ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よいしょ…と、‪(*´꒳`∩)‬ハイ、八重樫 雫よ」
「浩介でーす」

「えぇっと前回は……南雲君がハーレムを結成したのと私が南雲君達と一緒に行動する事になったわね」
「にしても、零斗も不器用だよなぁ……面と向かって話しろよな……まったく……」
「そうね……次会ったら説教でもしようかしら?」
「……その時は程々にな?」

「今回は私が南雲君達と行動を共にしようとした理由よ……楽しんで行ってちょうだい」

「「不穏な影は明確な悪意を孕んで歩み寄る……」」


不穏な影は明確な悪意を孕んで歩み寄る

 Side 八重樫

 

 

「……俺は……俺は間違っていたのか?いや、俺は…………」

「光輝……」

 

 部屋の隅でぶつぶつと呟きながら、暗い表情をしている光輝。

 

 南雲君達がギルドに依頼の報告へ行っている間に、光輝を連れて宿に戻ってきたが……

 

「この調子じゃ……もう戦うのは無理かもしれないわね……」

 

 私は溜息を吐く事しか出来なかった。

 

「……私はどうすれば良かったんでしょうね」

 

 私は椅子で項垂れながらそう呟く。本当にどうしたらよかったんだろう……光輝を止めるべきだったの?零斗を連れてあの場を離れるべきだったの?それとも何も言わずにただ傍にいるべきだったの?……分からない。何が正しい行動なのか私にはさっぱりわからない。

 

「今考えて無駄ね……」

 

 軽く溜息を吐き、部屋の外へ出る。するとそこには最近になってやっとまともに認識出来る様になってきた遠藤君がいた。

 

「……八重樫さん、天之河の様子はどんな感じ?」

「しきりに自己否定と自己肯定を繰り返してるわ……」

 

 私の言葉を聞き、遠藤君は難しい顔をする。そして少し間を開けてから口を開いた。

 

「……正義ってなんだろうな」

「えっ?」

 

 突然の問い掛けに思わず聞き返してしまう。しかし遠藤君はそんな私の反応を無視して話を続けた。

 

「天之河の言う正義は確かに歪だけど理にはかなってる……零斗の掲げる正義も冷徹な物だけど確かに正義だ……」

「何を言って……」

「俺達は……正しい選択をしたのか?」

「ッ!?」

 

 遠藤君のその言葉を聞いた瞬間、何かが頭の中でカチリとはまった気がした。そうだ、私は何のために戦っているの?魔人族を殺すため?それとも人間という種族を守るため?

 

「……分からないわ」

 

 正直に答える。それが今の自分の気持ちだから。私は自分が思っている以上に迷っていたらしい。自分の信じていた物が分からなくなる程に。遠藤君はまだ難しい顔をしながら考え事をしている。

 

「あれ?遠藤君に八重樫さん?こんな所で立ち尽くしてどうしたんですか?」

「先生?」

「ああ、いや、何でもないんで、気にしないで下さい」

 

 そこに愛子先生が現れた。遠藤君は誤魔化すように笑顔を浮かべている。でも愛子先生はその笑みを見て首を傾げた。

 

「嘘ですね。貴方のその笑い方は何かを隠してますよね?隠し事は無しですよ!」

「あ~、はい、分かりましたよ……でも、せめて部屋に移動してって事で……」

 

 遠藤君は諦めた様子で部屋へ移動する事にした様だ。

 

「それで?一体どうしたんですか?」

「いえ、大したことじゃないんですよ……ちょっと自分達の行動について考えていただけですから」

 

 遠藤君は苦笑いしながら話す。愛子先生はそれを聞いて納得していた。

 

「今までの行動が正しかったのか……ですか……」

「はい……」

「うーん、私にはよくわかりませんけど、少なくとも私達の行動は間違っていないと思いますよ!きっと大丈夫です!!」

「だと良いんですけどね……」

 

 愛子先生は自信満々に答えたが、遠藤君の表情はあまり明るくはならなかった。

 

