ミラーに続き、オセロットさんも参戦。
……大概、この物語のオセロットさんもどことなく変ですが、気にしないように。
なお、誰もツッコんでくれなかったのでバラしますが、アーク君が横島風味なのは舞台が『シーナ島』だからなんです。ほら『GS美神』の作者さんの名前が……。
ブリーフィングルームに入るとミラー外相と白くなった長髪をオールバックにした角型の細いグラサンの初老の男と、そして白衣を着たアジア系だがエイダとは違い中東系の顔立ちの若い女性、そしていくつものモニターの前に座る幾人かの軍服を来たオペレーターがヘッドセットマイクで様々な指示をしている。
あと、なんかチラホラとトライポッドが天井にぶら下がってたりテーブルの上に乗ってたりしているが、なんかあちこちに居るな、コイツら。
そういや無線中継機能もあったんだっけか?このトライポッドは。無線中継機なら無線中継機で固定式の専用の物を使った方がいいんじゃないか?とも思う。
……つーか、テーブルの上の奴が頭(?)の上の手を伸ばして指を1の形にして仁王立ちしているのがなんかシュールだ。
「副司令、艦長、お連れいたしました」
と、女兵士のお二人さんがミラー外相と初老の男性に敬礼する。
「ああ、ご苦労。君達はそこで待機したまえ」
ミラー外相は女兵士さん達にそう命じ、そして俺達の方に目を向けた。
「よく来てくれた、ヒトシ。ちょっと待ってくれよ、シーナ島に動き有りだ。……先行してバラまいた潜入トライポッド達から新たな情報がわんさか届いている」
ミラー外相……ここでは副司令と呼ばれるが、ザンジバーランド軍でもMSFでも同様であるらしい。彼が今回の作戦の総指揮官となる。
「わんさか、ですか?」
なんとなく『わんさか』とか言われるとトライポッドが大量にばらまかれたイメージが湧くのは何故だろうか。
「ああ、かなり重要な情報……いや、あんたにとってもだが、厄介な別件がらみのも多く出てきた。整理出来たら話すが、とりあえず椅子に座ってくれ。そこのあんた用のデカい奴だ。他の連中が作戦会議に来るまでまだかかる。作戦の手順は前に送付したものと変わってはいないが、もう一度そこのワルオヤジに聞いておいてくれ。オセロット、頼む」
オセロットと呼ばれた、初老の人物はワルオヤジと呼ばれた事に苦笑し、
「私がワルオヤジならミラー、お前はスケベオヤジじゃないか、まったく。……なぁ?」
と、俺に同意を求めて来たが否定は出来ない。
……なんせ、ウチの海洋プラントに来た後、中南米の迎賓館へと行った際、夜に抜け出してヤザン大統領と夜の歓楽街へ赴き、綺麗なおねーさん達が沢山在籍しているという高級娼館『夜の蝶亭』にてそれはそれはハッスルされたという話が伝わっている。
「さて?ここは否定する所でしょうかね?」
肩をすくめて苦笑いしてオセロット氏に返す。
いや、俺は別に夜遊びに誘われなかった事に対して拗ねてるわけではない。……つーかハンター君は連れてった癖に、とか思ってなどいない。
いや、誘われなかった理由はわかっている。俺とナスターシャが事実婚の関係であり、そこを考慮してくれたのはありがたいと思う。
だが、夜の蝶亭の名物の鯨料理が美味かったとか俺の前で言わなくてもよかったんじゃないかなーとか、土産に包んで持ってきてくれてもよかったんじゃないかなーとか思っているだけだ。
それでなくとも、プラントの食事はレトルトやハンバーガー、インスタントラーメンなどで、外食なんぞ出来ないのだからな。
まぁ、そんな事を思う辺りミラー外相とは非常に親しくなれているわけだが、まぁ、それはともかくとして。
するとオセロット氏は、はははははと一笑して、
「私は悪いどころではないし、ミラーはもう好色一代男だからな。否定出来ない!はははははは」
と上機嫌で言った。あーあー、自分で肯定しちゃったよ。見ればミラー外相もやや苦笑いしている。
しかしこのオセロット氏、気さくな風に見えて確かに極悪人であるのは匂いでわかる。
だが、奇妙な事に嫌な感じがほとんどしない。ゲスの匂いが全くしない。
どう形容していいかわからないが、まるで若い頃は美形でならした2枚目俳優が年を経て舞台で極悪人の役に抜擢されてそれがはまり役になった、という感じがするのだ。
