中二転生   作:llon

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私:くっ、妄想が楽しくてやめられないんだ!

俺:やることやってから妄想しろよな

僕:移動中に妄想するのは危ないと思う

私:ていうか、話ぜんぜん進んでないよ

俺:遊びすぎたな

僕:後先考えないからだよ


第七話「神子」

 

 5歳になった。

 

 そこで今生で初めて誕生日としてささやかなパーティーが開かれた。

 

 

 

 この国には、誕生日を毎年祝うという習慣は無いらしい。

 

 しかし、一定の年齢になると、家族が何かを送るのが通例なのだそうだ。

 

 一定の年齢とは五歳、十歳、十五歳。十五歳で成人であるらしい。

 

 多分、5歳になる前になくなる子供が多いことも理由だろう。

 

 どこの家も毎年祝えるほど金銭があるとも限らないのだし。

 

 それに毎年祝われるのも嬉しいが、五年に一度の方なら僕もいずれできるだろう弟や妹を祝う側として参加できるかもしれない。

 

 毎年だとあげられるものがそんなにないしな。

 

 今から何をあげるか考えておくべきだろうか。

 

 

___

 

 

 

 父さまがお祝いに二本の剣を送ってくれた。

 

 五歳の子供が持つにしては長く重い実剣と、短めの木剣。

 

 実剣はきちんと鍛造されたもので、刃もついていた。

 

 家族を守ると誓っているが、やはり実剣をもつと、その重さが武器をもつことの重大さを表しているようで、否が応でも命の重さを実感させられる。

 

 

 

「誕生日おめでとう、プレゼントだ。

 

 ごほん、おまえにこの剣はまだ早いかも知れないが、

 

 いいか、リオン。

 

 男なら心に一本の剣を持たねばならん。大切なものを守るには心構えが必要だ。

 

 妻や子供、おまえにもいずれそういう人ができるだろう。

 

 その者たちを守るのはお前の義務だ。

 

 ちょっと人より早く魔術を使えたからと言って調子に乗ってはいけない。

 

 魔術は接近戦が苦手だし、展開の早い戦いについていけない。

 

 その点、剣術はいいものだ…」

 

 

 

 この薫陶は、父さまから初めていただいた大切な教えだ。

 

 きちんと心に刻んでおこう。

 

 父さまは機嫌良さそうに話していたが、

 

 最終的には母さまが「長い」と、窘めた。

 

 父さまは苦笑し「ついては、必要な時以外はしまっておくように」と締めくくった。

 

 恐らく、父さまが僕に与えたかったのは、剣を持つことへの自覚と覚悟なのだろう。

 

 実剣をもってわかるその重さ、それを自覚し、

 

 正しく扱うためには何の為に剣を振るうのか、

 

 信念を定め、覚悟を決めろ、とそれが心に剣を持つことだと伝えたいのだろう。

 

 有難い訓示だ。

 

 

 

「父さま、母さま。

 

 僕は、家族を守るために剣を持ちます。

 

 少しでも早く、そうあれるように。頑張ります!」

 

 

 両親は少しだけ呆けたようにした後、

 

 

「はっはっは、まだまだそう簡単に追いつかれるほど父は弱くないぞ」

 

「まぁ、この子ったら!」

 

 

 父さまに笑われ、母さまに抱き着かれてしまった。

 

 子供の(やわ)な決意だと思われただろうか。

 

 確かに今はまだ父さまには遠く及ばないかもしれない。

 

 でも、僕の最速をもってして、家族を守れるようになってみせる!!

 

 

 

 

 

 

 その後、母さまからは一冊の本をもらった。

 

 

 

「リオンは本が好きみたいだから」

 

 

 

 と、手渡されたのは、植物辞典だった。

 

 思わず、「おぉ」と声を上げてしまった。

 

 これがあれば薬草なんかについて勉強することができる!

