ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

81 / 96
「よっと、ハイ( ¯꒳¯ᐢ )お馴染みの零斗さんですよ」
「柊人でーす」

「さて、前回は俺とラピスとの戦闘と柊人との合流だったな」
「相変わらずやる事成す事とんでもないですね……」
「まぁ、そこはご愛嬌って事だ」
「嫌ですよ、そんな愛嬌……」

「今回は俺&柊人 VS 黒い未知の生命体との戦闘だ」
「楽しでいってください」

「「嫉妬に狂った獣は……」」



嫉妬に狂った獣は……

 Side 三人称

 

 重々しい打撃音と鉄同士がぶつかり合う様な轟音が響く。

 

「ガッ!」

 

 黒いナニカの拳を食らった柊人が宙を舞う。そのまま地面へと叩きつけられるが、すぐに立ち上がる。

 

「うわぁ……痛そ……」

「めっちゃ痛いですよ……というか協力してくれません?!」

 

 生傷だらけの零斗が柊人のカバーに回る。だが、黒いナニカは二人を相手にしても互角以上に戦っている。柊人は先ほどから何度も攻撃を繰り出しているが効いている様子がない。

 

(どうすればいいんだ……)

 

 黒いナニカが腕を振り上げる。まずいと柊人と零斗が身構える……が……

 

『縺倥c縺セ繧偵☆繧九↑ 縺薙?縺吶a?』

 

 黒いナニカが頭を抑え、苦悶の声を上げる。一瞬だけ隙が生まれた。柊人はその瞬間を見逃さず、懐に入り込む。だが、黒いナニカも反応して回し蹴りを放つ。

 

「くっ!!」

 

 ギリギリでガードしたが吹き飛ばされた。何とか受け身を取れたもののダメージは大きい。

 

「大丈夫か?」

「なんとか……でもヤバいですね……」

 

 戦況は絶望的だった。こちらの攻撃は全て効かず、向こうの攻撃はマトモに食らえば致命傷になりかねない。そんな状況だ。

 

「クク……」

「なに笑ってやがるんです?」

「あぁ……なんだか懐かしく感じてな」

 

 零斗は不敵に笑う。それを見た柊人も口角を上げた。二人ともこの状況を楽しんでいた。

 

『縺薙m縺呻シ』

 

 黒いナニカが絶叫しながら襲いかかってくる。しかし二人は余裕を持って回避し、反撃する。一撃目は空振りに終わったものの、再び襲ってきたところを今度は回避せずに受け止める。

 

 零斗はその腕を掴みながら関節技を決める。さらに空いた手で相手の顔面を掴んだまま地面に叩きつける。

 

「おいおい、どうしたァ?さっきより動きが直線的だぜぇ?」

 

 ギリギリと嫌な音をたてながらも相手を抑え込む。そして限界を迎えたのかボキィッ!という鈍い音が響いて腕が折れた。

 

「片腕もらーい……」

「うわ……エグいな……」

「お前には言われたくねぇよ」

 

 軽口を叩ける程度には心に余裕があるようだ。だが次の瞬間、予想外のことが起きた。

 

「ッ!?」

 

 黒いナニカの身体から複数の触手のようなものが伸びてきて零斗の四肢を掴む。突然の出来事に対応できず拘束されてしまった。

 

「へぇ?そんじゃ、我慢比べといこうか……てめぇの手足が砕かれるか俺の手足が千切られるか……」

 

 零斗が不敵な笑みを浮かべると、触手の先端が鋭利な刃物のような形になる。そして躊躇なく零斗の腕に突き刺す。血飛沫が上がり、苦痛に満ちた声が上がる。だが、それでも零斗は笑っていた。

 

「おいおい、こんなもんかぁ!?アハハッ!!こいつは傑作だぜェ!!!」

「何言ってんだバカなの?!」

 

 この期に及んで挑発しているあたり流石と言うべきか。だが、このままでは本当に死んでしまうだろう。すると、黒いナニカが急に苦しみ始めた。まるで何かに抗うかの様に全身が震えている。

 

「零斗!!一旦離れなさい!」

「はいよォ!」

 

 拘束を強引に解き、零斗が距離をとると同時に黒いナニカが爆発を起こした。咄嵯の判断で防御姿勢をとったおかげで軽傷で済んだ。

 

「イデデ……流石に無茶だったか……」

「なんでその傷でピンピンしてんです?さっきの僕よりもボロボロですよ?」

 

