海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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 こんにちは、メーメルです。ケンプ曹長に活躍してほしいなと思ったのでケンプ回になりました。では、どうぞ。


第十三話 小惑星

帝国暦453年1月13日 午後1時56分 索敵行動中のワルキューレ1番機

ケンプ曹長

 

「♪わが主、コルネリアス帝、兵士らに武器を取らせ給う、20の艦隊と億の兵、叛徒の中へ進撃す♪」

 

 ワルキューレの調子は最高だ。あの改造のおかげで総重量が500kgも軽くなった為に、前には出せなかった速度や出来なかった機動ができる。後ろを取るだけなら敵の艦載機には絶対に負けないだろう。まぁ、今の任務ではドッグファイトの機会なんてないんだろうが…

 それでも任務は任務だ。もしこの作戦で手柄を立てれば昇進や叙勲も期待できるだろう。そうすれば給金も増える。カールと、そう名付ける事に決めた息子の為にも、何かいないものか…無理矢理コックピット内に増設された索敵モニターに目をやると、端の方に反応がある。でかいし、かなり低速だ。

 

「ワルキューレ1番より、ゾンタークスキント。レーダーに反応があるが、隕石または小惑星の可能性大。一応確認に向かう。オーバー。」

 

「ゾンタークスキント了解。幸運を。」

 

 もし敵船であったら見つかると面倒なのでエンジン出力を絞る。そろそろ拡大すれば見えて来る頃だが、なんだ、やはり小惑星じゃないか。

モニターに映ったのは長さが400メートルほどのピーナッツの様な形をした岩塊だった。少しは期待していただけに、ため息がでる。だが、なぜこんな所にポツンと1つだけあるんだ?まぁ、取り敢えず報告だ。

 

「ゾンタークスキント、こちら1番、反応はやはり岩塊だった。お騒がせして申し訳ない。オーバー。」

 

「残念だったな曹長。次があるさ。」

 

 …せっかくだからこの忌々しい岩塊を回っていこう。アルテナにいた頃なら気まぐれに1発打ち込んでもなんともなかったが、艦長からは無駄撃ちは止められている。案外奥行きがあるようだが、あ?

 岩肌が途切れると、目には人工物が入ってきた。モニター越しに窓からこちらを見る男と目が合う。数瞬、思考が停止して、そのあと一気に頭が回転する。

 

「ゾンタークスキント!ゾンタークスキント!こちら1番!敵船と接触!岩陰にいた!こちらも見られた!指示を乞う!敵に発見された!」

 

「なに!?艦長、1番が。はい、ケンプ曹長です。回します。」

 

「1番、聞こえるか。こちらは艦長だ。敵は戦闘艦か否か。」

 

 艦長の落ち着いた声に頭が冷える。ワルキューレ乗りにとって頭に血が上るのは最もなってはいけない状況だというのに、しばらく敵を見ていないとこうも鈍るか。

 

「敵は小型の、民間船のようです。現在防御砲火並びに電波の発信は確認できず。側面に白字で何か書いてありますが、判別できません。」

 

「分かった。見られた以上はやるしかない。アンテナ様のものは確認できるか?」

 

「はい、艦橋前部に1つ、下面に2つそれらしいものが確認できます。」

 

「ジャミングしながらになると思うが、やれるか?」

 

「やります!お任せ下さい!」

 

 最近は教本でも目視射撃は軽視されて、誘導装置や射撃管制に頼れってことになっているが、それだとこういう時に役に立たない。やはり最終的に頼りになるのはハードパワーよりソフトパワー、パイロットの技量だ。ビームは1門、目視で正確にアンテナ基部を破壊しなければならない。しかも敵船本体に大きなダメージを与える事なく。

 敵船に正対して、まず1番でかいメインアンテナらしい奴に照準環を合わせる。敵はまだ回避行動をとっていない。…今!……やった!新しい小デブリの出来上がりだ!と、開きっぱなしにしていた光パルス回線から怒鳴り声が聞こえる。

 

『何をしてくれてるんだ糞ったれめ!冗談にも程があるぞ!さてはドラーク社の差金だな!?マフィア!海賊!ルドルフの息子どもめ!』

 

