なんかタイラントになってしまったんだが。   作:罪袋伝吉

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いつも感想&誤字脱字修正ありがとうございます。

今回、アーク・トンプソン君回です。いや、仔月光回かもしれません。

なんか書いてたら長くなっちゃってね。

次回は平凡さんです。


Side:アーク・トンプソン①

 

 これまでアーク・トンプソンが遭遇したキモい怪物。

 

 ゾンビ。ゾンビ犬。脳みそ剥き出しの這いずり回る怪物に、トカゲ人間。

 

 どれもとんでもなく厄介だったが、今彼が逃げている怪物はそれらとは全く毛色が違うキモさを持っていた。MP5サブマシンガンを装備した手長猿人間とでも言うのか人型なのは人型だが、明らかに人としては手足の長さが長すぎる。

 一見どこかの特殊部隊のような格好だがひょろ長くキモい動きをする奴ら。

 

 それはアンブレラUT部隊と呼ばれる特殊なB.O.W.なのだが、そんなのがうじゃうじゃといるのだ。

 

 量産型モン○ーパンチ、とか考えて、量産されとると言うことは敵かぁ。ならそのうちモ○キーパンチの本物が出てきたり、何でも切れるカターナもった奴とかマグナムぶっ放す銃の名手とか『ふぅ~ずぃこちゅわわわーん』なセクシーなおねーさんとか、追っかけてきたインターポールの警部さんがそのうちやって来るだろーなとか勝手に想像する。

 

 いや、アーク・トンプソン、モンキー○ンチは原作者の名前だ、後に先生をつけろこのデコ野郎、とか言ってやりたくなるが何で日本の偉大な漫画家の人達は亡くなってしまうん?まだまだ見たかったのに。

 

 むしろ『ふぅ~ずぃこちゅわわわーん』なおねぇさんの方を量産しろとかアーク・トンプソンは思ったりするがサブマシンガン持ってる手長猿のバケモンなんぞ拳銃だけでなんとか出来るわけはない。しかも六体いるのだ。

 

……どーすっかなー、あんだけのサブマシンガン持っている敵に拳銃だけでなんとか出来ねぇし、弾も少ないからなぁ。

 

 物陰に隠れて向こう側を拾った手鏡で確認する。

 

 腐っても途中で訓練やめても、無理矢理でも身に染み付けさせられた技術は忘れない。というか模擬戦闘訓練で教官達にこれでもかと叩き込まれたゴム弾やフラッシュグレネードの痛みによる賜物である。

 

 というか、こういう特殊部隊的な技術がアーク・トンプソンをこの状況下の生存を支えていた。

 

 普通の人間ならたとえ銃を持っていたとしてもこんな状況下で生存など難しいのはラクーンシティでの一般市民達の生存率を考えればわかるだろう。いや、警官や米軍の兵士達すらも生き残ったのはほんの一握りだったのだ。

 

 アーク・トンプソンのその評価はMSFのセーシェル支部通称『ダイヤモンドドッグス』において、賛否両論であった。

 

 最低の評価を押したのは『クワイエット教官』である。彼女の評価は個人的な怒りが入っているとされ、訓練所司令である『エイハブ司令』は彼女の評価を正当な評価ではないとした。ただし、

 

 『女性用シャワールームの監視カメラの裏を突くデバガメ根性だけは評価に値する。罰としてアラスカでの更正訓練1ヶ月を命ずる』

 

 というクワイエット教官の罰に対しては彼は賛同した。

 

 とはいえそれは、アーク・トンプソンのスニーキングスキルや女性用シャワールームに仕掛けられた厳重な監視カメラ網やセンサー類に引っかからずに突破し、覗きを成功させたその能力、そしてジャングルでのサバイバル適性の高さや、訓練生同士の模擬戦における逃げ足と隠れ身の完璧さを評価しての事であり、罰とは彼は考えてなかったのである。

 

『なんでやぁ~っ!苦労してシャワー覗けた思たらクワイエット教官かよぉぉぉっ!!年のわりに良い乳やったけど、それでアラスカ行きかよぉぉぉっ!!』

 

 そのアークの発言により、クワイエット教官(40代)がキレて彼は凹殴りされたが、その翌日にはケロッとしてアラスカ送りにされたのである。脅威の回復力である。

 

 最高の評価を押したのは、アラスカにて彼を待っていた鬼教官『パイソン』である。

 

 極寒の試される大地アラスカにて、アーク・トンプソンは下手をすれば死ぬような過酷な訓練を繰り返し繰り返し受ける羽目になった。

 

