海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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 どうも、メーメルです。20話を達成いたしました。毎日短めの奴を投稿するようにしてきましたが、それでもまだ20話です。100話とか行っている先人たちはすごいですね。今回はあの人視点です。どうぞ。


第二十話 アレクのおっさん

宇宙暦762年 2月12日 シュパーラ5 同盟軍哨戒基地司令室

アレクサンドル・ビュコック少佐

 

『ですから、司令官!あまりにも不自然なのです。この1ヶ月で消息不明になった民間船舶は10隻になります。例年の平均事故船舶数をすでに上回っていて、ロイド宇宙保険の保険金にも影響が出始めていますし、軍としても原因究明を行う方針なり、調査船の派遣なりをするべきです!』

 

 司令席に座るヴィルヌーヴ准将はいつものように眉を顰めて私の置いた報告書を捲る。あの早さは絶対中身を読んでいない。

 

『ビュコック少佐、ご苦労。で、君は宇宙海賊でもいると考えているのかね?フェザーンとこことの間に?マーロヴィアの様など田舎でもあるまいに…』

 

『宇宙海賊とまでは言わないものの、民間船舶の航行ルートに何かしらの問題が発生しているのは間違いないと考えます。報告書に詳しく書きましたが、例えば未知の彗星群や宇宙潮流などの危険物が…』

 

『いいかね、少佐。君のいう事はいつも大袈裟過ぎるんだ。対亡命者用の臨検だって、君の初仕事だからといって許したが、結構苦情も来ているんだぞ。"軍の横暴"だとか"時間的損失を埋め合わせろ"だとか、な。で、それを受けるのは責任者たる私だ。』

 

『それについてはありがとうございます。しかし、成果も十分出ているではないですか!この前のサイオキシン麻薬の大量押収は臨検がなければあのままハイネセンまで行っていた所でしたし。』

 

『ああ、あれか。あれも軍がやるような仕事ではないがな。おかげでエネルギーも予算もカツカツだし、軍の留置所も満杯だ。とにかく、平均値というのは信用できないからな、それをを少し上回ったからといって過剰に反応するのはエネルギーの無駄だよ。第一、あのフィスカスとかいう徴用船は機雷の積載過多による事故だとイソタケルからの報告書が昨日上がってきていたばかりじゃないか。』

 

『その事故についても本来起こらない筈の事故です。結局"なんらかの原因で機雷が連鎖爆発を起こし…"という曖昧な結論に着地していましたし、原因自体は不明瞭なままです。それを…』

 

『分かったよ。少佐。安全対策のマニュアルの再配布はしよう。言いたい事はそれだけだな?では、退出してよろしい。』

 

『…はっ、失礼します。』

 

 司令室のドアを閉めて、ため息をつく。確かにこの基地は最前線の反対側に位置しているし、任務もデブリの回収や航路探査がほとんどで、予算も、割り当てられるエネルギーも少ないのは分かっている。しかし民間人の生命と安全を守るのが軍の仕事だ。内部事情だけで存在理由を蔑ろにする訳にもいかんだろうに…

 どうしたものかな、と食堂で思案を巡らせていると、真向かいの席に若い准尉が着席する。

 

『…現場検証帰りか。ヴィドック。疲れてるようだな。』

 

『苦労人の副官殿ほどではありませんよ、また司令室から追い出されたと聞きましたが、今度は何を司令官に具申したんです?』

 

『ああ、最近民間船舶の事故が増えているだろう?それの原因究明をもっと詳しくやろうと言ったら拒絶された。カネがないんだそうだ。何かいいやり方はないものかな?』

 

『確かにそうですね、昨日も研修旅行生が乗った客船が予定時刻を過ぎても連絡がつかないという通報があったばかりですし…せっかくやりくりして発注した索敵衛星も事故で全損ですものね。ああ、でも現場で面白いものを見つけましたよ。』

 

『面白いもの?死体の一つも見つからないような場所でか?』

 

『ええ、今はイソタケルの回収物保管庫にありますから、見にきますか?』

 

ーーーーー

 

『これなんですがね。』

 

 ウィドックが引っ張り出してきたのは索敵衛星の残骸。多分送受信アンテナの辺りだ。端が黒く焼け焦げている。

 

『…で、このなんの変哲もない宇宙ゴミのどこが面白いっていうんだ?』  

 

『ええ、この索敵衛星はハイネセン中央軍工廠製ですね?』

 

『そうだよ。新型とまでは行かないが、最前線でもまだ現役のタイプだ。』

 

『そうでしょうとも。で、私はこの残骸にハイネセン中央の不正の証拠を発見したわけなのです!この裏の、ここ、分かりますか?帝国語でうっすら落書きされてるのが見えるでしょう?Sonn…あとはよくわかりませんが、フェザーンの工場から部品が来ている事の明らかな証拠です。こうやってハイネセンでは経費を浮かしてるんでしょうな!全く卑怯な奴らだ。』

