なんかタイラントになってしまったんだが。   作:罪袋伝吉

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いつも感想、誤字脱字訂正ありがとうございます

やっとこ、新章突入です。

アーク君がただの私立探偵なのに、なんで拳銃だけでタイラントを倒せたのかをいろいろと考えてて時間かかりました。

……この物語のアーク君は、ある意味不幸体質ですがある意味、万事塞翁が馬な人物でもありますが、さてはて……。




シーナ島事件編
共闘開戦~シーナ島強襲作戦~


 俺、ことアーク・トンプソンは私立探偵である。

 

 レオン・S・ケネディと同じポリスアカデミーを卒業したんだが、まぁ、辞めた。

 

 辞めた理由はいくつかあるが……いや、成績はこれでも優秀だったんだ。レオンとはいつも成績を競い合ってた仲でもあるんだからな。……最大の原因は上の人間に目を付けられ、特殊部隊の教育課程に半ば強引に編入させられたことだ。

 

……俺は、普通にどっかの市の平々凡々な警官として忙しくも無く、暇でもない生活がしたかったんだが、それでも途中までは俺は頑張った。ああ、頑張ったんだ。

 

 訓練施設の最高責任者だとかいう眼帯をした渋いオッサンに、CQCとかいう特殊な格闘技術を散々仕込まれたり、その補佐とか言うオバハンに銃やライフルの訓練を何時間も何時間もさせられたり、アラスカでどう見ても警察官とは思えない、いや、人間じゃなくてゼノバイトの親戚みたいな頭に釘を幾つもぶっさしたような怖い顔の教官と模擬戦闘やらされたり、装備無しでジャングルに放り込まれて何日もサバイバルさせられたり……。

 

 正直、俺の受けた訓練はどう考えても警察の訓練じゃない、というかそれがわかったのは一通り訓練プログラムを受けた後、おそらく俺と同じように訓練を受けていた人たちと合同の訓練をするようになった頃、二人一組のバディとして組まされ同室になったクリスピンというゴツい筋肉の三十路のオッサンが、

 

『……俺はSEALsから選抜されて来さされたんだが、まさかここの訓練がこんな過酷なものだとは思わなかったぜ。他の奴らも様々な特殊部隊から来ているそうだが、君はまだ若いな。よほどのエリートと見えるがどこの所属だ?』

 

 と、ややグロッキーになりながら二段ベッドの下で言ってたが、すんません、俺、ポリスアカデミー出身なんです、軍人ちゃいます。

 

 はぁ?警察学校出身?!それ絶対おかしいだろ、と、彼が俺を連れて訓練所の責任者である眼帯の教官にそう言ったら。

 

『……ポリスアカデミーだと?嘘だろ、警官の卵がここまで俺の訓練プログラムやクワイエットのしごきについて来れるはずはないと思うんだが……?』

 

 そんな事を言いつつ、教官は俺の選考の書類をファイルから確認し顔をしかめた。その表情から俺は何かの間違いでここに送られてきたのだと確信した。

 

 教官はデスクの引き出しから受話器を取り出すと、どこかの番号に連絡した。

 

『……おい、人選に手違いがあったようだぞ。ウチはポリスアカデミーじゃない。傭兵訓練所だ。なに?そんな男は知らない、だと?じゃあ、何故、警察学校の生徒が混ざってるんだ?」

 

 傭兵訓練所ってなんだよ、俺は警察官になるためにポリスアカデミーに入ったっていうのに、何でそんな所に送られてんだよ。

 

 俺は警察学校の校長のハゲを呪った。いや、あの妙な国家保安局のエージェントもだ。

  

 その後にわかったことだが、どうやら、俺は書類上の手違いで、この傭兵訓練所とやらに送られて来たらしい。

 

 しかし眼帯の教官は、

 

『書類上の手違いなどここでは絶対有り得ない事でありこれは何者かによる意図的な介入があった可能性がある』

 

 と唸りながら言い、その後、俺は眼帯の教官の指示により事実関係の調査が終わるまで軟禁生活を余儀なくされた。

 つまり、訓練プログラム等への参加を禁止され、その上で一人部屋で待機、となった。

 

 つーかあの過酷過ぎる訓練生活から一変して、三食おやつ付きと体力を落とさない為に部屋でテレビビデオを見ながらやる『バイオラおねーさんのブートキャンプ~みんなのミリタリーダイエット~』というのをやらされた。

 

 なお、このブートキャンプのダイエットビデオのバイオラおねーさんとは、様々な軍関係者に注目をされているブートキャンプトレーニングエクササイズのインストラクターであり、ショートカットと猫のような目との可愛い系の美貌、そして魅惑のボディでダイエット新兵達を時に厳しく、時に優しくしごいてくれるおねーさんである。

 無論、ビデオの内容はエクササイズのビデオだし、なんら見ていてやましい事も何一つ無い健全なトレーニングばかりなのだが、ノーブラタンクトップでやや際どいミリタリー風半ズボンでエクササイズしている画像は、刺さる者にはクリティカルヒットするセクシーさなのである。

 

 エクササイズをやり遂げた時の、あの『グーッド!』とか『エクセレーン!』というセリフと共にやる投げキッス、あれがたまらんのだ、いや、一度君も見てくれ、いやブートキャンプエクササイズをやった後に見てくれ、もうたまらんから!!

