だんじょん英雄物語 作:放置民
不人気ゲーとしてセールスランキングに一度も現れず、
ひっそりと消えていった『だんじょん英雄物語』。
ゲームの内容としては特徴的なものもなく、プレイヤーは探索者となって数々の魔物や罠を超えて神々の試練たる迷宮をクリアを目標とする、といったものだった。
レビューサイトに寄せられたレビューもほぼ星1評価。
絵柄が古臭い。女の子NPCが出てこない。難易度の高さから挫折した。説明不足でチュートリアルすらクリアできないといった、硬派すぎるゲーム内容への苦情があふれていた。
そういうのを好むプレイヤー層も探せばいるが、そもそも知られる機会がない。運営会社も特に広告を打たず、同社の人気別ゲーに力を入れていた。そして、碌なハズりもなくサ終を迎えることとなった。
そんな、プレイヤーからも運営からも見捨てられたゲームにも、熱心なファンというものは存在していた。
TRPGの古典からとって「ファウンダース」と名乗った6人のプレイヤーからなるグループは、初週で攻略wikiを立ち上げ、1月で大迷宮の4大迷宮のひとつを攻略。2月で上位職の転職条件を検証、3つの大迷宮を追加。3月で
破竹の勢いでエンドコンテンツまで嘗め尽くした彼らの活動は、世界にダンジョンが現れ始めた現実世界でも続いた。
その初めの一歩は、オフ会旅行で愛媛県を観光し、道後温泉を楽しみ、風呂後の飲み会を楽しみ、2次会へはしごする勢いで…。
松山市に突如発生したダンジョンを即日に攻略して、
世界初のダンジョン踏破者となったことで有名になった。
その日、ダンジョンの前には近づいてレポートしようとするマスコミと、それを押しとどめる警察。遠巻きに見守る野次馬があふれていた。そして、ダンジョンの入り口が光を放ち、眩しさに目をつむった群衆が次に目にしたのは6人の異様な姿の男女。
頭に角の生えた上半身裸の偉丈夫、鬼人の青年。
大きな盾を持ち、蜥蜴のような尻尾を持つ竜人の男。
灰色の髪と耳をもつ、狼獣人の少年。
背中に白い翼の生えた金髪の女性。
魔女ルックの中性的な青髪美人。
宙に浮く杖に腰掛けた、緑髪のエルフ少女。
群衆は異様なその姿に一瞬あっけをとられ、次の瞬間に大騒ぎになろうとなろうとしたその瞬間、鬼人の青年が叫んだ。
「俺を見ろぉぉぉ!!」
それは見事なダブルバイセップスであった。鬼人は酔っていた。
「ナイスバルク!」「キレてる!」「いよっ、肉のツインタワー!」
他の5人もはやし立ててはケラケラ笑っていた。彼らも酔っていた。
突如始まるコスプレ集団のボディービル大会。
群衆は首を傾げ、テレビ越しに見ていた人々も首を傾げた。
「あー、君たち」
その酔っ払いコスプレ集団に声をかける姿があった。警備をしていた年配の警察官だ。
「ちょっとお話を聞いていいかね?」
彼の制服を見て、顔色を青くした6人はおとなしく連行された。
酔っ払いは警察に勝てない。社会の摂理である。
鬼人の青年「誓って殺しはやってません」