 

 この世界では、本は高価なのだからと、医療に関わる本を手に入れることは諦めていたのだが。

 

 植物辞典は分厚く、挿絵でわかりやすく丁寧に説明してある。

 

 一体どれだけの値段がするのやら。

 

 

 

「ありがとうございます、母さま。

 

 これで勉強して、母さまたちがもし病気になっても薬を作ってあげられるように頑張ります!」

 

 

 

 そう言うと、またぎゅっと抱きしめられた。

 

 

 

 

 

 

 

 ロキシー先生からは短い杖をもらった。

 

 30センチほどの棒の先に小さな赤い石のついた、シンプルなものだ。

 

 手作りだろうか。

 

 

 

「先日作成したものです。

 

 リオンは最初から魔術を使っていたため失念していましたが、

 

 師匠は初級魔術が使える弟子に杖を作るものでした。申し訳ありません」

 

 

 

 僕は剣で戦いつつ無詠唱でそれを補助する戦い方を目指しているので、杖を使うことはない。

 

 しかし師匠と呼ばれることを嫌がっていたロキシー先生が、わざわざ僕のために作成してくれたのだ。

 

 本当にロキシー先生には頭が上がらない。

 

 

 

「はい、師匠。大切にします」

 

 

 ついそのまま師匠と呼んでしまうと、ロキシー先生は苦笑いをした。

 

 

 

___

 

 

 

 そんなこんなで楽しく五年に一度の誕生日会を楽しんでいたのだが、

 

 食事も終えて、そろそろ片付けに入る頃かと思っていると、

 

 先ほどから少し悩まし気に何かを考えていた父さまが口を開いた。

 

 

「…リオン。ちょっといいか」

 

「あなた…あれは10歳の誕生日まで言わないって」

 

「ああ、そのつもりだったんだが…

 

 リオンは俺たちが考えていたよりも色々と成長が早い。

 

 さっきの言葉もちゃんとした覚悟をもって言っていた。

 

 話すなら今だろう」

 

「…そうね」

 

 

 一体何の話だろうか。

 

 まだ幼い僕には教えてない秘密か何かがあるのだろうか。

 

 子供の作り方とかそんな話じゃないよね?

 

 

「リオン。

 

 これから話すことはこの場にいるもの以外の誰にも言ってはいけない。

 

 心して聞きなさい」

 

 

 どうやら本当に真面目な話のようだ。

 

 

「はい。分かりました。」

 

「…いいだろう。

 

 本当は5歳の息子に言うべきではないのかもしれないが、俺はお前を信じる。

 

 

 

 いいかリオン、お前は神子だ」

 

 

 …みこ?巫女さん?グレイラット家って神社の家系だったの?

 

 

「…みこ、ですか?」

 

「リオンちゃん。

 

 神子っていうのはね。

 

 神の子、と書いて神子と読むの」

 

「え?父さまと母さまって神様だったんですか?」

 

「ふふ、いいえ。

 

 神子というのは生まれながらにして特別な力をもっている子供を指す言葉よ。

 

 大層な名前がついているけど、あなたは神の子供などではなく、

 

 正真正銘、私たちの子よ」

 

 

 特別な力?

 

 それって僕の成長が早いことを言っているのかな。

 

 だとしたら盛大に勘違いをしていることになるのだが…。

 

 

「…僕の特別な力って、」

 

「ああ、これはおまえの成長が早いことを言っているんじゃないぞ。

 

 それはそれで特別と言えるかもしれないが、神子の力はそういったものじゃない。

 

 おまえは変質の神子と呼ばれる神子と同じ特徴が時々現れている」

 

 

 どうやら転生したことによるものではないようだ。

 

 僕に何か目立つ特徴があっただろうか。

 

 

「おまえは気づかなかっただろうがな、この家には鏡がないしな。

 

 おまえは感情が大きく変化すると、髪の色に変化が表れる。

 

 いつもは俺譲りの茶色だが、少なくとも黒、白、青に変わったところを見ている

 

 …今も少し黒くなっているな、驚いたからか?」

 

 

 感情の起伏で髪の色が変わるだって?

