海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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皆様お初にお目にかかります。メーメルです。今回若輩の身でありながら人生初の二次創作に手を出してしまいました。ハーメルン自体も初心者なので、何かお気に障る点などございましたらジャンジャン仰って下さい。あと主人公の名前が長いのは私の趣味です。ルドルフ大帝は貴族にフォン付けたくせにツーとかフュルストとかいれてくれなかった点が物足りないと思います。
では、どうぞ。


第一話 マックス・フォン・クラークドルフ・ツー・オイレンブルク

帝国暦452年秋 軍務省 情報Ⅲ課のある分室にて

 

「オイレンブルク、入室いたします!」

 

 今日から気怠い後方勤務が始まるかと考えるとそれだけで気分が落ち込む。幼年学校を卒業してこの方、ルドルフ大帝、もしかするとそれより前から続く軍人家系の三男として叛乱軍との前線にあった。今年32歳の中佐に昇進してとうとう巡航艦の艦長だと思った矢先に

 

「オイレンブルク中佐には軍務省への出頭を命じる」

 

との辞令である。どうせ事務仕事の経験は、とか言うのだろうが軍務省の中佐といえば分室副長、即ち室長の責任を被って水呑み鳥よろしく頭を下げ続ける仕事というイメージだ。どう考えても今までと比べて愉快な仕事ではない。いっそ親父に頼んで辞令を無くしてもらえないかとも考えたが、32にもなって親に泣きつくのはどうも決まりが悪いし、兄貴の面子もあるだろうしで結局出頭を命ぜられた分室前に立つハメになってしまった。

 

「入りたまえ中佐」

「おはよう、私がここの室長のシュテファン大佐だ。よろしく。」

…見事に禿げ上がった頭だ。胸には黄金勤続章に二等戦功勲章。典型的な後方軍官僚という事か。

「命令に応じて出頭致しました。マックス・フォン・クラークドルフ・ツー・オイレンブルク中佐であります。本日より大佐の指揮下に入る旨、申告いたします!」

「あー、取り敢えず座りたまえ。」 

 

 大佐の対面に着席を促される。普通はこの後分室メンバーの紹介なりがあるはずだが、なぜか室内には大佐しかいない。

「中佐、突然だが、君は皇帝陛下の、そのなんだ、為人を知っているかね?」

 今年の晩春に即位したオトフリート5世については市井でも閉鎖的な軍内部でも有名だ。曰く「倹約家」「無欲な陛下」「清い皇帝」…「吝嗇」歴代皇帝に比べれば今の所失政はないが、その性格は万人受けするものではないのは私でも知っている。

 

「為人と申しますとその、陛下が倹約家であらせられるといったことでしょうか。」

「まぁ、そういう事だ。で、陛下がこの夏軍務尚書に仰られるには、『軍は出費が多すぎる。たまには出費だけでなく生産もしたらどうか』と。な。」

 なるほど、つまりは軍は内職も始めなきゃならんという事か。造花やペンの組み付けをする為に軍人になったのではn

「そこでだ!単刀直入に言うと中佐、君には死んでもらう!」

 

 人間というものはあまりに理解不能な言葉が入ってくると何故か逆に冷静になるものだ。

「すると、私は戦死ですか。確かにまだ妻子はおりませんから遺族年金は少なくて済みますでしょうが…」

「あぁ、いや違うんだ、すまない。落ち着いて聞きたまえ。死んでもらうというのはあくまで書類上での話だ。君はこの後、前線に視察にでて、そこで叛乱軍に遭遇、名誉の戦死を遂げる。」

「はぁ、それで私の死と陛下の為人云々の関係は…」

「うん、まぁここから本題なんだが、軍務尚書も流石に生産せよと言われても兵に内職させるような事態は避けたいとのお考えでな、そこで我々情報Ⅲ課になんとかせよとのご下命があってだ、とりあえず過去のあらゆる軍の自給について調べてみた所、興味深い作戦、というか戦法があって、今回君にその作戦の責任者になってもらいたい、いやなってもらう。」