……よくわからんが目的や任務の為なら迷わず悪人になれるタイプの人間かもしれんな、これは。
どうやらザンジバーランドには一筋縄では行かないタイプの人間がひしめいているらしい。
「私のコードネームはリボルバーオセロットだ。今も昔もこれだけは変わらない。まぁ……役職はいくつか持っているが、ここではこの艦『ギアキャリア級一番艦・ヘヴンディヴァイド』の艦長と戦隊指揮官という立場だ」
まるで俺が思っている事を読んだかのように言う辺り、いや、これは悟られたのだろう。
「まぁ、そこにグレイフォックスがいるのだ、どうせバレるだろうから言っておくが、私はザンジバーランド大統領補佐官『アダムスカ』でもある。……これは我が国では良くあることでね。ミラー外相が軍の副司令であるように、そしてリビアのカダフィが大佐と呼ばれるのと似たようなものだよ」
……いや、なんか違う気がするがその辺どうなんだろうなぁ。つーか、一国の重鎮二名がよその国の領海の島に攻め込む作戦に加わってるというのも普通はあり得ないだろおい。
「それはさておき、今回我々はフランス海軍との演習中、偶然勃発した『反アンブレラ組織のテロ』をフランス海軍と米軍と共に鎮圧する……という筋書きだ。反アンブレラ組織の声明もとっくにフランス政府に送りつけてある……事になっている。こっちはミラーがすでに手配してあるし、今頃フランスの国営放送でニュースになっているとも。でだ、君達『強襲部隊』はテロリスト役になるわけだ」
それに関して、ウチはとっくに了承していた。俺の目的は俺の遺伝子から造られた娘を救う事であり、その為には誰よりも早くアンブレラ施設内に突入せねばならないのだ。そして、そのためならばテロも辞さない覚悟である。
……どうせ暴れまくるのだし、アンブレラの連中やB.O.W.は対して苦ではない。G-生命体クラスでもいたなら別だが、その対策もきっちりとしてきている。
とはいえ懸念事項が無いわけではない。ザンジバーランドや他国の兵士達、つまり本来の味方側から攻撃された場合が厄介なのだ。
「……鎮圧部隊への根回しは?まさか攻撃してくるとは言いませんよね?私は手加減に向きません。ラクーンシティから脱出する際、手加減したつもりでしたが、私達を追ってきたアンブレラの私兵達は良くて全身骨折、悪くて死亡しましたからね」
これは脅しでも何でもなく紛れもない事実である。というかあの地下鉄のトンネルで、衝撃波を放とうとしたタイミングで、
『俺、この作戦が終わったら結婚するんだ……』
と言い終わらない間にズドーン!ぐしゃばきぐちゃっ、と身体の骨を砕かれて死亡した若きアンブレラ兵の最後に今も罪悪感を多少感じていたりするのだ。つか死亡フラグ立てるなよ、マジで。
「無論出来ているとも。それに邪魔しそうなフランス海軍特殊部隊はこの作戦が終わるまで来ない事になっている。……フランス政府はいつものように風見鶏だったが、流石にラクーンシティに何が起こったのか、その全容を知ってからは態度が変わったよ。それにヨーロッパ大手の金融機関がアンブレラへの融資の一時差し止めを行った事もかなり響いてね。……これはどこかの誰かさんが特許差し止めをやらかしてくれたおかげでもあるが。なぁ、タイラー社長?」
「……そこまで影響出てますか。というか特許無断使用の賠償総額はまだ出ていないとの事ですが、奴らもかなりおおっぴらにやらかしてたみたいですねぇ。銀行からの融資を差し止められるとは、いやはや」
というか、俺の特許差し止めがそんな影響を出すとは思わんかったぞ。
「まぁ、ザンジバーランド側からの援護射撃もあっての事ではあるが、君の損害額は、少なく見積もってもアンブレラの資産、十分の一程だとウチでは出ているぞ。無論、君と技術を協同開発した製薬機器メーカーのミナモト精密機器もかなりの損害賠償額を得るだろうが。それが払われれば君は一躍世界レベルの個人資産を得ることとなるだろうな」
……あの、まだウチの訴訟の件で会計してくれている人が総額を出せていないのに、なんでザンジバーランドが割り出してんですか、つーかウチの内情まで実はスパイしてんですか、ってそんな奴、ハンター君しか居ねぇだろおい!
