ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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話がある程度出来たので投稿します。不定期な更新になりますが、号了承のほどお願いします。


序章
ありふれた日常は崩壊する


 暗闇の中、急速に小さくなっていく光。

 

 無意識に手を伸ばすも掴めるはずもなく、途轍もない落下感に絶望しながら、少年──南雲ハジメは恐怖に歪んだ表情で消えゆく光を凝視した。

 

 ハジメは現在、奈落という表現がぴったりな大溝を絶賛落下中なのである。目に見える光は、地上の明かりだ。

 

 ダンジョンの探索中、巨大な大地の裂け目に落ちたハジメは、遂に光が届かない深部まで落下する中で走馬灯を見た。

 

ハジメェェエェェエッ!!! 

 

 不意に上から声が聞こえる。それにはっと我を取り戻して、ハジメは自分に近づいてくるそれを見た。

 

 黒色のローブに身を包み、その背には蝙蝠のような翼が生えたその姿はまるでアニメの黒幕を思わせる。

 

 黒幕を思わせる姿をした自らの親友は手を伸ばす。

 

「零斗!!」

 

 親友の名前を呼びながら、必死に手を伸ばし、そしてついには手を掴んだ。

 

 それに安心したのか、零斗と呼ばれた青年はほっと表情を緩める。

 

 そうして、二人仲良くゴゥゴゥと風を切りながら落ちる中、零斗とハジメは頭の中で共通のことを思い浮かべていた。

 

 

 

 日本人である自分が、ファンタジーという言葉で表すにはあまりにも残酷な世界に来るまでの、経緯を。

 

 ●◯●

 

Side 零斗

 

 

 月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと多くの人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 

 とまぁ真面目な脳内語りはいいとして。やぁ諸君初めましてかな?私の名前は湊莉零斗という以後お見知り置きを。さて今私の置かれている状況を説明しようか、今は全力で学校に向かっている途中だ。ん?なんでそんな状況か?ただ寝坊しただけだよ。そんなことやっている間に教室に着いた。時間もあまりないので中に入る、すると見覚えのある人物達が見える。

 

「だから──」

 

 あーもう最悪だよ。俺の嫌いな男がいるよ。

 

「そこを退いてくれ、天之河」

「あぁ、すまない…って零斗か。いきなりなんだその態度は?」

「君がそこに居るのが悪いのだろう、そこは私の席だ早く退いてくれ」

 

俺が溜息混じりに話すと天之河は血相を変え、何かを言おうとしたが背後からの声で止まる。

 

「光輝!先生が呼んでるぜ!」

「ッ!あぁ、龍太郎分かった今行く。後で覚えておけよ!」

 

 そんな小物臭いセリフを吐き捨て去っていった。あーもう朝から最悪の気分だよ……まったく。

 

「おはよう、零斗今日は珍しく遅かったね」

「よっす!零斗今日は何かあったのか?」

「あぁ。おはようハジメに龍太郎。いえ、少し寝坊してしまいましてね」

「零斗が寝坊なんて本当に珍しいね」

 

 挨拶をして来たのが私の親友の南雲ハジメと最近仲良くなった坂上龍太郎だ。

 

「っと、ハジメこれ返しておきますね、今回も面白かったですね」

「それならオススメして良かったよ!」

「ハジメくんその本何?」

 

 俺がハジメにラノベを渡していると、それを横からひょいと覗く少女が。見慣れた少女である。その少女は名を白崎香織という学校で四大女神と言われ、男女問わず絶大な人気を誇るとてつもない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげであり、スっと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。まるで黄金比を体現したような美貌だが、〝刀華〟の方が絶対可愛い。異論は認める! 

 

「おはようございます、白崎さん」

「あ、おはよう零斗君!今日珍しく遅く来たね」

「えぇまあ。どうします?何時もののハジメと同じように注意しますか?」

「ふふっ、そんなことしないよ?」

 

 え?話し方がこちらと会話の時で違う?今更だね、まぁただ猫を被っているだけだよ。いつもは巫山戯ているからねこの口調で。

 

「ねぇねぇ、ハジメ君。こんど」

 

少しの間雑談をしていると、白崎達の後ろから数人の男女がこちらに歩み寄ってくる。

 

「あ、おはよう恭弥さん、柊人さん、刀華さん、鏡花さん、悠花さん、八重樫さん、幸利くん」

「おはようございます皆さん。ハジメ、遠藤くんのことを忘れていますよ」

「え?あ!ごめん!遠藤くん!」

「いいんだよハジメいつもの事だから(泣)……でも零斗よく気づいたな」

「そんな凄いことはしていませんよ? 挨拶を返しただけですし」

 

