「えぇっと……辻綾子…です?」
「鈴ちゃんでーす!ヨロシクゥ!」
「前回は……悠花ちゃんが私達を庇って攻撃を受けた所だったね……」
「そう…だね……」
「ゆうゆうなら大丈夫だよね?」
「…………」
「……今回は私達の話の続きだよ、楽しんでいってね」
「「「黒幕は紅雷と共に……」」」
Side 悠花
「……んぇ?」
あれ?私、ラピスの攻撃食らった筈じゃ……
「……よぉ、お嬢ちゃん。そんな顔してると、悪〜いお兄さんにからかわれちゃうぞ?」
声がした。おちょくる様な、小馬鹿にする様な……でも、何処か安心する声が聞こえた。
「……遅いよ」
そこにいたのは見知った人物だった。いつもヘラヘラしていて、掴み所が無くて、でもいざという時は助けてくれる……
「なぁに言ってんだ、完璧なタイミングだろ?
「そこは……ヒーロー……じゃないの……?」
「そうとも言うな」
そう言って彼は……零斗は笑った。
「零斗君?……ホントに零斗君なの?」
「あぁ、巷じゃ、異端者だの怪物だの呼ばれてる零斗君ですよ」
恵理ちゃんが不安げに呟く。それに零斗は軽く笑いながら答えた。その瞬間に絶望の底に沈んでいた子達の目に光が戻り始めた。
「アハトド!その男を殺せ!」
魔人族の女は零斗を見るやいなや魔物をけしかけて来た。
「ガァアアアア!」
アハトドと呼ばれた魔物は、頭部が牙の生えた馬で、筋骨隆々の上半身からは極太の腕が四本生えており、下半身はゴリラの化物だった。そして、その剛腕を振るい零斗を撲殺しようと接近してきた。
「今日の天気は曇りのち雨だ……頭上に注意した方がいいぜ?」
ドォゴオオン!!
轟音と共に頭上にある天井が崩落し、同時に紅い雷を纏った巨大な漆黒の杭が地面に突き刺さった。そして、その杭がアハトドを貫き、ミンチにしてしまった。
「言わんこっちゃない……」
鉄杭が開けたであろう大穴から誰かが飛び降りてくる。
「よぉ、遅かったな?」
「……置いてったのにその言い草は無しでしょ」
飛び降りて来たのはハジメだった。
「ハジメ君!」
「香織さん……」
白ちゃんがハジメに勢いよく抱きついた。ボロボロと涙を零して、ハジメの存在を確かめるように強く強く抱き締めている……ミシミシと音が鳴るほどに……
「ハジメ、頼むから置いていかないでくれよ……しかも、お前の使ったやつの余波でぶっ飛ばされたし……いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか……」
「……そう言いながら対応してるのは凄い」
「遠藤さんも大概人外ですぅ……」
「ま、まぁ、ハジメさんと一緒で零斗さんに鍛えられた人ですから……」
「その一言で纏めるのはいいかがなものかと思いますが……まぁ、その通りですけどね」
鉄杭が開けた穴から全身黒装束の少年に金髪の美少女、ウサミミ少女、綺麗な長髪で耳の長い少女、銀髪の大人びた女性が降りてきた。
「ハジメ、褐色肌の女を生かして捕縛しろ。エトとアルテナは怪我してる奴らの治療にまわってくれ。シア、ミレディ、オスカーは後ろの連中を守ってやれ」
「……『生きて』いればいいんだよね?」
「あぁ、四肢の有無はどうでもいい」
「了解……!」
ハジメは腰のホルスターから銃を抜き、魔人族の女に接近して行った。
「……久しぶりだなラピス」
「えぇ、久しぶりね……何年ぶりかしらね?」
「再会を祝いたいところだが……とりあえずは……」
零斗が手を上にかざすと無数の魔法陣が現れて、そこから大量の武器が現れた。槍、剣、斧、鎌など様々で、中には見たこともないような形状の物もある。
