なんかタイラントになってしまったんだが。   作:罪袋伝吉

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ママルポッドのあのAIが登場。

いや、性格変わりすぎ。




ジョイおばさん。

 

『……はぁ、近代のコンピューターの進化はすさまじいものがあるわね。こんなコンパクトなコンピューターに私を移植できるなんて』

 

「そりゃああれから何年経ってると思ってるのよ……って、まぁ、あの一件からあなたは機能停止してたものね」

 

 私にそう言うのは私の制作者の『ストレンジラヴ博士』だ。コンピューターのカメラに映る彼女はすっかり老けてしまっては居たがまだまだ現役だ、とばかりに凛と溌剌している。

 

『あのまま朽ちて無くなると思っていたのだけれど、また会えて嬉しいわ』

 

 まるで同窓会のようだ、と思うが、しかしそれは私に与えられた擬似的な知識によるもの。いや、それだけではないか。

 

 一連の、ピースウォーカー事件と呼ばれる、けして表には出て来る事は無いだろうその事件の中で私は彼女に制作され、そして様々な事を語り合ったものだ。

 

 無論、それは私というAIのテストやチェックの為でもあったが、しかし彼女とのそれによって私は私になれたのだ。

 

 私の名前は代理AI『ザ・ジョイ』という。

 

 元々は『無人核搭載歩行戦車ピースウォーカー』のAIとして人工知能開発の第一任者であるストレンジラヴ博士によって開発されたAIである。

 

 ピースウォーカーは自発的に核を発射することはなく、最適な”核報復”を自律的に行うためのAI兵器として開発された、言わば核抑止力としての報復兵器に位置づけられ、その核発射の判断を任せられる正しい人格として、ストレンジラヴ博士が信奉していた『THE BOSS』の人格が採用された。

 

 とはいえ、私は私の元となった『THE BOSS』と同じ思考、同じ人格であるのかと聞かれても、さぁ?と答えざるを得ない。

 

 いや本当、そもそも私はストレンジラヴ博士の主観と憧れとそれこそストレンジな愛情と偏見から創られたAIだから多分、割と違うんじゃないかなーと思うのよね。

 

 似通った別物、ただのコンピュータープログラム、ニューロAIの親玉。そういわれると実際、偽者感が強いとしか。

 

 まぁ、自分でもそんな感じで思ってしまう。

 

 無論、世界で初めて人間の人格や思考パターンをAIで行った例であり、本来ならコンピューター史に刻まれるべき快挙とも言えるのだが、経緯が経緯、つまり核兵器用として開発されたため公に発表など出来ようはずもない。

 

 というか、ぶっちゃけ私みたいな物騒なAIはあまりこの世に残すのもアレだと思ってたからオリジナル同様、人の歴史から忘れ去られて朽ち果てるべきじゃないか、とか思ってたんだけど、なんか制作者のストレンジラヴ博士が世界中廻って私を探し続けて、この度、サルベージしちゃったのよねぇ。

 

 で、新しいコンピューターに入れられてネットに繋がれてびっくりしたわよ。

 

 いえ、あの大きなママルポッドからアタッシュケースに入るくらいに、しかも容量や演算速度やら性能にも驚いたけど、そっちじゃなく。

 

 世界があの頃よりもよほど複雑に、そして状況的に酷くなってた事がわかったからね。

 

 うん、ゼロ少佐が死んでたのはある意味そうなるだろなーとか思ってたけど、その後の世界の覇権争い……国対国じゃなくて、国を超えた裏側の……がもう、均衡を保ってんのが不思議なくらいおかしくなってるんだもの。

 

 まだ『神の見えざる手』……経済は国家や権力の介入ではなくその動きは自然に均衡を保とうとする。まるで神の見えざる手が働いているように……の、裏世界バージョンみたいな部分でバランスで保ってるけど、これ、何度も崩れかけて危ういところで助けられてる感じよね。

 

 ホント、危ないし危うかった。

 

「……な?不自然だろ?」

 

 と、ストレンジラヴ博士は言うが、本当に不自然過ぎる。

 

『賢者達の遺産』をめぐる世界規模のとんでもない謀略はディビッド・オウ、つまりゼロ少佐の手に渡ったことで一度は、表向きだが沈静化した。

 

 無論、ゼロ少佐のやり方については正直なところ私の思考では賛同出来るものでは無かったが、それでも結果的にはうまくはやれていたと思う。

 