 挨拶をして来たのが俺とハジメの親友で幼馴染である、恭弥、柊人、刀華、鏡花、悠花の六人と高校に入ってから仲良くなった雫と幸利、浩介の3人だ。

 

 それまで向けられなかった嫉妬や怒りの視線がハジメに集中するが俺がお返しに殺気混じりの威圧をするとあれよあれよと視線が消える。この程度の殺気で怖気付くとか平和ボケし過ぎだろ。

 

 そもそもただの一介のオタクであるハジメがなぜクラスメイトたちから敵意を向けられ、その原因たる存在である白崎に話しかけられているか。

 

 まず、俺の幼馴染かつ親友であるハジメは世間一般で言う『オタク』だ。創作物、漫画や小説、ゲームや映画と、そういうものが好きである。また、両親もそちら関連の仕事をしているのでなるべくしてなったとも言える。まさにスーパーオタクなのである。別にオタクだからといって、ハジメは本来ならここまで敵愾心を持たれるいわれはない。

 

容姿にしたってイケメンでは無いものの美形の部類に入るだろう、髪は短く切りそろえているし、寝癖もない。体型だって太ってる訳でもないしかといって痩せすぎている訳でもない。だが小学校(強制的に)から俺が鍛えているから細マッチョだ。

 

成績も俺達六人に教え込まれているから学年のトップ層を常にキープしている、運動能力も普通の人が見ればぶっ壊れ性能になっている……が、基本的に〝趣味の合間に人生〟のスタンスで生きているため趣味を優先しがちだが、学校での生活がだらしないわけじゃない。そして見知らぬ人でも助けられる優しさが秘められている。それが、俺の知る南雲ハジメという人間だ。

 

 人間っつーのは面倒なもので、そんなハジメと同じ平凡(一部の人間はそう思っては居ないが)である男子生徒たちは、クラスのマドンナ的存在である白崎や憧れの存在の刀華、モデルで男女問わず人気のある鏡花に話しかけられていることに「なんであいつだけ!」と嫉妬を向けてるわけだ。そう思うなら自分達を磨けばいいものを……

 

 逆に女子生徒たちは白崎のことを応援してる。何故かって? それはハジメの性格だ、何かあれば手伝うしフォローも忘れないため女子は好意的な印象を抱く者が多い。

 

 それに俺は知っている。白崎が〝あの時〟以来ハジメのこと好きなの。ましてやハジメ自身も白崎からの好意に気づいてるけど自分ではつり合わないと心のどこかで思っているらしい。まぁこれからのこの2人の関係の進展に期待しておこう。恋する少年少女の邪魔をするなんてとんでもない!君達もそう思うだろう? 

 

「それではそろそろ……」

 

 今日もいつも通り、ハジメが白崎に会話を切り上げる挨拶をして終わりかと、そう思った時。

 

「おい!零斗!」

 

 面倒なのが帰って来ちまったよ。俺は仏頂面でそいつに振り返る。すると立ち上がったそいつは俺を睨んでいた。天之河光輝。いかにも勇者っぽいキラキラネームのクソ野郎は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった身体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい)。加えて、おそらく俺が世界で一番嫌いな男だ。何故かって?こいつの甘ったるい思想だよ。

 

「おいおい光輝、また喧嘩はやめてくれよ」

「龍太郎の言う通りね」

 

 天之河を宥める様に言ったのは龍太郎と雫だ。彼らは天之河のストッパー役のような立ち位置にいるがその苦労は計り知れない。

 

「ねぇ、無視しないでくれる?零斗」

「あぁすまないね刀華 「だめよ、許さないわ」んむっ!?」

 

 突然、俺の彼女である刀華が唇を奪ってきた。女子どもはきゃーっ!と黄色い声をあげ、男子どもはよくも俺らの女神の刀華さんとぉ……ゆ゛る゛さ゛ん゛!的な感じの目線をよこしてくる。 それから数秒して、ようやく離れる。恥ずかしさで文句を言いたい気分になったが、しかし「ん?」と可愛らしい仕草で見上げてきて、結局何も言えなかった。

 

 ……一度紹介した方が良いだろう。

 

 彼女の名前は西園寺刀華。白崎や雫の親友であり、 ハジメ達の親友で幼馴染。俺の最愛にして最強、最高の彼女だ。ポニーテールにした長い黒髪と、それを纏めている桔梗の花の形をしたレリーフがついているヘアゴムがトレードマークである。ちなみに俺の手作り。

 

 切れ長の瞳は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。175cmという女子にしては高い身長と引き締まった身体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。実際雫の実家である八重樫道場に通っているため剣道等もやっている。

 