「……それに今ここで行動の正しさを決めるのは不可能です」

「え?」

「何故ならそれは未来が決める事であって、過去の人間がいくら考えたところで意味は無いのですから」

「…………?」

「私が言いたいのはつまり、今は悩めばいいということですよ!!悩むだけ悩んだら後は前に進むのみ!そういうことです!!」

 

 遠藤君は最初ポカンとした表情をしていたが、やがてクツクツと笑い始めた。遠藤君につられて私も笑う。なんだか久しぶりに心の底から笑えたような気がした。

 

「ありがとうございます。なんかスッキリしました」

「そうですか!それでは頑張ってくださいね!!」

 

 遠藤君が礼を言い、愛子先生は激励を送る。その時の遠藤君の瞳からは迷いの色は消え去っていた。

 

「さて、八重樫さん……貴方は今何がしたいですか?」

「え?」

 

 唐突に質問され戸惑ってしまう。何がしたいと言われても……しばらく考えてみたけれど結局思い浮かぶことは無かった。

 

「……特に無いみたいですね。それじゃあこういう時はシンプルに行きましょうか」

 

 愛子先生は悪戯っぽく微笑むと、ビシッと指をさしてきた。

 

「八重樫さん、零斗君に告白しましょう!」

「……へぇ?」

 

 突然の発言に思考停止してしまう。こ、こくはく?コクハク?KOKUHAKU?えっと……誰に?

 

「ちょ、ちょっと待ってください!どうしてそうなるんですか!?」

「えっ?だって八重樫さん、零斗君の事好きでしょ?」

 

 ……はい、好き……大好き……愛しています……ってそうではなく!!!! 自分で自分にツッコミを入れつつ、慌てて弁明をする。

 

「ち、違いますよ!?私じゃ、彼と──「ふぅ~ん……じゃあいらないのかぁ?」……いる……かも……」

「じゃあ行きなさい!」

「ええっ!?」

 

 いきなりの展開に頭が追いつかない。そんな私に追い打ちをかけるかのように、今度は遠藤君まで参戦してくる。

 

「貴方は他人の事を……それも自分に近いし人の事を優先して、自分の事を蔑ろにしている節があります」

「そ、そんなことは……」

「暴走特急の白崎と自己満正義の天之河に脳筋ゴリラの龍太郎の制御」

「……はい……」

 

 遠藤君にまで言われてしまった。ぐうの音も出ず黙り込む私に愛子先生は更に続ける。

 

「だから少しは我儘になりなさい。そして幸せになりなさい……これは私からのお願いです」

「……はいっ」

 

 愛子先生に真剣な目で見つめられる。私には勿体ないくらいの言葉だ……でも嬉しく思う。だから私は精一杯の笑顔で返事をした。

 

「……まぁ、当の本人は現在進行形で行方不明だけどな」

「え!?そうなんですか!?」

「……ええ、実は……」

 ガチャ「ふぅ……疲れ──ーはえ?」

「あ、ヤッベ」

 

 部屋の扉が開かれたかと思えば、愛子先生がそこに立っていた。そして、私の隣にも愛子先生が居る。

 

「ん?(困惑)……うん(考察)……ん?(疑問)……うん(解決)……レモン一個に含まれるビタミンCはレモン一個分だよな」

「四個分とも言われてるがな」

 

 遠藤君が頓珍漢な事を言うと、愛子先生に化けていた零斗が冷静に解説を加えていた。

 

「まぁ、とりあえずは……サヨナラ!」

「「逃がすかァ!」」

 

 零斗は即断で逃走を選択したようだが、私と遠藤君が捕らえに掛かる。しかし動き出した時には零斗の姿は忽然と消え去っていた。

 

「ハァ……もう、なんか色々と疲れたわ……」

「奇遇だな。俺もだ」

「「……」」

 

 お互いの顔を見合わせ苦笑いを浮かべる。すると遠藤君は私の顔をじっと見てきた。

 

「……八重樫、お前はハジメ達と一緒に行動した方が良いかもしれないぞ」

「それはどういう意味かしら?」

「え?だって、零斗の傍に居たいんだろ?」

「ッ!?」

 

