それから、どこからお礼を申し上げれば良いか分からないのでここで、
驃騎兵艦隊の誤字指摘、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
それから今回からきちんと話の冒頭に日付を入れます。
帝国歴452年10月5日深夜、首都星オーディン ルドルフスハーフェン宇宙軍港の一隅 ボート・フォン・フランツィウス大尉
一週間前、急に軍務省から通達が来た。曰く、「ある長期訓練計画の参加者に選定されたから身の回りの整理をして5日間の休暇ののち、指定場所に出頭せよ。」との事だ。随分要領を得ない文面だったが、軍務省から近衛艦隊司令部を飛び越しての命令だ。軍人である以上従わざるを得ないし、婚約者のイルマとも短いながら貴重なひとときを過ごす事が出来た。で、指定場所に来たわけだが、他にも何人か来て、何やら話している。同じ訓練の参加者かと考えていると、
「大尉殿」
急に話しかけられた。なんて重厚な声質。オペラ歌手か何かかと思って振り返ってみれば、その出どころは2メートルはある巨人だった。
「小官はバウディッシン中尉であります。見たところ、この集団の最高階級者が貴方のようでしたので、声をかけさせてもらった次第なのですが、大尉殿は何かご存知でしょうか?」
「いや中尉、すまないが私も軍務省から出頭を命ぜられた口だから何も分からないんだ。貴官らもそうだろう?」
「やはり軍務省ですか。つかぬことをお伺いしますが、少し前に大尉殿は妙な髭の軍属と面接などしませんでしたか。」
妙な髭…あの少佐相当官のことか。
「ああ、半月と少し前だったが面接に呼ばれた。まさかこの集団全て彼に呼ばれているのか?」
「どうやらそのようです。妙な共通点ですな。しかも訓練航海といってもこんな深夜には集まらないでしょう。」
「しかし…」
言いかけた途端、軍港用大型地上車が車庫から出てきて我々の前に止まる。降りてきたのは…あの妙な髭の少佐だった。
軍港用地上車内 フォン・エックマン少佐相当官(仮)→オイレンブルク中佐
「あー、諸君、初めましてではないな。私は本日をもって、諸君らの指揮官となるオイレンブルク中佐だ。今までは訳あって偽名を使わせてもらったが、ここからは君たちの前でのみ、本名を使わせてもらう。我々はこれからある秘密任務に就く事になる。これは勅命でもある重要事だ。その事を忘れる事のないよう、軍務に精励してほしい。」
「「「はい!中佐殿!!」」」
この唱和だけでも軍隊に入った価値がある。
そして前方に見えてくるのは我らが海賊船だ。こう見ると貨物船にしては格好いい方じゃないか。貨物船特有のずんぐりした艦首も、今見れば重厚な衝角や図鑑にあった海獣に見えなくもない。これからこの劇団の主要メンバーを乗せてフェザーンに近いエクハルト星域内のオストヴィントⅧ基地において演習砲を本物の砲に換装したり、索敵、電子艤装の最新化をと同時にしている間、訓練や他の名目で分散集合する予定の「裏方」の到着を待つ事になる。フェザーン回廊、ひいては叛乱軍支配地域への出撃は12月15日だ。
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ゾンタークスキント艦内 フランツィウス大尉
貨物船?任地までの輸送用か、それにしては年季が入り過ぎている気がしないでもないが…。
そんなことを考えつつ渡された書類に示された部屋に入ってみると面食らった。壁は水着姿の女性のポスターに占領されているし、備え付けの本棚には目に悪い配色の書籍がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。唯一まともに見える茶表紙の本は…
「シンドバッド賞受賞者列伝?」
思わず後ずさりして部屋番号を確認する。確かにここだ。軍の輸送船にしては変だと思っていたがまさかフェザーンの中古をそのまま引っ張ってきたのか?取り敢えず艦橋へ上がってみよう。書類自体が間違っているのかもしれない。中佐に確認をしてみなくては。
