海賊子爵の航海日誌   作:メーメル

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コロナ陽性になる夢を見ました。車に乗ろうとしたらでかい警報音が鳴ってナビの所に!陽性者!って出た夢でした。なんだこのディストピアめいた夢は…
では、どうぞ。


第四十二話 別離

帝国暦453年4月2日 ゾンタークスキント艦内

フォン・オイレンブルク中佐

 

帰還船の改造が終わった。改造といってもエネルギーパイプやらワープ装置の一部をいじってワープ間隔が長くなるようにしただけだが、これでも最高速度は3分の1程度位までには低下する。いかに宇宙を旅する人間がワープ技術に頼り切っているかよく分かる改造であるとも言える。

 

「これで…1番近い有人星系まで早くて10日といった所だな。これだけ有れば十分我々の位置を秘匿する事ができる。」

 

「ええ、バクスター氏には苦労をかけることになると思いますが。」

 

「なに、500人近い人間とはいえ10日だ。彼なら立派に統率していけるさ。不安点だったフェルト氏も大人しくなった様だしな。」

 

「艦長、ゲスト全員の帰還船への移乗が完了しました。」

 

「よし、忘れ物や取り残された学生なんかはいないな?」

 

「はい、彼らが来た時より綺麗になっているくらいです。ツァーン少尉は酒類在庫が一気に減って不満顔でしたが。」

 

「記念品だよ。Sマルクも全部使わせないと勿体無いだろうしな。他にこちらからやれる物もないんだ。それくらいの事はしてやろうじゃないか…」

 

ーーーーー

 

『では、バクスター船長。頼みますよ。』

 

『はい、艦長さん。もしこれからの帰還路で他の船に遭遇しても、通信したりはしません。帰り着くまでは我々はまだゾンタークスキントのゲストであり、帰り着いた後でも友人だと思っていますから。』

 

『…ありがとうございます。では、あと一つだけお願いがあるのですが。』

 

『なんでしょう?わたしに出来る事であれば最善を尽くしましょう。』

 

『もし、今後フェザーンに行く用事がありましたら、この封書を自治領主府へ届けてもらいたいんです。方法は何でも構いません。郵送でも、何なら封書丸ごと自治領主府の庭へ投げ込んでもらっても結構です。』

 

『分かりました。必ずお届けします。友人として、必ず。』

 

『もし、取り調べや、他の要因で誰かに渡すように言われたら…これは私も同じ気持ちで、友人に余計な危害を加えさせたくはありません。大人しく渡しなさい。中身は…お恥ずかしい事ですが、他愛ない内容の私信ですから、見られてもこちら側で私の家族構成が判明するくらいの事です。』

 

『分かりました。しかし、できるだけ守るようにはしますよ。』

 

『…よろしくお願いします。では、そろそろ。』

 

『ええ、また今度、とはいかないかも知れませんが、お世話になりました。この経験は忘れません。…では。』

 

握手の後、バクスター船長はエアロックの扉の向こうへ消える。3ヶ月近く同じ艦で過ごしてきて、船を失わせた張本人を友人と呼んでくれた彼との今生の別れだと思うと、少し胸の奥が熱くなる。

 

「ヨーマ号、係留索外れました。当艦より離脱します。」

 

「よし、手隙の者は艦橋へ集合させろ。見送りといこうじゃないか。」

 

艦橋へ登る階段の途中、様々な事を考える。帰還船からは接触しようとしなくても、何かしらの興味を持った一般船の方から接触を試みてくるのではないか。我々を探している叛乱軍部隊にぶつかってしまうのではないか。…不安を並べ立てればキリがないが、大丈夫、バクスター船長なら約束は守ってくれる。叛乱軍部隊は避けようがないにしても、あんな風にフェザーン国旗が描いてある様な船は近寄り難いものだろう。実際私も最初は海賊船かと疑った位だし…

 

「よし、では、我らのゲスト諸氏の幸運な旅路を願いつつ、帽振れ!」

 

と、ヨーマ号より通信が入る。映像付きだ。向こうも最後に別れの言葉を言いたいらしい。 

 

「おぉ…」

 

モニターに映された向こうの船橋には、どう詰め込んだか200人近い人数が勢揃いしていた。唯一の軍人で、奇妙な旅で奇妙な恋を成就させたキング君がいる。会う度に騎士道精神の話を聞かされたカドルナ氏がいる。毎日装甲擲弾兵連中と一緒になって艦内を駆け回っていた学生達もいる。

 

