Side 零斗
「じゃあ、キリキリ吐いて貰おうか」
「ん、早く吐けば楽になる」
南雲やユエ……主に南雲ハーレムのメンバーが全力の殺気を放ちながら、俺に持っている情報の全てを吐く様に脅迫してきた。
「まさかこんなに早くバレるとはなぁ……演技には自信があったんだがなぁ」
俺はそう言いながら頭を掻いた。さてと……どこから話すべきか……取り敢えず、俺の正体を明かす事から始めるとするかな。
「改めて自己紹介しよう。俺は湊莉 零斗……一応は人間で、お前達とは並行世界から来た者だ」
その言葉を聞き、全員が唖然とした表情になった。そりゃそうだろ……いきなり別時間軸とか言われても理解出来るはずがない。そして一番最初に口を開いたのは天之河だった。
「……ふざけているのか?」
「いや?本当だが?」
天之河の言葉に対して、俺は真顔で返す。すると今度は八重樫が質問を投げかけてきた。
「並行世界って言うけど具体的にどんな場所なのかしら?」
「こっちの世界とそこまで大きな差異は無い」
「……この地球にはどうやって来たんだ?」
「レイシフトだ……一言で言えば特定の場所に、特定の時間に移動できるシステムみたいなもんなんだが……」
そこで一度言葉を区切り、皆の顔を見渡してから再び話し始める。
「今回はこっちの世界に引きずり込まれたみたいでな、どうすれば帰るのかは大方検討は着くんだが……如何せん情報が無さすぎて手詰まりだったんだよ」
そこまで説明したところで、白崎が疑問を口にする。因みに先程までお怒りモードだった南雲ハーレム達は、今はもう落ち着いた様で普通にしている。
「何が目的なの?」
「『聖杯』……『万能の願望機』とも言われる聖遺物の回収だ」
それを聞いて、またもや全員の顔に疑問符を浮かべる。まぁ、無理もないか……そもそもそんなモノが存在するという事は眉唾物の話だし、実際に存在すると言うなら……
「『聖杯』は『制御可能かつ膨大な魔力の塊』で『それを溜め込む器』でな、魔術師ならこれを利用して大概の事は出来る。それこそ世界征服だって容易に出来る……」
俺の説明を聞いた連中は意味不明といった感じで首を傾げていた。まぁ、スケールがデカ過ぎてあんまり理解できないよな……
「簡単に言えば、世界を救う為に行動しなきゃ行けない事態だって思ってくれればいい」
その言葉を聞いてもいまいちピンときていない様子だったが、取り敢えず納得はしてくれたらしい。
「それで、これからどうするんだ?『聖杯』を探すにしても当てはあるのか?」
「一応はな」
持ってきた地図を広げ目星をつけていた場所……南雲達が通っていた学校に印を付ける。
「ここの魔力反応が異常なまでに高い上に、大規模な魔術の術式がゆっくりとだが展開されている」
俺がそう説明すると、全員が食い入る様に地図を覗き込み出した。そして、全員が一通り見たところで南雲が口を開く。
「ここに行くとして……その後は?」
「そこを潰して、黒幕を引きずり出してぶち殺す」
俺がそう言うと、全員がドン引きした表情になった。
「おいおい……随分過激だな……」
「敵には容赦しない主義なんでね……それはお前もだろう?」
俺がそう南雲に返すと、不敵に笑う。そして、南雲ハーレムのメンバーの方を見ると全員が殺気を込めて睨みつけてきた。
「嫉妬か?旦那を取られた様に見えたのか?随分と血気盛んだねぇ?」
煽る様な口調でそう言うと、全員が更に険しい表情になった。しかし、南雲が手で制すると直ぐに落ち着きを取り戻す。
「ククク……随分と深く重く……悪寒がする程の愛を受けているな」
俺がからかい気味にそう言うと、南雲はそっぽを向いてしまった。
「……放っとけ」
「なんだぁ?照れてんのか?おいおい、そんなに獰猛な顔しといて本当は純情なのかなぁ?」
そっぽを向いた南雲も周りも行き交いながら煽り倒す。すると、とうとう我慢の限界が来たらしく、ノールックでドンナーを撃ってきた。
「おー怖い怖い。こっちの世界のお前もユエ嬢達が絡むと著しく理性が蒸発するんだな?」
その弾丸を軽く避けて見せると、南雲は舌打ちをした。
「……子供扱いは不服」
「俺からすればお前さんは年下だぞ?これでも三百歳越えの爺だぞ、俺は……」
その発言にまたもや全員の目が点になる。まぁ、当然の反応だよな……
「と、そうだ……学校の調査は夜にやる予定だから、そこら辺の手回しは任せたぞ」
南雲は面倒くさそうな顔をしたが、渋々引き受けてくれた。その後直ぐに南雲家を出て、夜まで時間を潰しに街に向かう。
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夜の帳も降りきり、完全に暗くなりきった頃合いを見計らい動き出す。英霊憑依で呪腕のハサンを憑依させ気配遮断のスキルを発動させながら、学校の前までやって来た。
「さぁ、調査開始だ」
校門を乗り越えると、そのまま職員室に向かい鍵を失敬する。鍵を使い部屋を一つ一つ調べていく。
一階から順番に上っていくと、一番上の階の教室の前で何かしらの結界の様なモノを感じる。念の為、扉に手をかざすとバチッ!と言う音と共に手が弾かれた。
「しゃーねぇか……フッ!」