「死ね」
零斗の言葉が号令となり、一斉に襲いかかる。ラピスは慌てて迎撃するが、明らかに反応が遅れていた。ラピスの身体中から血飛沫が上がり、至る所から鮮血が流れ出す。
「さて、これでしばらくは足止めできるな……辻さん、柊人の傷の容態はどうだ?」
零斗は足速に柊人と辻ちゃんの元へ向かっていった。
●○●
Side 零斗
「さっきからずっと回復魔法を掛け続けるけど、まったく傷が塞がらないの!」
辻さんは今にも泣き出してしまいそうな顔をしながら回復魔法を掛けている。
「……傷が塞がらないってことは……」
柊人の衣服を破り、傷口を直に視認出来る様にする。
「……すげぇ量の呪詛だな。これじゃ傷も塞がらねぇわな」
よく見れば傷の周りの皮膚が変色しており、赤黒くなっていた。かなり根深く固着しており、今の状態で解呪するとなると柊人が死にかねないし……
「しかも『赫包』までやられてるな……よく生きてたなこいつ」
『赫包』とは柊人だけが持つ器官で、それを起点に強化細胞の制御と再生が行われるらしい。それを壊されると傷が回復せず、最悪死に至ることもある。
「……『赫包』近くに呪詛が集まってやがる……仕方ねぇ」
俺は自分の腕を軽く切る。俺の腕から溢れ出した血液がみるみると形を変えて、真っ黒な結晶になった。
柊人の強化細胞を無理やり活性化させ、そのエネルギーを俺の血から作ったこの結晶に流し込む。すると、真っ黒だった結晶が次第に透き通るような赤色に染まっていく。
「後はこいつを埋め込めば……」
そして、その結晶を柊人の体内に埋め込んだ直後、柊人を赤い霧が包み込む。
「……よし、定着したみたいだな」
赤い霧が繭の様になり、脈動し始めた。
「レイトォ!お前だけは絶対に殺すッ!」
そこにラピスがやってきた。だが様子がおかしい。先程までの余裕はなくなっており、その目は憎悪と殺意で満ちており、表情には憤怒の感情が浮かんでいる。
「おー怖い……辻さん、とりあえずはお疲れ様。これ飲みな、かなり魔力消費しただろ?」
「……うん、ありがとう」
俺は魔力回復薬を辻さんに渡して、ラピスに向き直った。
「" 英霊憑依 " " セイバー " アルトリア・ペンドラゴン」
「すごい……」
「……綺麗」
背後から感嘆の声が上がる。まぁ、確かに綺麗だよな…… 俺の身体から金色の粒子が放出され、それが鎧となって全身を覆う。手には風を纏った不可視の剣が出現する。
「全員、俺から離れておけ……巻き込まれるぞ」
剣を両手に握り、構えを取る。
「束ねるは星の息吹────」
剣に纏わっていた風が消え、代わりに眩しい程に輝く黄金の光が刀身から放たれる。
「輝ける命の奔流────」
段々と光の光度が増していき、やがて目を開けていられないほどになる。そして、一際強く輝くと光は剣の刀身と同化し始めた。
「────受けるが良い!」
剣を振りかぶると刀身に宿る黄金の光が、まるで生きているかのようにうねる。
「『
真名解放と共に振り下ろす。瞬間、視界全てを黄金に染め上げる程の極太光線が射出される。ラピスは咄嵯に障壁を展開するが、それは簡単に砕けてラピスを飲み込んでいく。
「舐めるなぁァァ!」
光の奔流の中でラピスが怒りの形相を浮かべながらゆっくりとこちらに向かってくる。
「ば、バケモノ……」
誰かがそう呟いた。確かに、今の一撃を食らってなお動けるなんて、もはや人間じゃないよなぁ……
「ヴェノム!開けろ!」
『了解!』
俺の言葉に反応して、ヴェノムがラピスの足元に空間転移ゲートを開く。突然現れたそれにラピスは対応できず、そのまま落下していく。
