ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ドモー(。・ω・)ノ柊人です」
「悠花です!」
「八重樫です」

「前回はミュウちゃんの救出と畜生共の処理だったね」
「ここの歴史が地球の中世ヨーロッパ辺りで止まってるから、ある程度の予想はしてたけど……」
「えぇ、実際に目の当たりにするとなると、あれが人間の所業とは思えない程の事よね……」

「……今回はオルクス大迷宮の探索の続きだよ、楽しんでね」

「「「異常事態!」」」


異常事態

 Side 三人称

 

 淡い緑色の光だけが頼りの薄暗い地下迷宮に、激しい剣戟と爆音が響く。

 

 その激しさは、苛烈と表現すべき程のもので、時折、姿が見えない遠方においても迷宮の壁が振動する程だ。

 

「シッ!」

 

 鋭い呼吸と共に、空を飛び交う十匹以上のコウモリ型の魔物を一瞬で細切れとなり、碌な攻撃も出来ずに血肉を撒き散らしながら地に落ちた。

 

「後衛組、十秒後に中級魔法を敵陣中央に放ちなさい」

「「「「「「了!」」」」」」

 

 ギチギチと硬質な顎を動かす蟻型の魔物、空を飛び交うコウモリ型の魔物、そして無数の触手をうねらせるイソギンチャク型の魔物。それらが、直径三十メートル程の円形の部屋で無数に蠢いていた。

 

 厄介な飛行型の魔物であるコウモリ型の魔物が、前衛組の隙を突いて後衛に突進するが、頼りになる『結界師』が城壁となってそれを阻む。

 

「刹那の嵐よ 見えざる盾よ──『爆嵐壁』!」

「ギィィィィ!」

 

 結界師……谷口鈴の放った攻勢防御魔法より、目に見えぬ壁が展開されて突撃してきたコウモリ型を吹き飛ばした。だが、その一撃では倒しきれずに、後方にいたイソギンチャク型の魔物達が触手を伸ばしてくる。

 

「せらァ!」

 

 そこに飛び込んで来たのは、脳筋熱血ゴリラこと坂口龍太郎だ。迫っていた数本の触手を二本の腕力のみで薙ぎ払い、魔物を殴り飛ばす。それだけで肉体を粉砕されたものもいれば、一気に迷宮の壁まで吹き飛ばされてグシャ!という生々しい音と共に迷宮壁のシミとなった。

 

「後退!」

 

 柊人の号令と共に、前衛組が一気に魔物達から距離を取る。次の瞬間、完璧なタイミングで後衛六人の攻撃魔法が発動した。

 

 巨大な火球が、風の刃の嵐が、石の棘が、水柱が魔物の命を奪っていく。

 

「デカいの一発行っくよー!」

「ちょ!?悠花!」

 

 一際大きな轟炎が巻き上がり、地上にいた魔物が全て消し炭となる。その余波で迷宮が大きく揺れた。うん、トンデモねぇ威力してんね。

 

「あちゃ〜やっちゃった……」

「また貴方は!私達の魔力では、初級魔法だとしても下手をすれば最上級魔法クラスの威力になりかね無いです!!」

「ひぃ〜!ごめんなさーい!」

 

 額に手を当てて溜め息をつく柊人に対し、正座になって謝る悠花。

 

「ハァ……兎も角、次の階層で九十層となります。この階層の魔物も難なく撃破出来ましたが、気を抜かずに参りましょう」

 

 その言葉に全員が力強く首肯して応えた。

 

「カッオリ~ン!鈴の事、癒して~! ぬっとりねっとりと癒して~」

「ひゃわ! 鈴ちゃん! どこ触ってるの! っていうか、鈴ちゃんは怪我してないでしょ!」

「してるよぉ! 鈴のガラスのハートが傷ついてるよぉ! だから甘やかして! 具体的には、そのカオリンのおっぱおで!」

「お、おっぱ……ダメだってば!あっ、こら!やんっ!雫ちゃん、助けてぇ!」

「なぁに、楽しそうな事してるんだー!私も混ぜろ〜!」

「ちょ、悠花ちゃん!?」

 

 ただのおっさんと化した鈴が、人様にはお見せできない表情でデヘデヘしながら香織の胸をまさぐり、何を思ったか悠花も混ざり、香織の胸を揉みしだく。

 

「ハァハァ、ええのんか?ここがええのんか?お嬢ちゃん、中々にびんかッへぶ!?」

「へぇ、ここga……うわばっ!」

「……はぁ、いい加減にしなさい、鈴」

「貴方もですよ、悠花。男性陣が軒並み、立てなくなってしまったじゃありませんか……」

 

 セクハラ親父と化した2人が柊人と雫の脳天チョップを食らって撃沈した。ついでに、鈴と悠花、香織の百合百合しい光景を見て一部男子達も撃チンした。頭にタンコブを作ってピクピクと痙攣している鈴と悠花を、何時ものように中村恵里が苦笑いしながら介抱する。

 

「うぅ~、ありがとう、雫ちゃん。恥ずかしかったよぉ……」

「よしよし、もう大丈夫。変態共は私達が退治したからね?」

 

 涙目で自分に縋り付く香織を、雫は優しくナデナデした。最近よく見る光景だったりする。

 

「……後、十層で一旦の目標である、百階層ですね」

「……今なら、守れるよね」

 

