海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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ウマ娘は1周年だしウクライナは部分的侵攻どころか全面攻勢かけられているし、阿蘇山は噴火しそうだし、終末時計は振り切ったんじゃないでしょうか。では、どうぞ。



第三十八話 アキレス・ドライバー事件

宇宙暦762年3月27日 レイダー捜索隊 戦艦モンジュ艦内

A・ビュコック少佐

 

そうだ、パターンだ。今まで気づかなかった自分が心底嫌になる。考えてみれば初歩的な事で、家の中を荒らし回るネズミを捕まえるのにあたってネズミがいそうな場所や通り道らしき場所を限られた人数でぐるぐる回って行くような方法ではネズミを捕まえる事は不可能に近い。向こうはすばしっこいし、こちらが近づけばいち早くそれを察知して逃げてしまうからだ。ならどうするか。つまりネズミ捕りを仕掛ければいい。

 

『艦長、それがレイダーの特徴とも言える行動です。奴らはおそらく我々に発見されることを極端に恐れており、奇襲的に撃沈が可能な状況であってもあえてそうせず、商船への襲入を行い、さらに処分の際には必ず爆弾を使用して事故に見せかける形で沈めています。』

 

『確かに、これまで発見した犠牲になったと思われる船の残骸に関して言えばそうだが…この行動が示しているレイダーを捕まえる為の方法は何かな。囮船の類を使えれば手っ取り早いんだがな。』

 

『はい、しかしそのような改造を施す時間はありませんし、ラワルピンディの件でレイダーがある程度の実力を保持していることが判明した以上、義勇艦隊の船をそのような用途に使うわけにもいきません。ですから今後我々が取るべきなのはネズミ捕りとも言うべき方針ではないかと考えます。』

 

『つまり待ち伏せか。まぁその方がエネルギーの節約にもなるだろうし、私としても他の案がない以上反対はしないが…少佐、見つかりそうな場所の目星は付いているのかね?』

 

『それについてはとりあえずの候補はいくつか決めてあります。この辺りの危険物を積んでいるような船は既に船団に入っているか出航待機中でして、今襲撃されるような危険のある船はレイダーにとって何らかの事故に見せかける必要のある船だと言うことです。そして、そういう船が遭難したと見せかける事のできるような宙域はそう多いものではありません。こういった場所に小隊ずつ、いや、巡航艦と義勇軍2隻の組でも構いませんから貼り付けておけば必ず、奴は網にかかってくれる筈です。』

 

『そうか。そうなると…予備兵力が出来るからマルドゥクより向こうにも配置ができるな。もし抜けられていたとしても安心だろう。どの小隊を行かせる?』

 

『作戦が決まった以上はできるだけ早く配置を完了させた方がいいと思います…第13小隊のフェートンは巡航艦ながら超光速通信装置を搭載していますし、艦長のバーネット中佐もベテランですから、適任だと思いますが。』

 

『バーネットか…あいつはすこし慎重すぎる所があるんだが、まぁ大丈夫だろ。他の割り振りは適当にやろうか。』

 

これでよし、ネズミ捕りというものは位置と巧妙な隠し方さえ心得ていれば必ず効果をあげられる。…その位置に来るためのエサとして商船が最低1隻は犠牲になる事になるが、リスクを取らずしてリターンは期待できない。心を鬼にして割り切るしかないか…。

 

ーーーーー

帝国暦453年3月29日 ゾンタークスキント艦内

フォン・オイレンブルク中佐

 

「これは凄い…何列ある?」

 

「えー…5列縦隊です。で、横に大分重なっているようですので50隻はいるかと。」

 

新天地に来てから獲物を求めてルートの端を飢えた狼よろしく彷徨っていたら、何隻かの小艦艇に護衛された船団を発見した。これまで見つけた複数航行の商船は多くて5隻組で護衛も無しだったと言うのに、どうやら叛乱軍の方でも本気で考える奴が出てきたらしい。敵の頭が冴えてくるのはこっちとしては大変困るが…

 

「ここがイゼルローン回廊で、我々がマーヒェン級位の艦に乗っていたらああいうのは太った鴨同然なんですがね。護衛艦は…駆逐艦級が2隻と哨戒艇が5隻ですか。全くあれ位の牧羊犬に追い払われる身の上とは嫌になります。」

 

「そればかりはどうしようもないな…お、どうやらワープしそうだぞ」

 

数十隻の船がワープ光を纏う姿はいつ見ても美しい。これが数万隻の艦隊単位になるとなんだか謎の虫が蠢いているようで好きじゃないんだが…

 

「…敵船団、ワープしました。それにしても商船の寄せ集めの割には中々統率が取れてましたね。所要時間も短めでしたし…あ?」

 

「どうした?」

 

「いえ、見て下さい。1隻…また出てきました。失敗したようですね。」

 

