ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ヽ(。・ω・。)ドウモハジメです」
「白崎です」
「……ん、ユエ」

「さて、前回は……零斗が自分自身の話をしたね……」
「あんなに悲しそうな零斗君初めて見たよ……」
「……泣いた顔も初めてだった……」

「……あ、今回は零斗がカルデアに向かった後の僕達目線の話だ」


「「「想いを花に託して」」」


想いを花に託して

 Side ハジメ

 

 零斗が僕達を置いて行ってから、少し時間が経った。とりあえずはギルドに依頼の報告をして、今後の方針を話し合う為にギルドの一室を借りた。

 

「さてと……これからどうしよう?」

「それは……レイトさんの指示通りに『グリューエン大火山』に行くしか無いんじゃ……」

 

 そうだよね……でもやっぱり不安だなぁ……大丈夫かな?

 

「今……戻りました……」

「エトさん……その様子じゃ……」

「えぇ、追跡は振り切らてしまいました……ただ一言だけ伝言を頼まれました」

 

 伝言か……一体どんな内容なんだろう?気になるけど……なんだろう、すんごい嫌な予感がする。

 

「伝言は後ほど伝えます……それよりも今は今後の方針を決めましょう」

「……うん、そうしようか」

 

 僕は頭の片隅で感じている何かを無視して話を進めることにした。

 

「と言っても、零斗の指示通りに『グリューエン大火山』に行くしかない気がするんだよね……」

「……とりあえずは次の行先は『グリューエン大火山』のあるアンカジ公国ですね」

 

 僕らの話し合いの結果は結局それだった。というよりそれ以外に選択肢がないというのが現状なのだけれど……

 

「……ねぇ、ハジメ君」

「ん?何?香織さん」

 

 香織さんは何故か僕の方をじっと見つめてくる。

 

「何か言う事があるんじゃないかな?」

「へっ?!な、何かって?」

 

 香織さんの言っている事が分からず、思わず聞き返してしまう。

 

「……ただいま?」

「うん……おかえりなさい……会いたかったよ」

 

 香織さんは涙を浮かべながら微笑んでくれた。そんな香織さんを見て、少しだけ胸が痛む。

 

「むぅ〜!二人ともずるいですぅ!」

 

 シアさんは突然大きな声を上げて僕に飛びついてきた。

 

「わわっ!し、シアさん!?」

「二人きりの甘い空間を作ってイチャイチャしないでください!それを見せられる私達の身になってください!」

「あ、甘い空気なんて作ってないよ!」

「くふふ……確かに、甘々な空気ではありませんでしたね」

「エ、エトさんまで……」

 

 二人の反応に苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「……ところでハジメ君」

「はい!なんでしょうか!?」

「そろそろ『さん』付けはやめてくれないかな?」

 

 突然の事に頭が真っ白になった。そして、頭の中で色々な感情や思考が入り乱れる。

 

「……ダメかな?」

「ダ、ダメじゃないです……」

 

 なんとか絞り出した言葉はそれだけだった。恥ずかしくてまともに顔を見ることが出来ない。

 

「じゃあ、早速呼んでみてくれる?」

「えっと……か、かおり……?」

「……もう一回言ってくれる?」

「うぅ……かお……り……」

「……ふふっ♪」

 

 香織は満足そうな笑みを浮かべていた。きっと今の僕は耳まで真っ赤になっている事だろう。

 

「もう!本当にラブコメしてますね!」

「……ずるい」

「パパと香織お姉ちゃんラブラブ!」

 

 シアさんとユエ、ミュウに茶化されたが、それに言い返す余裕すら無かった。

 

「ハジメ君」

「ひゃい!」

「これからもよろしくね?」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 零斗……僕、香織さんには勝てそうにないよ……

 

「あ、そういえばエトさん。レイトさんからの伝言ってなんだったんですか?」

「あぁ、そうでしたね。忘れていました。では早速お伝えしますね」

 

 エトさんは一息ついてから口を開いた。

 

「『ハジメ、いい加減にユエやシア達の気持ちにもきちんと向き合え』……だそうです」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 沈黙が流れた。しばらくの静寂の後、香織が口を開く。

 

「ねぇ、ハジメ君。私の勘違いかもしれないんだけど……ユエさんやシアさん達の事……好きになったの?」

「……はい」

「……そう」

 

 再び訪れる沈黙。この場にいる全員が僕の答えを聞いて、それぞれの表情をしていた。ユエとシアさんは嬉しそうにニヤニヤしている。アルテナは顔を真っ赤にして俯いている。ハァハァと息を荒げているティオさん。

 

「ねぇ?ハジメ君?」

「はい……」

「みんな大好きなんだよね?もちろん私も好きだよね?」

「はい……」

「じゃあさ……ハーレム作っちゃいなYO!」

「はぃ?」

 

 突然のことに思わず変な声が出てしまった。しかし、香織は全く気にしていないようで話を続ける。

 

「だってさ、私たち全員ハジメ君のことが好きなんだよ?なら、みんなで仲良く幸せになろうよ!一夫多妻制だよ!」

「いや、あの……」

「大丈夫!私は寛容だから!ね?」

 

 僕の言葉を遮るように香織が捲し立てる。どうしよう……なんかとんでもない方向に話が進んでる気がする。というより絶対進んでるよね? 僕は助けを求めて視線を巡らせる。

 

