海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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 こんばんは、メーメルです。ワインを2本開けながら書いたらよくわかんない事になってたので書き直しました。アルコールは人類の友とはいえ、やはり人類の片想いに過ぎないんでしょうか。では、どうぞ。


第十六話 救難信号

帝国暦453年 1月23日 ゾンタークスキント艦内 

フォン・オイレンブルク中佐

 

「どうだった、大尉。まだかかりそうか?」

 

「ええ、だいぶ酷くやられてます。交換部品をつぎはぎして機関科員総出でやってますが、どうにもならない部分もありまして…絶望ではないですが難しいと。」

 

「分かった。主機の方は問題ないんだな?」

 

「はい、ケーブルが1、2本衝撃で逝っただけです。これについては交換も終わって、機関長からスラスター、出力共に問題なしとの報告が上がってきてます。不幸中の幸いですね。」

 

 2日前、大型船を拿捕して、爆破に入ろうとしたとき、大規模な恒星風に襲われた。なんとか人員の撤収には間に合ったが、艦は6M級の岩塊の直撃を受けて補助動力機関と後部スラスターが大分やられた。積んでいたワルキューレも2番機の固縛ケーブルが切れ、推進剤のタンクが破れたため全損判定が出された。仕方ないので解体して修理部品に回す事した。

 例の大型船の方は係留ワイヤーを外して漂流した後、100Mはあろうかという巨大な岩塊が直撃して真っ二つになってしまった。手間が省けたといえばその通りだが、補助機関が修理できない可能性が出てくるとなると今後はさらに慎重な立ち回りをせねばならない。もし叛乱軍と追いかけっこなんてするハメにでもなったら…いや、今はあまりネガティヴなことは考えない様にしよう。主機が無事なだけでもいいじゃないか。

 

「負傷者の方は?骨折が何人か出ていたな。」

 

「それについても問題ありません。クンツェ中尉と、ゲストの中にもそういった心得のある者が協力を申し出てくれまして、…ただ、ツァーン少尉の方はもう少しかかりそうですね。本人は何もなげに振る舞っていますが、まるで背後霊でも憑いたかのようです。」

 

「あんなに必死な目をして確保した"無二の親友"が次の瞬間全滅したんだからそうだろうな。まさに天国から地獄へ急降下ってとこだろう。彼の為にも次の獲物を早いとこ見つけないといかんなぁ。」

 

ーーーーー

 

「艦長、不審な電波が入りました。再生しても?」

 

「不審な?よし、流してみてくれ。」

 

『メー……こち……貨物せ………ラーク…12月……核融合…きゅ……位…は…メーデー…』

 

「…救難信号か。もちろん全周発信だな?」

 

「はい、通常電波で拾えましたので、大分弱々しくなっていますが、救難信号には間違いないと考えます。」

 

 問題だな…救難信号だとすれば受け取った艦船には救助義務が発生するが、もし他の救助船、いや民間船ならまだいいが、叛乱軍の軍艦なんかと鉢合わせしてしまうリスクも大きい。いっそのことこいつを囮のように使って近づいて来る船を…

 

 いかんな。宇宙の男にあるまじき考えをしてしまった。 困った時に敵も味方もない筈だ。それに、通信では12月、と言っていた。2ヶ月近く救助が為されていないという事は船内は危険な状態になっているだろう。急行すべきだな。

 

「よし、発信源に急行する。一応2直は戦闘配置。それから、クンツェ中尉に原子力災害対応の準備をしておくように伝えてくれ。」

 

ーーーーー

 

「見えました!前方、!発光信号来ました!」

 

 どうやら生存者がいるようだ。とりあえずは安心していいだろう。次は相手がどんな状態でいるかだが…

 

「艦長、発光信号によると、敵船はジャムシード船籍の貨物船、船名は「テトラーク」というそうで、12月19日に核融合炉の制御コンピュータが何故か停止し、全推力を喪失したあとは非常用電源と太陽光発電でなんとか凌いでいたそうです。食料もつきかけているようで、あとはひたすらに感謝の言葉が来てます。」

 

「今はまだこちらの身分を明かす必要はないだろう。核融合炉が止まったという事は放射能漏れは起こっていないんだな?なら普通に接舷すれば良いかな。抵抗される危険も薄いだろうし、クンツェ中尉に先行させよう。」

 

 移乗用通路が無事接続されてしばらくあと、内線が入る。

 

『船長ですか?あー、医療部主任です。こちらの船長が、あなたにお会いしたいというんですが、通してよろしいでしょうか。』

 

わざわざ言葉を変えて、船長だの「医療部主任」だの名乗るところからみるとまだ正体は明かしていないようだ。体よく種明かし役を押し付けられたわけだ。

 

『分かった。では移乗口まで行く。』

 

 相手は心身共に消耗状態にある事だろう。出来るだけ刺激を与えないように拿捕の事実と我が艦に収容することを伝えなくてはならない。こちらも胃が痛くなりそうだ。

 軍服を隠すジャケットを羽織って移乗口に行くと、何故か傘を持った男が待っていた。なぜ宇宙で傘なんぞもってるんだ?

