中二転生   作:llon

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私:土日以外更新できる気がしないと言ったな。あれはホントだ。

俺:いやホント時間かかった。頑張りすぎたよ。

僕:感想きたことに舞い上がっちゃったね。

私:あとしれっとルビの入れ方を覚えた。


第六話「ロキシー師匠」

 

 夜中に魔術を使っていると、どこからか最近の悩みの種になっている音が聞こえてくる。

 

 お盛んだ。そう遠くないうちに、僕の弟か妹が生まれる事だろう。

 

 はぁ。いいんだ、いいんだよ。仲がよろしい証拠だ。

 

 両親の仲がいいのは何よりも喜ばしいことだ。

 

 だけどなぁ、この分だとロキシー先生にも聞こえている事だろう。

 

 両親の夜の営みを恩師に聞かれる、この苦しみをなんと言い表せばいいのだろう。

 

 ここは日本じゃない、身近に危険がある異世界だ。いつ死ぬかもわからないんだ、より多くの子孫を残そうと本能が働くのは当然と言えるだろう。

 

 

 それほど身の回りに危険があるからこそ僕だって鍛錬に一生懸命取り組んでいるのだから。

 

 

 まぁ、前世では母さんが体が弱かったこともあって兄弟姉妹がいなかったから、弟妹ができることは純粋にうれしいのだ。家族が増えるのは大歓迎だ。

 

 

「やれやれ……」

 

 

 どうしようもない。僕にできるのは邪魔しないように魔術の鍛錬をささっと終わらせて素早く眠りに落ちることだけだ。

 

 

 

___

 

 

 

 

 ロキシー先生が来てから4ヶ月ほど経った。

 

 

 

 初級魔術はもはやマスターしたと言っても過言ではなく、中級魔術も一般に習得した、と言えるほどには正確に扱えるようになった。こっちはまだまだ完璧とは言い難いが。

 

 という事で、魔術の授業を一端終えて、座学の授業をする事になった。

 

 勉強するのは、主に雑学だ。

 

 

 

 

 

 ロキシー先生はいい教師だ。

 

 僕の理解度に合わせて、授業の内容をぐんぐんと進めてくれる。打てば響く授業だ。 

 

 前世では授業の進みが遅すぎて退屈していたのだが、マンツーマンのいいところだろう。僕が理解を速めれば速めるほど、より深くより高度な授業をロキシー先生はしてくれる。

 

 だから、楽しくなってどんどんと進めていった結果、雑学ぐらいしかやることがなくなった。

 

 算術もその他諸々もあっという間に終わってしまった。習っている教養はこの世界の大学で学ぶようなものなのだが、難易度は日本の高校生レベルのものなので僕からすれば簡単すぎた。 

 

 とはいえ、そんなハイペースで進めてしまったら先生は授業の準備など多忙を極めたことだろう。

 

 ロキシー先生がこの世界でよほど優秀な存在でなければこのようなペースではいかなかったに違いない。

 

 本当に得難い出会いだったといえる、感謝してもしきれない。

 

 やっぱり、ロキシー先生は最高の教師だ。

 

 

 

___

 

 

 

 

 

「先生、どうして魔術には戦闘用のものしかないんですか?」

 

「別に戦闘用しか無いわけではないのですが……」

 

 

 

 僕の唐突の質問にもロキシー先生はきちんと答えてくれる。

 

 

 

「そうですね、何から説明しましょうか……。

 

 まず魔術というのは、古代長耳族(ハイエルフ)が創りだしたものだと言われています」

 

 

 

 おお、エルフ!美人薄命なんてなんのそのと類稀な美貌と長寿を併せ持つ幻想的な種族!

 

 金髪で緑っぽい服を着ていて弓を持っていて自然を好む人たち!

 

 おっと、落ち着こう。

 

 もしかしたら僕の認識しているものとは全く違うかもしれない。

 

 字面を見るに、耳は長いようだが……。

 

 

 

長耳族(エルフ)というのは?」

 

「はい。長耳族(エルフ)とは、現在はミリス大陸の北のほうに住んでいる種族です。

 

 大昔、まだ人魔大戦が起きる前、

 

 世界がまだ混沌として戦いが絶えなかった頃、

 

 古代長耳族(ハイエルフ)たちは外敵と闘うため、森の精霊たちと対話し風や土を操ったそうです。

 

 そして、それが史上最古の魔術と言われています」

 

「精霊、いるんですか?」

 

「自然の精霊は基本的に人の目には見えないとされています。

 

 見えるのは古代耳長族(ハイエルフ)や先祖返りだけであると言われていますね。

 

