奇超人JUNO   作:祐。

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超人が持つ能力【2233文字】

「“来る”!! ここに!! 温かいのが噴き出るほどの”ヤバい”のが!!」

 

 住宅街の中。柏島歓喜に抱き着いた女アイナが、それを叫び上げる。

 

 ——次にも空間に迸った、大地の表面を伝う波動。同時に街中へと奏でるサイレンが鳴り響き始めると、甲高い耳鳴りを連れて訪れた“それ”を受け、葉山ユノ、柏島歓喜、アイナ、桃空太一の四名が神経を研ぎ澄ました。

 

 元凶を見遣るタイチ。すぐにも目についたのは、不気味に口を開く街中のスピーカー。

 目に見える波動が四人の表面を伝っていくと、その直後にも柏島歓喜は声にならない音を響かせた——

 

「ぉ、ボぇっ」

 

 吐血。それも吐き出すではなく、噴き出す血飛沫。

 

 飛び出しそうな目玉で、突如と血をぶちまける彼。その様子で危機を察したタイチがスピーカーを見遣ると、即座に右手をかざしながら“超人の能力”を繰り出していく。

 

 手の皮が、鋭利な刃を象る。そして瞬間にも、それは無数の氷柱のような形となって発出されたのだ。

 スピーカーを容易く貫く攻撃。破壊と共に波動を放つ元凶を絶ったことで、柏島歓喜はアイナに支えられる形でうなだれていく。

 

 だが、直にも周囲から響き出した悲鳴に、四人は阿鼻叫喚の光景を目撃することとなった。

 

 ……“人だったもの”。

 柏島歓喜のような症状を訴える人々が、次々と粉砕されていく光景。

 

 護るには、出遅れた。いや、自身の傍にいる人間を護ることで精一杯な状況だった。

 目についた、女の子連れの母親。その二人もまた血を噴き出していく中で、タイチは広げた両腕から大量の刃を放ち始めた。

 

 その刃は、翼の如く波状の連なりを成し、街中のいたる箇所に取り付けられたスピーカーを避けるように広がっていく。そして瞬く間に街中を刃の防壁で覆い囲んでいくと、途端にして症状が止まった人々がパニックを起こしていくのだ。

 

 タイチの能力を見て、葉山ユノはセリフを口にする。

 

「“自身の体温から刃を生成する能力”——貴方と邂逅できたことに、運命すらも感じてしまえるわね」

 

 うなだれる柏島歓喜へと近付く葉山ユノ。タイチはそちらを彼女に任せ、生成した刃越しから周囲の気配を探っていく。

 

 ……今も響くサイレン。スピーカーから放たれる波動を、刃が跳ね返す現状。

 直にして、タイチは一つの結論へと至ることとなった——

 

「——“音”、か。“ヤツ”の正体は……音だ……ッ!!」

 

 刃の防壁が牙を剥く。外周のスピーカーに向かって発出された刃の数々は、周辺の機器をすべて破壊して窮地を凌いでいく。

 

 すぐにもタイチは刃の防壁を解除すると、駆け出しながらそれを口にした。

 

「この一帯が危ない!! 俺はここらの音響機器を破壊して回るから、あんたさんらは避難と誘導を頼むッ!!」

 

 彼の足元から生える刃。彼の先を往くそれの上を滑るように移動を開始したタイチは、次にも地面の刃を浮き上がらせ、空間に刃の道を生成していく。体勢もスケートボードに乗るような格好となると、パキパキと音を立てながら空中に刃を走らせ、その上を彼は高速で移動し始めたのだ。

 

 移動しながらも、“自身の体温から生成した刃”を周囲へと巡らせるタイチの姿。街中の音響機器を破壊する彼の背を後にして、アイナと葉山ユノに支えられる柏島歓喜も、血の塊を噛みながらそれを喋り出す。

 

「ユノ、さん。行って、くださ、いッ!!」

 

「いいえ、ヒーローの彼が出向いてくれた以上、私の出る幕は無いわ」

 

「あり、ますッ!! タイチさんだけ、じゃ、危険だ……!!」

 

 柏島歓喜が腕を突き出し、葉山ユノの肩をどついて距離を離していく。

 

「ここにいる、みんなが、JUNO(ジュノー)を、待っています……ッ!! ——この場は、俺に任せて、ください。ですから、ユノさんは、どうか、ここに住む、女性の方々や、一般市民の皆さん、のこと。それと、勇敢に立ち向かう、タイチさんというヒーローを、助けに行って、ください……ッ!!」

 

 訴え掛ける、彼の瞳。それを受けて葉山ユノは若干と渋る表情を見せたが、ふと聞こえてきた会話に、意識が向けられていく。

 

 それは、先ほどの子供連れの母親。自身も重傷を負いながらも、血を噴き出して倒れた女の子を抱えながら、涙ながらに叫び上げる様子——

 

「血が止まらない——血が止まらない……!! 誰か、この子の出血を止めてくださいッ!! このままじゃあ死んじゃいます……!! この子の弟も、モンスターに襲われてこんなに血を流しながら死んでしまったんですッ!! だからどうか、お願いしますどうか……!! 誰か、助けて、誰かこの子を助けてください……ッ!!」

 

 空虚へと溶けていく言葉。周囲の人々も自分で精いっぱいなことから、彼女の言葉を跳ね除けながら各々と救いを求めていく。

 

 ……葉山ユノは、そう時間をかけなかった。

 タイチに続くよう、駆け出していく彼女。そして常人ならざる跳躍で地面を蹴っていくと、その姿は一瞬にしてくらましていった。

 

 と、柏島歓喜を支えていたアイナは、彼を手放してドカッと落としながら走り出していく——

 

「ゆの!! あいなも行く!!」

 

 彼女に付与した、温もりのGPS。その付与した“温かい”を追跡することで、葉山ユノという標的の位置を把握できる、アイナの能力。

 

 姿をくらました彼女を追って、アイナもまたどこかへと走り去ってしまった。そんな彼女らの背中を柏島歓喜は見送るなり、重傷を負った身で力を振り絞りながら、何とか立ち上がるなりそのセリフを呟いていった。

 

「……どうか、お願いします。この龍明を、守ってください。タイチさん、ユノさん……!」

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