ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ハイ( * ・ω・)ノ゙お馴染みの零斗さんだ」
「柊人でーす」
「悠花でず……」

「さて、前回は……俺と柊人 VS ラピス の続きと魔人族の女の始末だったな……つーか、悠花は何時まで泣いてんだよ……」
「だっでぇ……」
「まったく…ほら、僕はちゃんと此処に居ますから……ね?」
「柊゙人゙〜!!!」


「たっく……今回はオルクス大迷宮から地上へ戻ってからの話だ。楽しんでくれ」


「「「余りにも空虚な正義……」」」


余りにも空虚な正義

 Side 零斗

 

「ぐへへへへ……ヘブゥ!?」

「お前、マジでいい加減にしろよ?」

 

 何度目かのおっさん化した鈴を粛清する。地上を目指して進む中、シアやエト、アルテナにセクハラをかましているので、その都度俺が制裁を加えているのだ。

 

「痛い……」

「ゴム弾なだけありがたく思え」

「ゴム弾でも痛いもんは痛いの!」

「お前がセクハラしなけりゃいい話なんだが?」

 

 俺と鈴以外のメンバーは、先頭で魔物をデストロイし続けているハジメに戦慄している。

 

「俺、あんな奴に喧嘩ふっかけてたんだな……」

「俺……二度と南雲には逆らわない事にする……」

 

 などとボソボソ言っている。俺はそれを無視して、前に進むことを促す。

 

「お、やっとか……」

 

 前方にオルクス大迷宮の入場ゲートが見えた。入場ゲートから外に出る。途端に日差しに照らされる。全員がほっと安堵の息を吐いた。

 

「あっ!パパぁ──ー!」

 

 間髪入れずに、声を張り上げながら駆け寄ってくる小さな人影が一つ……

 

「ミュウ!」

 

 ハジメはしゃがみ込んで、勢いよく飛び込んできたミュウを抱きかかえる。ミュウは、ハジメの首筋に顔を埋めてスリスリしながら幸せそうな表情をしている。

 

「おかえりなのー!!」

「うん、ただいま。いい子にしてた?」

「うん!」

 

 傍から見れば微笑ましい場面だ。だが、その後ろに控える鬼の形相をした女がいる事を忘れてはいけない。

 

「ミュウ、お迎えありがとう。ティオさんはどうしたの?」

「ティオお姉ちゃんは……」

「妾は、ここじゃよ」

 

 人混みをかき分けて、ティオが姿を現す。俺や柊人を除いた男連中はティオの豊満すぎるバストに目を奪われていた。

 

「おい、ティオ。こんな場所でミュウから目を離すなよ……」

「目の届く所にはおったよ。ただ、ちょっと不埒な輩がいての。凄惨な光景はミュウには見せられんじゃろ」

「それなら仕方ねぇか……で?ちゃんと抹殺したのか?」

「もちろんじゃよ」

 

 どうやら、ミュウを誘拐でもしようとした阿呆がいたらしい。とんだ命知らずが居たもんだな。目立つ容姿だし、フードを被せていたんだが、裏目に出ちまったか……

 

「ハジメくん!どういうことなの!? 本当にハジメくんの子なの!?誰に産ませたの!?ユエさん!?シアさん!?アルテナさん!?それとも、そっちの黒髪の人!?まさか、他にもいるの!?一体、何人孕ませたの!?答えて!ハジメくん!」

 

 白崎がものすごい形相でハジメを捲し立ててくる。そんな白崎の脳天に軽くチョップを落とす。

 

「落ち着け、暴走特急お転婆娘」

「あぅ……」

「ミュウはハジメの子供じゃねぇよ……話すと長くなるから端折るが、エリセンに付くまで保護する事になった子だ……そこで別れる事が出来るかは分からんがな」

 

 ハジメの親バカレベルが上がっている気がするのは気のせいだろうか? まあ、気持ちはわかるけどさ。

 

「して、レイト殿……後ろの者達は?」

「知り合いだ……ここまで連れて来れば御役御免だ。さっさと支部長に報告して、街を出るぞ」

 

 ティオは、俺の言葉に疑問符を浮かべていたが、すぐに納得したようだ。

 

「おい、零斗!俺と話をしろ!」

 

 天之河が突っかかって来る。めんどくさい事この上無い……

 

「話した所で時間の無駄だ……俺はこれで失礼する」

 

