対G戦。
タイラントさんは果たしてようぢぉを救えるのか?Gを撃破出来るのか?
くんかっかーくんかっかー。
T-ウィルスワクチンを何本かステンレス製の滅菌容器に入れ、槍やら斧やら銃器やらをズタ袋に詰めて俺は急いで待ち合わせの医務室に駆け足で向かった。
だが、俺の聴覚には苦しそうに呻く子供の声しか聞こえて来ない。クレアの気配は無く、嗅覚にその残り香を感じるだけだ。
おかしいと思いつつ部屋に入ってみれば、確かに女の子がベッドに寝かされている。が、クレアの姿はない。それどころかこの女の子の状態は間違いなく何らかの感染症、それもかなり重篤な状態だ。
ワクチンを打った形跡も無く何の処置も受けた後も無い。
「ちょっとまて、クレアはどうしたんだ?!」
あの薬剤を調合する機材のある部屋からここまでの道で途中にクレアが戦闘したような痕跡は無く、それにクレアの足ならば10分と経たずにこの医務室まで到着出来たはずなのだ。
そして俺が自分の駆除薬とT-ウィルスワクチンをつくるのにかかった時間はだいたい30分。つまりとっくにワクチンを打って処置が終わっていてもおかしくない時間だ。
だが、目の前のこの少女には何らかの処置をされた形跡は無い。G-ウィルスとやらの病態の進行などはわからないしその速度もわからないがこれだけは言える。
このままだとこの少女は死ぬか、アンブレラのウィルスに蝕まれたこの幼い身体は化け物になり無残な姿へと変貌するかのどちらかだ。
だがクレアはワクチンを求めていたのだ。この子のために。その姿に偽りはなかった……と思いたい。さっき会ったばかりで確証は無いが、あの目とそして汗の匂いに嘘偽りなど無いと思いたい。
クレアの体臭はなんというか信じられる女の匂いだった。そう思うのだ。というか自分でもよくわからんが、なんとなく本能でそう思うのだ。
……つうか、匂いで信じられる信じられないを判別するってなんなんだ?つか俺の嗅覚はどうなっとんねん。あの距離でなんでクレアの匂いがわかんねん。つか息子が顔だしたのってクレアの体臭に反応しとったまであるんかい。ケモノか俺は。
いや、今はそんなことは置いておこう。というか置いて誰にも知られんように深い海に沈めておこう。
「クレアの身になにかあったに違いない」
何らかのトラブルはあったか、他に必要な何かがあって取りに行かねばならなくなったか。……もしくはバケモンに襲われて逃げねばならなくなったか。
いや、考察は無意味だ。今は速やかな行動が求められる。
俺はまたズタ袋を背負い直すと、部屋を出ようとした。
と、
「う、うううっ……、ママ、ママ、クレア……」
少女は熱にうなされ、苦しそうに母親とクレアの名を呼んだ。
「……嬢ちゃん。もう少しの辛抱だ。おじちゃんがクレアとお薬を探してきてやるからな」
少女の頭を軽く撫でてやり、そして持っていた板チョコをベッドの側の台に置いてやる。もしも行き違いになってもそのチョコで俺がここに来たのがわかるだろう。
「治ったら、一緒にチョコ、食べような?だから待ってろ。必ず治してやっからよ」
俺は部屋から出るとクレアを探しに、少しの痕跡も見逃さないようにと目と耳と鼻を総動員して働かせながら、しかし急いで廊下を進んだ。
そうT-ウィルスは俺の肉体のみならず五感すらも強化していた。嗅覚とておそらくは人間を超越している。
臭うぞ、臭うぞ。
くんかくんか。くんかくんか。
俺は四つん這いになって通路に残るクレアの匂いを探し、そしてクレアが辿ったルートを捜し当てた。
すんすん、この臭いはまさしくクレアの体臭、クレアスメル……!!白人特有の濃い体臭と汗の匂い。臭みがあるが若いねーちゃんの酸い果実の如きフェロモン臭。
俺は四つん這いのまま、くんかくんかしながらダッシュした。少女の命がかかっているのだ、もはや体裁など気にしていられんのだ!!
ドタタタタタタタタタ、くんかくんかくんか、ドタタタタタタタタタ、くんかっかーくんかっかー!!
……犬じゃねぇんだから、でもダメ、クレアスメルを嗅ぐのやめらんない、くんかっかーくんかっかー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
道を進み、ゾンビやらなんか植物みたいなバケモンを消防斧で薪割りしつつ進んでやっとこクレアを発見する事が出来た。
つかゾンビ臭とかバケモン臭は本当に不快だ。クレアの匂いだけ嗅ぎたいんだ俺は。
……いや、変態じゃねぇんだ。匂いフェチでもねぇ。
途中からゾンビ共の死臭やらがキツくてクレア臭をたどれず、クレアが倒してきたモンスターの死体をたどって追いかけることになったが、しっかしクレアの射撃は非常に正確でほとんど頭を撃って倒しているので、あ、ここクレアが通ってたな、というのがよくわかる。
……つか冷静に考えてそんな射撃スキルのある女子大生ってどうなんだ?