身体強化の魔術を施し、全力の蹴りを放つ。バキリと言う音が響き渡り、ドアが吹き飛んだ。中に踏み込むと、異常なまでの魔力が渦巻いている事が分かる。そして、部屋の床には大型の魔術式が描かれていた。
「Jackpot!さぁて、どんな悪趣味な魔術が仕込まれてるのかなぁ?」
不敵な笑みを浮かべながら、魔術式に触れる。
「なるほど……『魂喰い』を基盤に『死霊魔術』と『干渉魔術』、『支配』、『変換』を無理矢理結合してあるのか……これ創った奴馬鹿すぎない?」
魔術式に触れているだけで様々な情報が頭に流れ込んできた。この魔術式の構成者は相当頭がおかしい様だ。本来ならこんな事をしたら魔力回路が焼き切れるはずなんだが……
「下手に細工をするとここら一帯が更地になるな……どうしたもんかな……」
頭を悩ませていると、唐突に背筋に悪寒が走る。咄嵯にその場から離れると、魔術式が起動し膨大な魔力がうねり始めた。
「こりゃちょっとヤバいかもな!」
英霊憑依でメディアを憑依させ、宝具を発動させるが、それでも押し切られそうになる。魔力が凝縮されていき、光り輝き始める。そして次の瞬間、閃光が走り、全身に強い衝撃が走った。
「ッ!!」
踏ん張ろうと全身に力を込めるが、耐えきれずに吹き飛ばされ、窓に背中から突っ込みガラスを突き破って校庭に転がり出る。
「痛ってぇ……」
体を起こし、服についた砂埃を払う。校舎を見ると、校舎全体に魔術式が浮かび上がっており、それが鼓動を打つ様に明滅していた。
「あ〜……こりゃ本格的にマズいな……さっさと片付けないととんでもないほどの被害が出るな」
そう言って立ち上がると同時に、先程までとは比べ物にならない量の魔力が溢れ出た。
「魔力が膨大になってる……どうやら召喚されるみたいだな」
その言葉同時に、魔術式から黒い泥の様な物が溢れ出した。それはだんだんと形を成していき、やがて人型になる。
「おいおい……冗談キツイぜ、まったく……」
最初は一体だった泥の塊は分裂を繰り返し、目測で百体を超え、今も尚増え続けている。そして、その一体一体が並のサーヴァントを凌駕する程の魔力を放っていた。
「骨が折れそうだな……」
人型達は一斉に魔術を放ち、俺を殺そうとする。それを血狂いで弾きながら、反撃のタイミングを伺うが……
ドパンッ!
俺が動き出す前に俺の横を黒い閃光が横切った。
「……よぉ、随分と遅い到着だな?」
その声の主の方へ目を向けると、そこには南雲達が立っていた。俺が皮肉混じりに言うと、南雲は不敵に笑いながら口を開く。
「これで貸し一つだな?」
その発言に、俺はため息をつく。借りを作ったのは間違いないが、まさかこの状況でそれを言われると思っていなかった。南雲達に文句の一つでも言おうと思ったが、そんな暇もなく人型共は襲い掛かってくる。
「貸しを作るのは嫌いなんでね……こいつでチャラって事にしてくれよ?」
迫り来る影の軍団を前に、俺は南雲達に不敵な笑みを向けながら言う。
「英霊憑依……アヴェンジャー『魔王信長』」
体が黒と赤の混じったオーラに包まれる。オーラの合間から炎がチリチリと燻り始める。
「天魔来たりて六天滅す。我行くは神仏逝きし無人の焦土」
言葉を紡ぐ度に、体内の魔力が荒れ狂い溢れ出す……それは次第に赤黒く染まっていく。
「是非に及ばず。尽滅あるのみ!」
その言葉と共に、辺り一帯が炎に飲み込まれた。人型達は怯みはしたがすぐさま立ち直り、再度攻撃を開始する。
「滅せい!」
地面を踏み締め、跳躍する。人型達の頭上に到達したと同時に、右腕に魔力を集中させ、思い切り地面に叩きつける。
地面が割れ、爆風が巻き起こる。そして、その衝撃波によって数十体の人型は跡形も無く消し飛んだ。
「ふははははは、死ねい!」
僅かに後ずさった一体の人型に急接近し、拳によるラッシュを喰らわせ、トドメに赤黒いオーラを纏わせた脚で踵落としを繰り出した。
「打ち払え、魔王剣!」
落下と同時に、腰に差している刀を引き抜き、魔力を流し込む。すると、刀身から膨大な魔力が吹き出し、漆黒の炎が燃え上がる。そして、そのまま横一文字に振り抜く。
「ッッ!!」
刀の軌道に沿って、漆黒の斬撃が放たれ、周囲の人型達を飲み込み、斬り裂いた。
「ふむ……これで片がつくと思ったのだが……まぁよかろう」
まだ残っている人型に向き直り、ニヤリと笑う。
「いささか気が乗らぬが……是非もなしか」
そう呟くと、全身から更に魔力が吹き上がり、髪が逆立ち始める。
「我が往くは神仏衆生が無尽の屍。何人たりとてこの信長を阻む事は能わず」
魔力が徐々に高まっていき、臨界点を突破する。すると、俺の背後から腕が六本あり、全身が真っ黒の巨大骸骨が現れる。
「『
そう叫ぶと同時に、その巨大な骸骨の口から凄まじい量の熱線が吐き出され、残っていた人型達は一瞬にして消滅した。
「ふん、その方程度が我が歩みを止めるなど、叶わぬことと知れ」
魔王信長の姿のまま、南雲達に視線を向けると、南雲は驚いた様に目を見開く。その表情を見て、してやったりと思いながら南雲の肩に手を置く。
「これで貸しはチャラだ」
「……あぁ、そうだな」
南雲は少し悔しそうな顔をした後、苦笑いを浮かべながら言った。
Fateの聖杯の設定に間違いがあったら教えてくださいm(_ _)m