ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、ヽ(。・ω・。)ドウモハジメです」
「エトです」
「アルテナ・ハイピストです」

「前回はアンカジ公国に向かう途中の砂漠で男の人を拾ったね」
「それとハジメ君が珍しく嫉妬?していましたね」
「あれは嫉妬と言うのでしょうか……」

「こ、今回は男の人からの事情説明だよ。楽しんでいってね」


「「「トラブルに次ぐトラブル!」」」


トラブルに次ぐトラブル

 Side ハジメ

 

 サンドワームに食べられ掛けていた男の人は意識を取り戻したが、マトモに立てる状態では無かった。砂漠の気温や日照りのせいでかなりの発汗をしていて、脱水症状を引き起こしていた。なので車内で水を飲ませていた。

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」

 

 そう自己紹介して来た男の人──ビィズさんはどうやら領主の息子らしい。ちなみにアンカジ公国はエリセンから運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶための要所で、その海産物の産出量は北大陸の八割を占めているらしい。

 

「……それで、貴方々は一体?」

「あ、ごめんなさい。僕は南雲ハジメと申します」

「……ユエ」

 

 各々が簡単に自己紹介する。その間もしきりに香織の方をチラチラと見ている。だが、香織が神の使徒であると知った瞬間、表情に驚愕に染まる。そして……

 

「これは神の采配か!我等のために女神を遣わして下さったのか!」

「ひぅ!」

 

 突然大声で叫び出したビィズさんにミュウがビクッとする。香織もいきなりだったので驚いているようだ。

 

「えぇっと……ビィズさん?」

「……すまない。取り乱した」

 

 僕の声に正気を取り戻して謝罪するビィズさんだったが、その後の言葉には興奮の色が滲み出ていた。

 

「とりあえずは事情を話して貰えますか?」

「あぁ、もちろんだ……」

 

 それからビィズさんはゆっくりと話し始めた。

 

 大まかにまとめると、こうだ。四日前、突如原因不明の高熱を出し倒れる者が続出。すぐさま原因究明に動くものの、その間にも感染者は増え続けていく一方……

 

「……何も手を打つことが出来ずに倒れる者だけが増えて行く……症状の進行を遅らせる魔法も使ってはいたが、それも唯の悪足掻きにしかならない。そして遂には死者すらも出始めた……」

 

 悲痛な面持ちで語るビィズさんの瞳からは涙が零れ落ちている。自分の無力さに歯噛みしているのだ。

 

「……原因は判明しているんですか?」

「あぁ、普段から飲み水に活用していたオアシスの水から魔力を暴走させる毒素が発見された……」

 

 オアシスの水が汚染されていたという事なら確かに問題だろう。アンカジ公国は砂漠の真ん中辺りに位置していて、オアシスは重要な生命線と言える。

 

「治す手段はあるんですか?」

「あるにはあるが……グリューエン大火山から採取できる貴重な鉱石である『静因石』が必要なのだ……『静因石』を粉末状にしたもの服用すれば、体内で暴れ狂う魔力を沈めることが出来る……」

「グリューエン大火山からアンカジ公国までは往復で一ヶ月……毒素の進行具合からして死亡までは約二日……」

 

 エトさんが呟くように現状を説明する。それはつまり、もう時間が無いということだ。

 

「ああ……両親も妹も病に倒れ、民たちが苦しんでいる……」

 

 悔しげに顔を歪めながらビィズさんが言う。どうやらこの人は家族想いの良い人のようだ。

 

「君たちに、いや貴殿達にアンカジ公国領主代理として依頼したい……どうか、私に力を貸して欲しい……!」

 

 そう言って深々と頭を下げるビィズさん。しかし、それを断る理由など無い。

 

「分かりました。協力しますよ」

「ほ、本当か!?感謝する!!」

 

 僕達が快く引き受けた事に感動した様子のビィズさんは何度もお礼を繰り返し言った。

 

「依頼内容は貴方をアンカジ公国まで無事に帰還させること、グリューエン大火山で静因石を確保すること、そして使用できる水の確保……この三つで構いませんね?」

 

 エトさんが確認を取ると、ビィズさんは大きく首肯した。

 

「先ずは、大火山から静因石を採取して来て貰いたいのだが、水の確保の為に王都にも向かわなければならない……」

「いえ、王都に向かう必要はありません。水を確保する目処はありますから」

 

 エトさんの言葉に目を丸くするビィズさん。

 

「そ、そうなのか?一体どうやって……」

「まぁ任せて下さい」

 

 自信たっぷりの僕の言葉に、ビィズさんは首を傾げるのだった。

 

「じゃあ、ビィズさん。左肩の付近にある帯の様な物を引っ張って、右腰の辺りの窪みにカチッと音が鳴るまで押し込んでください」

「こ、こうかね?」

 

 言われた通りに作業を行うビィズさん。ワタワタと慣れない手付きだ。

 

「エトさん、運転変わります」

「了解しました」

 

 運転席に移動して、ハンドルを握る。シートベルトを着用し、エンジンをかける。

 

「では、出発します」

 

 ギアを入れて、アクセルを踏むと車体が動き出す。窓の外に見える光景が凄まじい勢いで流れて行くことに、流石のビィズさんも動揺を隠しきれない様だ。

 

 ────────────────────

 

 あれから二時間ほど走っていると前方に町が見えてきた。フューレンを超える外壁に囲まれた乳白色の都……外壁も建築物も軒並みミルク色で、外界の赤銅色とのコントラストが美しい。

 

「綺麗……」

 

 香織が思わずといった感じで感嘆の声を上げる。それに同意するように、助手席のミュウも興奮気味にはしゃいでいる。

 

