誤字指摘ありがとうございます。時々音声入力とか使って書いてたりするので漢字の変換が十分でないとか、送り仮名がわけわかんないことになってたりとか…精進、精進です。
では、どうぞ。
宇宙暦762年4月29日 ジャムシードポリス12番街
A・ビュコック少佐
『お待たせしました!やっと連絡が取れましたよ。いや、大変でした。何といってもあの2人組はどこをどううろついてるんだか分からないんですから…あと少しでこっちに着くそうです。』
『分かった、よくやったな。これで部外者を収容所内に入れたポカは帳消しだ。さて、では再突撃、前へ!』
一旦撤収した中庭にはまだ団長が残っている。我々がまだ諦めずに裏口からの侵入を画策していると思ってるようだ。…どうせ自分達がやるような事は他人にも当然やり返される、とか思ってるんだろう。そんな心配をいちいちしなければならないとはごろつきも難儀なものだな。
『…しつこいね、少佐。…そうだな、確かにお前らの探してる帝国人はここにいるさ。明日か、時間がかかっても明後日になったらきっちり送り返そう…それでいいだろうな?』
『ダメだね。我々の要求は先程から一貫して子爵の即時引き渡しだ。明日、明後日に彼がどうなってるか分かったものではないからな。』
『商売を成功させるコツは適度の譲歩だってフェザーンの知り合いは言ってたぜ。半分帝国人みたいな連中だが、この言葉だけは的を得てると思うがな。』
『これは商売ではないからな。前提と論点をバラバラにする癖は一般的に言えば悪癖だ。矯正した方が身のためだぞ。』
『…ご忠告どうも、身に染みるねぇ。だが、忠告以上の事はできないようだからな。今日はあの帝国人を渡す気は無い!まだ用が残ってるからな!分かったらさっさと…』
その団長の啖呵を掻き消すようなブレーキ音を立てながら収容所で半分見慣れてしまった地上車が入ってくる。
『やぁー!凄い雨ですね今日は!で、この人が例の誘拐犯?』
『やぁ、2日ぶりだな、ジェニングス君。で、詳細を省けばそうなるね。どうなると思う?』
『中々いいニュースになるんじゃないですか?この星の野党といっても、首都星の野党連合の一角をちゃんと占めてる公認政党ですからね。最近落ちてる勢いが更に萎んでいくとなれば…』
『ジェーニーンーグース!ご託はいいから早くしろ!雨の日はどうも嫌いだ…』
『分かりましたよ、先輩。全く、自分が興味無い分野じゃいつもこうなんだから…では…』
彼は呆然としていた団長の方に向き直る。瞬間に凶悪な笑顔が見えた気がしたが…
『どうも、私、ハイネセンL&P通信のホゥニィ・ジェニングスです。担当は政治情勢から株価変動まで色々やらせて貰ってます。あ、こちら名刺です。』
『…我々は取材されるような事はしていない。取材するならいつまでもここに居座ってるこいつら軍の方にすればいい…』
『ところがそう簡単に引き下がるわけにはいかないんですよ。あなた方の上部団体は人防党ですよね?中々面白い事を主張してますよね。辛辣なハイネセン批判に地域主義、おかげで去年の星下院選挙での獲得議席数は122!与党に肉迫せんとする勢い、最近の野党じゃ見ないですね、凄い!』
『党に関する事が知りたいんなら事務局へ行ったらどうだ、我々は我々で用事がある。』
『用事?それについても聞きますよ。前置きがだいぶ長くなったから本題に入りますが、人防党の党是の1つに軍への協力というのがありますね。それなのに今その下部団体が軍と衝突してるのはなぜなんですか?』
『軍と衝突してるんじゃない。そこのしつこい少佐と衝突してるんだ。』
『なるほど、つまり人防党としては軍人個人に関しては軍の代表としての地位・立場を認めないという訳ですね。参考になります。』
『今の状況ではそうなるかな。』
『そうなる、と。分かりました。でもおかしいですね。少し前にベントゥラ氏に会う機会がありましたが、その時彼は『全ての軍人は尊敬され、感謝されねばならない』と仰っていましたが、今のあなたの発言は彼の意見とかなり矛盾するようですね。下部団体とはいえ、人防党内は一枚岩とは言えないという事になりますが、その点については?』
『党首と!?…いや、今の発言は少し誤解を与えるものだったかな、そう、まず衝突してなどいない!我々は軍に協力しているんだ。』