「……ん、賛成」

「私も賛成ですよぉ〜」

「わ、私も異論はありません!」

「ハァハァ……素晴らしい考えじゃ!」

 

 味方がいない……僕は一人孤立無援の状況だった。

 

「ほら、ハジメ君。反対意見は無いみたいだし、決まりだね!」

「ちょっと待って!僕は……」

「……ハジメ君、まさかとは思うけど、女の子にここまで言わせておいて逃げるなんて事はしないよね?」

 

 香織さんは笑顔なのに目が笑ってないし、背後には般若のス〇ンドが出現している。

 

「ハジメ君はハーレムを作る!私達はそれを受け入れる!これで万事解決だね!」

 

 香織さんの勢いに押されて何も言えなかった。というより、何か言ったらもっと酷い状況になるような気がする。

 

「……その場合って正妻は誰になるんでしょう?」

「「それは当然、私に決まって──ーは?」」

 

 アルテナさんの言葉に反応したユエと香織がお互いを睨みつける。そしてバチバチという擬音が聞こえてきそうなほど火花を散らしていた。

 

「……私に決まってる」

「いやいや、私とハジメ君はカレカノなんだよ?ここは譲るべきだと思うんだよね」

「……関係ない」

「関係あると思うけど?」

「無い」

「ありますぅ〜!」

 

 二人はお互いに一歩も引かない様子だ。そして、その中心に居るはずの僕のことを完全に無視している。

 

「あの……そろそろ僕のことを……」

「「黙ってて!!」」

「は、はい……」

 

 二人とも怖い……特に香織さんの豹変ぶりに恐怖を感じずには居られなかった。

 

「……(コンコン)ちょっと良いかしら?」

 

 突然部屋の扉がノックされる。入ってきたのは、八重樫さんだった。僕は助けを求めるべく、必死にアイコンタクトを送る。

 

「……ハジメ君、私でも香織を止めることは無理よ」

「……えっ?」

「だって、香織の目が完全に据わっているもの」

 

 そう言われて香織さんを見ると、完全に瞳孔が開いていた。

 

「……八重樫さん、要件とは?」

 

 エトさんが空気を読んで話を逸らす。助かった…… 心の中で安堵のため息をつく。

 

「……私も貴方達の旅に連れて行って欲しいの」

「……それはどういう理由で?」

 

 エトさんは少し警戒しながら尋ねる。まぁ、いきなりそんな事を言われたら当然の反応だろう。八重樫さんは一瞬躊躇ったように見えたが、すぐに決意のこもった目をした。

 

「零斗を隣で支えられるくらい強くなりたいから」

「……つまり、零斗の傍にいたいと?」

「そうね……」

「なるほど、分かりました。歓迎します」

 

 エトさんは即答した。あまりにもあっさりとした返答だったので、僕も含めて全員が驚いた。しかし、一番驚いているのは当の本人の八重樫さんだった。

 

「えっ?本当にいいの?」

「はい。それに、戦力が増えるのはこちらとしても嬉しいことです」

「なんか、もっと言われると思って覚悟していたんだけど……」

 

 八重樫さんは肩透かしを食らったかのような顔をしている。

 

「零斗が認めた人の内の一人ですからね。それに、他の方達も反対しないでしょう?」

「……ん」

「もちろんですよぉ!」

「問題ありません!」

「異論なしじゃ!」

 

 全員が肯定した。こうして、僕達の旅に新たな仲間が加わった。

 

「では、改めて……次の攻略目標はアンカジ公国に存在する『グリューエン大火山』になります……準備が出来次第出発しましょう」

 

 エトさんが締めくくり、話し合いは終了した。その後、香織が暴走して僕が大変な目にあったり、ユエが香織に宣戦布告したり、ミュウが香織の膝の上で寝たり、アルテナさんが香織の胸を見て落ち込んだりと色々あった……

 

「…………」

「どうかしましたか?ハジメさん」

「うん、ちょっとね……ごめん、少しの間席外すね」

 

 部屋の外から僅かに煙草の匂いが漂ってきた。僕は一言断ってから部屋を出る。そして、煙草の匂いを辿って行く。

 

「……ここは……」

 

 たどり着いた場所は、ギルドの裏手にある廃れた広場だった。静かで、人気もなかった。そして、広場の中心には小さな噴水が鎮座していた。何となく近ずいて見てみる噴水の縁に吸いかけの煙草と青いアネモネが一輪置いてあった。

 

「青いアネモネの花言葉は『固い誓い』……だそうですよ」

 

 いつの間にか僕の後ろに来ていたエトさんが呟いた。

 

「この花を贈るということは、そういうことなんでしょうね……」

 

 エトさんは置かれたアネモネを手に取り、愛おしむように見つめている。

 

「………… 」

 

 エトさんはアネモネに優しく口づけをした。すると、ゆっくりと凍り付いていった。僕はそれを無言のまま見ていた。

 

「零斗も随分と不器用ですね……こんな形でしか、自分の気持ちを素直に伝えられないなんて、まるで子供みたいですね……」

 

 エトさんはそれだけ言うと、氷漬けになったアネモネをポケットに入れてその場を後にした。

 

「……」

 

 僕は無言でその場に立ち尽くしていた。

 

 




青いアネモネってめちゃくちゃ綺麗じゃないですか?
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