「綺麗だけど、人気は無いね……」

「……うん。まるでゴーストタウン」

 

 香織とユエの言う通り、アンカジの町には活気が無かった。皆家の中に閉じ籠っているのだろうか、人っ子一人見当たらないのだ。

 

「……すまない、できれば活気溢れる我が国をお見せしたかった。この事態が解決したら、是非案内をさせてくれ」

「えぇ、楽しみにしておきます」

 

 申し訳なさそうなビィズさんに微笑んで返す。

 

「あぁ、期待していてくれ……時間があまりない……早速で申し訳ないが父上の元へ行こう、あの宮殿だ」

 

 ビィズさんが指を指す方角に従って歩いて行く。

 

 ────────────────────

 

「父上!」

「ビィズ! お前、どうしっ……いや、待て、それは何だ!?」

 

 ビィズさんの顔パスで宮殿内を進み、そのまま領主のランズィさんの執務室へと通された。ランズィさんはビィズさんの姿を見ると目を剥いて立ち上がり、駆け寄ろうとしたが、ビィズさんの有り様に気がついて立ち止まった。

 

 無理もない、今現在、ビィズさんは宙に浮いているのだから。正確に言えばクロスビットにうつ伏せの状態で乗っかっていて、その状態で運ばれているのだ。

 

「詳しい事は私が話しておきます。ハジメ君とアルテナさんはオアシスの調査、香織さんとシアさんは医療院と収容されている患者の元へ向かってください。雫さん、ティオさん、ミレディ、オスカーさんは水の確保をお願いします」

 

 エトさんの指示に全員が首肯で答える。そして僕達はそれぞれの任務を遂行する為に別れた。

 

 ────────────────────────

 

「……凄い」

 

 眼前に広がるオアシスはキラキラと輝く水面を湛えており、その美しさに見惚れてしまう。

 

「……ハジメさん?」

「……あぁごめん。ちょっと見惚れてた」

 

 隣にいるアルテナに謝りつつ、視線をオアシスに戻す。

 

「……何か居るね……」

 

 魔力感知に反応がある……それもオアシスの水源の中だ。

 

「取り敢えず、引き摺り出してみようか」

 

 宝物庫から試作段階の魚雷を取り出してオアシスに向かって放る。そして直ぐに耳を塞ぐ。

 

 次の瞬間、破裂音が響き、オアシスからは巨大な水柱が吹き上がった。

 

「意外とすばっしっこいね……」

 

 流石に一個だけじゃ無理だったようだ。仕方ないので次々とオアシスに放っていく。

 

「ハジメさん!これ以上はもう辞めませんか!?」

 

 水面にはオアシスで悠々と泳いでいたであろう淡水魚達の肉片が浮き、近くにあった桟橋も吹き飛んでしまったが気にしてはいけない……

 

「ハジメさん!本当にこれ以上はダメです!あれ程美しかったオアシスの景色が地獄絵図になってしまっていますから!一度止まってください!」

「……アルテナさん、こういうのはね、容赦なく殺らなきゃダメなんだよ」

 

 僕の肩を掴んで揺さぶるアルテナに、僕は笑顔で答えた。結局、十発以上の魚雷を打ち込んだけど、オアシスを汚染している元凶の排除は出来なかった。

 

「……もう五十個くらい放り込んでも「いい加減にしなさい!」……はい、ごめんなさい」

 

 本気で怒るアルテナに素直に謝罪する。そして、そのまま正座をさせられて説教が始まり掛けた瞬間……

 

 風を切り裂く勢いで無数の水が触手となって襲いかかってきた。咄嵯にドンナーとシュラークで水の触手を撃ち抜いていく。

 

「やっと姿を現したね……」

 

 水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり、十メートル近い高さの小山になった。

 

「大き過ぎない?」

「バチュラム……とは少し違う様には見えますけど……」

 

 バチュラムとはこの世界のスライム型の魔物で、体長が大きても1メートルほどのものだ。だけど目の前にいる魔物は体長は約十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っている。

 

「っと……危ない」

 

 僕らが会話していると怒り心頭といった感じで、触手を鞭の様に打ち付てきた。それを全て撃ち落とす。

 

「弱点は……あの魔石なんだろうけど……」

 

 試しにと発砲した弾丸は、あっさりと命中した……が、魔石はまるで意思を持っているかのように縦横無尽に体内を動き回り、中々狙いをつけさせない。

 

「ハジメさん、私に任せてもらえませんか?」

 

 僕がどうしようかと手をこまねいていると、アルテナからそんな提案があった。僕はそれに首肯すると、僕と入れ替わりに前に出てきた。

 

 アルテナは右手の小指に付けていた指輪を抜き取り、両手でぎゅと握って魔力を込め始めた。

 

「ぅぶっ……」

 

 突然、アルテナの身体から暴風が巻きおこった。思わず顔を腕で庇う。数秒後、ゆっくりと顔を上げると、そこには身の丈以上の大弓と、それに番えられた一本の大矢。

 

「……アルテミス」

 

 アルテナがそう呟いたと同時に、彼女は矢を放った。空気の壁を突き破るような轟音と共に、音速を超えた一撃が、魔石ごと魔物を消し飛ばした。

 

 大弓が消えたのを確認してから、恐る恐る声をかけると、アルテナは拳を強く握るとぷるぷると震え始めた。

 

「あ、アルテナ……さん?」

「こ、こんなに……」

 

 俯いていたアルテナの口からポツリと言葉が漏れ出る。

 

「……こんなに威力があるなんて聞いてないです!」

 

 アルテナの叫びがオアシスに木霊する。

 




アルテナさんはアイリスアウトが似合うと思うんだ()
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