海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

33 / 78
セーフってことにしてほしいメーメルです。最近寒いですが、体に気をつけてお過ごしください。では、どうぞ。


第三十三話 証拠隠滅

帝国暦462年3月20日 武装商船ラワルピンディ船内

フォン・バウディッシン中尉

 

『出てこい!これ以上手こずらせるようなら強行突入するぞ!』

 

降伏した義勇軍とやらの船内に突入し、艦橋や機関室などの運航上の重要部を制圧した所までは良かったものの、船長が自室に閉じこもったまま出てこなくなってしまった。このまま自殺でもされたら後味が悪くて仕方ないし、かといってこのまま放っておく訳にはいかない。まだゾンタークスキントはジャミングを続行中だし、船橋を制圧した時に環境保持電源以外は切ってあるから救難信号も出せないはずだが…埒が開かんな。

 

「よし、突入だ。軍曹、どうだ?」

 

赤外線探知装置を扉に向けて構えていた軍曹に問いかける。

 

「…特にブービートラップの類は仕掛けられていないようですし、材質も特別頑丈なものではありません。爆弾で吹き飛ばさなくても、トマホークで十分やれます。」

 

「そうか、分かった。『おい!聞こえるか!これから扉を破るからな!怪我をしたくなかったら離れていろ!』」

 

またもや返答がない。仕方がないので軍曹と2人でトマホークを振り下ろす。一撃で空いた穴を起点にして扉を開け、船長室に踏み込んでみると部屋の主は隅に張り付いていた。

 

『…なにか武器を持っているのならすぐにこちらに投げてもらおう。言っておくがこの装甲服は君達が携行するような護身用火器ぐらいでは傷ひとつつかないようになっているからな。』

 

『帝国人は身支度をする暇も与えないほど堪え性のない奴らばかりなのか?紳士には紳士なりのやり方というものがあるんだ。それくらいの事は察して動いたらどうなんだね。部屋の扉もこんなにバラバラにしてくれて!』

 

…身支度をしていたと言う割には襟元は乱れているし、鞄の1つも用意できていないようだが、まぁその辺りの話は移送した後でも聞ける。

 

『では船長、貴方は本艦に移乗していただく。軍曹、ではこの紳士を丁重にご案内して差し上げろ。』

 

軍曹に連れられてやけに反抗的な船長は出ていった。机の上に目をやると、個人用端末の画面が割られている。どうせこんな事だろうと思った。見たところ軍用ではないし、キラーデバイスのようなものもついていない。短い立て篭もりの間でできる限り情報を消そうと試みたんだろうが、そう考えるとこれまでにない中々厄介なゲストになりそうだ。とにかく面倒な事は済んだから爆破に掛からなければならないが、こういう時危険物を積んでる船は楽でいいな…。

 

ーーーーー

 

暫く後 ゾンタークスキント艦内 艦長室

フォン・オイレンブルク中佐

 

『ではフェルト船長、あの電波の発信はあくまで現在標準時確認の為に行ったもので、他船との通信を試みたものではないと言うんですね?』

 

『ええ、もちろん。宇宙船乗りならあんたも分かるでしょう。変わり映えのしない空間に景色、自分が眠いのかどうかさえも分からない。そんな時にふと正確な時間を知りたくなる時があるって事位は。』

 

『そうですか。…では次に、突入隊から聞いた事ですが、貴方の部屋の個人用端末が破壊されていたとか。やはりあまり我々には見せたくないものがありましたか。』

 

『そりゃ人間、誰しも他人に、特にあんな衝撃的な出会い方をしたようなのに見られたくない情報はあるでしょうな。帝国にはないかもしれないが、こっちには同盟憲章というものがあってね。個人情報は秘匿されるべきものだと決められているんだよ。』

 

『…はい、では最後に貴方達は義勇艦隊とのことですが、やはり目的は我々の捕捉撃滅に有ると言う事で?』

 

『あぁもちろんそうだとも!自分の身は自分達で守る。今回はこうして不覚にも囚われの身となったが、あんたがたが正面から堂々と向かってくれば立場は逆転していただろうな。』

 

『ちなみにその我々を探してくれている船の総数だったりは教えてくれたりはできませんかね、教えてくれるようなら…親切に報いると言う訳で、それなりの贈り物をする用意がありますが。』

 