 軍の自給……そういえば幼年学校の西暦時代の歴史好きの学友が言っていた気がする。確か補給断絶地における芋類耕作だったか。内職は避けられたがやることは農夫か。やってもらうというからには決定事項なんだろうが、なぜ農夫になるのに一度死ぬ必要があるのだろうか。

「命令とあらば、お受けいたします。して、具体的な作戦内容は?」

「君の死とも関係あることだが、これは極秘中の極秘作戦となる。内容としては、『敵地後方攪乱による敵通商網の破壊と此方正面圧力の減少並びに敵地内部における政情不安を招く』だな。簡単に言えば、叛乱軍の中に入って物資を奪ってこい、という事だ。」

「つまり、宇宙海賊になれと?」

「少し違う。やる事は殆ど変わらんが、我々は名誉ある帝国軍だ。襲撃の際には自らが軍人であり、戦闘行動を取ることを相手に伝えねばならん。その後拿捕なり撃沈なりする。第一そうしなければもし万が一叛乱軍に捕らえられた場合に即決死刑になってしまう。」

「なるほど、確かにそうです。で、私が一度死ぬ理由は?」

「うん、それは叛乱軍の支配域への経路としてフェザーンを使うからだ。フェザーンは一応帝国の自治領だが、もし軍艦や駐在武官以外の軍人の侵入が知れたらコトだからな。」

 

 なるほど、面白い作戦だ。何より後方勤務ではなく、最前線も最前線、いや前線の向こう側だからある意味後方か?さらに責任者という事は艦長だ!叛乱軍支配域まで行くとなれば大型巡航艦か航続力のあるブレーメン級あたりだろう。宇宙軍の花形、巡航艦!まだ見ぬパートナーに今から心が躍る。数分前までの陰鬱な気分からは大違いだ!

「本懐であります大佐殿。して、差し支えなければ艦名をお教え願いたくありますが…」

「それなんだが、新造艦だからまだ艦名がないんだ。巨大なリスクを伴う任務であるし、ある意味勅命といえなくもないからな、中佐、君に命名権があるとのお達しだ。第15軍工廠の中型船渠にいるはずだから明日にでも見てきたまえ。詳しい作戦の内容の擦り合わせは週明けにするとしよう。では、退出してよろしい。」

「はっ、かしこまりました。では退出致します。」

 

 自分でも自覚できるほどの立派な敬礼をして、分室を退出する。まさかフネの名まで決めさせて貰えるとは思わなかった。ともすれば歴史に残る名前だ。勇ましい名がいいか、縁起のいい名がいいか、それとも親しみ安い様に愛嬌のある名か?なぜ子持ちの友人があのように浮かれるのか今だからこそわかる気がする。第15軍工廠か。楽しみだ!

 

〜中佐退出後、シュテファン大佐〜

「だいぶ浮かれて出て行ったが……明日卒倒でもされたら困るなぁ」

 

 

 

登場人物

マックス(略)オイレンブルク中佐 32歳

爵位は子爵。受勲歴は青銅勤続章・二級双頭鷲章・パランティア盾章・戦傷徽章黒章・装甲擲弾兵有資格者徽章・航宙指導者章

 

ハンス・エアハルト・シュテファン大佐 53歳

平民出身。入隊以来コネもないのに何故かずっと後方勤務部署にいる。

受勲歴は文中に記載。

 

オトフリート5世 年齢知らないのでご存知の方いたらご教授下さい

あのフリードリヒ4世の親父でケチ。

 

書いた人 

平民出身。中高で皆勤賞。

 




ここまで読んでくれた諸兄はありがとうございます。お目汚し失礼致しました。
反響があってもなくても次回は近いうちにアップする予定です。

因みにまだ艦名は自分の中でもぼんやりとしか決まってません。完全なる見切り発車です。流石に史実にあったようなものにはしない予定ですのでご安心ください。

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