 柊人が呆れ顔で言う。零斗は自分の体を見回してからため息をつく。一方、黒いナニカの方にも変化があった。先程までとは違い、おそらく目にあたる部分が爛々と赤く輝いていた。

 

「やっと本気ってわけかい……」

『…………』

 

 黒いナニカは何も言わずに突っ込んでくる。先程のスピードとは段違いであり、一気に距離を詰められる。しかし、零斗の反応速度の方が僅かに上回りカウンターを仕掛ける。

 

「シッ!」

 

 拳を腹に打ち付ける。確かな手応えがあり、黒いナニカの動きが止まる。

 

「せらぁ!」

 

 すかさず柊人が追撃の蹴りを入れる。今度こそクリーンヒットし、黒いナニカが大きく後退する。だが、ダメージは全くと言っていいほど無いようですぐに態勢を立て直す。

 

「今のは多少は効いたと思ったんだがなぁ……」

「打撃はほぼ効果が無いようですね……ダイラタンシー現象に近いのでしょう……」

 

 物理攻撃があまり通用しないということだろうか。だとしたら非常に厄介である。

 

「はぁ……使うしかねぇか……」

 

 零斗が呟くと、小型のナイフを取り出し自分の指先に軽く当てる。するとそこから黒い液体が流れ出す。

 

「ばっ!?それは流石にダメでしょう!?」

「えぇ?もうこれしか無くなぁい?」

 

 零斗が冗談っぽく言う。黒い液体が何かと言うと強化細胞の老廃物の様な物で、耐性の無い者が触れれば全身が壊死するという劇物である。

 

「マジで洒落にならないんで止めてください……」

「しょうがないにゃあ……」

 

 そう言いつつ黒い液体を周囲にばらまく。その量は尋常ではなく、既に周囲の地面を黒く染めていた。

 

 黒いナニカは警戒心を強めたのか様子を見るようにゆっくりと近づいていく。黒く染まった地面に足が付いた瞬間、足元から黒い煙が立ち込める。

 

「フハハハハハハ……」

 

 零斗の高笑いが淡く響く。煙により、零斗と柊人の姿が掻き消える。

 

『縺ゥ縺薙∈縺?▲縺滂シ』

 

 黒いナニカは周囲を見渡すも気配を感じない。だが、少し離れたところで大きな爆音が鳴る。そちらに向かって走り出そうとするが……

 

「後ろですよ?」

 

 いつの間にか黒い影が背後に現れており、蹴り飛ばされた。吹き飛ばされた先で待ち構えていた零斗が追い討ちをかけるように殴りかかる。

 

「Boo……なんてな」

 

 強烈な一撃を腹部に入れる。打ち上げられたところにさらに蹴りを叩き込む。凄まじい勢いで飛んでいくも、途中で体勢を整えて着地した。だがそこにまた別の方向から柊人が現れる。そのまま蹴りを入れようとしたが寸前で察知したのかガードされる。

 

「『ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう』」

「『よい子はきっと皆勤賞冤罪人(えんざいにん)の解体ショー』」

『縺薙s縺ゥ縺ッ縺ェ繧薙□??シ』

 

 響く二重唱と共に無数の殴打が入る。黒いナニカは回避に専念するが、二人の連携は完璧だった。黒いナニカの身体に次々と傷が刻まれていく。

 

「『雲外蒼天(うんがいそうてん)ユートピア 指先ひとつのヒステリア』──スイッチ」

 

 歌いながら拳を振るう。黒いナニカも反撃に出るが悉く防がれてしまう。そして再び零斗の攻撃が再開する。

 

『更生 転生 お手の物 140字の吹き溜まり』──スイ『縺薙m縺呻シ』──へぇ?」

 

 パターンを読まれたらしく黒いナニカが歌を妨害する。

 

「──チェンジ」

「『さ ささ さささあさあ ユーモアなんて 必要ないのそうだから あぁ……あぁ……』」

 

 黒いナニカは急な変調に戸惑いつつも何とか対処しようとするが、対応が間に合わず、柊人の連撃をモロに受けてしまった。

 

「チェンジ」

「『八双で飛べ四方へ散れ散れ 未開の新天地、神前降伏党(しんぜんこうふくとう) 』」

 

 変調に次ぐ変調でペースも掴んだ筈のパターンも崩れてしまい、ついに決定的な隙を作ってしまった。そこを逃すことなく二人によるラッシュが始まった。

 