 

 黒くなっている、と言われて前髪を確認してみると

 

 本当に父さまの髪色より黒ずんでいる。

 

 衝撃だ。

 

 しかし、そうか。

 

 これで得心がいった。

 

 初めて会った時、ロキシー先生がお揃いだと言ったのはだからなのだろう。

 

 その時、僕は静香先生のことを思い出して、不甲斐ない自分に強く嘆き、後悔していた。

 

 その気持ちが、髪に影響を与えたのだろう。

 

 察するに、悲しむと僕の髪は青く染まるのだろう。

 

 などと考察していると、落ち着いてきたからか、前髪が茶色に戻っていた。

 

 しかし…

 

 

「…髪の色を変える力ですか…?」

 

 

 なんの役に立つんだ、それ。

 

 

「…いいや、それだけじゃない。

 

 神子に関する情報はそれほど多くないが、おまえの魔術の才能や、闘気をすでに自覚できることを思うに変質の神子には、魔力に何かしらの効果をもたらすんだろう。

 

 そうでもなければ、5歳の、それも訓練のくの字も行っていない子供が闘気を纏うことはおろか、感じ取ることすらできるはずがない

 

 あれはそう簡単に扱えるものじゃないんだ」

 

 

 なるほど、魔力を変質させる力か。

 

 もしかして、無詠唱ができるのもそれが理由なのだろうか。

 

 だとすれば確かに凄い。

 

 

「その力は凄い。素晴らしい能力だ。

 

 

 …だが、だからといって驕ってはならない。

 

 その力は、時におまえを危険に晒すだろう。

 

 扱いきれない力は必ず身を滅ぼすことにつながる」

 

 

 確かに、その通りだ。

 

 扱えない、それもそんな強大な力を子供がもつなど、子供が刃物を扱う、などという例えとは比べ物にならないほどの危険があるだろう。

 

「今まで伝えなかったのはそれが理由だ。

 

 幸いにもおまえは賢く、今のところ暴走するような兆候はない。

 

 しかし、そんな特別な力を国は放っては置かない。

 

 神子であることが国に知られれば、強制的に連れていかれる可能性がある」  

 

 

 …なん、だって…?

 

 強制的に連れていかれる?

 

 家族と離れ離れにされるってことか?

 

 

 そんな、そんなの、そんなこと…

 

 

「嫌です!

 

 僕は、父さまと母さまと、家族と離れ離れになるなんて絶対に嫌です!」

 

 

 嫌だ、いやだよ。

 

 家族と会えなくなるのは、もう嫌なんだ。

 

 たとえ、何があろうと、もう諦めない、そう決意はした。

 

 たとえ、母さまたちがいなくなってしまっても、僕は生きると決めた。

 

 

 

 

 でも、それでも、あの絶望感を、あの、心に亀裂の入る音を、思い出すだけで…

 

 

 

 声が震える。

 

 きっと、髪は青く染まっている。

 

 思い出すだけで、これだ。

 

 本当に心が弱い。

 

 分かっていても、決意しても、こんな体たらくでは…

 

 

 

 

 

「大丈夫。」

 

 

 母さまが、そう、一言言ってくれる。

 

 

 それだけで、たったそれだけで、たったそれだけなのに。

 

 

 僕の心はすでに落ち着きを取り戻している。

 

 

 ほんと、敵わないな…。

 

 

「大丈夫よ、リオン。

 

 私が守る。絶対にあなたを渡したりなんかしない」

 

 

 僕も、僕も。

 

 誰にも、何にも家族の安寧を渡したりしない。

 

 僕も守る。母さまたちが僕を守ってくれるように。

 

 

「…もう!あなた!リオンを怖がらせないで!」

 

「あ、ああ、すまなかった。

 

 ちょっと、キツく言い過ぎたな。

 

 もちろん、俺だっておまえを国になんか渡したりするつもりはない」

 

「はい、すみません。取り乱しました。

 

 もう、大丈夫です、母さま。

 

 僕には母さまたちがいます。

 

 今はまだ、守ってもらうことしかできません。

 

 けど、神子の力もちゃんと扱えるようになって、今度は僕が守ってあげられるように。

 

 家族を守れるように、なってみせます!」

 

 

 リオンはそう笑って、改めて誓いを立てた。

 

 

「…ああ、おまえなら俺なんかよりもずっと強くなれるだろう。

 

 期待してるよ。おまえは、自慢の息子だ」

 

「本当にいい子に育って」

 

 

 期待している、というその言葉の暖かさ

 

 

 母さまに抱きしめられて感じる、その温もり

 

 

 

 

 それらはきっと、本当の意味で、

 

 

 

 僕が…父さんと母さんがいなくなってから、ずっと縛り付けていた、心の鎖を優しく砕いたのだった。

 

