ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ヽ(。・ω・。)ドウモハジメです」
「白崎です」
「やっほー!悠花ちゃんだよー!」

「前回は香織さん達と再会して、零斗がラピスさん?を某地下の物語の審判の間に引きずり込んで行ったね……」
「フヘへ……久しぶりのハジメ君の匂いらぁ……ウェヘヘヘ……」
「し、しらちゃん、帰ってきて……」

「えぇっと……今回は僕達目線での話だよ。楽しんでね」


「「「激情に身をまかせて!」」」


激情に身をまかせて

 Side ハジメ

 

「あぁ、四肢の有無はどうでもいい」

「了解……!」

 

 零斗の指示を聞き、ホルスターからドンナーを抜きつつ、魔人族の女性に接近する。

 

「大人しく投降してくれるのであれば、丁重に扱いますが……どうします?」

「……何だって?」

 

 女性は僕の言葉を聞くと、眉をひそめた。その反応も当然だろう。四方は魔物に囲まれ、退路も絶たれている……この状況で投降を勧めるなど普通ではない。

 

「戦場では迅速かつ的確な判断が求めらるのは知っていますよね?傷付きたくないのであれば、速やかに投降を……」

 

 言い終わる前に、女性がスっと表情を消し、周りにいた魔物に僕を殺せと命令した。

 

「……抵抗するというのなら……容赦はしない」

 

 僕の一言と同時に、四方からの攻撃が始まった。しかし、僕は焦ることなくドンナーを構えて発砲し、迫り来る魔物を撃ち抜いた。

 

「ふぅ……」

 

 ゆっくりと息を吐き、思考を沈めてゆく……

 

『戦場じゃ、焦ったヤツに感情的なヤツ……マトモなヤツから死んでいく』

 

 零斗の言葉が頭の中で反響する。訓練している時に、言われたものだ。

 

『戦場に必要なのは、力でも仲間でも無い……必要なのは、冷酷な思考と冷めきった考えだ』

 

 段々と思考は冴え、眼前の景色の色が抜け落ちていく……代わりに周囲の音、匂い、肌に触れる風……感覚が研ぎ澄まされていく。

 

「さぁ……」

 

 左足にあるホルスターからシュラークを抜き、改めて構えを取る。

 

「ハイライトだ」

 

 その言葉と共に、頭の中で『スイッチ』を切り換える。それと同時に乾いた破裂音が階層の中で響き渡る。

 

 ●○●

 

 Side 三人称

 

「こんな……こんな事……ありえるはずがない……」

 

 魔人族の女は、そう呟きながら後退る。従えていた魔物は大半が物言わぬ肉塊に成り果てた。

 

 ハジメは神楽を舞う様にドンナーとシュラークを撃つ。そして、その度に血肉が花吹雪の様に飛び散り、魔物の頭部や胸部に穴を空けていく。

 

 命を奪う行為でありながらも美を感じさせる動きだ。

 

「すごい……」

「……綺麗」

 

 白崎とユエはその光景に見惚れてしまう。それほどまでに美しい戦い方なのだ。だが、そんな美しさとは裏腹に、築かれてゆく屍の山。

 

「……相変わらず怖ぇな。ホントに機械みたいだな」

 

 遠藤の言う通り、ハジメの目には光が宿っていなかった。それどころか、顔からは生気が感じられない。まるで機械のように淡々と戦い続ける姿は、正気とは思えなかった。

 

「……怖いですぅ……」

 

 シアは震える身体を押さえつけながらも、ハジメを見守る。その場いる全ての者が動けずにいた。ハジメの援護に行ったとしても、足手まといになってしまう事はわかっているのだ。だから、見守る事しか出来ない自分達に歯痒い思いを抱く。

 

「うぉおおお!!」

 

 そんな中で雄叫びを上げながら飛び出したのは天之河だ。聖剣を振りかざしながら、魔人族に向かって行く。

 

「光輝!ダメッ!」

「戻れッ!光輝!」

 

 八重樫と坂上の声を無視して、天之河は上段からの振り下ろしを放つ。

 

「……邪魔だ、退け」

「ガっ!?」

 

 しかし、天之河の聖剣はハジメの持つドンナーによって受け止められてしまった。そのまま側頭部に回し蹴りを食らい、その場に倒れる。

 

「ハッ!こんな時に仲間割れかい!随分と余裕みたいだねぇ!」

「こんなやつ、仲間ではない」

 

 魔人族の女はその隙をついて魔力弾を放ってくる。ハジメは微動だにせず、天之河の首を掴み、魔力弾の肉壁にした。放たれた魔力弾はそのまま天之河に当たるが、天之河は無傷だ。

 

「グッ……ァ……」

「其処に居た、お前が悪い。邪魔立てするのなら……お前を殺す」

 

 冷たい声で言い放つと、天之河を投げ捨てて、魔人族の女に迫る。それを阻止しようと襲ってくる魔物達を容赦なく撃ち抜き、切り刻み、殺し尽くす。

 