『我らが友人にして、懐かしき仮住まい、ゾンタークスキントに!万歳三唱!』

 

『フラー!!』『フラー!!』『フラー!!』

 

『さようなら、皆さん!また、いつか会える日まで!』

 

そう言い残すと、ヨーマ号は夜光虫のような光を帯びて消えていった。『またいつか会える日』か。私や彼らが生きている間にそれが叶うだろうか…?あの学生たちならこれから戦場に出てくる事もあるかもしれないが、そんな再会はできるなら避けたい所ではあるな…。

 

ーーーーー

 

「さて、別れを惜しむ時間は終わりだ。仕事を始めなくてはならんな。まず舞台衣装の選定から始めるとしようか。」

 

大尉がSPUの誰かから買った分厚い本、表紙には飾り文字で『ロイド宇宙船舶登録簿』とある。中身はカラー写真を中心にこちら側で運用されているあらゆる民用船舶のデータが載っている。出撃の時はずっとフェザーン船で通すつもりだったが、舞台俳優だって劇中で衣装替えをするんだ、我々もしたっていいだろう。しかもただ着飾る訳じゃなく実利も伴ってくるし…

 

「やはり艦の大きさは合わせるべきでしょう。140から160万t級で…これなんかどうですか?」

 

大尉が指差したのは「アベカーク」とある150万t級船だ。なるほど、船首の形も似ているし、少しずつ小物を付け足せば化けられそうな船ではあるが…

 

「船籍が欠点だな。マーロヴィアとあるが、確かこれはこちら側では辺境すぎて逆に有名な位の星だ。SPUの連中もよく冗談で使っていたレベルだ、そんな辺境の船がイゼルローン回廊の近くを彷徨くのは不自然だろうな。しかしこの船、姉妹船が凄い量いるな。この中からイゼルローン回廊辺りにある星系の船を探そう。」

 

「分かりました。えー…これ、エル・ファシル!こんな星が確か回廊出口辺りにありませんでしたか?」

 

「あー…時々威力偵察戦隊が進出する所にあったな。…よし、この船にしよう。船名は?」

 

「カシー。エル・ファシルのカシーです。なんだか間抜けな響きですが…」

 

「それ位の方がいいさ。…偽名まで厳しくては親しみがないだろ?」

 

「それもそうですね。では、この写真を元にお色直しですね。黄色いラインと…頭の上に生えてるブレードアンテナは予備部材でハリボテができますかね。」

 

この改造工事が終われば、イゼルローン回廊を目指す。途中で1、2隻位の戦果をあげていきたいが、我が艦と乗組員の前途に大神オーディンの加護があらんことを…。

 

ーーーーー

宇宙暦762年4月4日レイダー捜索隊第13小隊 巡航艦フェートン艦内

ジョセフ・バーネット中佐

 

『それで、何か喋ったか?』

 

マルドゥクを越えてハイネセン方面に進出してすぐ、本隊から指定された小惑星帯に入ってみたら、一つの岩塊に隠れるようにしていた船を見つけた。停船命令を発したら急に転舵して逃走を試みるような動きを見せたので、これこそ探していたレイダーに違いないと思って射撃し、無理やり停船させたが、脱出したシャトルの乗組員を収容してみると、どうやら見当違いであったらしい。

 

『いえ、船名はマンタ号、船籍がシャンプールという事以外は目的地も積荷が何かも…『令状を持って来い』の一点張りで…』

 

『そうか、面倒な手合いを捕まえちまったもんだな…』

 

『あ、でも大体の素性は分かりましたよ。砲術科にシャンプール出身者がいまして、彼が言うには…『筋金入りのろくでなし』だとか。』

 

『ギャングか何かか?すると積荷は密輸品と思うのが妥当か。船内捜査をする必要があるな、消火は上手くいきそうか?』

 

『はい、現在二酸化炭素の注入中で、熱源は徐々に弱まっているとの事です。命中位置からして放射能漏れの心配もないでしょうし、1時間後には。』

 

はるばるシャンプールから出てきて帝国艦を探してると思ったら結局実際にやってる事は密輸船の摘発か。レイダーもどうせならこういう連中ばかり喰ってくれればこっちが楽になっていいんだが…向こうも胃もたれはしたくないって事か…?

 

続く

 

 

 




名前だけは出てきたバーネット艦長の出番が来ました。彼と喋ってるのはフェートンの乗組員の誰かで、名もなき同盟軍人です。ヴィドックもビュコック少佐もまだ遠くにいますからね。
今回もご意見、ご感想お待ちしております。
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