 

 

 

 

___

 

 

 

「すみません…このような場面にわたしのような部外者が混ざってしまって」

 

 

 …と、鑑賞に浸っていたのだが、

 

 そうだった、ロキシー先生やリーリャさんもこの場にいるのだった。

 

 

「それを言うのなら私も部外者ですね」

 

「あっ、いえ、そうではなくてですねっ…」

 

 

 遠回しにリーリャさんのことも部外者扱いしてしまってロキシー先生はリーリャさんにいじられてしまっている。

 

 まったく。

 

 

「えっと、そのリーリャさんはリオンが生まれた時からいらっしゃったのですから、そんなわたしと同じ部外者なはずありませんから、ですから…」

 

「ロキシー先生」

 

「あっ、すみません。本当ならこんな大事な話の場にわたしのような存在がいるのは良くないと思うのですが…」

 

「ロキシー先生。

 

 そんなことありません!

 

 僕は、ロキシー先生のことも家族も同然に思っています。

 

 もちろん、リーリャさんのこともです。

 

 お二人に僕が隠しごとをすることも、お二人が僕たちに遠慮することもありはしません!」

 

「そうだぞ」

 

「ええ、そうね」

 

「…ありがとうございます。

 

 しかし、初めて会った時、わたしはそうと知らずにお揃いですね、なんて言って安易に喜んでしまいました。

 

 あの時のリオンとさきほどの様子を思うに、とても悲しい気持ちの時に、あなたの髪は青く染まってしまうのでしょう。

 

 喜んでいいことでは、ありませんでした」

 

 

 とても、とても悲しそうにそう告げる先生に僕は、伝えなければならない。

 

 今度こそ。後悔しないために。

 

 

「いいえ、いいえ先生。謝る必要はありません。

 

 あの時、先生がお揃いだと、そう言って笑ってくれたことが、僕にとっては何よりも大切な思い出です。

 

 先生は何も間違っていません。

 

 

 僕の髪が、悲しむと青に染まる理由は、わかりません。

 

 

 でも、悲しい時、どうしようもなく立ち止まってしまうとき、

 

 先生と同じだと、お揃いだと、

 

 そう思うだけで、

 

 僕はもういつでも立ち直ることができます。

 

 

 それは紛れもなく先生のおかげです。

 

 先生のくれた言葉のおかげです。

 

 

 

 だから僕は、あの時、僕が先生と出会えた奇跡に、一生感謝し続けます。

 

 

 僕と出会ってくれて、僕に笑いかけてくれて、本当にありがとうございました」

 

 

 

 感謝を伝える。

 

 ただ、それだけのことが、本当に難しくて。

 

 ただそれだけのことで、こうも後悔しなくなる。

 

 

「……もう、リオンは本当に大袈裟ですね。

 

 

 弟子に気を遣わせるようでは、私もまだまだだめですね。

 

 

 …はい、そうですね。

 

 

 わたしも、リオンと出会えて、本当に良かったと思います」

 

 

 そう、言ってくれることが、僕にとってどれだけ大きいことなのか、

 

 きっと、先生は、いやロキシー師匠はわかってない。

 

 大袈裟なんかではない。

 

 

 やっぱりロキシー師匠は、僕にとって世界一の師匠だ。

 

 

 

 

___

 

 

 

 

「……どう思う?

 

 俺たちの息子の天然ジゴロっぷり。

 

 あれは将来、たくさんの女の子を引っ掻き回すな」

 

「もう、似なくていいところまで似ちゃって。

 

 ロキシーちゃんがお嫁に来てくれるなら大歓迎なのだけど、

 

 浮気はしないようにちゃんと教育しなくっちゃ」

 

「リオン坊ちゃま、本当に立派になって…。」

 

 

 

 

 

 リオンのあまりの人誑しっぷりに各々違う反応をみせる大人たちであった。

 

 

 

 




私:…シリアス、好きなんです。

俺:見りゃわかる。

僕:ていうか、速攻で解決したらシリアスじゃなくない?

私:いやぁ、天然って怖いですね。

俺:感謝を伝えられる人はいい人だ。

僕:…最近はあまりいないけどね。

主人公の大罪

  • 傲慢
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 強欲
  • 暴食
  • 色欲
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