「ん、ユエ」
「久しぶりの浩介でーす」
「さて、前回はホルアドに着いたのと浩介と再会したね」
「……癖が強い人」
「そうか?」
「そりゃ、ファーストコンタクトが僕達に絡んでた冒険者にドロップキックだからね……」
「今回は浩介からの事情聴取だよ……楽しいでね」
「「「不安を胸に……」」」
Side ハジメ
「それで……何があったの?」
浩介に説明をするように促すと、表情を曇らせながら事の次第を話そうとする。と、そこでしわがれた声による制止がかかった。
「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」
声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。後ろの方でさっきの受付嬢さんが顔を青くしている。どうやら、この人がギルド支部長らしい。
「分かりました……浩介、行くよ」
「歩けるから!足引っ張らんでくれ!頭削れる!」
浩介の足首を掴み、引きずりながら支部長について行く。
────────────────────
「……魔人族……ね」
通された部屋で浩介から、迷宮内で起きたことを粗方聞いた。にしても、魔人族がなんでオルクス大迷宮に?
ちなみに対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスさんと浩介が座っていて、浩介の正面に僕が、その両サイドにユエとシアさんがシアさんの隣にティオが、ユエの隣にはミレディとエトさんが座っている。ミュウは、僕の膝の上だ。
「────♪」
ミュウは僕らの話が難しかったのか、出されたお菓子をリスみたいに頬張っていて、イマイチ深刻になりきれない。
「なぜ、ラピスが……いや私達が居るのだから自然ではありますが……でも……」
エトさんが手で口を覆いながら、呟く。俯いていて、表情は確認できないけど声色からして怯えと恐怖と困惑が感じ取れる。
「なぁ、ハジメ、一つ質問なんだが……」
「ん?どうしたの?」
「その、膝の上の子は?見るからにお前の子にしちゃ大きいし……周りにいる人達とも似てないし……」
「まぁ、色々あっただけだよ、あんまり気にしなくていいよ?」
浩介がミュウを見て疑問を口にするが、適当に流す。お菓子が口にあったのか満面の笑みを浮かべているミュウ。優しく頭を撫でると嬉しそうに目を細めてされるがままになっている。
「……もう、すっかりパパ」
「私達には向けられたことないような優しい顔ですぅ……」
「果てさて、ご主人様はエリセンで子離れ出来るのかのぉ~」
両隣から何か聞こえるけど、無視してミュウの頭を撫でる。そうこうしているうちに、支部長も席につき本題に入るようだ。
「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」
「全部成り行きですけどね……」
大半は零斗のやった事だし、僕はそれに追従しただけだし……
「手紙には、お前の〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」
ロアさんの隣で浩介が誇らしげな表情を浮かべている。なんで嬉しそうなんだよ……
「……一つ質問なんだが、白髪で瞳の色が左右非対称の青年……レイトが纏め役と書いてあるが、そいつはどうした?」
「零斗なら先に迷宮に向かいました」
「そうか……」
浩介がエトさんの様子を見て、不安そうに表情を歪める。
「にしても、ハジメが魔王か……言い得て妙だな」
「嫌だなぁ浩介、魔王なんかと一緒にしないでよ」
「ふっ、魔王を雑魚扱いか?随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」
「……勇者達の救出ですね?」
僕の言葉を聞いてロアさんの眉毛がピクリと動く。やっぱり当たりだったらしい。
「ハジメ、俺からも頼む。今ここで天之河が死んだら、戦況が大きく傾く可能性……いや、必ず傾く……だから……頼む!」
「……」
浩介が頭を下げる。正直あまり気乗りはしないなぁ……確かに天之河は、この世界の人間族にとっては希望の象徴とも言える存在だけど、僕個人としてはそこまで思い入れがあるわけでもない。そもそも、助けたところでメリットがない。
「……僕が受ける理由はないよね? 天之河君とは同郷の人間でしかないし、ましてや僕を殺そうとしてきたやつを助けたいとは思わない」
「やっぱり……そうだよな……」
浩介が暗い顔になり、ロアさんは勇者が僕を殺そうとしたと聞いて放心状態になっていた。
浩介は僕が断らないと思っていたのだろう。正直、この依頼を受けるのは得策じゃないと思う。
「……まぁ、『勇者達の救出』じゃなくて『浩介の援護』っていう依頼なら受けるよ」
「え?」
浩介がキョトンとした表情をする。僕が断ると思っていたのだろう。
「あくまでも『浩介の援護をして勇者パーティーの元に連れて行く』ってことなら良いって言ってるんだけど?」
「それって!」
浩介の顔が明るくなり、席から立ち上がった。
「浩介がやるって言うから仕方なく手伝うだけだからね?」
「ハァァジメェェェ!アリガトぉぉぉぉ!」
浩介が涙目になりながら抱きついてくる。
「……そういう事だけど、ユエ達は大丈夫?」
「……ハジメのしたいように。私は、どこでも付いて行く」
僕の言葉にユエが慈愛に満ちた眼差しで、そっと僕の手を握り微笑む。
「わ、私も!どこまでも付いて行きますよ!ハジメさん!」
「貴方の隣に入れるなら、どんな所でも付いて行きますからね!ハジメさん!」
「ふむ、妾ももちろんついて行くぞ。ご主人様」
「ふぇ、えっと、えっと、ミュウもなの!」
何故か焦った様子で声を上げるシアさんとアルテナさん。それに同調する様にティオさんが頷いている。ミュウは、よくわかっていないみたいで、取り敢えず仲間はずれは嫌なのかギュッと抱きつきながら同じく主張してきている。
「……お前、白崎さんに会ったら、速攻で謝った方がいいんじゃないか?」
「……そうだね」
香織さんがシアさん達の事知ったら絶対に怒るよね……うん、直接会ったら土下座しよう。
「ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしてください」
「上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」
「そう言う事ですそれともう一つ。僕達が帰るまでミュウちゃんのために空き部屋を一つ貸してください」
「ああ、それくらい構わねぇよ」
ロアさんはニヤリと笑うと快く了承してくれた。これで準備は整ったかな?
「ティオさん、僕らが帰ってくるまでの間、ミュウの事任せてもいい?」
「うむ、承った」
ティオさんの返事に安心すると僕は浩介に声をかけた。
「じゃあ、行ってくる……浩介、案内よろしくね?」
「おう、任された」
浩介の案内で救出対象のいる場所へと向かおうとした時……
ドォゴオオオン!!!
轟音が鳴り響き、建物全体が大きく揺れた。
「なんだ!?」
「爆発か何かでしょうか……」
「みゅ……怖い……」
全員が慌てふためく中、冷静な声で呟いたのは浩介だった。
「……ハジメ、今すぐ天之河達の所に行った方がいい気がするんだ……なんか嫌な予感がする」
「……分かった」
僕は浩介の意見に賛成した。今の音は明らかに自然現象なんかじゃない。
今回は短め。感想お待ちしてます。