 

『……いや、准尉。これは違うぞ!フェザーンの書体じゃない、帝国本土で使われるような奴だ。』

 

『?どういう事です?…まさか帝国のスパイがハイネセンにいて、なんらかのサボタージュの連絡手段として索敵衛星を?』

 

『その可能性もあるが、スパイは連絡手段に落書きなんていうものは使わないだろう。使っても同盟語で書くはずだ。…もしかしたら、フィスカスは事故で沈んだんじゃないのかもしれないぞ。』

 

『まさか!帝国の軍艦でも遊弋してるというんですか!?本当だったらロイドの保険料は大変な事になるし、フェザーンとの物流は大打撃です!それに、軍の徴用を受けてくれる船なんていなくなってしまいますから…』

 

『そうだな…そうなれば非常にまずい。准尉、この事については緘口令を出す。他にこの残骸を見た者はいないな?』

 

『はい、見せたのは副官殿にだけです。残骸自体はイソタケルの乗員が見ましたが、位置が位置ですから、気づいた者はいないかと。』

 

『よし、分かった。司令官と話してくる。ありがとう、准尉!』

 

ーーーーー

 

『……今度は落書きの鑑定かね?これがなんだというんだ?ええ?』

 

『事故増加の原因は帝国軍の可能性があります。これは外見は帝国語の落書きですが、重大な痕跡でもあります。すぐに消息不明船の再捜索を実施すべきです!彼らは帝国の軍艦に撃沈されたのかもしれないんです!』

 

『はぁ、いいか?君が言っていることは矛盾しているのが分かっているかね、ビュコック少佐?』

 

『矛盾?何がです?』

 

『もし、仮に、万が一、あり得ない事だろうが帝国軍がこの辺りの宙域をうろうろしているとする、君の論理に従えば消息不明船が増え始めた今年の始めからだ。では奴らはどこから侵入した?エル・ファシルからか?あの辺りは最前線だ。蟻の這い出る隙間も無いくらいの哨戒密度がある。フェザーン回廊の方は君が主導した臨検戦隊が常時見張っているし、第一非武装地帯だ。帝国がそんなリスクを犯すとは思えないな。』

 

ヴィルヌーヴ准将は椅子を回してこちらに背中を見せながら言う。

 

『つまり、君がいるという幻の帝国艦の存在は君の"優秀な"仕事によって打ち消されてしまった訳だ。どうだね?』

 

『しかし、実際にこの物証は…!』

 

『その物証にしても、だ。SONNなんていう文字列はありふれたものだ。それが帝国風の書体で書かれていたから帝国軍がいる証拠だと?そんなことを言っていたらハイネセンポリスの路地裏には帝国軍の一個師団位は潜んでいる事になってしまうじゃないかね。』

 

『…分かりました。帝国軍の事は置いておきます。しかし、事故調査に関しては軍の責任として続けさせます。よろしいですね?』

 

『"予算とエネルギーの許す限り"を前につけてもらいたいな。まぁ、それについては君の仕事だ。そうだ、残業代はあまりつけすぎないようにな。』

 

『かしこまりました。では、失礼します!』

 

ーーーーー

 

『民間人の生命が危険に晒されるかもしれないというのに!全く!どうして…"ハイネセンポリスには一個師団いるかもしれない"だと?冗談で言っているんではないんだぞ!…ヴィドック、次の出撃には私も同行させてもらうぞ。艦長に言って、許可を貰っておいてくれ。それから、今までの全戦隊の臨検記録を頼む。コピーして持ってきてくれ。』

 

『え、しかし、いいんですか?副官の仕事は。』

 

『どうせやるのはコーヒーを淹れるのと部屋の掃除くらいなもんだ。従卒でもつければ十分だよ。それに、司令官は私が目障りなようだしな!』

 

何としてでも相手の正体を突き止めねばならない。帝国軍だとしても、新手の宇宙海賊だとしても、絶対に何かがいるはずなんだ。最早ただの不運な事故が連続で起こっただけなんてことはあり得ないんだ…!

 

        続く




 死に設定にはなりませんでした。いままでにゾンタークスキントが沈めた船は合わせて8隻ですので、もう2隻は本当に事故ってるようですね。
 准将さんは無能に見えますが、限られたリソースを不確実なものに割いてもしもの時に対応出来なければ悲惨なので、難しい立場だと思います。
 どうやら装甲擲弾兵の中に落書きしたお調子者がいたようですが、大丈夫なんでしょうか?

今回も、ご意見、ご感想お待ちしております!
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