 極寒の地でレイザーヘッド的なオッサンとマンツーマンのサバイバル訓練を受けていたアーク・トンプソンがよくもまぁ無事で生還出来たなぁ、とか思われるかも知れないが、パイソン教官は姿や体質などは常人離れしてはいるものの若者の心理をよく理解しており厳しくはあったが、それなりに細心の注意を払って訓練していたのである。

 

『バカだが、下手をすると俺やスネーク以上の逸材かも知れん。サバイバーとしての適性は今までの連中以上だ。勘も良い。若い奴が女風呂を覗くとか良くあることだろ。俺達も昔よくやった!』

 

 パイソンの評価はこんな感じだった。

 

 そうして、アーク・トンプソンは訓練所に戻ったわけだが新兵どころか実はポリスアカデミーの学生だった事がわかり、ひと騒動が起こり、アーク・トンプソンは訓練所を辞めたわけだが、辞めると言った際にはエイハブ司令や他の教官達には残ることを勧められた。

 

……シャワーを覗かれたクワイエット教官を除いて、だが。

 

 とはいえ、訓練所を出て行く際にはクワイエット教官も見送りに来ていたので嫌われてはいないが「アラフォーでツンデレかよ」とか思ったり言ったりしてはいけない。

 

……アーク・トンプソンが最後にクワイエット教官に殴られた理由がそのセリフだったからだ。世の中には思っていても言ってはいけない事もあるのだ。いいね?

 

 なお、アーク・トンプソンの名はMSF内では一時期、結構有名であった。

 

『クワイエットの風呂覗いた奴』、『クワイエットからの全力の暴行を受けても病院送りにならなかった奴』、『アラスカ送りにされても生きて帰ってきた奴』、『不死身のスケベ野郎』などなど。

 

 なお、クワイエットの直弟子である『スナイパーウルフ』は語る。

 

「教官が怒って病院送りした連中は多くいますし見てきましたが、そんな人間が現実にいるはずありません」

 

 一笑に付されたわけだが、ここにおるがな。

 

 性格がちょっと……いや、ものすごくアホですんごくスケベな事を覗けば、そのまま訓練を続ければ上級のエージェントになりうると教官達から太鼓判を押された男、それがアーク・トンプソンである。

 

「手長猿野郎は迂回するしかねーな」

 

 彼はそう判断した。

 

 おそらくああいうタイプの連中は敏捷性が高く、拳銃で不意打ちしたとしてもニ体は確実に倒せるだろうが、しかし他の四体が素早く展開し、四方を固められてフル射撃されて殺される。

 

 ならば、と周りを見回し、床に近いところに大きな排気ダクトがあるのを発見。

 

 アークにとっては潜入訓練でお馴染みの潜入&脱出口だ。親の顔より見てきたダクトだ。

 

 訓練用より現実のダクトはものっそい汚いけど仕方あるまい、と彼は素早く排気ダクトの蓋を外し、中を覗いた。

 

……あれ?なんぞこの黒い奴。

 

 排気ダクトの中に、なんかいた。手の生えた黒いボールみたいな物体である。

 

 目と目(?)が合ってなんぞこれ???

 

 と一瞬思ったが、ウニウニとその怪物体は手を動かして排気ダクトから出て来て、そしてアーク・トンプソンの方を見ると、

 

「アーイ」

 

 と何か電子音を発し、頭頂部……と言っていいのか、そこから生えた手をフリフリと振ってきた。

 

 それは事前にシーナ島のあちこちにばら撒かれたトライポッド、通称『仔月光』と呼ばれる小型無人兵器だが、アーク・トンプソンはその妙ちきりんなロボットをかつて入らされた特殊部隊訓練所で何度か目撃していた。

 

「こいつは教官達が使ってたお手伝いロボ?……しかしなんでこんなところに?」

 

 アーク・トンプソンはこのロボットを兵器とは認識してはいなかった。なにしろ、訓練所で見かけた時は書類を運んでいたりコーヒーを運んだり、コロコロ動き回ってなんか遊んでいたり、雑用を教官達に言いつけられていた所くらいで、便利に使える高性能なペットロボットとしか思っていなかったのだ。

 

 だが、彼はその認識を改めるべき現象に今、ここで遭遇する事となる。

 

 排気ダクトから現れた『仔月光』は手を1の形にして「ピピピピピピ!」と鳴いた。メインカメラの周りのダイオードみたいな光る部分が何かと通信しているように点滅し、青、赤、緑、と色を変え、そしてそれが収まると……。

 

