海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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 最近時間が遅くて申し訳ありません。メーメルです。そろそろ襲撃シーンはバッサリカットして冗長にならないようにしていきたいところですね。では、どうぞ。


第十五話  はったりと酒

帝国暦453年 1月21日 ゾンタークスキント艦内 娯楽室

エーバーハルト・ツァーン少尉

 

 今日はSPUの主催で立体映画の上映会が行われている。ちょうど非番だったし、ここ数日接敵もないので見てみる事にした。ストーリーとしては名探偵らしい男が複数の女性を口説きながら暗黒メガコーポの不正を暴く、という設定を盛りすぎではないかと思うものだったが、それなりに楽しめた。何より3回以上はあった濃厚なラブシーンは帝国の映画にはないもので……なんというか、新鮮で良かった。

 

『やぁ、少尉さんじゃないですか。楽しんでいただいてますかな?』

 

 背後から話しかけてきたのはSPU代表のバクスター氏だ。

 

『ええ、やはり帝国と同盟では表現手法に大分違いがありますね。興味深いです。途中に登場人物が歌って踊り出しましたが、同盟の映画はみんなああいう手法で感情表現をしているんですか?』

 

『いや、別にそういう訳ではありませんよ。きちんと硬派な映画も我が同盟にはあります。惑星フィクスッドなんかで作られるのはそういうのが多いですね。次やる"13人の剣闘士"なんか、その代表格と言えるでしょうな。10分程休憩を挟みますので、少し待っていて下さい。』

 

『はぁ、ありがとうございます。では待たせてもらいます。』

 

 バクスター氏はニコッと微笑むと後ろに座っていた上等兵に話しかけに行く。あの人のコミュニケーション能力は底なしなんではないだろうか。それとも向こう側ではあれくらいじゃないと商人としてやっていけないということか。何にしても…んあ?

 

『こちらは艦長だ。当艦は7光秒先に船影を捕捉した。乗組員の第一、第三直は戦闘配置。SPUの諸氏には、申し訳ないが下甲板に退避していただく。上映会の腰を折るのは残念だが、新たなメンバーの歓迎会を考えておいてくれたまえ。』

 

ーーーーー

 

 艦橋へ上がると、艦長と大尉が宙域図を覗き込みながら何やら相談していた。

 

「ツァーン少尉、戦闘配置を申告します。何か問題がありましたか?」

 

「申告を了解する。ああ、どうやらこの先に大規模な小惑星帯があるようでな。そこに潜り込まれると行動の自由も効かないし、振り切られる危険性を考慮するとワルキューレも出せんし、どうするか…」

 

「補助機関を使いますか。全速を出せば捕捉できる距離でしょう。」

 

「それもいいんだが、敵船にとっては背後から貨物船が出すはずのない速度を出しながら近づいてくる訳だからな。警戒されて、事前通報でもされてしまうとコトだ。難しいな…いっそ今回は見逃すか。」

 

「艦長!意見具申よろしいでしょうか!」

 

 目をやると、航宙管制担当の軍曹が直立不動で立っている。

 

「なんだね、フォルベック軍曹。何か良い案でも浮かんだのなら聞こうか。」

 

「はっ。こちらから追いかけてダメなら、向こうから引き返す様にさせれば良いのではないかと考えたのであります!」

 

「一理あるが、具体的には?救難信号なんか出したら招かざる客を呼び寄せてしまうことにもなりかねないが…」

 

「はい、まず敵船にこちらは叛乱軍の特殊部隊であると伝えます。進路上に機雷原があるとか、演習宙域だとか言えば、とりあえず相手は停止するでしょう。そのあと、臨検とか機密保持とか理由をつけて敵を呼べば、敵はこちらを叛乱軍だと思っているわけですから通報しようとは思わないでしょうし、警戒もされないのでは、と考えたのであります。」

 

「……指向性の高い超光速通信を使えばやれるか。軍曹、君の案を採用する。もしうまくいったら君に410年ものの赤を進呈しよう。」

 

「はっありがとうございます!」

 