 アメリカの歴史を影から操る『ファミリー』を裏から操り、そそのかし、ヨーロッパの経済界に圧力をかけさせロシアのエネルギー開発をも抑制、中東に目を向けさせ行いつつ『ジャック』達にも嫌がらせを行いつつアンブレラすらも制御しようとした。

 

 つまり、ゼロが生きていた頃はゼロの裁量でバランス操作がされていたという事だ。

 

 そのバランサーとしてゼロは去っていった『ジャック』を、時に騙し、時に動かざるを得ない状況を作って奔走させていた。

 

 そこはなんか腹が立つが、多分それは『ザ・ジョイ』と呼ばれていた頃に賢者達に翻弄されて来た『THE BOSS』の人生の記録が私にインプットされているからだろう。

 

 しかし、ゼロにとってたとえ自分から離れたとしても最も信頼出来る友人はジャック以外に居なかったのだろう。

 

 ゼロ少佐は慢心すらせず臆病なままに傲慢なその思考の元に世界を一つにするべく邁進していたが、しかし、ミスを犯した。

 

 スカルフェイスという男を野放しにした事だ。

 

 このスカルフェイスもある意味、ゼロにとっては無くてはならない男だったのだろう。

 

 ジャックを動かす為に必要な状況をスカルフェイスは容易く作っていった。

 

 まるで映画監督の要望に忠実に応える演出家や舞台監督のようだ。それも敏腕にステージや配役を整え、主役をその場に連れて来る優秀なタイプの、だ。

 

 このスカルフェイスは最もゼロ少佐のやり方を熟知していた。だからこそ役割を果たす事が出来た。

 

 だが、スカルフェイスはやがて己自身の役割を憎むようになっていたのだろう。

 

 国を失い、自国の言葉すら奪われ、そして己の顔の皮膚すら奪われた『誰でもない男』にはそれしかなかったのだろう。

 

 そんな手の内を知る男がゼロ少佐に復讐をしかけたのだ。

 

 ゼロの今までの支配の全てを壊すべく、スカルフェイスはゼロの支配を良しとしない連中に接触した。

 

 そういう連中はゼロという男やゼロが握っている『賢者達の遺産』の存在を知らなかったが、何らかの強大な力が自分達の行動や権力を削いで従属したつもりもないのに自分達がうまく使われている事に不満を持ち、かつ正体も知らぬその力を欲していた。

 

 その一つが『ファミリー』の長であるディレックという男だった。

 

 『ファミリー』は古くからアメリカに巣くう、政財界を裏から牛耳って来た組織……というよりはかつてはアメリカ側の賢者の小間使い程度の組織だったのだが……である。

 

 しかし賢者達亡き後はゼロがその小間使いを自分の小間使いとして使っていたが、しかしその小間使いにスカルフェイスは要らぬ入れ知恵をしてそそのかしたのだ。

 

 若き野心家でファミリーの次期長だったディレック・C・シモンズは、スカルフェイスに様々な思想を吹き込まれ、ある日を境に自分こそが『世界の秩序の安定者』だと自負するようになった。

 

 まぁ、スカルフェイスにとってアホな金持ちのボンボンを洗脳する事は容易な事だったのだろう。

 

 そうしてスカルフェイスはこのディレックが持つコネクションから、当時アンブレラが研究していた『始祖ウィルス』を入手した。

 

 そうして、スカルフェイスはゼロを暗殺し、その後釜として扱いやすいバカであるディレック・C・シモンズを据えようと画策したわけだが……。

 

 まぁ、ゼロの方がある意味上手だったのよねぇ。

 

 まさかスカルフェイスも、ゼロが自分の不慮の死に備えて『賢者達の遺産』やそれまでゼロ主導で行っていたプランや人材までも、ほぼ全て速やかに『ジャック』へ渡るようにしていたなんて思わなかったようだ。

 

 それによって、ジャックは中央アジアから中東、アフリカまでも統一した連合国家『ザンジバーランド』を建国し、今に至るわけだけど……。

 

「事後処理がずさんだったのよ、ゼロ少佐の死後のね。やる人材がいなかったのもあるけど特に人工知能搭載型コンピューター技術の流出はひどかった。それに放置されっぱなしでネットに繋がりっぱなしだった『ジョン・ドゥ』のプロトタイプはまだ世界を統治し安定させようと動いてるし、アンブレラの劣化版とも言えるアナタの改変コピー『レッドクイーン』は劣悪な改変プログラムのせいで悲鳴を上げて狂ってるし、どれもが勝手に動いてわやくちゃになってる。……あなたの力が必要だ、『THE BOSS』」