「アーイ」「アーイ」「アーイ」「アーイ」「アーイ」

 

 排気ダクトから、通路の奥から、排水溝から、天井の板を突き破り、手で這い出し、転がり、飛び出て……。あちこちから『仔月光』の群れ、群れ、群れ、大量にわいてでてくる『仔月光』。

 

「な、ななななななな?!」

 

 ゾロゾロゾロゾロと出てくる『仔月光』達に追われていることなど忘れてアークは驚いて固まった。

 

 しかし物音に気づいた手長猿……UT部隊ががに股で曲がり角から姿をあらわし、そしてサブマシンガンをアークに向けようとしたその時。

 

「ビュイーッ!!アーイ!!」「アーイ!」「アーイ!」「アーイ!」

 

 仔月光の群れが一斉にUT部隊に飛びかかり、六体のUT部隊の隊員(?)の腕を、足を、顔面、いや全体にわちゃわちゃと群がり、そしてスタンガンをぶちかまして行動不能にし、さらにどこから取り出したのか、銃型の無針注射器を持った個体がその体液を採取、その上で別の個体が頭の頭巾とゴーグルを外してその顔を撮影、その後に背後に絡みついていた個体が、やはりどこから取り出したのか、カランビットナイフで首を刈って殺害した。

 

 どれも同時、タイムラグなど一秒たりとも無く六体を無力化してしまった。

 

 ちょっと不気味だが便利なただのお手伝いロボだと思っていた物が、実は群れを成して人間(?)をこうして殺傷せしむる兵器なのだと知ったアーク・トンプソンは、後にこう語る。

 

『……未だに悪夢に見るんだ。いや、B.O.W.の徘徊するシーナ島なんざ屁でもねぇ。あんなもんは怖くはねぇさ。……黒い手のついた黒いボールの群れに自分が襲われる、そんな夢を今も見るんだ。ほら、ここにも奴らがいる……!』

 

「ぴゅうぃっ?アーイ!」

 

 絶句しているアークに、最初にダクトから出てきた『仔月光』が鳴いた。

 

「え?」

 

 すると、手長猿人間を始末した『仔月光』達が、手長猿人間の持っていたMP5と、そのマガジンを持って、それをアークに渡してきた。

 

「……これを使えっていうのか?」

 

「アーイ!」

 

 グッ!と目の前の『仔月光』がサムズアップし、そしてまた手を振って排気ダクトへと戻っていった。いや、見れば他の『仔月光』も素早くそれぞれ何処かへと消えていった。

 

「……というか、アイツら助けてくれたのか?」

 

 ジュオォォォォッ、と手長猿人間の死体が泡を出して消えていく音以外は、辺りに何の音も無く、シーンとしていて逆にそれが恐ろしい。

 

 とはいえ、図らずも武器ゲットであるが何故あの仔月光の群れが自分を助けてくれたのかわからないアーク・トンプソンであった。

 

「こうしてても仕方がねぇ。とりあえず、脱出の手立ての探さないとな」

 

 何であれ、ここに居ても仕方がない。集めたアンブレラのウィルス兵器とB.O.W.製造が証拠を持ってここから生きて脱出しなければレオンからの報酬も得られないのだ。

 

……待ってろよレオン。そして殴らせろ音高く!そしてきっちり耳そろえて金を払わせる!」

 

 そうして、地図も何も持ち合わせていない彼は、ずんどこずんどこ、危険地帯へと進んでいった。

 

 凶悪な量産型タイラントがこの島の支配者を気取ったアホのビンセントによって大量に放たれたと言うことも知らずに。

 

「ふひひひひ、ライヴでフィットネス!フィニッシュのキッスポーズを絶対に間近で見てやるからなっ!!」  

 

 金が入ったら行く予定のバイオラおねーさんのブートキャンプフィットネスのライヴ、それだけが今の彼のサバイバルの原動力であった……。

 




・クワイエットさん(アラフォー)。ただし声帯虫はありません。相変わらずナイスバディ。

・パイソンさんはメタルギアのポータブルオプスに出てくるビッグボスのかつての戦友です。イレイザーヘッドみたいに頭に針が刺さってます。

・この物語の仔月光は原作ゲームよりも高性能です。某タチコマ風。

・なお原作ゲームのアーク・トンプソンの性格と、この物語に出て来るアーク・トンプソンの性格は全く異なっており、かなりの改変を加えてあります。主に某GS美神な某横島の性格が加えられてますが、その理由は舞台がシーナ島だからGS美神の作者の椎名○志氏風にやろう、という安直な発想からです。念のため。

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