海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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お久しぶり所じゃないメーメルです。半年間の放置の末に恥ずかしながら帰ってまいりました。

また投稿を始めていきたいと思うので、よろしくお願いします。


第二十九話 雑談

帝国暦453年3月12日 ゾンタークスキント艦内

フォン・フランツィウス大尉

 

 中佐殿から移動の命令が下り、ワープでの移動を開始する。話を聞くには本国から暗号電文が送られてくるので、それの受信宙域へ行くとの事らしい。まぁ個人的には最初から本国が一隻の巡航艦規模の自由行動を許しておく訳はないと思っていたから、3ヶ月間の自由行動は案外もった方だろう。

 

「ワープアウトします。衝撃に注意。」

 

 移動を開始してから通算8回目のワープ。これでやっと目的地まで三分の一というのだから宇宙の広大さは計り知れないものだ。ワープ技術のない時代は恒星系内での移動だけでも一苦労だったという先人達の事を思うと同情したくなるな…

 

「完了しました。全艦に異常は認められません。エネルギーの充填と次回ワープ先座標の設定後、またワープに入ります。予定時刻は90分後!」

 

 やはりこちら側の方がワープ間隔を短く取れて高速移動にはいい。一応主要航路からは外れて宇宙の獣道ともいうべきルートを通っているというのにこう立て続けにワープができるというのは大きなメリットだ。

 

「帝国じゃこんな風にはいかないからな、こっちの方が商船乗りには暮らしやすいかもわからん。」

 

「そういえば大尉殿は商船学校から入隊でしたね。何か本国の方と差があるんですか?これまで出会った船から見ても技術的には帝国のエンジン品質の方が優れていそうですし、サイズだって負けたものではないでしょう?」

 

「フォルベック、そういう技術面とかいう即物的なことからしか物事を観測できないのは危険だぞ。職業軍人だからといって軍内部の視野しか持っていないようでは出世には問題ないかもしれんが人生は味がなくなるし、もし戦傷章の金クラスをもらって名誉除隊なんてことになったら他の仕事ができなくなる。」

 

「そんなものですかね?でも軍艦も商船も結局は効率的なルートで大量の人員や物資を運んで、そのあとは戦うなり売りつけるなりで違うでしょうが、基本的なプロセスはそんなに大きな差があるようには思えませんが」

 

「前提条件が違うじゃないか、軍艦の艦長が責任を負うのは艦隊司令部、独立部隊や勅任部隊の場合は皇帝陛下や国家に対してだけでいいが、商船の方はそうはいかないんだ、いいか、まず上から言っていくと貿易組合だろ、その下に業突く張りで少しの遅れや船体の損傷も許さない船主、さらにライバル企業や乗組員とその家族の安全にまで気を配らなきゃならん。これに加えて、さっきお前が言ったような効率だのを考えなくちゃならないんだ。ここまでの障害を乗り越えてきて、帝国の場合はこの”効率”とやらにもさらに大きなハードルがかかるんだな。」

 

「何かありましたか?燃料の補給だって、それこそクラインゲルトやハーフェンみたいな辺境星域でもない限り軍民共用のものが利用できるでしょう、あとは……」

 

「やはり知らないのか、まぁあまり大っぴらに言うことでもないからな。カストロプみたいに複数の星域に領土を持っている大貴族がいるだろ。ああいう連中は通行税をとるんだ。」

 

「通行税?それはしかし、見ようによっては反逆じゃないですか⁉ジギスムントの時代じゃないんですから星域間のルートは領土内での徴税特権に入らないでしょうし、一応全宇宙は皇帝陛下のものということになっているんですから国家財産の私物化にあたる行為ですよ!」

 

「素晴らしい意見だな、全くその通りだ。少し言い方が悪かったな。大貴族様は通行税を商人に強制しているわけではなく、ある特定のルートを使う商人の方が自発的に貴族様に対して“時候の挨拶の品”を送るという形になっているんだ。」

 

「なんですそれは?親戚でも領民でもないのに時候の挨拶とは……」

 

「ちなみにそういったものを送らないような“礼儀知らずの田舎者”は途中で装備が無駄に良い謎の宇宙海賊に襲撃されたり、航路図に乗っていないようなデブリにたまたま遭遇することが多いらしいぞ、そうだ、無作為の船内検査対象に選ばれて、出港時の官憲による検査では何も見つからなかった船倉から大量のサイオキシン麻薬が押収されたって話も聞いたことがあるな。いや全く不思議なことが宇宙にはあるものだな。」