艦橋の扉は開いていて、おそらく自分と同じ目的で中佐に会いに来たであろう人だかりができている。
「やぁ大尉、来たかね。これで全員揃ったかな。まぁ諸君らが来た理由は分かっている。このフネは一体何なのかを尋ねに来たんだろう?君たちはこの作戦の最重要メンバーだからな、今、全て言ってしまおう。今日から暫くの間、この艦はフェザーン船籍の独立商船「マレタ」号となってフェザーン回廊を抜け、叛乱軍の支配域へ進出し、対敵作戦行動をとる!」
「その為の偽装でありますか?」と誰かの声。
「もちろんそうだ。フェザーン人にも、叛乱軍にも我々が帝国の最精鋭である事を悟られてはならん。だからこれから赴くオストヴィントⅧで、諸君らには完全なフェザーン商人になってもらう。誰かが言っていた、『国でも親でもなんでも金に変える』ような、な。」
10月16日 オストヴィントⅧ内、訓練棟 エーバーハルト・ツァーン少尉
昨日この基地に着いたばかりだが、今日は朝から艦長に呼び出しを受けている。ゾンタークスキントでの私の部屋は艦長室の隣だった。副官としてはすぐに駆けつけられるからその点はいいんだが、何故か無個性極まる帝国巡航艦にある様な部屋だ。しかも扉には「関係者以外立ち入り禁止」と物置の様に鋲打ってある。移動中、皆で自分の設定を固めていたが自分以外のメンバーの部屋は良くも悪くも凄いものだ。あの真面目なフランツィウス大尉の部屋は思春期の青年もかくやという感じだし、哀れなベルガー主計少尉は熱心な地球教徒という事にされてしまった。イメージ通りなのはバウディッシン中尉の筋トレ特化部屋位だ。こんな中で自分だけ隔離されているような気分だったが、艦長は何を考えているんだろう?
「ツァーン、参りました。」
「おはよう少尉。かけたまえ。今回の作戦において、君には他の誰にもできない特別な任務を引き受けてもらう。苦労をかけるが、頑張ってくれたまえ。」
特別任務。私にしか出来ない。そんな台詞に若い精神が高揚する。
「はい、艦長、身命を賭してやらせていただきます!」
「…そうか。ではまず、この候補の中から一つ選びたまえ。」
そう言うと艦長は3枚の紙を机に並べる。それぞれ「ジョゼフィーナ」、「ローザライン」、「ハンナ」とある。
「『ジョゼフィーナ』は良い名前だと感じますが、なんでしょう?」
「直感は大切なものだ。結構。少尉、君の我が艦での役割を伝える。君は新婚の艦長夫人、『ジョゼフィーナ』だ。」
艦長夫人?新婚?………!つまり、それが意味する所は、
「じ、女装でありますか、艦長。」
「理解が早くて助かる。艦長室は色々見られて困る物を収納せざるを得ないのでな。君にはもし臨検を受けた際に私の部屋のベッドで体調の悪い薄幸な令嬢を演じて貰う。」
「はぁ……しかし、いえ、お受け致します。艦長。」
考えてみれば軍人になって以来一つも役に立った事が無く、デメリットすらあった容姿が初めて役に立つ場面である。それに、女装するのは接敵時だけだし、副官に任命されたという事はこの人は外見だけで選んだ訳では無いという事だ。中身でも、外見でも、同じ艦の仲間の役に立つ事ができるなら……やりがいがある任務かもしれない。
続く
設定・その他
いわゆる「裏方」の乗組員は外見上船倉に当たる部分にいます。住環境は巡航艦並ですが、主要メンバーみたいに変な設定つけられるよりマシという意見が大半を占めているようですね。
因みに艦長室にあるベッドはダブルベッドでして、中佐はこれをいつもは一人で使う事になります。さすがに同衾までさせるとジャンルが変わってしまうのでそういう事で願います。
上記の設定とかはこちらの後書きに書いた方がいいんでしょうかね。
次回予告の場とかも入れたいな、などと漠然と考えております。
感想、ご意見、誤字指摘、お待ちしております。