 

……いや、話がずれた。すまんね、今極限状態だからさ。

 

 その後、事実関係やらなんやらの確認が出来たとかで呼び出され、眼帯の教官に、

 

『お前には2つの道がある。ここに残って訓練を続け特殊部隊に入るか、警察学校に一年遅れで編入の後、普通に警官になるか、だ』

 

 なんぞと言われたが、もうどっちも嫌になっていた俺は、こうして第三の道として、私立探偵になったわけなんだが……。

 

 

 

 

「レオンのうんこたれーーーっ!!」

 

 

 俺は、このゾンビやら脳みそ剥き出しのバケモンやらトカゲ人間だらけのこのシーナ島で拳銃一本ベルトに差して、というガンサバイバルな状況に置かれていた。

 

 そう、全部レオンってアホの甘言のせいである。いや家賃どころか生活費、探偵事務所の家賃すら枯渇した貧乏生活のせいで奴の誘いにホイホイ乗ってしまった俺がアホだった。

 

 そう、俺は貧乏だった。私立探偵事務所を構えてみたは良いが、来る依頼は事務所の大家さんちから逃げ出した飼いネコの捜索(マタタビ必須)、家出した不良娘の捜索(大抵彼氏のところにいるよ?)とか、奥さんの浮気調査(だいたい町外れの一件しかないモーテルに出入りしてるよ?)などだ。

 

……大手の探偵事務所に大口の仕事を取られまくって、そんなんしか依頼が無く、ついには追い詰められていた。

 

 その大手の探偵事務所から営業妨害をされつづけ、貧乏極限状態に追い込まれ、俺はポリスアカデミー時代の悪友であるレオン・S・ケネディに今回のシーナ島のアンブレラの内部調査の依頼を受けてしまったのだ。

 

 準備費用として手付け金5000ドル、前金別でさらに5000ドル、成功報酬に2万ドル、掛かった費用も別途で払う。

 

 その破格の報酬に釣られた俺は釣られクマーっ、こんな危険な島で孤立無縁状態でバケモンだらけの中をサバイバルせにゃならなくなったわけだ。

 

 今思えば、破格でもなんでも無かった。こんな事になるとわかっていればどれだけの額を振り込まれても、家賃滞納で事務所追い出されても断っとったわーーー!!

 

 くっ、こんなところでは死ねん。そう、俺は必ず来月全米ツアーをする予定の『バイオラライブ!みんなでブートキャンプろう!!』に参加するんだ、もうチケットは買ってあるんだ、生バイオラおねーさんに会うまで、俺は死ねん、あのちちしりふとももを目に焼き付けるまで、俺は死ねんのだぁぁぁっ!!

 

 ちちしりふともも~っ!!ちちしりふともも~っ!!バイオラおねぇすわぁぁん!!

 

 

 

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 ヨーロッパ近海。

 

 おもーえばー遠くへー来たーもんだーっと。

 

 我が白陽社の貨物船、もとい旗艦である強襲揚陸潜水艦『黒曜丸』の甲板の上、俺は腕を組んで仁王立ちの状態で遠方にある孤島を見据えていた。

 

 すぐ近くには、ザンジバーランド海軍所属の強襲揚陸潜水艦『ギアキャリア級一番艦ヘヴンディバイド』がいる。

 

 今回の作戦にはフランス海軍所属の対テロ特殊部隊や米軍特殊部隊『SPEC OPS』の対バイオテロ選抜部隊『エコー6』が参加している。

 

 無論、ウチの会社からはミハイル隊とルポ隊が参加する事になったが、ミハイル隊が島の住人の救助、ルポ隊が後方待機する医療チームの警護に当たることになっている。

 

 医療チームには、ハミルトン先生とジェンキンス教授の他、ザンジバーランド側から、厚生大臣でありバイオテクノロジーやウィルス学、ナノマシン治療の研究者であるクラーク博士の一番弟子、ナオミ・ハンター氏とアンブレラから離反したという研究員のモーフィアス・D・デュバル、その他T-ウィルスに対抗する薬剤の研究をしてきた人物達が参加している。

 

 本来は俺も医療チームに入るはずだったのだろうが、今回、俺は強襲チームの先頭に立たねばならない。

 