 そう言って歩き出す。背後からは未だ喚き散らす声が聞こえてきたが無視をする。

 

「いい加減にしろ!魔人族の彼女を殺した事は決して許されない事だ!お前は理由を付けてその事実を認めようとしない卑怯者だ!」

「…………」

「黙ってないで何とか言ったらどうだ!彼女を殺す必要はなかった筈だ!捕虜にすれば良かった筈だ!何故……何故だ!お前は人の心の無い化け物──ー」

「即刻その口を閉じろ」

「ッ!?」

 

 殺気を込めて睨むと、天之河がビクっと震えた。そして数歩後退りをして、尻もちをつく。他のクラスメイト達も同様に身体を震わせている。

 

「貴様に私の何が分かる……化け物?随分な物言いだな」

「ひっ!」

 

 一歩ずつ近づいていく。それに比例して怯えていく。腰を抜かし、涙を流す奴もいる。

 

「私だって殺したくて殺したわけじゃない。だが、あいつを殺さなければ全員死んでいたかもしれないんだぞ?」

「……な……に…………を…………」

 

 天之河の胸ぐらを掴み、無理やり起き上がらせる。

 

「彼女がもしも自決と同時に辺り一帯を焦土と化せる様な魔法を発動させていたら?捕虜としたとして、護送中に誰かしらを人質にして逃げる可能性もある」

 

 彼女を殺さずいた場合にあったかもしれない可能性を話す。

 

「命は一度失えば二度と戻ることは無い。だから、彼女を殺した。私はハジメやエト、白崎や雫……大切な者達を守るため……自分のエゴを押し通しただけだ。それを責められる謂れはない」

 

 俺はあの場で出来うる限りの最適解を導き出したに過ぎない。それが人殺しだったというだけの話だ。

 

「この世界の原理は基本は等価交換だ。何かを得るには何かを失う……他者を救えば他者が犠牲になる……そう出来ている」

 

 天之河から手を離すと、そのまま地面に崩れ落ちた。

 

「貴様のそれは貴様の掲げる空虚な正義から来る考えだろうな。所詮、貴様は誰かを救う事で自分を肯定したいだけだ」

「違う!俺は……!」

「なら、なぜ白崎やハジメに執着する?幼馴染だからか?忌み嫌う者だったからか?それとも──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────自分を飾り付ける脇役だからか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の一言で、空気が凍った。誰も何も言わず、ただ立ち尽くしている。

 

「なに……を……言っているんだ……?」

「わからないか?つまりは、都合の良い人形が欲しいだけなんだろう?自分が正しいと……自分が一番だと思い込む為の道具が欲しかっただけだろう?」

「ふざ……けるな!俺の事を侮辱するつもりか!」

 

 ようやく、反論できるくらいの元気は出たみたいだ。だが、その程度で、止まれるほど優しくはない。

 

「侮辱?私はただ事実を述べているだけだ」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 激昂した天之河は、聖剣を抜き放ち斬りかかってくるが、俺は特に構えることも無く、自然体のまま佇んでいる。

 

「………………」

「零斗!!!」

 

 聖剣は、俺の胸から腹にかけて袈裟懸けに切り裂いた。鮮血が飛び散る。

 

「……これが貴様の正義か?」

「えっ……」

 

 呆然としたまま、動けずにいる天之河は、俺の問いに答えることが出来ない。白崎達が悲鳴を上げる。

 

「自分の正義に従わない者は貶し、虐げ、傷付ける……俺の正義の方が強いから、間違っているから、気に食わないから、そんな理由で他人を切り捨てる事が、貴様にとっての正義だ」

「あ……あ……」

「貴様は、他人の痛みを知らない。自分の思い通りにいかないと駄々をこねる子供と同じだ。そんな人間が、世界を良くする事など出来るはずがない」

「…………な……は…………え……」

「貴様がやっている事は、ただの八つ当たりだ。自分に出来ないことを棚に上げて、喚いている餓鬼と何ら変わりはしない」

 

 天之河の顔は青白く染まり、目は焦点が合っていない。どうやら、俺の言っていることが理解できていないようだ。

 

「……俺は……俺は……勇者だ……俺は……俺は間違っていない……俺は勇者なんだ……俺が正しい……俺は正しい……俺は────────」

 