 刀華自身、雫と同じ様に小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた2人の美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンが多数いる。まぁ俺もその内の1人ではあるのだか。それは秘密だ。ちなみに、八重樫道場には俺も通っており、その腕は雫以上といったところだ。天之河も通っていたが俺に決闘を申し込んで見事に惨敗してその結果に納得出来なかったのか後ろから斬りかかってきたが師範の虎一さんに止められていた。その結果現在は破門となっている。

 

「あぁ。すまない刀華。おはよう」

「えぇ、おはよう♪ んっ♪」

「むぐっ」

「「「2回目、だとっ!?」」」

 

 こいつらどんだけイチャイチャすりゃ気がすむんだよ。クラスメイトと隣のハジメのジト目がそう言ってる気がした。白崎や雫と同等レベルに人気の高い刀華の彼氏であることに対してまたしても男子生徒の嫉妬の感情が湧くのではないかと言う心配はない。なんでかって? 俺たちの仲は高校入学当時から知れ渡っている。後は俺の容姿もあるのだろう。

 

俺はアルビノで髪が白銀色で瞳は赤と青のオッドアイでかなりのイケメンであまりにも現実離れしているからだろうね。成績も余裕で校内一位を維持しており、十分周りから見ても釣り合っているわけだ。

 

「ご、ごほんっ。そろそろいいか?」

 

 そんなやり取りに水を差すようにゴミの声がする。不機嫌になった俺を刀華がまあまあとなだめ、なんとか会話のできる雰囲気にする。ケッ、腹立たしい。

 

「と、とにかく南雲、さっきも言った通り、いつまでも香織の優しさに甘えないことだ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

「だから光輝くん、私は南雲くんと話したいから話してるんだってば」

「…………ハァ」

 

 そのゴミの発言聞いてか面倒くさそうに溜息をつくハジメ。それを聞いた、俺の中で小さくプチッと何かが切れる音がした

 

 同時に白崎の発言にクラスがざわめき、普段俺がいない時に悪い意味でハジメに絡んでいる檜山とその仲間の四人組は恨めしげな顔をする。が、ちょっくら本気の殺気を多分に含んだ目を向けられるとすぐに目をそらした。弱い。いっそのことそのまま消えてしまえ。

 

 俺は天之河の肩に手を置くと、骨が砕けないギリギリの力で掴みながら無表情で告げる。

 

「天之河、ハジメは1度も白崎に甘えたことはないし、そもそも白崎自身が違うと言っているだろう。いい加減にその自分至上主義のご都合解釈も程々にしておきなさい」

「君には関係の無いことだろう! 俺はただ、やる気のない南雲に注意をしていただけであって──」

 

 プチッ、と何かが切れた。

 

「それが妄想だと言っているんだよ。なぜハジメの生き方を君に強制させられなければいけないんだ?彼には彼の好きなことがあって、それに熱意を向けてるだけだ。君とハジメは違う人間だって、一体何百回何千回言えば分かるんだ君は?」

「零斗」

 

 刀華に名前を呼ばれハッとする。自分の左手を見ると爪が食い込む程に強く握ていたようで皮膚が裂け血が出ていた。直ぐに力を抜き、軽く深呼吸してから天之河の肩に手を置く。

 

「とにかく、気を付けてください。ですが……次はありませんからね

 

 と脅しを掛けながらそう言ったのと同時に、タイミング良いのか悪いのか始業のチャイムが鳴り響いた。それと同時に教師が教室に入って来て、俺はハジメを促して自分の席に向かう。また歯止めが効かなくなったらたまったもんじゃない。担任の方は見飽きたのか、何事もないように朝の連絡事項を伝える。

 

 ふとハジメの方に目線を向けると、雫がこっそりとハジメに向かって謝罪している。あいつも苦労しているな、今度飯でも奢ってやるか。そんなことを考えながら授業を受ける(ハジメも一応成績を維持するために真面目に授業を受けている)

 

 

 ●◯●

 

Side ハジメ

 

 授業のチャイムがなり昼休憩に入った。零斗が鞄から弁当箱を取り出して、僕に手渡してくれる。

 

「ハジメ、これ今日の弁当です」

「いつもありがとう、零斗」

「気にしなくて結構ですよ。私が好きでやっているだけですから」

 

男の僕でもドキッとするくらい綺麗な笑みを浮かべて、さらりとイケメン発言をする零斗。クラス内の女子生徒達からの刺さる視線に気がつかないふりをしながら弁当の蓋を開ける。何となしに教室を見渡すと、購買組は既に飛び出していったのか人数が減っている。それでも僕たちの所属するクラスは弁当組が多いので、三分の二くらいの生徒が残ってた。それに加えて、四時間目の社会科教師である畑山愛子先生が教壇で数人の生徒と談笑していた。

 

 ふと後ろを見ると、八重樫さんが残念そうな顔をしている。なんで零斗は白崎さん達と食べないんだろ。天之河くんが寄ってくるのが嫌とかかな?