 しかし現代で一般に精霊と呼ばれるのは、召喚魔術で呼び出した可視化されたものです。

 

 私は実際に見たことはありませんが、魔神殺しの三英雄の一人である甲龍王ペルギウス・ドーラは12人の精霊を従えている、というのは有名な話です」

 

「おお、召喚魔術ですか!それは教えてもらえるのですか?」

 

「いえ、わたしには使えませんので」

 

「そうなんですか……と、すみません話が逸れましたね」

 

 

 魔神殺しの三英雄といえばうちにある数少ない本の一つの話がそれだったな。

 

 そういえば勉強ばかりであまり読んでなかったな。今度改めて読んでみよう。

 

 召喚魔術や精霊についてなにかわかるかもしれない。

 

 

 

「大丈夫ですよ。

 

 それで、今の魔術というのは、人族が戦争の中で長耳族(エルフ)の魔術を真似し、形態化させていったものです。

 

 人族はそういうのが得意ですからね」

 

「へぇ、僕たちの使っている魔術は人族が編み出したんですね」

 

「あなたは無詠唱ですが…ええ、新しいものを生み出すのは、いつも人族です」

 

 

 僕だって一度は詠唱をして感覚を掴まないと無詠唱では発動できないのだ。

 

 しかし、なるほど。人族は発明が得意な種族なのか。

 

 

 

「戦闘用しかないのは、主に戦いの中でしか使われてこなかったというのもありますが……。

 

 魔術に頼らなくても、身近なものを使えば実現できるという理由もあります」

 

「身近なもの、というと?」

 

「例えば明かりが必要なら、ロウソクやカンテラを使えばいいでしょう?」

 

 

 

 なるほど、わざわざ疲れる魔術を使わなくてもそっちの方が楽だし便利だもんな。

 

 まぁ無詠唱ができて尚且つ今も魔力の増え続けてる僕なら道具を使うより早いし楽だし便利なんだけどね。

 

 

 

「それに、全ての魔術が戦闘用というわけではありません。

 

 先ほど言った召喚魔術を使えば、必要に応じた力を持つ魔獣や精霊を召喚することもできますし」

 

「なるほど」

 

「それに、道具というのなら、魔道具というものも存在します」

 

 

 

 魔道具か。魔法陣を活用したものだろうか。

 

 

 

「魔法陣を利用したものですか?」

 

「はい。魔力を持つ物質に魔法陣を刻んで作られた道具です。

 

 魔術師でなくとも扱う事ができます。もっとも、定期的に魔力を補充しなければいけませんが」

 

「なるほど」

 

 

 

 大体想像どおりだ。

 

 

 

 それにしても、ロキシー先生が召喚魔法を使えないのは残念だ。

 

 攻撃魔術や回復魔術の原理はおおよそわかるが、召喚魔術は何をどうしているのかさっぱりわからない。

 

 精霊はさっき聞いたが魔獣はどうなのだろう。

 

 

 

「先生、魔獣と魔物はどう違うんですか?」

 

「魔獣と魔物は大きくは違いません。

 

 基本的に魔物というのは従来の動物から突然変異で生まれます。

 

 それが運よく数を増やして、種として定着し、世代を重ねて知恵をつけたのが魔獣です。

 

 もっとも、知恵をつけても人を襲うようなのは魔物と呼ばれる事も多いです。

 

 逆に、魔獣が世代を重ねて凶暴になり、魔物に戻るケースもあります。

 

 具体的な線引はありません」

 

 

 

 人を襲う魔力をもった動物は魔物で、人に害のない魔力を持った動物は魔獣というわけか。

 

 害虫と昆虫の違いとでも認識していればいいだろう。

 

 

 

「では魔族とはどんな種族なんですか?」

 

「魔族という単語は、大昔に人類を二分した戦争をしていた頃につけられた名称です」

 

「さっき出てきた人魔大戦ってやつですか?」

 

「そうです。戦争があったのは8000年前ですね」

 

「確かに大昔ですね」

 

 

 

 この世界は、割りと長い歴史を持っているようだ。

 

 

 

「そう昔でもないですよ。

 

 つい400年前にも、人族と魔族の間で戦争をしていましたからね。

 

 8000年前に始めてから、休み休みずっと戦争してるんですよ、人族と魔族は」

 

 

 

 えぇ、未だに戦争なんかやってるのか。巻き込まれないようにしなければ。

 

 しかし、400年でも十分昔だな、僕と家族が生きている間にまた戦争が起こるとは限らないのか。

 

 世界を二つに分けた戦争など正気じゃない、どれだけの被害が出るというのか。

 