 ブツブツと呟く姿は壊れた機械のようにも見える。

 

「……くだらん、そんな無価値な称号に縋るしかないとはな……」

「──ーっ!?」

「結局、貴様は何も見ていない。周りも、自分自身も、その目で見ているようで、実際は見てすらいない。貴様は、目の前の真実を見ようとしていない。貴様が見ているのは、貴様が信じたいものだけだ」

 

 天之河は顔を伏せて肩を振るわせ始めた。

 

「……わかったようなことを言うな!お前に俺の何がわかる!この人殺しめ!」

「……」

「お前なんか……お前なんか……死ねばいいんだ!」

「…………」

「お前は死ぬべき人間だ……お前のような人間は生きているだけで害悪だ!」

 

 顔を上げた天之河は、瞳孔が開ききっていた。そこには、狂気と憎悪が入り交じっており、正気を失っていることは一目瞭然だ。

 

「あぁ、そうだな……私は死ぬべき人間だ……私は絶対悪だ、私は理性の無い獣だ、私は人類悪だ」

「……!?」

「そうさ、私は最低最悪の人殺しだ。生きる資格なんて無い……存在する意味も無い……が生きてるせいで、どれ程の人が不幸になっているのか……考えただけでも反吐が出る」

「……お……まえ……」

 

 俺は自嘲気味に笑う。俺は何故こんなにも喋り続けているのだろうか…… 何故俺は今笑っているのだろうか…… 何故俺は…… 涙を流しているのだろうか……

 

「だから、殺されても文句は言えない。誰かに殺されることで、少しは償えるかもしれないな」

 

「お前は言ったな?私を人殺しだと……ああ、確かにそうだ。数え切れない程の人間を殺してきた……」

 

「だが、殺したかったわけじゃない。守りたかった。救ってやりたかった。でも、出来なかった。私には力が足りなかった」

 

 俺は何を言っているんだろうな…… これじゃまるで、懺悔じゃないか…… 誰かに許して欲しいと思っているみたいじゃないか…… 馬鹿らしい…… 俺は、ただの偽善者に過ぎないというのに…… 俺は、ただの臆病者だというのに…… 俺は、ただの愚かな道化師だというのに……

 

「だから私は絶対悪で在ることを選んだ……人類悪で在ることを望んだ」

「……な……ぜ……?」

「私が殺してきた者達にも家族や友人、恋人、同胞がいた筈だ……そして、その全てを奪ったのは、私の弱さだ。私は自分が憎い。弱い自分が……卑怯な自分が……私は大嫌いだ」

 

 天之河は、信じられないものを見たように目を丸くしている。俺が本音を語っているのが余程意外だったのだろう。

 

 俺だって、不思議だよ。なんせ、俺が本音を語ること自体、初めてに近いんだからな。

 

「私は私自身を嫌悪する……救える筈のない者達を救う術を今でも模索している私が……全ての者を救う……そんな空虚で脆弱な正義が嫌いだ」

 

 俺は、自分の正義が嫌いだ。俺の正義は、多くの犠牲の上に成り立っている。俺は、この手で、何人もの罪なき人々を葬ってきた。俺は、この身が朽ち果てるまで、罪を贖わなければならない。それが、俺に出来る唯一の事だから……

 

「だから、殺すんだ。敵を殺し、己を殺す。それが、私の正義(エゴ)だ」

 

 俺の正義(エゴ)は、ただそれだけだ。それ以外は何もない。ただ、自分が救われたいというだけの自己中心的な考えに過ぎない。

 

「……この世に絶対的な正義など存在しない。あるのはただ一つ、自分の信じる"何か"だけだ」

「貴方は……」

 

 エトが何かを言おうとして口をつぐむ。その先は言ってはならないと察したのだろう。

 

「……私は、貴様とは違う。私は……ただの殺人鬼だ」

 

 天之河は、膝から崩れ落ち力無く項垂れる。俺は踵を返し、ハジメ達の元へと向かう。

 

「……ハジメ、俺一度はカルデアに戻る。お前はこのままグリューエン大火山に向かえ」

「え?」

 

 驚愕するハジメの横を通り過ぎる。背後からハジメ達が俺を呼ぶ声が聞こえてくるが、立ち止まるつもりはない。

 

 

 




ORT総力戦で発狂しそうなんだが……なんであんな仕様にしたんだよ(´・ω・`)
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