ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ドーモ(。・ω・)ノ柊人です」
「悠花です!」
「八重樫雫です」

「前回は迷宮攻略と初の魔人族との接触でしたね」
「……魔人族」
「ほとんど私達、人間と変わらない見た目だったね」
「……うん」
「魔人族との全面戦争となれば、あれらを殺す事になるんですね……まぁ、僕にとっては関係の無い事ですけどね」

「今回は魔人族との戦闘だよ……楽しんでいってください」

「「「VS 魔人族!」」」


VS 魔人族

 Side 柊人

 

 現れた魔人族の女は冷ややかな笑みを口元に浮かべながら、僕達を観察するよう様な視線を向けてくる。

 

 外見は瞳の色は髪と同じ燃えるような赤色で、服装は艶のない黒一色のライダースーツのようなものを纏っている。

 

「勇者はあんたでいいんだよね? そこのアホみたいにキラキラした鎧着ているあんたで」

「あ、アホ……う、煩い! 魔人族なんかにアホ呼ばわりされるいわれはないぞ! それより、なぜ魔人族がこんな所にいる!」

 

 ……なんだろう、敵じゃなければ普通に仲良く出来そうなタイプの人かもしれない。

 

 魔人族の女は、煩そうにし質問を無視すると心底面倒そうに言葉を続ける。

 

「はぁ~、こんなの絶対いらないだろうに……まぁ、命令だし仕方ないか……あんた、そう無闇にキラキラしたあんた。一応聞いておく。あたしらの側に来ないかい?」

「な、なに? 来ないかって……どう言う意味だ!」

「呑み込みが悪いね。そのまんまの意味だよ。勇者君を勧誘してんの。あたしら魔人族側に来ないかって。色々、優遇するよ?」

 

 魔人族はこちらに向けて妖艶な笑みを浮かべる。

 

「断る! 人間族を……仲間達を……王国の人達を……裏切れなんて、よくもそんなことが言えたな! やはり、お前達魔人族は聞いていた通り邪悪な存在だ! わざわざ俺を勧誘しに来たようだが、一人でやって来るなんて愚かだったな! 多勢に無勢だ。投降しろ!」

 

 

 無駄な正義感丸出しで叫ぶ。それを聞いた瞬間、僕は頭を抱えて盛大にため息をつく。すると、近くにいた悠花や浩介も似たような表情をしていることに気づく。

 

 天之河的には正義の味方っぽい感じでカッコイイと思っているんだろうけど……やっぱり残念すぎる……しかし、当の本人は正義のヒーロー気分の様で大変気持ち悪い……

 

「一応、お仲間も一緒でいいって上からは言われてるけど? それでも?」

 

「答えは同じだ! 何度言われても、裏切るつもりなんて一切ない!」

 

 天之河は剣を構えながらキッパリと言い切った。

 

「はぁ……せっかく魔人族側の情報を得るチャンスだったのになぁ……」

 

 悠花は小さく呟く。まぁ、確かにそれは惜しかったとは思う。

 

「そう。なら、もう用はないよ。あと、一応、言っておくけど……あんたの勧誘は最優先事項ってわけじゃないから、殺されないなんて甘いことは考えないことだね。ルトス、ハベル、エンキ。餌の時間だよ!」

 

 魔人族の女が三つの名を呼ぶのと、破砕音と共に、八重樫さんと永山重吾が苦悶の声を上げながら吹き飛んだ。

 

 二人を吹き飛ばしたものの正体はライオンの頭部に竜のような手足と鋭い爪、蛇の尻尾と、鷲の翼を背中から生やす奇怪な魔物だった。言うなればキメラと言った所だろうね。

 

「……遅い」

 

 倒れていた八重樫さんに追撃を掛けようとしていたキメラをバラバラに切り裂く。万が一再生しても困るので、再生出来ぬ様に切り裂いた肉片を炭化するまで燃やす。永山重吾の方を見ると、悠花が対応していた。

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ……ありがとう。助かったわ」

 

 八重樫さんの無事を確認してから、魔人族の方に向き直ると、魔人族の女は不機嫌そうに顔を歪めていた。

 

「おやおや、綺麗な顔が酷く歪んでいますね?」

 

 僕の言葉に魔人族の女の眉間にシワが深く刻まれる。さっきまでの余裕のある態度ではなく、明らかに苛立っている様子だ。

 

「まぁ、僕が干渉するのはここまでなので……好きにして構いません」

「どういう事だ?!柊人!!」

 

 僕の言葉を聞いて、声を上げたのは天ノ河だった。

 

「……そのままの意味ですが?僕からすれば、君が死のうが正直どうでもいいですし。そもそもこの程度の敵で苦戦する様なら戦争で生き残る事など無理でしょう……だから、貴方達の力だけで突破してみなさい」

 

 僕の言葉に天之河は怒りと屈辱が入り混じった様な表情になる。

 

「君は仲間を見捨てる気か!?」

「……見捨てるも何も最初から仲間ではありませんよ。それに……仮にここで死ぬようならそれまでの存在だったというだけですよ」

 

 僕の言葉をどう受け取ったのか知らないけれど、天之河達は不満げながらも武器を構える。そして、戦闘が始まったのだけれども……はっきり言えば呆れる程に弱い。動きは雑だし、連携もなっていない。しかも、一人が勝手に戦っている始末だ。

 

「……これでよく今まで生き残れたものですね……」

 

 思わずボソッと本音が漏れてしまうほどに酷い有様である。隣では八重樫さん達の様子を見てワタワタとしている悠花がいる。

 