 シーナ島のアンブレラ研究所は量産型タイラントを製造している施設であり、また様々なアンブレラの定番のB.O.W.を強化改良し、商品ベースに乗せるという役割を担っている、ということで、強力なそれらのB.O.W.に対する盾兼攻撃手段として……いや、それは表向きの話だ。ミラー外相は俺の意思を汲んでくれた。俺が自分の子供を救済出来るように自分の部下達に話を通してくれたのだ。

 

「……社長、作戦会議の時間です。ヘヴンディバイドへ」

 

 ハンター君こと、フランク・イェーガー総務主任が甲板にいる俺に声をかけてきた。

 

 ミラー外相が今回の俺の強引な強襲チーム入りの条件が、フランク・イェーガーを護衛として行動することだった。

 

「すまんな、ハンター君。君を付き合わせる事になってしまった。……今頃、エイダは事務のひよこちゃん達につき合わされてストレス溜めてるだろーな」

 

 俺はまるでサイボーグか何かのように見える戦闘服にミリタリーベストを着けたフランク・イェーガーにそう軽口を叩いた。手に長細いアタッシュケースを持っているが、聞けばそれは彼の愛刀だと言うことだ。

 

「いえいえ、社長。ご一緒させていただきますとも。こう見えて私も近頃ストレスが溜まってましてね。やはり解消には適度な運動がよろしいかと」

 

 にっこり笑って、バッティングセンターかフィットネスクラブにでも行くような感覚でハンター君はそう言った。手に持っている長いアタッシュケースを持ち上げて、ポン、と叩き、

 

「長らく、愛刀にも血を吸わせてませんので丁度よかった」

 

 いや、事務仕事のストレスでぶった斬られる相手が哀れだ。つか戦いを適度な運動と言えるお前が怖いわ、マジで。

 

「……怖えぇ奴だなお前さん。刀の銘は?」

 

「千子村正……と言いたいところですが無銘です。とはいえ高周波刀化して未だ全く欠けもせず曲がりもしない所を見れば、たしかに名刀と言えるでしょう。普通の刀では実戦数回で耐久性が落ちて歪みが出来、折れたりしますから」

 

「高周波刀ねぇ」

 

 高周波刀は高周波によって原子間結合を強固にし刀身の強度を高め、逆に高周波エネルギーを帯びた刀身に触れた物体の原子間結合力は弱めて切断するという、近未来的なトンデモ武器である。というかMSFってのはとことん未来に生きてんな、おい。

 

 なお、ベースになる刀の性能によってその威力が変わるとかで、やはりブレード使いは良い刀を求めるもんだとか。

 

 とはいえ、俺にはその手の武器は合わない。というか高価な武器だとコストを気にして使いたく無くなるのだ。

 

 その辺に転がっている鉄パイプや、惜しげもなく防災用に壁にある防災斧、敵から奪ったナイフに鉄パイプを繋げて作る投げ槍など、そういうのでいいんだ、どうせタダだから壊れても惜しくもない。

 

 というか、今も俺の腰のベルトにはラクーンシティでガメてきた防災斧が何本も差してあるが、投げてよし、叩きつけてよし、爆弾付けてよし、俺のパワーならもはや万能である。

 

「……というか社長なんですから、その、さすがにレスキューアックスを装備というのは」

 

「どうせ戦闘でバカスカ投げるんだ、金がかからん拾ってきた斧にコスパで勝るモンは無い。それに、西洋じゃ至る所に落ちてるから補充も容易だ」

 

「はぁ、そうですか……」

 

 ハンター君に呆れられつつも、俺はヘヴンディバイドと黒曜丸の間に掛けられた船橋を渡り、歩いていった。

 

 ヘヴンディバイド(天国を分かつもの)なぁ。分かたれたそこは果たして楽園側なのか地獄側なのかわからんが、俺の行く先はおそらくは血塗れの道なのはわかっている。

 

 だが、たとえ俺の道がそうであっても。

 

 邪悪を野放しにしてはこの世は地獄に変わるのだ。ならば征くしかあるまい。

 

 俺は、ヘヴンディバイドの甲板に足を踏み入れつつそう思った。

 

 




・アーク君がハマったバイオラ・ブートキャンプのバイオラは、ZOEのバイオラさんを若くしてキャッピキャピにした感じの健康系ミリタリーっ娘です。D.D.エンターテイメント(カズの持っている芸能事務所)所属の元傭兵という設定であり、健康なセクシーさで日本でもブレイク中。

・アーク君がいた訓練所はヴェノムスネークにならなかったエイハブがいる訓練所で、レオンも現在、アーク君と同じ目にあっている模様。

・アーク君の性格は、某横島が足されています。故に……バケモノに好かれる。後はわかるな?

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