ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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やぁ、初めましてそして久しぶりだねマスター。


召喚そうそう一悶着

 Side ??? 

 

ギルガメッシュ王、神の使徒の召喚が始まりました」

 

「そうかでは予定通りに事を進めよ」

 

「は!」

 

「やっとだね、ギル

 

「あぁ、そうだなようやく会えるな. . . マスターよ」

 

 ●○●

 

 Side 零斗

 

 ようやく光が収まったので目を開けるそうすると自分達が広間にいることがわかる。とりあえずは現状確認をしなくてはだな。今の自分がどういう立ち位置なのかを把握しとかなきゃいけないからな。

 

 まず最初に目に飛び込んできたのは、巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなでかいやつ。その中で、後光を背負った中性的な顔立ちの人物が草原や湖、山々を両手を広げ包み込む絵が描かれていた。胡散くせぇなこの癖に描かれてるやつ如何にも悪の親玉って感じがすんな。

 

 周囲を見渡すとハジメと白崎がいた。あいつナチュラルに白崎のこと抱き締めてるな。いいゾ!もっとやれ!そして押し倒しちまえ!と、今は安否の確認だな。

 

「怪我はありませんか?ハジメ、白崎さん」

「大丈夫だよ、零斗」

「私もだよ。零斗くん」

 

 座り込んで居た、二人の手を引いて立ち上がらせる。そして、もう一度周囲を見渡す。美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物のようだ。素材は大理石か?これまた美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。そんで今俺らは台座かこれ?の上に立っているその周りには少なくとも三十人近いその集団は、おそらく同じ組織に与するものだろう。

 

 台座の前でまるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好をしている。全員白地に金の刺繍入りの法衣を纏い、傍らに先端が扇状に広がっていて、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられた錫杖を置いていた。

 

 中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうな、これまた細かい意匠の凝らされた烏帽子モドキを被っている爺さんが歩み出してきた。眼光が普通の老人のそれじゃねえな。あの爺さん只者じゃねえな。そんな老人は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音で話しかけてきた。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

「幾つか質問しても?」

「それは後ほどで宜しいでしょうか? 今現状を説明しましょう。混乱していらっしゃるいる方もいるようなので」

「ええ、分かりました」

 

 そうしてイシュタルと名乗った爺さんに十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。多分、晩餐なんかをする場所か。ちなみに、ここに案内されるまでに俺が天之河に変わり生徒達を落ち着かせてたりする。あいつに任せると色々やばい事になりかねんからね。教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛ちゃんが涙目だった。頭撫でてたら怒られた上に刀華にビンタされた。痛てぇしめっちゃ腫れた。

 

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。秋葉原とか、外国のデブBBAメイドではない。正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである。男どもの欲望がこんな状況でも健在で、大半がメイドさん達を凝視している。女子達の視線が氷河期もかくやという冷たさを宿していた。全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。ちなみにハジメや俺達は飲み物に毒が盛られてないか警戒して手を付けていない。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

 要約するとこうだ。

 

 

 まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが消え去った、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 イシュタルはどこか恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべている。普通にキモイ。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

 俺達が、〝神の意思〟を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

 愛ちゃん先生だ。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛ちゃん先生。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿は何とも微笑ましい。が、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに、とても庇護欲を掻き立てられる。可愛い……そんな畑ちゃんは何でも、威厳ある教師を目指しているのだとか。

 

「零斗、また変な事考えていないでしょうね?」

「メッソウモゴザイマセン」

「へぇ? 今日の夜覚悟して置いてね?」

「……ハイ」

 

 オイオイオイ。死んだわ俺。と、そんな事を考えていると愛ちゃんの顔に怒気が現れる。どうやら愛ちゃん、今回も理不尽な召喚理由に怒り心頭なようだ。クラスメイトどもがほんわかしてる。オイオイ今どんな状況か分かってんのかよコイツらは……

 

 だが、この場の全員が次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

「は?」

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな。あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第、ということになりますな」

「そ、そんな……」

 

 畑ちゃんが脱力したように、ストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「ウソダドンドコドーン!」

「こんなところにいられねえ!俺は自分の部屋に帰らせてもらう!」

「ナニイッテルダフザケルナ!」

 

 何人か余裕そうだなオイ。まぁ、奴隷扱いじゃないだけまだマシか……さて、どうしたものか普通の転送魔法は本来一方通行じゃないはずだったはずなんだか、どうなってるんだ?こっちの世界の物はそういう物なのか?皆狼狽える中、ちらっとイシュタルの見ると特に口を挟むでもなく、静かにその様子を眺めていた。大方『なんでエヒトに選ばれたのに喜べないのか』って所だろな。これだから一神教は面倒なんだよな〜

 

 未だパニックが収まらない中、突然天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッと肩を震わせ、そちらを見るクラスメイトども。天之河は全員の注目が集まったのを確認すると、おもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