 遠藤君に図星を突かれ顔が熱くなるのを感じる。遠藤君は呆れたように溜息をつくと、私に向かって言い放った。

 

「……零斗に言われたろ、少しは我儘になれって……今更、我儘言っても文句は言われねぇよ」

「……遠藤君はどうするの?」

「俺は……」

 

 遠藤君はそこで言葉を止める。そして考え込んでいるようだった。

 

「……そうだな、俺は俺で好きにやるさ」

 

 遠藤君はニヒルな笑みを溢すと部屋から出て行った。

 

「……もう少し我儘に……」

 

 零斗と遠藤君の言葉を反駁(はんばく)しながら考える。私には何が出来るだろう?どうすれば良いのだろうか? 分からない、でも、今はただひたすら前に進むだけだ。

 

「南雲君達、まだ居るといいのだけれど……」

 

 そう呟きながら、私は足早にギルドへ向かった。

 

 ●○●

 

 Side 愛ちゃん

 

 八重樫さんや遠藤君、私に化けていた零斗君と一悶着あった後、彼等はどこかへ行ってしまった。

 

「すっかり遅くなってしまいましたね……」

 

 廊下に面した窓から差し込む夕日が、反対側の壁と床に見事なコントラストを描いている。今日はこれから、生徒たちと夕食を食べることになっている。

 

「ちょっと、そこ行くお嬢さん」

「……私ですか?」

 

 声をかけられ振り返ると、灰色の長髪を後ろで束ね、顔の上部を黒いハーフマスクで隠した長身の男性がいた。

 

「そうそう、君。教会からの命令で君を迎えに来ました〜」

 

 男性は馴れなれしい態度のまま話しかけてくる。

 

「すみません、この後直ぐに教え子達と食事する予定があるので……」

「いや、問答無用で連れて行く……抵抗はしたければしてくれていいぜ」

 

 男性の瞳が怪しく光る。その瞬間、頭に霞が掛かったような感覚に襲われた。思考が鈍くなり、意識が薄れていく。思わず、魔法を使う時の様に意識を集中させると、思考に掛かっていたモヤが晴れていく。

 

「ありゃ?あの神さんから借りた『魅了』弾かれちまったか……流石は豊穣の女神だな」

 

 頭の中で何かが警鐘を鳴らす。この男は危険だと本能が告げている。しかし、体が動かない。男性が近づいてくる。

 

「『魅了』が効かないなら仕方ない……ちょっと荒っぽくなるけど許してくれよ」

「誰か助け──ー」

 

 助けを求めようと叫んだ直後、首筋に鋭い痛みを感じた。そのまま、私の意識は闇へと落ちていった。

 

 ●○●

 

 Side 三人称

 

「お仕事終了……っと……さっさと逃げますか」

 

 愛子を抱えた男は周りの空気に溶ける様に消えていった。廊下には元の静寂が戻り、いっそ不気味なまでに無音となる。

 

「……誰かに知らせないと!」

 

 廊下の先にあった客室のドアが開いて、一人の青年が飛び出して来た。彼は愛子達が消えた方向とは反対方向へ走っていく。

 

「ッ!?」

「よぉ、少年……そんなに急いでどうしたんだ?」

 

 曲がり角に差し掛かる直前、愛子を抱えて消えた筈の男が立っていた。男はニヤリとした笑みを浮かべて、青年に問いかけた。

 

「え、あ、えっ?」

 

 突然の出来事に頭が追いつかないのか、青年は戸惑いの声を上げていた。

 

「まぁ、良いか……犯行現場を目撃したんだ……お前も連れて行くとしよう」

 

 そう言うと、男は青年の鳩尾に拳をめり込ませ、意識を奪う。そして、青年を背負うと再び姿を消した。その場には誰もいなくなり、まるで最初から何も無かったかのように静まり返った。

 

 




愛ちゃんと一緒に攫われたのは一体誰なんだろうなぁ()
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