410年ものなんて高級品を賞品にするとはずいぶん太っ腹だ。私もなにか案を出せば貰えたりするのだろうか…

 

「呼びかけはバウディッシンにやらせよう。確か尋問練習の時に使った叛乱軍の軍服はまだ積んであったな?着て来るように言ってくれ。」

 

3分ほど経って、中尉が艦橋に出現する。この人は何着てても第一印象が「いかつい軍人」で固定されるんだから服選びが楽でいいだろうな…

 

「よし、ではやるか。指向性制御できたか?よし、中尉、出来るだけ高圧的にな。3、2、…」

 

『前方の民間船、停船せよ!こちらは同盟軍第3星間パトロールである!貴船は軍の管制宙域に侵入しつつある!船を止めろ!』

 

『こちらはエリューセラ籍の運搬船、ハーベスター。そんな話は聞いていないし、第一4日前までこのルートは…』

 

『ハーベスター、指示に従え。従わざる場合はスパイ活動船と見なして即座に撃沈する。繰り返す。停戦しなければ撃沈する。』

 

『分かった!分かったから、撃たないでくれ!全く、同盟軍はここのところ随分…』

 

『随分…なんだね?ハーベスター。…よし。当艦は貴船に対して臨検を要求する。同盟軍基本法第26条は…』

 

『ああくそっ分かりましたよ!26条ね!同盟軍万歳!』

 

 通信が切られて、敵船が徐々に近づいてくるのがレーダーで確認できる。どうやらうまくいきそうだ。410年の赤…軍曹に頼めば少しくらい分けて貰えないだろうか…

 

「なかなかうまいもんじゃないか中尉。で、臨検も君が行くかね?」

 

「ええ、もちろんです。その為に乗っているんですから。敵船のサイズによって移乗人数を決めますので、判明しましたら内線をください。では!」

 

ーーーーーーーー

 

 その後はいつも通りことが運んだ。接舷して移乗用通路から装甲擲弾兵が雪崩れ込むと、ものの5分で敵船は完全に占領された。ゾンタークスキントより大分大きい船で、船員も全部で46人という大所帯だったが、船長をはじめとした主要メンバーが出迎えに来ていたのも早期の制圧がかなった要因であると思う。積荷は殆どが未加工の鉱石で、鹵獲する価値もないものだったが、、、一つだけ、重要なものがあった。

 

「絶対に鹵獲するべきです!兵士の士気の上でも、ゲストの不満解消のためにも!人類始まって以来の親友を宇宙の中で大量虐殺するなんて事には、小官は賛成しかねます!」

 

 200ケース!ブランデーが200ケースだ!なんとしても彼らを待ち受ける残酷極まりない死の運命から救ってやらねば!

 

「ど、どうした少尉。そんなに熱くなって、らしくないぞ。」

 

「他にも理由はあります。本日、中、艦長はフォルベック軍曹に410年もの…410年ものを進呈したでしょう。あと同じものが何本あるんですか?」

 

「あと…8本だが、それがどう…」

 

「もし、今日のことが艦内に広まればフォルベック軍曹だけ利益を得たことになって、艦の士気に影響します。兵士に限らず、SPUの連中にも何か艦内で貢献活動をすればブランデーを支給するようにすれば、艦全体にリスクなしに良い影響を与えることになると愚考いたします!」

 

「…わかった。鹵獲を許可しよう。それから、その管理や進呈基準は少尉が行うように。」

 

「ありがとうございます!艦長!小官が責任を持ってやります!お任せ下さい!」

 

やった!私はやったんだ!オールハイル!我らが人類の、古くそして永遠なる友よ!

 

ーーーーーー

 

「大尉、ツァーン少尉の目、見たか?」

 

「ええ、今度敵船に酒があることが分かったら、彼を先頭に立ててやった方がいいでしょうな。子供なら漏らしてますよあの目は。」

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 




 ツァーン少尉に新しい設定が生えました。女装、味オンチ、酒キチとは…一人に盛りすぎてフランツィウス君の影がどんどん薄くなってます。どうしましょう?

 今回も、ご意見、ご感想お待ちしてます!
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