「白崎です」
「やっほー!悠花ちゃんだよー!」
「前回は香織さん達と再会して、零斗がラピスさん?を某地下の物語の審判の間に引きずり込んで行ったね……」
「フヘへ……久しぶりのハジメ君の匂いらぁ……ウェヘヘヘ……」
「し、しらちゃん、帰ってきて……」
「えぇっと……今回は僕達目線での話だよ。楽しんでね」
「「「激情に身をまかせて!」」」
Side ハジメ
「あぁ、四肢の有無はどうでもいい」
「了解……!」
零斗の指示を聞き、ホルスターからドンナーを抜きつつ、魔人族の女性に接近する。
「大人しく投降してくれるのであれば、丁重に扱いますが……どうします?」
「……何だって?」
女性は僕の言葉を聞くと、眉をひそめた。その反応も当然だろう。四方は魔物に囲まれ、退路も絶たれている……この状況で投降を勧めるなど普通ではない。
「戦場では迅速かつ的確な判断が求めらるのは知っていますよね?傷付きたくないのであれば、速やかに投降を……」
言い終わる前に、女性がスっと表情を消し、周りにいた魔物に僕を殺せと命令した。
「……抵抗するというのなら……容赦はしない」
僕の一言と同時に、四方からの攻撃が始まった。しかし、僕は焦ることなくドンナーを構えて発砲し、迫り来る魔物を撃ち抜いた。
「ふぅ……」
ゆっくりと息を吐き、思考を沈めてゆく……
『戦場じゃ、焦ったヤツに感情的なヤツ……マトモなヤツから死んでいく』
零斗の言葉が頭の中で反響する。訓練している時に、言われたものだ。
『戦場に必要なのは、力でも仲間でも無い……必要なのは、冷酷な思考と冷めきった考えだ』
段々と思考は冴え、眼前の景色の色が抜け落ちていく……代わりに周囲の音、匂い、肌に触れる風……感覚が研ぎ澄まされていく。
「さぁ……」
左足にあるホルスターからシュラークを抜き、改めて構えを取る。
「ハイライトだ」
その言葉と共に、頭の中で『スイッチ』を切り換える。それと同時に乾いた破裂音が階層の中で響き渡る。
●○●
Side 三人称
「こんな……こんな事……ありえるはずがない……」
魔人族の女は、そう呟きながら後退る。従えていた魔物は大半が物言わぬ肉塊に成り果てた。
ハジメは神楽を舞う様にドンナーとシュラークを撃つ。そして、その度に血肉が花吹雪の様に飛び散り、魔物の頭部や胸部に穴を空けていく。
命を奪う行為でありながらも美を感じさせる動きだ。
「すごい……」
「……綺麗」
白崎とユエはその光景に見惚れてしまう。それほどまでに美しい戦い方なのだ。だが、そんな美しさとは裏腹に、築かれてゆく屍の山。
「……相変わらず怖ぇな。ホントに機械みたいだな」
遠藤の言う通り、ハジメの目には光が宿っていなかった。それどころか、顔からは生気が感じられない。まるで機械のように淡々と戦い続ける姿は、正気とは思えなかった。
「……怖いですぅ……」
シアは震える身体を押さえつけながらも、ハジメを見守る。その場いる全ての者が動けずにいた。ハジメの援護に行ったとしても、足手まといになってしまう事はわかっているのだ。だから、見守る事しか出来ない自分達に歯痒い思いを抱く。
「うぉおおお!!」
そんな中で雄叫びを上げながら飛び出したのは天之河だ。聖剣を振りかざしながら、魔人族に向かって行く。
「光輝!ダメッ!」
「戻れッ!光輝!」
八重樫と坂上の声を無視して、天之河は上段からの振り下ろしを放つ。
「……邪魔だ、退け」
「ガっ!?」
しかし、天之河の聖剣はハジメの持つドンナーによって受け止められてしまった。そのまま側頭部に回し蹴りを食らい、その場に倒れる。
「ハッ!こんな時に仲間割れかい!随分と余裕みたいだねぇ!」
「こんなやつ、仲間ではない」
魔人族の女はその隙をついて魔力弾を放ってくる。ハジメは微動だにせず、天之河の首を掴み、魔力弾の肉壁にした。放たれた魔力弾はそのまま天之河に当たるが、天之河は無傷だ。
「グッ……ァ……」
「其処に居た、お前が悪い。邪魔立てするのなら……お前を殺す」
冷たい声で言い放つと、天之河を投げ捨てて、魔人族の女に迫る。それを阻止しようと襲ってくる魔物達を容赦なく撃ち抜き、切り刻み、殺し尽くす。