 いや、もうすでにたくさんの被害が出ているからこそ止まれないのだろう。

 

 400年も期間を開けているのがいい証拠だ。

 

 きっとお互い本音のところではやめたいに違いない…。

 

 戦争のことなんか考えても憂鬱にしかならない。

 

 

 

「はぁ、なるほど。それで結局、魔族というのは?」

 

「魔族というのは、結構定義が難しいのですが、

 

 『一番新しい戦争で魔族側についていた種族』というのが一番わかりやすいでしょうか。

 

 例外もあるんですが……。

 

 あ、ちなみに私も魔族です」

 

「あれ、そうだったんですか」

 

 

 

 魔族がここで家庭教師をやっている。

 

 てことは、今は戦争してないってことかな?

 

 それとも戦争なんかしといて魔族と人族は見わけがつかないのだろうか。

 

 

 

「はい。正式には魔大陸ビエゴヤ地方のミグルド族です。

 

 リオンの両親も、わたしの姿を見て驚いていたでしょう?」

 

「ああ、そういえばそうでしたね。あれは先生の幼さに驚いていたのではないですか?」

 

「わたしは立派な大人です。

 

 そうではなくて、あれはわたしの髪を見て驚いていたんです」

 

「髪?」

 

 

 

 何度見ても綺麗な青髪だと思う。

 

 

 

「魔族は一般的に、緑に近い髪色を持つ種族ほど凶暴で危険だと言われています。

 

 特にわたしの髪は、光の加減では緑に見えなくもないですから……」

 

 

 

 緑色。

 

 この世界の警戒色なのだろうか。

 

 ロキシー先生の髪は水のように澄んだ青色だ。

 

 

 

 ロキシー先生は自分の前髪をくるくるといじりながら説明してくれている。可愛い。

 

 前世の恩師に似ているのに、髪色に全く違和感がない。

 

 純粋に似合っているといえる。

 

 

 

「先生の髪は綺麗ですよ」

 

「………ありがとうございます。

 

 でも、そういう事は将来好きな子ができた時に言ってあげてください」

 

 

 

「そうですか。でも僕、先生のこと、嫌いじゃないですよ」

 

 

 

 迷わず言った。

 

 僕にとって、ロキシー先生はすでに尊敬に値する教師だ。

 

 嫌いなわけはない。

 

 

 

「そうですか。あと十数年した時に考えが変わらなかったらもう一度言ってください」

 

「はい、先生」

 

 

 冗談に聞こえてしまっただろうか。

 

 しかし、ロキシー先生はわずかに嬉しそうな顔をしていた、

 

 先生に僕の先生への敬意がどれだけ伝わっているかわからないが、それは地道に伝えていけばいいだろう。

 

 少なくとも、全く無意味というわけではないようなのだから。

 

 

 

 

「それでは話を戻しますが、

 

 派手な色ほど危険というのは、まったくの迷信です」

 

「あ、迷信なんですか」

 

「はい。バビノス地方にスペルド族という、髪が緑の魔族がいたのですが、

 

 彼らが400年前の戦争で暴れまわったため、そういう風に言われるようになったんです。

 

 なので、髪の色は関係ありません」

 

「暴れまわった、ですか?」

 

「はい。たった十数年ほどの戦争で敵味方あらゆる種族に恐れられ、忌み嫌われるほどに暴れました。

 

 戦争が終わった後、迫害を受けて魔大陸を追われるぐらい危ない種族でした」

 

 

 

 戦争という殺せば殺すほど英雄視される状況で、終わった後に味方に追い出されるほどに危ないってどんだけだ。

 

 

 

「それほど恐れられるとは……一体何をやったんですか?」

 

「さぁ、それはわたしにも……

 

 ただ、味方の魔族の集落を襲って女子供を皆殺しにしたりとか、

 

 戦場で敵を全滅させた後に、味方も全滅させたとか、

 

 そういう逸話は子供の頃に何度も聞きました。

 

 夜遅くまで起きていると、スペルド族がやってきて食べてしまうぞ、と」

 

 

 えぇ、いくらなんでも種族全員が殺戮者だとは思いたくない。

 

 

「ミグルド族もスペルド族に親しい種族なので、かつては風当たりも強かったと聞きます。

 

 そのうち、ご両親にも言われるかと思いますが……」

 

 

 

 いいですか、とロキシー先生は前置きした。

 

 

 

「エメラルドグリーンの髪を持っていて、

 

 額に赤い宝石のようなのがついた種族には、絶対に近づかないでください。

 

 やむを得ず会話しなければならない場合も、決して相手を怒らせてはいけません」

 

 

 

 エメラルドグリーンの髪、額に赤い宝石。

 