 

「君の考えている通りだ、ハジメ。彼女達と一緒にいるも余分な彼も付いて来てしまうからね」

「恭弥さん、ナチュラルに考えていること読まないでくれませんか!?」

 

 いつの間にか近くに来ていた恭弥さんが僕の考えに答える。と言うか、相変わらず零斗は天之河君に対して辛辣だなぁ……僕としても積極的に関わりたくはない人だとは思うけど……

 

「私達、全員同じ意見だよハジメ」

「なんで二人とも僕の考えてる事が分かるの!?心でも読んでるの?!」

「「君が分かりやすすぎるだけだよ」」

 

二人してクスクスと笑いながら言う。零斗はそんな僕らを他所にもくもくと箸を進めている。ここにいる全員マイペースが過ぎるんだよォ……前世でハジケられなかった反動でこうなってるの?あ、ちなみに僕は零斗達の前世のことは知ってるよ……って、誰に話してんだろ。

 

そんなこんなで各自弁当を食べ始めると……

 

「南雲くん珍しいね。教室にいるの。よかったらお弁当、一緒にどうかな?あ、できれば零斗君も一緒に……」

 

 そしてそれは、天使のような笑みとともに現れた。白崎香織と言う名の、劇薬が……

 

「ええ、いいですよ白崎さん」

 

 って!?ちょっと零斗さん!?何言ってるんです!? 

 

「本当に!ありがとう!」

 

 白崎さんは答えを聞くや否や、物凄いスピードで僕の隣に席を付けた。視線が!周りからの視線が痛い!零斗なんてことをしてくれたんだ!と視線を向けると。

 

「……」ニコッ

 

 いや『ニコッ』じゃないよ!助けてよ!?無駄にいい顔しやがって! 

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

 爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く天之河君にキョトンとしている白崎さん。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。と言うか、僕、授業中に寝てないんだけど……

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」

「「「ブフッ…」」」

 

 素で聞き返す香織に思わず零斗達が「ブフッ」と吹き出した。後ろの方で八重樫さんが必死に笑うのを堪えていた。光輝は困ったように笑いながらあれこれ話している。肩身がせまいどころか、息苦しくて死にそうである。

 

「………………はぁ」

 

 深くため息を吐く。目の前の人たち……零斗たちを除いた全員を見て、僕はふとありえないことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もういっそ、こいつら全員異世界召喚とかされないかな? と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どう見ても天之河くんたち、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。どこかの世界の神か姫か、あるいは巫女か。誰でもいいので召喚してくれませんかー……

 

 

 

 現実逃避のために、内心電波を飛ばす。さて、そろそろ零斗が何か、天之河君に対して爆発するかな。

 

「あのーみんな、そろそろ……」

 

 それを止めるために、いつも通り苦笑いでお茶を濁して退散するかと腰を上げかけたところで……凍りついた。

 

 突如、天之河君たちの足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。その異常事態に、直ぐに周りの生徒達も気がついた。僕を含めた全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

 その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。そんな中、六人だけ、非常に冷静な人物がいた。零斗達だ。

 

「み、皆?どうしてそんな……」

 

僕が問い掛けると、ゆっくりとこちらを向いた。

 

「まぁ、この程度の事なら驚きませんよね」

「ホラー映画の方がまだ驚くポイントがありますよ?」

「……ホラー映画と比べるのはちょっと違う様な気がするだけど?」

 

何時もと変わらない態度で会話を続けている零斗達。あまりにも現実離れした光景以上に零斗達の落ち着きように驚くよりも若干引いてしまう。多分、零斗達の前世の話を初めて聞いた時よりも、引いている。

 

「……とりあえず。この平穏な日々を脅かした奴はーー」

「どんな手段を取ってでも……」

「残酷に…冷酷に……」

 

 

 その瞬間──スッと、零斗達から表情が抜け落ちた。冷たく、機械的な眼をして殺意を滾らせている。

 

 

「「「「「「殺す」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを聞いたのを最後に、視界が白く染まった。その中で、僕は必死に白崎さんを抱きしめるのだった。

 

 

 

 

 ……そして数秒か、数分か。

 

 

 

 光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。

 

 

 

 蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 

 

 この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 




御要望、御意見等がありましたら感想等でお願いします。

風音鈴鹿さん誤字の報告ありがとうございます。
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