「ねぇ……本当にあの子達に任せて良かったの?」

 

 心配そうな表情をしながら悠花が尋ねてくる。彼女としては友人として助けに行きたいのだろう。

 

「……少なくとも、八重樫さんや白崎さん達がいるんですから心配いりませんよ」

 

 僕はそれだけ言うと、悠花の頭をポンと軽く叩いて魔人族に視線を向ける。魔人族の女はというと、少し不愉快そうな表情をして、ゆっくりとこちらへ近ずいて来る

 

「……あんた、随分と冷たいんだね。仲間なんだろう?」

「……別に、他人を助ける義理はありませんし。ただ、仲間だからこそ厳しく接するべきなんですよ。甘やかすだけでは成長しませんから」

 

 僕は淡々と答える。これはあくまで僕の持論だが、人は誰かの為に強くなれるものだと思う。だからこそ、自分が強くなる為には自分以外の人間を利用していく必要があると考えている。もちろん、身内だけは例外だけどね。

 

「ふぅん……まぁ、あたしには関係ないけどね。でも、強いあんたがこっちに来てくれれば色々楽が出来そうだと思ったんだけどねぇ」

 

 魔人族は少し悲しそうな表情を浮かべ俯く。その姿を見て、一瞬だけ同情してしまった。

 

「……何故、このようなことを?」

「私らの故郷は不毛の大地でね……作物が育たず、その日食べる物にも困るくらいに飢えが深刻なのさ」

「そこで我々、人間達の土地を奪うために侵略を?」

 

 僕の言葉に魔人族の女は小さく首を縦に振る。なるほど……確かにそんな状況であれば魔人族の行動も理解できる。土地を奪ってしまえば食料不足に陥る可能性は極めて低いのだから。

 

「……ッ!?」

 

 突然、背後から殺気が放たれた。すぐ様悠花と魔人族の首根っこを掴んで投げ飛ばす。

 

「きゃっ!!ちょっと何すんのさ!?」

 

 魔人族の女は何とも言えない声を上げる。すると、先程まで僕らがいた場所に巨大な黒いナニカが通り過ぎる。直後、背後の石壁が轟音と共に崩れる。

 

「やぁぁぁっと、見つけましたよ……ノクト様ァ!!!」

 

 狂喜に満ちた笑い声が響き渡る。そこには深紅の瞳をした黒髪の女がいた。その女からは、濃厚な死臭と狂気を感じる。

 

「アンタねぇ!私が居るのに攻撃してんじゃないよ!」

「あー?なんだテメェ?私はノクト様に用があるんだよぉ!」

 

 女はそう言いながら手に持っていた鞭を振りかざす。

 

 しかし、突如現れたこの女……どこかで見たことがあるような……必死に記憶を探る。すると、不意にある人物の顔が思い浮かぶ。背中にドッと嫌な汗が流れる。

 

「全員!今すぐ撤退しなさい!」

「えっ?どうして……」

 

 僕の言葉に八重樫さんは困惑した表情を浮かべるが、今は説明している暇はない。

 

「いいから早く!!」

 

 僕が強く叫ぶと、八重樫さんは戸惑いながらも皆に声をかけて撤退していく。

 

「柊人!」

「ここは僕が食い止めます!あなたも早く行ってください!」

 

 悠花の声に答えつつ、目配せをする。彼女は僕の意を理解してくれたようで、すぐに走り出す。魔法で地形を操作して、道を塞ぐ。これでしばらくは時間稼ぎが出来るはずだ。

 

「チッ!逃しましたか……まぁ良いでしょう……目的は達成していますし」

 

 女は残念そうに呟きつつも、ニヤリと笑みを浮かべる。そして、鞭を大きく振り上げると、地面へと叩きつける。瞬間、凄まじい衝撃が走る。

 

「さぁ!存分に()し合いましょう!」

「ハァ……面倒臭いですね……本当に……」

 

 心の底から溜息をつくと同時に、目の前にいる女に対して最大限の警戒を行うのだった。

 

「あぁ!その警戒するよな、軽蔑するような目!堪らないわ!」

 

 変態的な発言を繰り返す女を睨む。全くもって気持ち悪い……と言うよりも、何故この女がここに居るんだ?

 

「……何故貴女がこんな所に?」

「あはは!そんなの決まってるじゃないですかぁ!」

 

 女は再び嬉しそうな顔になると、再び鞭を振るう。今度は地面ではなく、僕の方に向けて。咄嵯の判断で避けると、僕の後ろにあった石壁に亀裂が入る。

 

「貴方に会う為ですよぉ……ノクト様ァ!!」

「……」

 

 ……やっぱりだ。間違い無い。前世で僕のストーカーだった、厄介な女……

 

「……ラピス」

 

 僕の言葉を聞いて、女は歓喜に打ち震えていた。

 

「覚えていてくださったんですねぇぇ!!!嬉しいですぅ!」

「忘れたくても忘れられませんよ……まさか、また会うことになるとは思ってませんでしたけどね……」

 

 僕は呆れ果てた表情で言う。正直言って二度と会いたくない相手なのだけれど……運命というのは実に皮肉なものだと思う。

 

「それで……どうします?殺し合いでも始めます?」

「……断っても、やる気でしょう?」

「当然ですよぉ!だって私はノクト様を愛するためだけに生きてきたのですからねぇ!」

 

 ラピスは興奮気味に言う。もう既に戦闘態勢に入っているのか、身体の周りに瘴気が漂っている。

 

「さぁ!思う存分愛し合いましょ?」

「お断りするよ」

 

 

 

 




おうどん食べたい。
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