 もはやここまで来れば勝負は決まったようなものだ。黒いナニカは必死に抵抗するものの徐々に劣勢に立たされていった。そして…… 黒いナニカが膝を着く。

 

「柊人!抑えろ!」

「了解!」

 

 柊人が黒いナニカを羽交い締めにして抵抗出来ぬ様にする。

 

『髮「縺幢シ』

 

 黒いナニカは柊人を振り解こうと藻掻くが、柊人も必死で抑え込んでいる。

 

「さぁて、根比べといこうか!」

 

 零斗が黒いナニカの胸に腕を突き刺す。黒いナニカはより一層激しく藻掻くが零斗が空いている腕で金属糸を操り、拘束を強める。

 

「……ッ!みぃつけたぁ!」

 

 何かを掴んだ零斗が腕を引き抜くと黒いナニカは灰化して消え去っていった。

 

『ギュイイイイイィィィィ!!!』

 

 零斗の掴んだ物は体長二センチほどの白いムカデの様な生物だった。

 

「それは?」

「こいつが洗脳の要だ……随分いい趣味してんな、これを製造したやつは……」

 

 零斗は白いムカデを握り潰す。そして、その場に大の字で倒れ込む。

 

「終わった、んですかね……?」

「恐らくは……つーか終わっててくれ……」

 

 黒いナニカは完全に沈黙していた。その姿は最早、異形と呼べるものではなくなっていた。

 

「…………………………フガッ」

 

 濁った赤色の髪に、不気味なまでに白い肌、目付きが少々鋭い……一人の少女が眠りこけている。

 

「あ"ぁ"ぁ"……疲れた……」

「流石に堪えますね……」

「お前はそうだろうな、新しい身体の調子はどうだ?」

 

 零斗がニヤリとした笑みを浮かべる。柊人は軽く手を握って開く動作をしてみる。

 

「良い感じですね、違和感が全くありません」

「そりゃ良かったよ。流石は生存者(サバイバー)だな」

「……お願いですから、その異名で呼ばないでください」

 

 柊人が苦虫を噛み潰した様な表情をする。

 

「なんだっけか……どんな過酷な任務も無事で完了して?常に死と隣り合わせの環境でも生存して?その上、昔の決めゼリフは『俺が死ぬことは無い……死神だろうが返り討ちにしてやる』だったか?」

「ヌゥガァァァァァァァァ!!」

 

 頭を掻きむしって絶叫する。ちなみにこの情報は全て零斗が調べたものである。

 

「なんでこんな恥ずかしい過去を君が知ってるんだよ!?」

「さぁ?何でだろうねぇ?」

「ブッコロシテヤル!!」

 

 激昂した柊人が襲いかかってくる。しかし、零斗は軽やかなステップで全てを回避する。

 

「まぁ落ち着けって、俺はただ褒めてるだけだぜ」

「どこがだよ!?」

 

 その後も柊人の猛攻が続くが、零斗には掠ることさえなかった。

 

「んじゃ、バイタルチェックすっから大人しくしてろよ〜」

「クソッタレが……」

 

 零斗が機材を取り出して検査を始める。

 

「ふぅん、健康状態に異常無しっと。脳波も正常だし、あとは……」

「あの……早くしてくれません?」

「あぁ悪い、もう終わるから……んじゃ、注入するぞ……」

「ドンと来いです」

 

 零斗は最後に自分の血を柊人に投与する。すると数秒後に変化が訪れた。髪色は灰色になり、体躯を少しだけ大きくなり、瞳は黒い真珠のような輝きを放っていた。

 

「よし、無事に定着及び開花したな」

「えぇ、おかげさまで……」

「お前さ、俺以上に特異体質だよな……一人で複数の強化細胞に適用出来るの……」

「貴方以上の化け物ではありませんけどね……」

 

 柊人が大きく伸びをした。その仕草からは解放感のようなものを感じることが出来た。

 

「とりま、そこで眠りこけてるアホンダラは拘束しておくか」

「そうですね……起きないうちにやりましょうか」

 

 零斗がラピスを金属糸で拘束して、肩に担ぐ。

 

「よーし、とりあえずここから出ないといけないんだが……」

「?どうかしました?」

「いや……な……閉じ込める事に重きを置いてたせいで俺でもこの空間から出る事が困難なんだよなぁ……」

 

 零斗が遠い目をする。柊人はそれを聞いて、零斗の頭をぶん殴る。ゴンッ!と鈍い音が鳴り響いた。

 