 ……あぁ、クソ……想定以上に最悪な展開になりそうだ。

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 ギュッと握り拳を作りそう宣言する天之河。無駄に歯がキラリと光る。同時に、天之河のカリスマ(笑)は遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。奴を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

 

 いつもの四人のうち、龍太郎だけが天之河に賛同する。後は当然の流れというように、クラスメイト達が賛同していった。畑ちゃんはオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが、あいつの作った流れの前では無力だった。

 

「君はバカなのかい? あぁそうだよね、そうじゃなければこんな行動はしないはずだ」

「は? 何を言ってるんだ零斗! お前は──」

「……お前がたった今、この場にいる全てのクラスメイトを死地に向かわせると言ったのだぞ?お前は理解していないようだから言ってやる……そこに居る奴は私達に『戦争の為の道具になれ』と言ったのだぞ?更には戦争が終わっても帰れる保証など何処にも無い」

「な、何を言って?」

 

 天之河は俺の発言が理解出来ないのか、困惑した様子で俺の事を見つめてくる。俺は更に言葉を続け、天之河に現実を突き付ける。

 

「あぁ、本当に分かっていないのか?そこに居る老人は『戦争が終われば帰れるか?』という質問に、『エヒト様は戦争が終われば帰してくれるかもしれない』と曖昧な答えをした。つまり帰れる保証は何処にもない。それに戦争の意味を分かっていないようだな。いいか?戦争とはどちらかの種族が滅ぶまで続く物だそれがいつ終わるかも分からない、そして途中でクラスの誰かが死ぬかもしれない……それを理解しているのか?」

「俺はそんなことはしない!あまりクラスのみんなを怖がらせる様な事は言うな!!」

 

 ホントに理解し難い考えだ……戦争で味方側から死者が出ない訳が無い。それに力があるとは言え、技量も知識も無い人間が戦場で生き残れるはずが無い……コイツに何を言っても無駄みたいだな。

 

「……イシュタルさん、少し良いですか?」

「はい、なんでしょうか?」

 

 俺と天之河がまた討論をし始めようとした時にハジメが黙りしていたイシュタルに話掛けた。

 

「戦争に参加するに当たって幾つか条件を提示させて貰っても大丈夫でしょうか?」

「……はい分かりました、してどんな条件でありましょう」

「1、僕たちの身分の保証 。 2、衣食住の安定。 3、戦争は志願制 。 4、この世界に付いての情報をすべて教えること以上の4つです」

「ふむ、それくらいでしたらよろしいでしょう」

 

 イシュタルは少し不満気にしながらもハジメの提示した条件を全て飲んだ。恐らくは三つの条件である志願制が気に食わないのだろつ。

 

「ありがとうございます、何か紙はありませんか?」

「紙ですか? ありますがどんな用途でご使用に?」

「契約書です」

「……そうですか、解りました」

 

 そしてハジメが戦争に付いての条件を取り付けた。というよりやりすぎたな、途中から熱くなり過ぎたし感情制御が不完全だな。次は上手くやならきゃな。

 

「南雲! 一体どういうつもりだ!」

 

 イシュタル達が移動の準備をする為に部屋を出て行った瞬間、天之河がハジメに掴みかかった。俺は言葉を荒らげながら天之河に詰め寄ろうとするが龍太郎に止められてしまう。

 

「天之河!何をしている!今すぐハジメを離せ!」

「うるさい!お前には関係ない!南雲お前自分のした事がわかっているのか!?何故あんなことをした!」

「ゲホッ!僕らはこの世界ことに付いて何も知らない!この世界について情報を得るために交渉しただけだよ!それと全員が戦争に参加したい訳じゃない!それなのに最前線に出されるかもしれないからそれを防ぐためだ!」

 

 ハジメは締め上げられながらも冷静に天之河に自分がした事を簡潔に伝える。天之河の耳にはそれが届いていないのか、ハジメを締め上げる腕の力を強めている。

 

「光輝!落ち着きなさい!」

 

 八重樫の一言でようやくハジメを解放する天之河。俺はすぐさまハジメに駆け寄り、背中をさする。

 

「ゲホッゲホッ!」

「ハジメ!大丈夫か!?」

「うん、大丈夫だよ零斗。安心して」

 

 ハジメは顔を青くしながら答える。その後はイシュタルが戻ってくるまで誰も言葉を発する事無く待機していた。天之河、貴様は絶対に許さんからな。このツケは何時か返して殺るからな。覚えておけ。

 

 

 




御意見、御要望等がありましたら感想等でお願いします。m(*_ _)m
今回殆ど恭弥達の出番がありませんかでしたが白崎や八重樫、龍太郎、遠藤、清水、中村達を裏で止めていました。そういうことにしておいてください。
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