 それがスペルド族の特徴らしい。

 

 

 

「怒らせるとどうなるのですか?」

 

「家族を皆殺しにされるかもしれません」

 

「むっ、家族を害するならどんな手を使ってでも打ち滅ぼします。」

 

「もう、スペルド族は種族全員が戦士と言えるほど戦闘に秀でた種族なのですよ。敵対は現実的じゃありません。まずは怒らせず、関わらないようにするべきです。」

 

「わかってます、無為に怒らせることも敵対することもありません。

 

 ただこちらの話を聞かず、現実に家族を傷つけることがあったなら、僕の全力をもってして報復するのは当然のことです。

 

 エメラルドグリーンと、額に赤い宝石、ですね?気を付けます」

 

「家族を大切に思い、また行動に移そうとするのはあなたの美徳ですが、それで家族を余計に危険に晒すことにつながるかもしれないんですよ?

 

 まったく……彼らは額に第三の眼があり魔力の流れを見ます。よほど上手く戦わなければ、魔術を当てることも、最悪隠れることもできません」

 

「第三の眼ですか。分かりました。報復するときは慎重に慎重を重ねてやります。

 

 でも、それだけ目立つなら見分けるのは簡単ですね」

 

「本当に頑固ですね…あなたはどこぞの暗殺者ですか。

 

 とにかく、出会ったら何気なく用事があるフリをして逃げてください。

 

 いきなり駆け出すと刺激する恐れがありますので」

 

 

 

 ちょっと頭に血が上っていた。

 

 僕は少し家族の危険に敏感になり過ぎているかもしれない。

 

 ロキシー先生はこう言っているが、まだスペルド族の全員が全員危ない者たちだと決まったわけでもないのだから。

 

 気を付けなければ、そして落ち着こう。

 

 

「すみません、ちょっと頭に血が上ってました。

 

 話をするといっても、相手を尊重して喋れば問題ないですよね?」

 

「あからさまに侮蔑したりしなければ問題ないと思います。

 

 けれども、人間族と魔族では常識が違う部分も多いので、

 

 どんな言葉がキッカケで爆発するかわかりません。

 

 遠まわしな皮肉とかもやめておいた方がいいですね」

 

 

 

 ふむ。

 

 それもそうだな。殺戮者かどうかは置いておいて戦闘民族であることは変わりないようだし。

 

 緑の髪に、額に第三の眼をもつ種族か…。

 

 わざわざ魔大陸になんて行く予定はないけど、家族を危険に晒すかもしれないんだ、覚えておこう。

 

 

 

 

___ 

 

 

 

 

 

 ロキシー先生が来てから一年ほど経った。

 

 魔術の授業は順調だ。

 

 最近は、中級魔術もほとんどの系統を完璧に、また全ての系統で上級の魔術まで扱えるようになった。

 

 もちろん無詠唱でだ。

 

 

 

 普段している鍛錬に比べれば、ただ上級魔術を発動するだけなら簡単にもほどがあった。

 

 それに、上級魔術は攻撃の範囲が広くて、いまいち使い勝手が悪いように感じる。

 

 広範囲に雨を降らせるとか、農業にでも使うのだろうか。

 

 いや、攻撃魔術なのだから戦争で軍隊に対してでも使うのだろうか。

 

 だとしたら、やはり僕に必要とは思えない。戦争する気などないのだから。

 

 

 

 などと考えていたのだが、父さまから聞いた話によると

 

 日照りの続いた日にロキシー先生は麦畑に向かって雨を振らせて、村人から大絶賛を受けたらしい。

 

 ロキシー先生は他にも、村の人に依頼を受けて、魔術を使って問題を解決しているらしい。

 

 やはり、攻撃魔術と言っても使い方次第だな。

 

 形に囚われてしまってはダメだ。

 

 

 

 

「さすが先生です。人助けにも余念がありませんね」

 

「人助け? 違いますよ。これは小銭稼ぎです」

 

「いえ、お金を取っていてもロキシー先生にしかできないのですから、人助けと言っていいと思います。

 

 人を助けてお金を貰う、素晴らしいことです。尊敬します」

 

「…そう当たり前のことで褒められるとこそばゆいですね。」

 

「当たり前のことを当たり前と思ってできるのが凄いことなんじゃないですか!」

 

「分かりましたから、やめてください」

 

 

 

 むむ、思ったことをそのまま伝えていたら止めさせられてしまった。

 

 心に湧き上がる敬意を言葉にして伝えたいのだが…。

 

 止められてしまったら仕方ない。

 

 

 

 

 恥ずかしそうにしているロキシー先生をもっと見たかったとか思ってないです。

 