「てめぇ、何してくれとんじゃボケェ!」

「それはこっちのセリフですよ!!何でもっと早く言わないんですか!?」

「だって言ったら怒られると思ってたからさ……それに、これくらいなら問題無いかなって思ってたし」

「あるわ!!大アリですよ!!!」

 

 再び柊人の鉄拳が零斗の頭に直撃する。

 

「しゃーない、これ使うか」

「何を使うんです?」

「デッデレッデテーテー↑テー↓テー↑……『転送門』〜」

「………………は?」

 

 零斗が懐から取り出したのは古びた両開きの黒い門だった。

 

「この門に魔力を注ぎながら開くと、自分の行きたい場所に一飛びできる物だよ」

「便利ですね」

 

 柊人の素直な感想である。

 

「ただし、一度行ったことのある場所じゃないとダメだけどな」

「へぇ、じゃあこれで……」

「あぁ、脱出出来るぞ」

 

 零斗がドヤ顔をしながら言う。柊人はそんな零斗の態度を見て、苛立ちを覚えたが、今は気にしないことにした。

 

「んじゃ、魔力を込めながら、門を開けまして……重っ!」

 

 この門は行きたい場所への距離が遠ければ遠い程、重く、魔力の消費も激しくなるのだ。

 

「あぁ……重いぃ……」

「頑張ってください」

 

 何とか門の扉を開くことに成功した。

 

「じゃあ、先に行ってるので」

「はぁ!?」

「ほら、急がないと置いていきますよ」

「ふざけんなテメェ……待てコラァ!!」

 

 柊人は振り返らずに、前へと進んだ。そして、その後ろを零斗が追いかけてくる。

 

 ●○●

 

 Side 零斗

 

「────と、まぁ、こんな感じだ」

「いや、何しでかしてんの?」

 

 傷の応急処置をしながら、ハジメ達に事の顛末を語っていた。

 

「と、そろそろだな」

「え?何が?」

 

 俺の呟きに反応したのは、浩介だった。

 

『零斗様、ただいま帰還しました』

「おつかれさん、メルド団長達は?」

『此方に……』

 

 俺の使ったホムンクルスのシャドウ(浩介が穢晶石を砕いた時に出てきたヤツ)が赤色の石を手渡してくれた。そして、それを砕くと赤い霧と共に傷だらけのメルド団長達が現れる。

 

「かなり傷が深いな……仕方ねぇか」

 

 異空間収納から神水を取り出し、傷の具合の酷い者に飲ませる。

 

「これで、大丈夫だな……白崎、辻さん、この人達のケア頼んだ」

「わ、わかったよ……」

「う、うん」

 

 二人の返事を聞き、俺は何時の間にか亀甲縛りにされている魔人族の元に行く。

 

「よぉ、嬢ちゃん。調子は如何かな?」

「最悪だね……それよりもあたしをどうするつもりだい?」

「そうだな……お前は俺達の敵だからな、殺すだけだ」

 

 俺はそう言って、額にエルガーを突き付ける。

 

「まぁ、素直に情報を吐いてくれるんだったら、最低限の人権は保証してやるが……どうする?」

 

 俺の言葉を聞いた魔人族は一瞬だけ、ほんの僅かにだが表情を崩す。だが、直ぐに醜悪な笑みを浮かべながら、吐き捨てるように言葉を発する。

 

「クソ喰らえ」

「そりゃ、残念だ……」

 

 エルガーの引き金を引いた。その弾丸は、彼女の額を貫通した。

 

「…………」

 

 エルガーをリロードしてから、もう一発、銃弾を撃ち込む。

 

「シャドウ」

『はっ、ここに……』

「そこの死体とラピスを持ってカルデアに行ってくれ……頼んだぞ」

『承知いたしました』

 

 シャドウにラピスと死体を渡す。シャドウは空間に溶ける様に消えていった。

 

「…………さ、行動開始だ。ささっと地上に行くぞ」

 

 振り返りながら、号令をかける。大半の奴らからは怯えと恐怖の感情が伺えた。

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

「………………」

 

 背後の天之河が何か言っているが、俺は無視して歩き出す。俺は別に聖人君子ではない。ただ、自分の為に殺しをするだけだ。そして、俺が殺さないとコイツらが死ぬから……そう自分に言い聞かせて、俺は足を進める。

 

 




後半がかなり駆け足になっちまったぜ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。