ジロリとハンター君を睨めば、彼は軽くアメリカ人がやるように肩をすくめて手を上に向ける仕草をとり、
「潜入工作員だと知ってるのに雇ったあなたが悪いのですよ、社長?」
なんぞとキザに言いやがった。
「契約切れてるって言ってたよな?」
「あれはアメリカ側との契約ですよ。まぁ、どの道アンブレラ訴訟ではザンジバーランド法務大臣下の最高の人材達を派遣してもらうのです。彼らを動かす為に必要な情報だったのです」
しれっと涼しい顔しやがるが、そう言われればなんも言えんではないか。
「はははは、まぁ、ザンジバーランドの潜入工作員を雇ったなら警戒することだ」
オセロット氏がそんな事を言うが、それって信用出来ねぇ連中だらけって言っとるようなもんじゃね?!
「まぁ、それはさておき。敵の懐具合が減るわ社会的信用を無くすわ、味方側が肥えてくれるならそれは非常に良い事なのだよ。……これは提案なのだが、もういっそザンジバーランド国籍になってしまってはどうだね?タックスヘイヴンとまでは行かないが日本の税金よりはかなーり安いぞ?さらに今ならかなりの特典がつく。個人的には油田の開発に投資をするか、いっそ土地を購入し石油会社に運営を任せて億万長者路線をひた走ることをお勧めする。私ならそうする。会社もより大きく出来るし様々な事業もやりたい放題、なんなら別荘に豪邸を立ててハーレムも夢ではない。こそこそ愛人なんて作らなくとも第二第三、と夫人も娶り放題だぞ?例えばそこの女性兵士達を見たまえ。ヘルメットで顔は見えていないが、ザンジバーランドは美女揃いだぞ?気立てもいい!スタイルもいい!……というか内戦や紛争で男共が少なくなっているのもあるから狙い目だ!そもそも一夫多妻制は誤解されやすいが、元々は経済的に余裕のある男が女性の生活を支えるための伝統かつ制度でもあるのだ。君は戦災で家族を失った女性達を救える人材でもある。婚期が来てるのにいい男がいない、彼氏出来ない、とウチの子達もみんなボヤいていたりするしな。経済的にも有望、戦闘力的にも人格的にも君は引く手数多だ。夜の営みに関してもかなりタフだとも聞いている!どうだね、その財力をザンジバーランドの女性達の救済に……」
「いや、妻に殺されかねないのでその辺は……」
我が妻は今回の作戦用にプラントにあったスクラップから対タイラント戦も出来るような機動兵器を作り出せる女なんやぞ。浮気なんぞしたら んなもん『恋の抑止力』がBGMにかかるどころの騒ぎではなく、おそらくセシール・コジマ・カミナンデス教授が歌う『豚のご飯(カラオケでの十八番らしい)』をBGMにファランクスと火炎放射器をぶちかまし盛大にグレラン発射して爆炎と共にあの馬鹿でかい鋼鉄の拳や装甲マシマシな足で俺をぶん殴り踏みつけてくるに違いないのだ。
……つうか、夜の営みの件は確実にお前が情報元やろ、つうか許さんぞハンター君。
と、ようやく情報の整理がついてシーナ島の現在の状況が把握出来たのか……いや、それ以外の重要な情報もあったようだが……ミラー外相が席から立ち上がり、
「はははははは、オセロット、流石にハーレムではヒトシは釣れんぞ。身に覚えの無い、責任も本来無い、アンブレラに造られた自分の子供を救いに行こうとする、そんな男だ。それに愛妻家でもある。彼の意思はなかなか曲がらんさ」
と言いつつ、俺に助け船を出しているようだが、しかし何となく俺を見る目が鋭く、逃がさんがな?と雄弁に語っている。なんでやねん。