 

『船長さんですか?ああ!あなたは救いの神です!あの最初の民が惑星ハイネセンを発見した時だって、これほど嬉しくはなかったでしょうな!全乗組員に代わって深く御礼申し上げます。いや、このまま宇宙で餓死することになるかと思うと、喉に石が詰まる気分でしたよ。』

 

 絶望から救われてハイになっているんだろうが、よく喋る船長だ。喉に石が詰まる、ね。我々が帝国軍である事を伝えたらその石が2倍の重さになって帰ってくることになるんだが…仕方ない、これも艦長という責任ある仕事の内だ。

 

『まぁ、船長。こんなところで立ち話もなんですから、私の部屋へどうぞ、ところで、お名前は?』

 

『!これは失敬。私はジャムシードで星間運送業をやってます、ルキノ・カドルナと言います。あなたは?』

 

『私?私は、オイレンブルクです。仕事は、まぁ手広く色んな事をね。』

 

 艦長室に通してもまだ気付かないようだ。ここで察してくれれば楽でいいんだが…流石に机のブレーメン級の置物だけでは無理があるか。次のために国旗でもかけておく事にしよう。

 

『ところで、気になっていたのですが、そちらの、傘はなんなんですかな?』

 

『ご存知ないですか?ジャムシードは雨が多い星でして、いつも傘を持ち歩いているうち、これがないと落ち着かないようになってしまいまして。お恥ずかしい話ですが、ご容赦ください。』

 

『いや、いいんですよ。あー、で、言いにくい話なんですが…』

 

『はい、もちろん心得ております。宙事法では努力義務となっていますが、死の危険から救って下さった方々に1ディナールもやらんなんて、そんな恩知らずなことはできません。積荷の三分の一は救助報酬として差し上げます。お受け取り下さい。もう私の船はダメでしょうから、それだけでも…』

 

…結局やることは変わらないが…真実を話しておいた方がいいだろう。机の引き出しにしまっておいた、オトフリート5世の御真影をカドルナ船長に見せる。

 

『我々はこの方の為に働いているのですが、カドルナ船長。』

 

『そちらの船主さんですか?その方にもご挨拶させていただきたいですね。』

 

 参った。考えたら敵国の元首の顔は一般人は知らないものか。こっちが向こうの議長の顔を知っているものだから…ええい、ままよ!

 

『我々は帝国軍です。あなたの船は現在我が軍に拿捕され、人員も全て本艦に移ってもらい、当面の間生活してもらう事になります。』

 

『はっ?ええ、つまり、あなたは帝国軍で、……敵である私達を救助してくれたと!?』

 

『まぁ、そう言えばそうなんですが、カドルナ船長、あなたの船の積荷は当艦に必要な分拿捕させてもらいます。返却はできませんし…』

 

『構いません、構いませんとも!いや、物語の中だけかと思っていましたが、今の世にも騎士道というものは生き残っていたんですな!敵同士でも人間の理は踏み外さない!船長!いや、艦長!私達は喜んであなた方の指導下に入りますとも!』

 

ーーーーー

 

 なんにしろ、カドルナ船長は随分なロマンチストだった。あのあと、なんだかよくわからない映画の話をされたが、どうやら私とその主人公を重ねているらしい。まあ、騎士道精神を持っている、なんて言われて嬉しくないわけがないが、ああも面と向かって言われるとどうも照れてしまう。積荷はグランドピアノが数十台と、建築用木材であったので娯楽室に置くように一台だけ持ってきた。楽譜なんかはないので誰か弾けるのを見つけなければならないな…まあ楽器というものはただ和音を聴いているだけでも気分は晴れるものだし、置く価値はあるだろう。

                     

                     続く

 

 

 

 

 

 

 




 ゾンタークスキントは補助機関が壊れてしまったので普通より少し早いだけの速度になってしまいました。ワープなどは問題なくできるのでご安心ください。
 今回もご意見、ご感想お待ちしております。ぜひどうぞ。
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