 

「…文句を訴え出ることなんかは、…できないんでしょうね。」

 

「まぁそんなことがいろいろあるわけだ。それと比較してこっちはそんな“謎の事故”だったりはないだろう?効率を考えれば獣道でも行く、その結果こういうルートも調査やデブリ除去なんかが進んである程度使ってもリスクが少なくなって、点と線だった通商網が面となれば…それはもう商人にとっての楽園だな。中古の船を買えるくらいの初期資本さえあればどこにでも立身出世のチャンスが転がっている。…少し喋り過ぎたな。とにかく、帝国も同じようになればそもそも国力が叛乱軍と拮抗しているわけでもないんだ、この戦争は案外すぐ終わるかもしれない、という結論だよ。」

 

「そんなものですか、でも、つまりそれは我々が今やってるようにして、その“面となりつつある”…でしたか?通商網を点と線の状態に戻してやることには商船員全体の目線から見ても大打撃になるってことですね。」

 

「まぁ、そういうことだ。流石に我々一隻だけで…誰だったかが言っていた、“石器時代に戻してやる”までの芸当は出来ないが、それくらいの嫌がらせはできるだろう。」

嫌がらせ、とはいえちゃんとした任務だ。帝国巡航艦教範にだって「巡航艦の任務は遊撃兵力として敵後方を遮断し、制宙権の確保を援護すべし」なんて書いてある。小さなことにも全力で、言いようによってはいい感じの格言集の共著者ぐらいにはなれるかな…?

 

ーーーーー

宇宙暦762年 3月13日 レイダー捜索隊 戦艦モンジュ艦内

A・ビュコック少佐

 

『義勇艦隊?なんだそれは?』

 

出撃以来例のレイダーの足取りは急に途絶えてしまった。隠れられそうな小惑星帯や彗星群なんかは我ながら正確に予想できていると考えていたんだがどうやら甘かったようだ。入れ違いになっているのか、それともウィドックのビラが効果を発揮しすぎて帝国側に逃げ帰ってしまったのか、それにしてもフェザーン回廊側の出口は前にも増して固めてあるはずだし…

なんて事を考えていたら、ウィドックがさらに頭痛の種を持ってきた。

 

『ええ、どこまで本気か知りませんがIFFのデータが更新されてます。主にジャムシード船籍の民間船で構成されているようで…数だけはいますね、35隻ですって。』

 

『…銃後の国民の愛国的協力精神の発露って訳か。で、実力はどんなもんだと思う?』

 

『いやー…すごいもんですよ。これが旗艦、とされているらしい船ですが、180万t級の船体に8連装ミサイル発射管が4基のってるだけです。しかも見た感じ収納機構なんかもなさそうなんで発射したら戦闘中の次弾装填は絶望的ですね。これでまがりなりにも帝国の正規軍とやりあえると思っているんでしょうか?』

 

『どうだかな…第一案外バレるのが早かったな。もう1ヶ月か、せめて2週間くらいは民間への情報流出は避けられると思っていたんだがな。』

 

『いや、情報流出というよりかは…何というか、珍しいもの見たさと言いますか、それこそ怪獣退治的な動機らしいですよこれ。そうでなかったら士官教育も受けていない船長に義務兵役を何年も前に受けただけのような連ちゅ…人々を軽武装船に乗せて送り出そうなんて事は考えないでしょう。言ってしまえば政治的アピールの一環としての出兵ですか。』

 

『まぁこっちだってレイダーについてわかってるのは艦型ぐらいなもんだからな…他人のことは言えないが、もし義勇艦隊とやらが先にレイダーにぶつかってしまったら面倒だな…軍服とかの類は着てくれていないと、向こうからすれば義勇艦隊の方こそ海賊扱いになってしまうし…』

 

そんな最悪とも言える事態だけは防がなくてはならない。その為には軍が、我々が発見するしかないわけだが…どうなるかな?

 

                      続く

 




義勇兵とかの扱いってどうなるんでしょうか?WW2のドイツ国民突撃隊なんかは一応平服の上に腕章とかつけていたので軍服を着てるって扱いになってるから捕まっても捕虜扱いとかなんでしょうかね。

今回は再開会のくせに主人公は出ないわ、喋るだけだったりで話が進展していません。ワンチャンなくてもいい会かも…
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