『そうだな、本当ならナッツとでも言ってやりたい所だが、あのドクロ男の丁寧な態度に免じて教えてやろうか。…我々が出発した時点で350隻はいたな。それから後続も来ると言っていたから今頃はもっと増えてる事だろう。早く我々を解放して降伏した方が身のためだと心から忠告するよ。』

 

『350!それはすごいですな。ではこれで事情聴取は終わりです。先程も説明しましたが、この冊子に当艦の立ち入り禁止エリアなどが載っていますからそこには入らないように。えー、それから先客がそれなりの人数いましてね、彼らも同じ同盟人ですからこの機会に知己を得ておくのもいいと思いますよ。』

 

「艦長!宜しいですか、少しお耳に入れておきたい事が。」

 

やってきたのは捕獲艦のデータ分析を任せていたシュタールスだ。

 

「分かった。『ではフェルト船長、外にいる兵が部屋まで案内するのでどうぞ。』」

 

ーーーーー

ゾンダークスキント艦内 艦橋

 

「復元したデータですが、あの電波発信はやはり叛乱軍へ向けた通報だったようです。幸いにも超光速通信ではありませんでしたが、内容は『不審船を見つけたから増援を求む』となっています。それに、義勇艦隊とやらの隻数はリストには35隻しか載っていません。」

 

「やはり時間確認云々は出まかせか。それにしても10倍とは随分大胆にサバを読んでくれたものだ。どちらにしろ、爆破作業を急がせて正解だったな。後どれくらいで終わる?」

 

「はっ、バウディッシン中尉によれば、作業自体はあと5分もすれば完了するとの事です。人員は合わせて36名、鹵獲品のエネルギーと食糧の移送は既に終わっていますので問題ありません。あとは…」

 

「通報を受信した叛乱軍の増援とやらの到着時刻だな。…1番近い位置にいるのはこいつらか。SCL-1344とSBB-445、どちらが全速で向かってきたとしても3時間はかかるな。…そうだ、せっかくだから置き土産をしていってやろうか。」

 

「しかし、もう機雷は残っていませんよ。向こうの船が積んでいたのも通常噴射型の近距離ミサイルだけでしたし…」

 

「置き土産と言ってもそんな直接的なものは置いていかないさ。言うなれば我々がより遠くへ逃れるための時間稼ぎだ。…計算してみよう。あー、発信時刻が0914だな。すると、向こうに届くのが我々の使ってるような小艦隊用通信機と同じような性能だとして、早く見積もって5〜6分か。で、巡航速度が大体この位…すると到着は6時間半後だな。」

 

「なるほど、時限爆弾ですか。」

 

「ご名答。到着した宙域に船の残骸があるより、通信を試みても応えない船が急に爆発した方が向こうのショックも大きいだろう。少し遅らせれば調査しに乗り込んできたのを巻き込めるかも…いや、解除されたら厄介だから時間は丁度にしておこうか。」

 

「了解しました、ではバウディッシン中尉に伝達します。それから、フェルト氏の事ですが、こうしてすぐに虚偽の証言が露見したとはいえ、我々に対して降伏後に害意ある行動をとった事に間違いはありません。船倉に監禁するまでは行かないにしても、監視の必要があると考えますが。」

 

「うーん…これまでが協力的な人達ばかりだった事だし、SPUとの心理的距離を考えてもあまりそう言う事はしたくないんだが…セネット氏のような買収も効かなそうだったからな、致し方あるまい。ただし、やる時は出来るだけ目立たないようにな。とにかく何か行動を起こすまでは静観でいこう。」

 

「かしこまりました。他にはなにか?」

 

「…特になし、艦長位置は艦長室、終わり!」

 

それにしてもSCL-1344…どこかで見たんだが聞いたんだがするような気がする番号だな…何だったかな…?




最後の艦長のセリフ、「艦長位置は艦長室!」って奴はこの前みた岡本喜八監督作品の台詞であったり、陣中日誌なんかに「連隊長位置は〇〇」みたいにあったので、軍隊仕草っぽくていいなーと思って入れました。海軍…と言うか船乗りが同じ様に言うかどうかふめいですし、なんなら前の方の話で艦長をだれかが探してた描写があったりしますが…その時はきっと艦長がいい忘れたか、誰かが忘れちゃったんでしょう。…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。