『協力体制の構築ですね、私が聞いた限りではそちらが協力しているという印象はありませんでしたが。収容所から捕虜を勝手に連行したとか?それは事実ですか?』
『勝手にではない、内務大臣から許可は受けて…』
『内務大臣!なるほど、彼には私も興味深々でしてね、彼自身は与党の一員なのに、最近は義勇軍の認可に捕虜の連行を許可、人防党の政策に近い行動を取るのが目立ちますが、一体どんな繋がりがあるんです?噂では献金やら小惑星の開発利権が絡んでるとか?』
『し、知らない!そんな噂は聞いた事もない!でっち上げはやめたらどうだ!?』
『新聞読んでないんですか?一昨日の政治面に大きく載ってたのに。人防党員は世情に疎いんですね。』
『いや、知ってる、そうだ。全くこれだから今の与党は信用ならないんだ!』
『さっきから言う事が二転三転するのはどうなんです?じゃあ、内務大臣のくれた許可と言うのはどういうものなんですか?』
『それは…党の事務局の方に問い合わせれば分かる筈だ!』
『事務局に聞けば分かる?つまり現在の状況は人防党公認と言う事ですね?』
『…答える必要性を認めない!ノーコメントだ。』
『困りますね、じゃあ私としてこの会話の要点をまとめるとですね、内務大臣の許可は無いかも知れず、党の公認かも分からない行動をとり、軍と衝突し、郷土防衛戦力なのに佐官を蔑ろにしている団体がジャムシードに存在していると言う事になりますが。いいんですか?これ、もう少し体裁を整えたらずいぶん中央で頑張ってる野党連合も大変なことになりそうな気がしますけどね。』
『何故そうなるんだ!誰もそんな事は言っていないだろうが!』
『誰もそんな事を言ってないからこう書くしか無いんですよ。もっと確実な事を言ってもらわないと。内務大臣の指示書とか無いんですか?…黙ってるって事は口約束?政治の世界ではかなり危ない橋ですね。』
『我々はこの星、いや同盟全体の事を思ってやってるんだ!首都でうるさくゴシップをかぎ回ってるような奴らに言われたくはない!』
『そう怒らないで、落ち着いて下さいよ。えー、つまり捕虜の連行に関しては根拠は無いんですね。…ま、とりあえずそれだけ分かれば今日は結構です。良かった、最近ネタが切れてましてね。人防党に面白い方々が所属していると知れただけでも収穫です。では…』
『待て!おい、少佐、事実とは違う事をこの記者に言ったらどうだ!?我々は協力関係、だろ?』
『まぁ、私としてはまだ修復の余地はあると思うね。何と言っても私は彼らとは懇意にしているし、私が言ったらあまり口汚い事は書かないとか、そういう事になるかもしれない。』
『…くそっ、マスコミとの癒着だぞそれは…』
『それを政治団体が言うかね。で、協力関係と言う事は子爵の身柄はこちらに任せてくれると言うことでいいんだよな?中尉相当官?』
『…勝手にしやがれ!代わりに記者には何も書かせるんじゃないぞ!』
『言うだけ言っておくよ。子爵は中か?』
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フォン・オイレンブルク中佐
『アンジェロ!そいつの手錠を外せ!帰るとさ!』
外が騒がしかったのはどうやらお迎えの方のようだ。まぁ、とりあえず今日1日は命が保てそうで一安心だな。
『やぁ君か、少佐。少し遅かったな、おかげで地上にいるのに溺れかけるとかいう不思議な経験をしたよ。それで、私は部下たちの所に帰れるのかな?』
『はい、お待たせしました。…今回の責任は私にあります。再発防止は完璧に…』
『別に君に個人的な遺恨はないよ。せいぜい私が悲劇の主人公になり損ねて…まぁ、それだけの話だ。あとペンを…』
『いいから早く出て行け!帝国人!』
どう言いくるめたんだか、手の包帯の赤い染みが広がっているところから見るにだいぶお怒りの模様だ。だが…
『あぁ、さよならだ。それから手厚い歓迎どうもありがとう。よく覚えておくよ。』
無言の団長の額に一筋の水滴が伝ったが、あれは外の雨粒かそれとも冷や汗か…さて、喫緊の命の危険は去ったが…問題は今後の身の処し方だな。帰ったら色々考えなければならない。そう、色々と…
続く
ジェニングス君にも出番をあげたかったんです。団長的にはちょっと帝国人を弄るつもりが野党連合とか党首とかのビッグネームが出てきて萎縮しちゃったんでしょうね。かわいそう。
今回もご意見ご感想お待ちしております。