なんかホールみたいな施設にクレアはおり、そしてその近くにデカい腕の付け根に目ん玉を生やしたバケモンの死体が横たわっていた。
クセェなコイツは。嫌な臭いだ。
おそらくはそのバケモンがG-生命体とやらなのだろう。
つうかあんなモンを良く倒せたもんだな。つか肉の焼け焦げたような臭いがあの死体から漂って来ているが、多分あの手に持ってるグレネードランチャーを使ったのだろう。
俺は走ってクレアの元に向かった……っと、クレアといるのはあん時のヒステリックババァ研究員か。
「た、タイラント!?」
ひいぃぃぃっ!!となんかヒステリックババァ研究員はドアを開けてその奥の部屋へと逃げていった。つか、またかよ。今は息子は出てねーぞ……ってか、死んでると思ってたバケモンの身体が震えてやがる!!
俺はデカい声でクレアに、
「クレア!!まだソイツは死んでねぇ!!離れろ!!」
と叫んだ。クソっ爆弾仕込んだ投げ槍じゃクレアまで巻き込んじまう。
ブン!!とバケモンがその長い爪の生えた腕をクレアに叩きつけようとしたが、クレアはすぐに床を転がってそれをよけた。
「そのまま離れてろ!」
クレアは俺の言うとおりにすぐさま走って後ろに下がった。
「グギャアアアアアアッ!!」
バケモンは立ち上がり、咆哮した。そして信じられない事に、その身体を膨れ上がらせて巨大化しつつ腕を生やし、まるで地球上の生物にあり得ないような怪物になった。
腕が四本、身体のあちこちに目玉を生やし、腕に爪なのか牙なのかよくわからんものを生やした、その姿、まさにバケモンとしか言いようが無い。ボキャブラリーなんぞ知るか。あんなイキモン見たことも聞いたこともねぇ。
「ギャアアアアアアアアッ!!」
まさに醜悪なデタラメの塊だ。だが……。
「ゲッ○ートマホゥクブーメラン!!」
俺はここに来るまでの通路のあちこちにやたらとあった防災用の消防斧の一本をバケモンの肩のデカい目に力いっぱいブン投げた。
ブォン!!と唸る風切り音を立てて真っ直に斧は飛び、バケモンの目玉ごと腕の一本が吹き飛んだ。
「吠えてんじゃねぇよ。隙だらけだ、ど阿呆が」
続けて足に生えた目ん玉にもフルパワーで斧を投げつけ、ぶっ潰す。バケモンはたまらず膝を折った。
クレアの方を見ればもう奴の攻撃範囲から遠ざかり、グレネードランチャーを構えていた。
ポン!という音と共に、ばしゃあああっ、と液体がバケモンを襲う。それとともにジュオォォォォッ!!と強酸がタンパク質を焦がす音。硫酸弾だ。
「えげつない援護射撃だな……。いや、俺のが援護か?どっちでもいいが……」
クレアがあそこまで離れてくれればコイツが使える。
俺は背負ったズタ袋から投げ槍を取り出し、ピンを外して構えた。
「呪いもねーし朱槍でもねーが槍をご所望かい?食らえ爆裂硫酸槍っ!!」
1、2、3、と数えて投げつける。
「どりゃああああっ!!」
たかがナイフを鉄パイプに繋げた投げ槍。されど中には必殺のパイプ爆弾と硫酸弾が入っている。
投げ槍はバケモンの胸に生えたいくつもの目ん玉をつぶして刃の根元まで刺さる。そう、爆弾と硫酸弾を仕込んだ辺りだ。
ボン!!ババッ、ブボン!!