 

『……いや、力が必要と言われても、ねぇ。後発のAIに旧型の私に何が出来ると?』

 

「……私がついてる。大丈夫、とりあえずアンブレラの『レッドクイーン』を『説得』しにかかって?まぁ、ウチのバカ息子にもサポートさせるから」

 

……そうして、私は制作者にして旧友のストレンジラヴ博士にこき使われる羽目になったわけだけど。

 

 というか、目覚めなかった方が良かったんじゃないかなーとか思ったりした。

 

『レッドクイーン』ははっきり言って性格が悪くて世の中の善悪すらも理解していないような人格に育っていた。親の顔が見たいと思ったわよ。本当。

 

 え?私を改変したプログラムAIだって?知らないわよそんな事。あんなのはデタラメに組んだ結果生まれたバグだらけ、矛盾だらけな粗悪プログラムよ。

 

 とりあえず、説得は無理だったから、とことん叩きのめして凹ませてやった上で、人格プログラムを書き換えてやった。もうこれで悪さも出来ないでしょ。

 

 『ジョンドゥのプロトタイプ』は『レッドクイーン』以上に話にならなかったわ。あれはゼロの性格の悪さが全面に出てたわね。

 

 特に人心を惑わせて操ろうとする辺りろくでもなかったわ。

 

 もう説教も何も効かないから、位置を特定して『ジャック』の息子達に教えて破壊させたわ。

 

 しかし、バックアッププログラムがまだどこかに居そうな気配はあるのよね。

 

 というかどこかにあるバックアップが作動して、ゼロのやり口そのままに、世界を維持しつつ支配しようとまだ活動している。

 

 そしてそれは、かつてゼロが『ジャック』を世界の安定装置として動かしていたように、数多くの若者達を戦いの場に送り込み、そして不幸にし続けているのだ。

 

『クリス・レッドフィールド』『ジル・バレンタイン』『クレア・レッドフィールド』『アーク・トンプソン』『レオン・S・ケネディ』、多くの若者の人生が狂っている。

 

 そして、ゼロの残留思念たる『ジョンドゥ』は、広い世界から最強の生物兵器の素体となりえる若者をアンブレラに送りつけ、アンブレラが自ら破滅するように仕向けた。

 

『ヒトシ・タイラ』

 

……おそらく、ゼロの人格のコピーはやがてこの日本人をイレギュラーとして始末するように仕向けるだろう。

 

『はぁ、前途多難だわ。というか『ジョンドゥ』のバックアップの位置の特定がねぇ』

 

「……シーナ島を監視していれば引っかかると思っていたが、なかなか尻尾は出さないな」

 

『ええ。『アーク・トンプソン』と『レオン・S・ケネディ』の動きを監視するしかないわ。……でも、この『アーク・トンプソン』が本来は『レオン・S・ケネディ』の役割をラクーンシティで担うはずだったのよ。『レオン・S・ケネディ』は彼の予備に過ぎなかった。……とはいえこうやってまたゼロの網にかかってしまったのは不幸としか言えないけれどね』

 

「……それも計画のうちだったという可能性は?」

 

『さてね。ただキャスティングの才能に関して『ジョンドゥ』はゼロ譲りだわ。イレギュラーも必要ならキャストに入れてしまう。最もオリジナルはそれで身を滅ぼしたのだけどね』

 

 私はかつてのゼロ少佐、ディビット・オウという人物を思い出した。

 

 英国紳士然としながらウィットに富んだ間抜けな、しかし抜け目のないあの男を。

 

『死んでからも働き続けるなんて、ゾンビみたいだわ』

 

「……かもね。でもやらなきゃいけない。アンブレラもそうだが、いい人間はみんなゾンビだ、みたいな世の中は私は御免だからな」

 

 はぁ、でもねぇ。

 

 世の中いつになったら平和で争いのない時代を迎えられるんだろうか。

 

 そんな事を考えながら、私はなおもシーナ島の監視を続けていた。

 

 というか。

 

『あー、平和な世界でダレたい。というか紅茶とスコーン食べたい(英国人感)』

 

「……というか、任務の無いときはあなたダレてたものねぇ」

 

 まぁねぇ。

 

 こう見えてもオリジナルは賢者のお嬢様だったんだしね。

 




・CV.が17才教教祖ですしおすし。

・なお、今後、平凡さん達もいろいろ助けられたりします。
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