 今答えてる暇はない。残りのアンテナを吹き飛ばしてから返答はしてやろう。今度は下面から近づく。こういった一航過で2目標を攻撃する場合、ワルキューレの可動翼は便利だ。叛乱軍の艦載機だったらこうはいかない。1、2!少し火がついたようだが、致命傷ではない。相変わらず悲鳴にも似た声が入ってくる。

 

『ああ!くそっドラーク!貴様覚えてやがれ!今度という今度は賠償どころじゃ済ませてやらんからな!この世界に居られなくしてやる!破滅だ!貴様は破滅だ!』

 

…なんだかここで会話すると面倒臭いことになる気がするので発光信号で意思を伝える事にする。『我、帝国軍、機関を停止せよ。さもなければ撃沈す。』…通じてくれるかな?

 

『あ?テイコク…はっ!今更取り繕おうったって遅いぞ!しっかり証拠も録画してあるんだ!10:0で我々の勝訴は確実だぞ!さっさと消えちまえ!帰って雇い主に"無能な私は彼らの作業すら止めることができませんでした"とでも報告するんだな間抜け!』

 

 どうやら逃げる気は無いようだからこれはこれでいいのか?ゾンタークスキントが全速を出してくるとして、視界に入るのはあと7分位か。一応見張っておくに越した事はないだろう。

 

『なんだ?さっきからブンブン飛び回りやがって!沈められるもんならやってみろ!抜け駆けされて悔しくても、それはお前が実業家として無能だった証拠だ!この小惑星の権利は我が社の物になったんだからな!』

 

 通りで変なところにある岩だと思っていたらこいつが引っ張ってきてたって訳か。よく見れば敵船の後ろにはポン付けした様な重機が載っている。言い分から察するに、どうやら商売敵とはライバルどころではない関係らしい。『今度という今度は』という事は同じような妨害や嫌がらせを互いにし合っているんだろう。まぁ、こいつが拿捕されれば、そのドラーク氏にとっては不倶戴天の敵が消えて幸運な訳だ。そうなれば宇宙から1つのつまらない紛争も消えるわけで、案外我々は叛乱軍にとって損害を与えているだけでも無いのかもしれない。通信では相変わらず男が罵詈雑言を並べ立ててドラーク氏を非難しているが、よくこんなに人を貶す言葉がポンポンでてくるものだ。

 

ーーーーーーーーーー

 

同日 午後3時 食堂のケンプ曹長

 

 あの後、全速で向かってきたゾンタークスキントが接舷して初めて敵は現状を認識したようだった。『俺よりドラークの方が悪どい事をしているのに、俺を先に捕まえるのは道理が通らない』とか言っていたが、私に見つかったそもそもの原因はあのでかい小惑星を無理矢理引っ張っていたからだし、向こうも向こうだと思う。とにかく今日は疲れた。報告書は上げたし、引き継ぎも済ませた。後必要なのは一時の睡眠だ。

 

ゾンタークスキント航海日誌 R.C453.01.13

記入者 エーバーハルト・ツァーン少尉

 

本日、1410時ケンプ曹長のワルキューレが敵を発見、通信アンテナを破壊したのち、本艦が接舷して拿捕に成功した。新たなゲストは船員と作業員含めて19名。拿捕品目:食料・エネルギー・精製タングステン1t・イリジウム粉末合金900kg・カナリア2羽。

 採掘作業中の爆発事故に偽装する形で敵船は処分済み。初めての具体的な価値のある拿捕品目に艦内の士気は上がったように感じる。

 

                        続く




 お読みいただき、ありがとうございます。後書きのコーナーです。
 冒頭、ケンプが歌っているのは「フリードリヒ大王擲弾兵行進曲」の銀河帝国版です。日本語訳のさらに替え歌というカオスなのを歌ってます。本物はカッコいいので是非お聴き下さい。
 途中で「ルドルフの息子どもめ!」という悪口が出てきましたが、あの時点で正体はバレていないので、ただの同盟人特有の悪口です。アメリカ人が「ジョン・ブルの息子どもめ!」とか言うのと同じですね。
 今回もご感想、ご意見などなどお待ちしています!是非どうぞ。
 
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