「地の底に眠りし金眼の蜥蜴……大地が産みし魔眼の主……宿るは暗闇見通し射抜く呪い──────『落牢』!」

 

 魔人族の女の詠唱が終わると、灰色の煙がハジメの周囲に漂いだす。

 

「(パキリ……)……石化か」

 

 指先が石のようになり、変色していく。その様子を見てニヤリと笑った魔人族の女だった。

 

「……」バゴォ

「なっ!?」

 

 石化した指先をドンナーのストック部で砕き、傷口を塞ぎながら、無表情のままに言い放った。

 

「……中途半端な魔法だな」

 

 その言葉を聞いた瞬間、魔人族の女の顔が引き攣る。

 

「……あんな、ハジメ君……見た事ない……」

 

 白崎は目を見開き、恐怖からか膝をつく。その姿を見た白崎以外の者達も同様に驚きで固まっている。それも当然だろう。普段のハジメを知っている者のなら、今のハジメの異常性に戦慄を覚えて当たり前だ。

 

 魔物を機械的に処理し、一切の容赦も情けもなく、ただ目の前の敵を屠る。そこに感情はない。あるのは、冷酷な思考と煮えたぎる怒りだ。

 

「そりゃ、自分の恋人や友達が傷だらけにされた状態で『スイッチ』切り換えりゃ……あんな風になっちまうよな……」

 

 遠藤の言葉に白崎達は言葉を失う。いつも優しいハジメの姿しか知らない彼女達にしてみれば、今のハジメは別人にしか見えない。しかし、それは紛れもない事実なのだ。

 

「な、なぁ、遠藤」

「ん?なんだ?」

「その『スイッチ』?ってのはなんなんだ?」

 

 檜山は恐る恐ると言った様子で尋ねる。それに対して、遠藤は少し考えてから口を開く。

 

「零斗に教わった技能みたいなもんだ。戦闘時と日常生活の思考回路を切り換える術……まぁ、簡単に言えば二重人格みたいなもんだ」

 

 遠藤はガリガリと頭を掻きながら答える。

 

「一度『スイッチ』を切り換えれば、感情が無く、合理的で冷酷な思考、純粋な殺意が湧き上がる……それこそ殺戮兵器みたいになっちまう」

 

 それを聞いて全員が息を飲む。浩介は淡々と話を続ける。

 

「普段のアイツは馬鹿みたいにお人好しだろ?善人、悪人関係なく手を差しのべる様な……根っからの純粋馬鹿だ」

「……そう……だね」

 

 白崎はその通りだと言わんばかりに小さく首肯する。実際、白崎の知るハジメは、困っている人がいれば必ず助けようとする人間だ。例え、自分がどれだけボロボロになってでも、誰かの為に行動を起こす。それが南雲ハジメという男だ。

 

「そんなヤツが戦場に出れば……利用されて、騙されて、奪われて……殺されるだけだ」

 

 だが、今のハジメは敵に対して一切の慈悲を与えていない。全員が呆然とハジメを見る中で、坂上がポソリと言葉を漏らした。

 

「……まるで……人じゃねぇみてぇだ」

『……ッ!』

 

 坂上の言葉が全員の心に深く突き刺さる。坂上自身、決して悪意があって言ったわけではない。むしろ、心の底から出た感想だ。

 

「勘違いしてそうだから言うが……あの状態でも『南雲ハジメ』は『南雲ハジメ』のままだ」

「えっ?」

 

 坂上は遠藤を見つめて疑問の声を上げる。他の皆も同じ様に困惑の表情を浮かべていた。

 

「あの状態でもハジメの根幹は変わってない、何処までも馬鹿で純粋で……優しい……俺たちの知ってるハジメだ」

 

 険しい表情だった遠藤の顔が、優しい物に変わる。

 

「……そっか……そうなんだ……」

 

 遠藤の言葉に、白崎は微笑み、八重樫と坂上は力強くうなづく。

 

「今、俺達に出来るのは……待つことだけだ」

「……うん……」

「ああ……」

「……わかってる」

 

 皆、今は自分達が出るべきでない事を理解している。そして、願った。どうか、無事に戻ってきてくれと……

 

 その頃、魔人族の女は恐怖していた。目の前にいる少年が、死神か何かに見えたのだ。目の前の少年の瞳には一切の感情が感じられない。ただ、冷酷な光を宿し、自分を睨んでいる。

 

「……どうした?ささっと来い……」

「ひっ!?」

 

 魔人族の女は悲鳴を上げながら魔力弾を乱射する。しかし、その全てがあっさりと撃ち落とされてしまう。

 

「……その程度か?」

「ひぃ!?」

 

 魔人族の女は涙目になりながら魔力弾を放つが、ハジメには掠りもしない。

 

「……弱い」

 

 ハジメは魔人族の女に接近すると、腹に蹴りを入れる。

 