 

 

 

___

 

 

 

 

 

 ある日、ふと聞いてみた。

 

 

 

「先生のことは先生ではなく師匠と呼んだほうがいいのではないでしょうか」

 

 

 僕としてはそのままロキシー先生と呼びたいのだが、これは思えば未だに少し静香先生と重ねてしまっているからのように思える。

 

 それに先生と生徒は普通は組織的な関係であり、ロキシー先生を慕って魔術を教わっている身としては敬意を表して師匠と呼んだ方がいいのではないだろうか、と。

 

 

 と考えてのことだったのだが、ロキシー先生はあからさまに嫌な顔をした。

 

 

 

「いいえ、恐らくあなたはわたしを簡単に超えてしまうので、やめたほうがいいでしょう」

 

 

 超える超えないが関係あるのだろうか。

 

 師匠に対する弟子の恩返しは師匠を超えることだと相場が決まっているのだが。

 

 

「自分より力の劣る者を師匠と呼ぶのは嫌でしょう?」

 

「嫌なわけないじゃないですか。人が人を師匠と仰ぐのは、その人を慕い、また教わった恩に対して敬意を表すためです」

 

「うう、純粋すぎて胸が痛いです。

 

 気持ちは嬉しいですが、わたしが嫌なんです。自分より優秀な人に師匠と呼ばれるなんて、生き恥じゃないですか」

 

 

 

 うーん、現実にはそういうものなんだろうか。

 

 

「それに教わった恩と言いますが、わたしが教えなくともリオンはどの魔術も習得できたでしょう。わたしが魔術に関して教えられたことは多くありません」

 

「でも、教えてくれたのがロキシー先生でなければここまで順調にはいかなかったでしょう。

 

 それに僕が先生を慕っていることに変わりはありません」

 

「はぁ、本当になんでこういう時だけそんなに頑固なんですか。いつも授業の時はとても素直で柔軟なのに。

 

 そこまで言うのならちゃんと理由を話しますが…。

 

 わたしは実際過去に師匠と仰いだ人と実力が伴わない師弟関係になって、それを煩わしいとしか思えなくなったからです」

 

「先生は先生の師匠とすれ違ってしまったんですね」

 

「いいですかリオン。

 

 師匠というのはですね、もう自分に教えられる事は無いと言いながらも、

 

 事あるごとにアレコレと口出ししてくるような厄介な存在なんです」

 

「それは単に先生のことが心配で言っていたのではないですか?

 

 それに例えロキシー先生にあれこれ口出しされても嫌じゃありません。

 

 ロキシー先生ならちゃんと考えがあってのことでしょうし」

 

「いいえ、わたしも弟子の才能に嫉妬したら何を口走るかわかりません」

 

「例えば?」

 

「薄汚い魔族の分際で、とか、田舎者のくせに、とか」

 

 

 ああ、実際先生の師匠に言われてしまったんだろう。

 

 となると、どっちも素直じゃないんだろう。すれ違いの匂いがぷんぷんする。

 

 はぁ、先生の師匠さんも、素直に心配だと言えなかったんだろうか。

 

 まぁそこまで嫌なら無理に師匠と呼ぶこともない。

 

「分かりました。なら無理に師匠とは呼びません。

 

 ですが、師匠とは呼ばないだけで、僕がロキシー先生をそれだけ慕い尊敬しているということだけは分かってください」

 

「はぁ、わかりましたわかりましたから………ありがとうございます」

 

 

 

 最後にぼそっと、先生はお礼を言った。ちゃんと聞こえている。

 

 

 

 

 

 そういうわけで、僕はロキシー先生を師匠とは呼ばないことにした。

 

 けれど、心の中では師匠と呼び続ける事に決めた。

 

 ロキシー先生はただ本を読むだけでは得られない大切なことをきちんと教えてくれるのだから。

 

 きっといつか、先生が先生の師匠と仲直りした時に、改めて呼ばせてもらおう。

 

 

 

 

 ロキシー師匠、と。

 

 

 

 




私:感想・評価・誤字報告すべて大歓迎!

俺:アンケートも答えてくれると嬉しい

僕:一話ごとにアンケートはやりすぎじゃない?

私:ていうか、リオン君が純粋すぎて辛い。しかも高校レベルが簡単って…。

俺:ほんとに中学生?

僕:ロキシーへの尊敬が半端ない。

本作ヒロイン

  • シルフィ
  • ロキシー
  • エリス
  • ナナホシ
  • アイシャ
  • リニアandプルセナ
  • アリエル
  • ギレーヌ
  • オリジナルヒロイン
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