宇宙空間でのワープに失敗してほぼ同じ位置に出てこられるのは幸運な失敗の仕方だ。悪いと出ていきなりブラックホールなんて事もある。…が、今回に関しては向こうの幸運の女神はこっちにも微笑みかけてくれたようだ。

 

「大尉、あいつの不在に気付いた船団護衛艦が引き返してくるまでの所要時間の概算は?」

 

「はい、エネルギー充填に90分はかかりますし、ワープ中に行方不明になった僚艦を探すには自分に近い側からやり始めるのがセオリーです。船団を放っておく訳にも行かないでしょうから捜索には速度の速い駆逐艦2隻が当たるとして…ワープした距離が最短の場合でも4時間半はかかるかと。やりますか?」

 

「今から接近する時間も考慮すると4時間か…いけるな。よし、襲撃だ。全艦に伝達したまえ、これより当艦は作戦行動に入る!」

 

ーーーーー

 

「艦長、通信が入りました。スピーカーに出します。」

 

幸運にして不幸な獲物に近づいて行くと、どうやら向こうも電波を出しているようだ。気づかれて誰何でもされているのなら厄介だな…

 

『パンパン、パンパン、パンパン、周辺の全ての船舶へ。こちら貨物船アキレス・ドライバー。機関の不具合につき漂流しつつあり。原因不明なれど放射能漏れは確認できず…はぁ、全くとんだ貧乏籤を引かされたもんだ…』

 

パンパンコールか、内容からして気づかれても逃走される心配はなさそうだ。が…

 

「もし無関係の船に電波が拾われでもしたら面倒だ、ジャミングを…いや、もっといいやり方があるぞ。通信回線を開け。」

 

『パンを受信した。こちらはフェザーン船マレタ、何かお手伝いできる事はあるか?』

 

『…んあ…?…!これは!ありがたい!そちらの船にカンプラー社の機関に詳しい者が乗っていたりしないか?マニュアルがまるで要領を得ないんだ。なにしろイラストだけで説明文がないものだから…』

 

『あー、機関に詳しい者ならこちらにはダース単位で乗っていますよ。ただシャトルが無いので接舷が必要になってくるんですがね。』

 

『助けて貰うのに文句は言わないよ。それにしてもダース単位とは驚いた!工員の実地研修か何かかな?』

 

『実地研修?…まぁ、そんなようなものですかね。』

 

『おっと、無駄話をしている場合じゃないな。ちょっと待ってくれ、ガイドビーコンを出すから、また話は直接会ってからにしようじゃないかね。』

 

ーーーーー

 

軽い振動とエアロックが作動する音がする。接舷完了、ここまで来ればもう機関が奇跡的に再始動しようと2隻は一連托生だ。あとはどう劇的かつ衝撃的な種明かしをしてやるかだが…

 

『やぁ、まさに天の助けだね!まさか船団を組んだくせにこんな場所に置いてけぼりになるとは夢にも思わなかったよ。そういえば、フェザーン籍だと言ってたが、どうだい?個人的には急に軍が船団を組めだなんて言いだしたのは向こう側か回廊かで何か動きがあったからだと思うんだが…何かニュースはないかね?』

 

『…そうですね、重大なものがありますよ。まぁ、向こう側でも回廊でもなく今現在の我々の行動に関わることですが。』

 

『行動?』

 

『ええ、まずは…両手を上げて頂こう。大声は出さないように、それからブリッジに案内したまえ。』

 

『…何の冗談だね?我々は軍の積荷を運んでいるんだ、海賊風情が換金できるような金目のものなんぞ一箱も積んでいないぞ!』

 

『これは好都合、言い遅れたが、我々は帝国軍だ。海賊なんぞと一緒にされるのは大変遺憾ではあるが、これからやる事は変わらないな。船長は君か?なら、船の責任者として乗員の無駄な犠牲を出さぬよう責務を全うすることだ。大人しく、ブリッジへ。』

 

後に続いた装甲擲弾兵達によって船内はすぐに制圧された。積荷は船長の言った通りで叛乱軍の宇宙戦闘機、確かスパルタニアンとか言ったがそのスペアパーツが殆どを占めていて、あとは隙間にリキュールや煙草が押し込まれていた。だが、我々にとって最も重要な目的である宙域図は無事手に入ったし、ブリッジの金庫の中から何やら電子ロックがかけられた書類鞄も幾つか見つけた。後は護衛艦の連中が引き返してきても分からないように少し遠くへ引っ張っていって処分するだけだ。さて、仕事にかからねば…

 

続く

 




襲入って日本語はアボルダージの当て字です。宮古湾海戦位でしかやってませんが…あと、アキレス・ドライバー号、変な名前ですね。実在する船ではありませんが元ネタはあります。そろそろゾンタークスキントホテルも満員ですね。
今回もご意見ご感想ご指摘お待ちしております!
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