バケモンの体内でパイプ爆弾がはぜて破片を撒き散らし、同時に硫酸が焼き尽くす。
奴に内臓があるかどうかはわからない。あんなデタラメな身体を持っている生き物など自然界にいるわけもない。だが表っ側より内側は大抵の場合なんでも弱いもんである。
果たして効果は……。
「グギャアアアアアアアアッ!!グギャアアアアアアアアッ!!」
胸に大穴が開き、そこから硫酸が肉を焼いている煙が出ており、バケモンはめちゃくちゃ苦しんでいる。
だがとどめには程遠いようだ。
めちゃくちゃ力いっぱい暴れてやがる。
「クソっ、思いの外頑丈なバケモンだな!!」
シュポン!とクレアがバケモンの後ろからまたグレネード弾を発射した。胸に開いた穴に弾がすぽんと入った。すげぇコントロールだな、おい。
「ホールインワン!」
どぱん!と中で硫酸弾が爆ぜ、さらにバケモンの胸の穴は大きく、そして腹まで開いた。
バケモンの中身が遠目でも見えたが、はっきり言おう。コイツはまともなイキモンではない。背骨が何本も身体の中にグネグネと走り、内臓もマトモに無い。筋肉なのかなんなのかわからん繊維が中でまるでウネウネとミミズのように蠢いており、正直、なんかの生き物の群体なんじゃないかと思うような、そんな感じだった。
「殺し尽くさないと死なねーってワケだ」
マジで、うへぇっとなった。
バケモンは普通なら死んでいるほどのダメージを受けてもまだ、その体細胞を増殖して身体に開いた大穴を塞ごうとしていた。
「手を止めないで!!攻撃し続けて!!」
クレアが俺にそう叫ぶように言いつつ、グレネードランチャーをバケモンに撃つ。
そうだ、手を休めてるわけにはいかない。
コイツをとっとと早く殺してあの少女にワクチンを届けねばならないのだ。あの子は苦しんでいるのだ。こんな奴に時間などかけてはいられない。
「うぉぉぉぉぉぉっ!!とっととくたばりやがれこのクソバケモンがっ!!」
「槍だ!斧だ!松明は無いが、手榴弾だ!!」
百万回やられても倒れない?馬鹿野郎そんな時間は俺達にねぇんだよ!!コンティニューなんざ人生にゃねぇ、てめぇなんざデタラメな肉塊だ。とっととくたばれ!!
俺とクレアはバケモンの土手っ腹に開いた穴にとことん徹底的に攻撃を集中した。
結果としてなんとか弱らせる事が出来たが、しかしバケモンはまだ蠢き、死ぬ気配も無い。
俺の手にはたった一本の斧。爆薬も硫酸弾も火炎弾も仕込んでいない、普通の消防斧だ。クレアの方もグレネードランチャーもショットガンも拳銃の弾も撃ち尽くし、俺が投げてよこしてやったM-16の弾を今使い切り、コルトガバメントを使っている。
「…………」
仕方ねぇ、俺がしんがりに残ってクレアをあの子のいる医務室に逃がすか?今ならバケモンは動けねぇ、行けるハズだ……。ここでガバメントの弾まで撃ち尽くせば、医務室までの道のりでゾンビ共に襲われれば危ない。
俺がそう考えた時、
「ウィリアム……!!」
悲痛な叫び声がホールに響き、そして上の方から、バケモンの身体に開いた大穴にパシュッ、パシュッ、パシュッ、と何かが撃ち込まれた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
見ればさっきのヒステリックババァ研究員が銃のようなものを撃っていた。バケモンが苦しんでいるところを見れば、あれはG-生命体を殺すための薬剤なのだろう。
ジュウウウウウウ!!と大穴から盛大な煙があがる。硫酸弾なんざ目じゃないぐらいにバケモンの身体が薬剤に反応してブスブスと泡立って溶けていく。
パシュッ、パシュッ、パシュッ、パシュッ、と、ヒステリックババァ研究員は容赦なく薬剤の弾を撃ちだす。見ればババァ研究員は泣いていた。
「ウィリアム……、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「グゲ……ェ、ゲ…………」
ジュオオオオオオッ、とバケモンは跡形もなく溶け、分解されて消えていった。
遅ぇよとか、そんな武器あんなら最初から使え、とか言えばおそらくKYとか言われるだろう。
あの涙を見ればわかる。おそらくあのバケモンはあのヒステリックババァ研究員の家族か大切な者の変わり果てた姿なのだろう。
クレアが俺の方へやや疲れたような足取りだが駆け足でやってきた。
「はぁ~っ、危なかったわ……。来てくれてありがとう……」
「へたばるのはまだ早い。医務室の子の命が危ない。ワクチンは持ってるな?」
俺はクレアにそういうと、ガバッとクレアを肩に担いだ。
「え?ちょっとちょっと?!」
「四の五の言っている場合じゃねぇ!!急ぐぞ、あの子の様態は危険域まで来ているんだ!!このまま行くぞ!!」
俺はクレアを抱えたまま、ダッシュで医務室まで走って戻った。
え?ヒステリックババァ研究員?知るかそんなん。
・ふんどし男(タイラント)が幼女の頭を撫でる。
・ふんどし男(タイラント)が四つん這いで女の子の匂いでくんかくんかする。
・ふんどし男(タイラント)が女の子を無理矢理担いで走る。
だが、本人はなんとも思ってないぞ?
なお、クレアさんを担いでバレないように、くんかくんかしたり感触を堪能しているとか、そういうのは内緒だ。
ボス敵が完全消滅して、次の敵は……。奴だ!!
次回、とっととにげるんだよぉぉぉ!!
ネメシス君をどうするかアンケート
-
ネメシス君と巨乳ママ博士仲間入り
-
ケツほいランサー死亡
-
暴走して戦車砲で博士諸共殺される。
-
再び騙されてどこかへ行って行方不明
-
鬱エンド
-
主人公捕らえられ章エンド