「とはいえヒトシ、ザンジバーランド国籍になる件は考えておいてくれ。中南米は良い国だし それに日本人だから祖国に愛着もあるだろう。だが世界はあんたを狙い始める。確実にだ。アンブレラが壊滅したとしてもあんたの存在はいろんな意味で脅威的かつ、価値がある。その頭脳、そしてこれから得るだろう財力、超人としての遺伝子の価値。様々なものに連中は群がって来る。……ザンジバーランドは様々な奴らが集まって建国した国だ。超能力者、超天才的な頭脳を持った科学者、サイボーグの実験体にされた兵士、一度死んで蘇生された兵士、改造人間。そういう奴らも俺達は受け入れて来た。はぐれ者達が集まったアウターヘヴン、ザンジバーランド。そこでは誰しもが人間として仲間として生きて暮らしている。俺達の国はあんたとあんたの仲間の居場所くらいいつでも用意してみせる」
待っている、とミラー外相は熱く語った。
「……まぁ、どうにもならなくなったら相談します」
しかし、俺はそれだけ言うに留めておいた。彼らが本気で俺を仲間にしようと考えているのは理解出来たが、それは様々な事を危惧するが故でもあるし、俺の身を案じているが故でもある。
無論、ありがたい申し出ではある。
……ハーレムに心を動かされなかったかと言えば嘘になるがナスターシャの怒りの方が恐いのでその辺は考えないようにしたい。
つうか、なんか個人資産とか、その辺の話が出た辺りから、ヘイヴントルーパーのお二方とかオペレーターの皆さんがこっちに意識向けてきてるのがわかってなんか怖かった。
つーか、さっさと作戦始まらんかな、これ。
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一方、その頃のアーク君はというと。
「どわーーーっ!!うわーーーっ!!なんで死なねーんだこの顔面岩石やろう!!」
量産型タイラント二体に追っかけ回され、MP5を後ろ手に連射しながらなんか全裸のようぢぉを小脇に抱えて走り回ってたとさ。
「わ~、あーくん、はっやーい。きゃっきゃっ」
ようぢぉはなんかはしゃいでおり、笑っている。
「あー、もう、お前状況わかってんのか?!つかなんやねんあのデカいおっさんはっ!!つかあの黒いのも出てこねーし!!まっくろくろすけ出ておいでぇぇぇっ!!つーかタースーケーテぇぇ!!」
さっきはトライポッドに助けられたのだが、今回は全くその姿など無く出て来ない。
アークは全裸ようぢぉ……いやそれはぶっちゃけバラすと実は平凡さんの娘なのだが……全裸のつるぺたようぢぉ抱えて涙と鼻水たらして走る。
その様は変態にしか見えなかったが、まぁ、見ている者はいないのは幸いだった……というか通報されたところでもはやこの島に警察官なんぞ居ない。居るのは警察官だったゾンビであり、出て来たとしても後ろのタイラント二体にぶっころされるだけだろう。
実際、途中であちこちからリッカーやハンター、UT部隊の手長猿人間共が出てきたりはしたが、二体のタイラントはどうもそれらのB.O.W.を味方とは思っていないのかすべてワンパンでぶっころしていた。もはや無差別である。
MP5が顔面に命中しているのにタイラント達はお構いなしでドコーン!バコーン!とアークにパンチを放って来るが、アークは巧みにそれを交わして走る、走る、とにかく走る。走って飛び跳ねるその様はまるでコメツキバッタのようである。
「なんで出てこねーんだよ、黒丸くーん!!」
アークは叫ぶがトライポッド君達はヘウンディヴアイドがオペレーターさん達の指令でこの付近から別の場所へ移動しており、強襲部隊の着陸地点の場所を確保しているので来るはずもない。
とっぴんぱらりのぷぅ。
「とっぴんぱらりのぷぅ、じゃねぇぇぇ!!」
まぁ、待て次回。
・平凡さん、ザンジバーランド国籍フラグを立てられる。ハーレムフラグは立つのか?
・アーク君、しれっとようぢぉと遭遇。
・なお、この物語ではビンセントのが変態。
・オセロットさん、実は変態ジジィ疑惑。
・空気なナオミさん。