「エト!この場は任せるぞ!」
「え!?ちょっと待ちなさ──」
エト達にその場を任せて、俺はラピスの後を追って、ゲートに飛び込んだ。
●○●
Side ラピス
「ここは……」
気が付くと知らない場所に居た。
「……回廊……かしら?」
全体が山吹色をしており窓には緻密な装飾が施されている。窓は光が差し込んで明るく、ギリシャ調の柱が回廊の終わりまで左右それぞれ並んでいる。
「とりあえずは進むしかなさそうね……」
しばらく歩いて行くと、前方に人影が見えた。私は警戒しながら近付いて行った。すると、向こうも私に気付いたのか、振り返って声を掛けてきた。
「よお。さっきぶりだなラピス」
「……レイト」
そこには先程殺し損ねた男がいた。私はすぐさま臨戦態勢に入る。レイトはそんな私の様子を見て肩をすくめた。
「物騒だねぇ……」
「……あなたを殺すためなら何でもするわ」
「なぁ、一つだけ質問させてくれ」
私が答えると、レイトが真剣な眼差しで問いかけてくる。一体何を聞かれるのだろう? どうせ殺す相手なのだから答えても構わないけど……
「どうしようもないクズでも変われると思うか?」
その問いの意味がよく分からなかった。なぜ今その様なことを聞くのだろうか?
「どんな奴でもその気になれば良い奴になれると思うか?」
続けて聞いてきたその言葉にも、やはり理解が追いつかない。
「……少なくとも俺はなれなかった。いや、なろうとすら思わなかったんだろうな……」
レイトは自嘲気味に笑い、窓の外を見た。
「……だからあの時、お前に手を差し伸べられなかった」
レイトが見ている方向に視線を移すと、そこでは桜の花びらが舞っていた。
「……俺は組織の守護者であり……同時に死神だ。俺の役割はお前達を救い、守護すること……そして、裏切った者の始末だ」
レイトは私の方に向き直り、指差してきた。
「……もし、お前に良心が残っているのなら……そこから一歩も動かないでくれ」
「……ふざけないで貰えるかしら?」
彼の言いたいことは何となく分かった。だけど、それを受け入れるつもりは無い。レイトの忠告を無視して、前に出る。彼は少し悲しそうな表情を浮かべた。
「……ハァ、これだから嫌なんだよ……この役目……」
そう言うと同時に、彼は目を閉じた。
「今日はいい天気だ……鳥は歌い、花は咲きほこる……」
彼は朗々と詩を詠うように言葉を紡いでいく。 私は直感的に危機を感じ取り、鞭を構えた。
「こんな最高の日に、お前の様な
その言葉を聞いた瞬間、目の前が一瞬だけ暗転した。その時にはもう、彼の姿は無かった。
「地獄の業火に焼かれてもらうぜ?」
声が聞こえたと思った直後、足元に骨によく酷似した槍が出現した。
「ッ!」
咄嗟に回避したものの、完全に回避することは出来ず掠って傷を負ってしまった。
『ギュォォォ……』
「な!?」
レイトの姿を目視しようと振り向くと、そこには異形の怪物がいた。それは一言で表すならば"竜の骸"だった。頭部以外は無く、口部には黒い粒子が集まっている。
『ゴォオオォ!』
「きゃっ!?」
口から黒い光線が放たれ、咄嵯に防御魔法を展開して防ぐが、威力が高く耐えきれずに吹き飛ばされてしまう。
「……うぅ……痛ったぁ……」
空中に跳んで衝撃を和らげたものの、かなりのダメージを受けてしまい、落下してしまう。地面に叩きつけられる寸前に何とか体勢を立て直すが、既にレイトがこちらに向かってきていた。
「やるか」
Do you wanna have a bad TOM?!??!??!