「ぐふぅ!」

 

 そのまま壁に叩きつけられる。魔人族の女は必死に立ち上がろうとするが、恐怖からか足が震えて上手く立てない。

 

 ハジメはゆっくりと歩き出す。殺される。この子供に自分は殺されてしまう。そう確信し、魔人族の女の目に恐怖の色が浮かぶ。

 

「終わりか?」

「……あんたに遭遇した時点で詰みだった……って訳か」

「……」

 

 ハジメは無言のままドンナーのトリガーに指を掛ける。

 

「待て……待つんだ、南雲……彼女はもう戦えない……殺す必要はない……筈だ……」

 

 天之河がボロボロの状態でハジメに語り掛ける。ハジメはそんな天之河を冷めた目で見下ろす。

 

「黙れ、お前の意見など聞いていない」

 

 ハジメはドンナーの銃口を天之河の頭に突き付け、トリガーに指を掛ける。それを見た白崎は青ざめ、檜山達は息を飲む。

 

「ハジメ、一旦落ち着け。もう十分だ」

「……」

 

 遠藤の言葉で、ハジメはドンナーのトリガーから指を離し、ホルスターに仕舞う。

 

「後……捕虜にするんだったら最低でも片足は折っておけ」ヒュン

「ガッ!」

「……すまない」

 

 浩介は逃げようとしていた魔人族の女にナイフを投げて足を貫く。続けて、ハジメが錬成で足の骨を砕いた。

 

「とりあえず、ハジメ。さっさっと切り換えろ」

「……了解だ」

 

 ハジメは意識してスイッチを切り換える。その途端、いつものハジメに戻った。

 

「ふぅ……流石に疲れ……た……(フラ……)」

「おっと、お疲れさん」

 

 ハジメは疲労感に苛まれ、倒れそうになる。遠藤はそれを受け止めると背中をさする。

 

「お前なぁ……自分の恋人が傷つけられて怒るのは分かるが、少しは冷静に考えて行動をしろ」

「……ごめん」

 

 白崎達も駆け寄り、ハジメの身体を支える。

 

「怪我は無い!?気分は悪くない!?何処か違和感ある場所は!?」

「だ、大丈夫だよ。香織さん。心配かけてゴメンね」

 

 ハジメは苦笑いしながら謝る。しかし、それでも不安なのか、白崎はハジメをギュッと抱きしめる。

 

「……本当に……良かった……無事で……」

「……うん……ありがとう」

 

 ハジメは優しく微笑むと、白崎の頭を撫でる。

 

「いい雰囲気のところ悪いんだけどよ……そいつどうす──ーゴッ!?」

 

 空気を読んでいなかったのか、坂上が魔人族の女について尋ねるが、八重樫の拳が腹に突き刺さる。坂上はそのまま崩れ落ちた。

 

(ゴウッ!)

『ッ!?』

 

 その瞬間、全員が身構えた。それは、まるで空間そのものを押し潰すかの様な威圧。そのプレッシャーの発生源は……

 

「黒い……門?」

 

 その通り、漆黒の門が出現しており、そこから途轍もない圧力を感じるのだ。そして、門の隙間からは禍々しいオーラと共に、闇よりも暗い影が見える。

 

「…………来る」

 

 ハジメが呟くと同時に、門の中から一人の青年が現れる。全ての光を吸い込む様な瞳に、灰色の髪。身長は180cm程で、細身の身体。

 

「……あ」

 

 ハジメがホルスターに手を掛けた、次の瞬間には、男は消えていた。そう認識した時には、ハジメの目の前に移動していた。

 

「待たんかい、ワレェ!」

「ブベラ!?」

 

 黒い門からとんでもないスピードですっと飛んで来る零斗。そして、そのまま眼前の男の背中にドロップキックを叩き込む。

 

「いきなり何しやがるです!?」

「テメーこそ何してくれてんねん!?俺がどんだけ苦労したと思ってんのじゃい!」

「知りませんわボケェ!」

「んだとコラァ!」

 

 ギャイギャイと言い合いを始める二人。その様子を見て、唖然とする一同。

 

「柊……人……?」

 

 悠花の問いかけにも答えず、二人は言い争いを続ける。

 

「生ぎででよがっだぁぁぁ!」

「「ガフッ!」」

 

 猛スピードで取っ組み合いをしている二人に突っ込んでいく悠花。そのタックルを受けて、二人とも床に倒れる。

 

「うぅ……ひぐっ……」

「……泣かないでください……」

「……だっで……だってぇ……」

 

 悠花は泣きながら柊人に抱きつく。柊人はその頭をポンポンと軽く叩く。零斗はため息を吐きながら悠花の背中をさする。

 

『???????????????』

 

 そんな三人以外の者は揃って、背後に宇宙を背負っていた。




これ(王蛇専用ガードベンドのパロ)がやりたかった( ^ U ^ )
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