけて、手を握る。

 

「はぁ~、また二人の世界作ってます……何時になったら私もあんな雰囲気を作れるようになるのでしょう……」

「エトさん、いい雰囲気にするコツ等をご教授してください」

 

 シアさんとアルテナさんが、何故かキラキラした目でこちらを見つめている。何故そんな目を向けられるのか分からないけど……取敢えずアドバイスをしてみる事にしようかな。

 

「ゥン……スゥ……」

 

 穏やかな表情を浮かべながら眠る零斗を見て、自然と笑みをこぼしてしまう。こんな時間がずっと続けば良いのに……

 

「……そういえば、ハジメ君。シアさんとアルテナさんにご褒美をあげる件はどうなったんですか?」

 

 ふと思い出した事を口にすると、ハジメ君は気まずそうな顔をして視線を逸らす。

 

「その様子だと、思い付かなった様ですね」

 

 呆れた様な口調で言うと、ハジメ君は苦笑いしながら頬を掻いた。

 

「……この際、デートで良いのではないですか?」

 

 そう言うと、シアさんが飛びつくように食いついてきた。

 

「デ、デー卜!それが良いですぅ!」

「わ、私もですか!?今回何もお力添え出来てませんよ?!」

「……では、ライセン大迷宮を攻略した時のご褒美と言う事で良いのでは無いですか?」

「で、でも……」

「アルテナちゃん!ここでいい雰囲気になれば(ゴニョゴニョ)」

「そ、そんなハレンチな!」

 

 耳まで赤くして俯いてしまうアルテナさん。ハジメ君は片手でアルテナさんの頭を撫でながら言う。

 

「そんなに遠慮する事ないよ?僕からのお礼だと思って一緒に行こ?」

「ひゃい……」

「絶対ですよぉ〜!」

 

 シアさんは満面の笑顔でハジメ君の腕にしがみついている。それに嫉妬しているのか、ユエさんがムッとした顔で二人の間に割って入った。

 

 そんな微笑ましい光景を眺めながら、零斗の頭を撫で続ける。あぁ……ホントに幸せだなぁ……




ちょっと私生活がドタバタしてたので遅れてしまいました。感想お待ちしております。

5月8日 ちょっこと修正&改変
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