「地の底に眠りし金眼の蜥蜴……大地が産みし魔眼の主……宿るは暗闇見通し射抜く呪い──────『落牢』!」
魔人族の女の詠唱が終わると、灰色の煙がハジメの周囲に漂いだす。
「(パキリ……)……石化か」
指先が石のようになり、変色していく。その様子を見てニヤリと笑った魔人族の女だった。
「……」バゴォ
「なっ!?」
石化した指先をドンナーのストック部で砕き、傷口を塞ぎながら、無表情のままに言い放った。
「……中途半端な魔法だな」
その言葉を聞いた瞬間、魔人族の女の顔が引き攣る。
「……あんな、ハジメ君……見た事ない……」
白崎は目を見開き、恐怖からか膝をつく。その姿を見た白崎以外の者達も同様に驚きで固まっている。それも当然だろう。普段のハジメを知っている者のなら、今のハジメの異常性に戦慄を覚えて当たり前だ。
魔物を機械的に処理し、一切の容赦も情けもなく、ただ目の前の敵を屠る。そこに感情はない。あるのは、冷酷な思考と煮えたぎる怒りだ。
「そりゃ、自分の恋人や友達が傷だらけにされた状態で『スイッチ』切り換えりゃ……あんな風になっちまうよな……」
遠藤の言葉に白崎達は言葉を失う。いつも優しいハジメの姿しか知らない彼女達にしてみれば、今のハジメは別人にしか見えない。しかし、それは紛れもない事実なのだ。
「な、なぁ、遠藤」
「ん?なんだ?」
「その『スイッチ』?ってのはなんなんだ?」
檜山は恐る恐ると言った様子で尋ねる。それに対して、遠藤は少し考えてから口を開く。
「零斗に教わった技能みたいなもんだ。戦闘時と日常生活の思考回路を切り換える術……まぁ、簡単に言えば二重人格みたいなもんだ」
遠藤はガリガリと頭を掻きながら答える。
「一度『スイッチ』を切り換えれば、感情が無く、合理的で冷酷な思考、純粋な殺意が湧き上がる……それこそ殺戮兵器みたいになっちまう」
それを聞いて全員が息を飲む。浩介は淡々と話を続ける。
「普段のアイツは馬鹿みたいにお人好しだろ?善人、悪人関係なく手を差しのべる様な……根っからの純粋馬鹿だ」
「……そう……だね」
白崎はその通りだと言わんばかりに小さく首肯する。実際、白崎の知るハジメは、困っている人がいれば必ず助けようとする人間だ。例え、自分がどれだけボロボロになってでも、誰かの為に行動を起こす。それが南雲ハジメという男だ。
「そんなヤツが戦場に出れば……利用されて、騙されて、奪われて……殺されるだけだ」
だが、今のハジメは敵に対して一切の慈悲を与えていない。全員が呆然とハジメを見る中で、坂上がポソリと言葉を漏らした。
「……まるで……人じゃねぇみてぇだ」
『……ッ!』
坂上の言葉が全員の心に深く突き刺さる。坂上自身、決して悪意があって言ったわけではない。むしろ、心の底から出た感想だ。
「勘違いしてそうだから言うが……あの状態でも『南雲ハジメ』は『南雲ハジメ』のままだ」
「えっ?」
坂上は遠藤を見つめて疑問の声を上げる。他の皆も同じ様に困惑の表情を浮かべていた。
「あの状態でもハジメの根幹は変わってない、何処までも馬鹿で純粋で……優しい……俺たちの知ってるハジメだ」
険しい表情だった遠藤の顔が、優しい物に変わる。
「……そっか……そうなんだ……」
遠藤の言葉に、白崎は微笑み、八重樫と坂上は力強くうなづく。
「今、俺達に出来るのは……待つことだけだ」
「……うん……」
「ああ……」
「……わかってる」
皆、今は自分達が出るべきでない事を理解している。そして、願った。どうか、無事に戻ってきてくれと……
その頃、魔人族の女は恐怖していた。目の前にいる少年が、死神か何かに見えたのだ。目の前の少年の瞳には一切の感情が感じられない。ただ、冷酷な光を宿し、自分を睨んでいる。
「……どうした?ささっと来い……」
「ひっ!?」
魔人族の女は悲鳴を上げながら魔力弾を乱射する。しかし、その全てがあっさりと撃ち落とされてしまう。
「……その程度か?」
「ひぃ!?」
魔人族の女は涙目になりながら魔力弾を放つが、ハジメには掠りもしない。
「……弱い」
ハジメは魔人族の女に接近すると、腹に蹴りを入れる。