 そう呟いた香織の声には、強い意志が込められているように聞こえた。

 

「うん、香織ちゃんなら、きっと守れるよ」

 

 そんな香織の手を握りながら、悠花が力強く断言した。それは根拠のない発言ではなく、ただ真っ直ぐに向けられた信頼の言葉であり、だからこそ、どんな言葉よりも強く、深く、心に響いた。

 

「……うん!」

 

 その手に込められた確かな温もりを感じつつ、しっかりと前を見据え、笑みを浮かべて応える。

 

「それでは、行きましょうか」

 

 柊人の掛け声に合わせて、一同は再び歩き出す。

 

 ちなみに、この場にいるのは柊人、悠花、天之河、龍太郎、雫、香織、鈴、恵里の他、永山重吾を含める五人及び檜山達四人の十七人であり、メルド団長達は七十層で待機している。七十層を越えた辺りから能力的に柊人達に追随することができなくなってしまった。

 

 ちなみに雫達のステータスはこうなっている。

 

 ==================

 

 八重樫雫 17歳 女 レベル:61

 

 

 天職:剣豪

 

 称号:恋する乙女

 

 筋力:20651

 

 体力:26826

 

 耐性:14507

 

 敏捷:41896

 

 魔力:15674

 

 魔耐:15674

 

 技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・抜刀術[+抜刀速度上昇]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解・N-Ⅰ型強化細胞

 

 ==================

 

 

 ==================

 

 

 白崎香織 17歳 女 レベル:53

 

 天職:治癒師

 

 称号:ヤンデレ スタンド使い?

 

 筋力:26760

 

 体力:24188

 

 耐性:29676

 

 敏捷:18675

 

 魔力:45670

 

 魔耐:45670

 

 技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・棒術・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解・L-Ⅱ型強化細胞・スタンド?[+般若][+威圧]

 

 ==================

 

 両者ともステータスの伸びが凄まじい。特に、香織の回復魔法と光属性魔法が極まっていた。特に回復魔法の方が、それはもう、物凄い感じで極まっていた。

 

「……次で九十層……だね」

「油断せずに行きましょう……何が起きるか分かりませんから」

 

 全員が同意を示し、気を引き締めて歩を進める。出発してから十分程で一行は階段を発見した。トラップの有無を確かめながら慎重に薄暗い螺旋階段を降りていく。体感で十メートルほど降りた頃、遂に柊人達は九十層に到着した。

 

 見た目、今まで探索してきた八十層台と何ら変わらない作りのようだった。さっそく、マッピングしながら探索を開始する。

 

「…………」

「どうしたんですか、八重樫さん?」

「いえ、何やら嫌な予感がして……」

 

 ふと雫が立ち止まったので、心配になった柊人が声をかけた。しかし、返ってきた答えは要領を得ないものだった。

 

 探索を開始して二時間近く経過した頃……

 

「なんで、ここまでの道で魔物と遭遇しなかったの……?」

 

 雫が、ふと思った疑問を口にした。そして、それには全員に思い当たる節があった。そうなのだ。これまでの階層では必ず何処かに魔物がいた。それなのに、この九十層に入ってから、ただの一回も魔物と遭遇していな。

 

「魔物が一匹もいないなんて、あり得んのか……?」

 

 龍太郎の呟きが、静寂に包まれた空間に木霊する。

 

「……ここは一度引きましょう。メルド団長ならこういう事態を知っているかもしれません」

 

 柊人はそう言って、踵を返した。不意に、辺りを観察していたメンバーの何人かが何かを見つけたようで声を上げた。

 

「これ……血……だよな?」

「薄暗いし壁の色と同化してるから分かりづらいけど……あちこち付いているよ」

「おいおい……これ……結構な量なんじゃ……」

 

 そのメンバー達が指差す方には赤黒い染みのようなものが多数付いていた。悠花が壁の前に移動し、壁についた血に触れた。

 

「まだ、真新しいね……固形化具合からして、それほど時間は経って無いみたいだね」

 

 悠花の言葉で更に不穏な空気が流れた。

 

「些か不自然ですね」

「どういう事?」

 

 柊人の言葉を聞いた香織が尋ねた。

 

「ここに来る時に魔物とは一度も接敵していません、戦闘形跡さえもありませんでした。それなのに、この場には魔物の物と思われる血痕に爪痕……」

「この空間にしか痕跡が無かったのは……隠蔽が間に合わなかったか、もしくは……」

「そう、ここが終着点という事さ」

 

 悠花の言葉引き継ぎ、突如、聞いたことのない女の声が響き渡った。男口調のハスキーな声音だ。

 

「柊人、気配は?」

「ありませんでした……完全に消されているようです」

 

 悠花の質問に対して、警戒しながら周囲を見渡すも、そこには誰もいなかった。

 

「そろそろ姿を見せてはどうです?」

 

 コツコツと靴を鳴らし、燃えるような赤い髪を揺らして現れた。一見して人間の女のようであった。だが浅黒い肌はまだしも、通常の人間ならばありえない尖った耳をしている。

 

「何時かは対峙するとは思っていましたが……少しばかり御早い登場ですね」

「……魔人族」

 

 誰かの発した呟きに、魔人族の女は薄らと冷たい笑みを浮かべた。

 

 

 




今回はちょっこと短めでした。感想お待ちしております。
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