「ぐふぅ!」
そのまま壁に叩きつけられる。魔人族の女は必死に立ち上がろうとするが、恐怖からか足が震えて上手く立てない。
ハジメはゆっくりと歩き出す。殺される。この子供に自分は殺されてしまう。そう確信し、魔人族の女の目に恐怖の色が浮かぶ。
「終わりか?」
「……あんたに遭遇した時点で詰みだった……って訳か」
「……」
ハジメは無言のままドンナーのトリガーに指を掛ける。
「待て……待つんだ、南雲……彼女はもう戦えない……殺す必要はない……筈だ……」
天之河がボロボロの状態でハジメに語り掛ける。ハジメはそんな天之河を冷めた目で見下ろす。
「黙れ、お前の意見など聞いていない」
ハジメはドンナーの銃口を天之河の頭に突き付け、トリガーに指を掛ける。それを見た白崎は青ざめ、檜山達は息を飲む。
「ハジメ、一旦落ち着け。もう十分だ」
「……」
遠藤の言葉で、ハジメはドンナーのトリガーから指を離し、ホルスターに仕舞う。
「後……捕虜にするんだったら最低でも片足は折っておけ」ヒュン
「ガッ!」
「……すまない」
浩介は逃げようとしていた魔人族の女にナイフを投げて足を貫く。続けて、ハジメが錬成で足の骨を砕いた。
「とりあえず、ハジメ。さっさっと切り換えろ」
「……了解だ」
ハジメは意識してスイッチを切り換える。その途端、いつものハジメに戻った。
「ふぅ……流石に疲れ……た……(フラ……)」
「おっと、お疲れさん」
ハジメは疲労感に苛まれ、倒れそうになる。遠藤はそれを受け止めると背中をさする。
「お前なぁ……自分の恋人が傷つけられて怒るのは分かるが、少しは冷静に考えて行動をしろ」
「……ごめん」
白崎達も駆け寄り、ハジメの身体を支える。
「怪我は無い!?気分は悪くない!?何処か違和感ある場所は!?」
「だ、大丈夫だよ。香織さん。心配かけてゴメンね」
ハジメは苦笑いしながら謝る。しかし、それでも不安なのか、白崎はハジメをギュッと抱きしめる。
「……本当に……良かった……無事で……」
「……うん……ありがとう」
ハジメは優しく微笑むと、白崎の頭を撫でる。
「いい雰囲気のところ悪いんだけどよ……そいつどうす──ーゴッ!?」
空気を読んでいなかったのか、坂上が魔人族の女について尋ねるが、八重樫の拳が腹に突き刺さる。坂上はそのまま崩れ落ちた。
(ゴウッ!)
『ッ!?』
その瞬間、全員が身構えた。それは、まるで空間そのものを押し潰すかの様な威圧。そのプレッシャーの発生源は……
「黒い……門?」
その通り、漆黒の門が出現しており、そこから途轍もない圧力を感じるのだ。そして、門の隙間からは禍々しいオーラと共に、闇よりも暗い影が見える。
「…………来る」
ハジメが呟くと同時に、門の中から一人の青年が現れる。全ての光を吸い込む様な瞳に、灰色の髪。身長は180cm程で、細身の身体。
「……あ」
ハジメがホルスターに手を掛けた、次の瞬間には、男は消えていた。そう認識した時には、ハジメの目の前に移動していた。
「待たんかい、ワレェ!」
「ブベラ!?」
黒い門からとんでもないスピードですっと飛んで来る零斗。そして、そのまま眼前の男の背中にドロップキックを叩き込む。
「いきなり何しやがるです!?」
「テメーこそ何してくれてんねん!?俺がどんだけ苦労したと思ってんのじゃい!」
「知りませんわボケェ!」
「んだとコラァ!」
ギャイギャイと言い合いを始める二人。その様子を見て、唖然とする一同。
「柊……人……?」
悠花の問いかけにも答えず、二人は言い争いを続ける。
「生ぎででよがっだぁぁぁ!」
「「ガフッ!」」
猛スピードで取っ組み合いをしている二人に突っ込んでいく悠花。そのタックルを受けて、二人とも床に倒れる。
「うぅ……ひぐっ……」
「……泣かないでください……」
「……だっで……だってぇ……」
悠花は泣きながら柊人に抱きつく。柊人はその頭をポンポンと軽く叩く。零斗はため息を吐きながら悠花の背中をさする。
『???????????????』
そんな三人以外の者は揃って、背後に宇宙を背負っていた。
これ(王蛇専用ガードベンドのパロ)がやりたかった( ^ U ^ )