奇超人JUNO   作:祐。

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1章4節
自由な正義【4032文字】※お色気シーン有


 煌びやかな水色。水晶のようなそれが光源となる、虚無よりも途方の無い形容し難きその空間。此処をこじつけでもいいから例えとして言葉に言い換えろと言われれば、少々と苦しいかもしれないが、暗闇の深淵の中と言えば多少なりの想像が及ぶかもしれない。

 

 白色の、線のような何かが平たく走っている。これも床に値するものだという認識でいいだろう。そして、この空間でひとり佇む“何か”が人の影を象っていると、伸ばした腕と、指し示した人差し指のようなそれで目の前に水面のようなものを作り出す。

 

 そこに映し出された一つの光景。——発展した大都市を往く日常の様子。世界を包む宵闇が天井の月を飾り付け、重力に従うよう地上で暮らす二足歩行の生物たちが、四角く整えられたガラクタだらけの窮屈な世界の中を歩き回っていた。

 

 建造物から射す光。キラキラと光る街の中。ネオンとも言える視覚に訴え掛ける強い明かりは、浮かれ気分の赤い頬な人類たちを色濃く照らしている。

 

 瓶を持ち、ネクタイを頭に巻きながら、着崩した衣類と男女が零す笑顔の顔ぶれ。今日はどうやら、皆にとって特別な日らしい。それを理解した“何か”は手のような陰りを動かして映像をあちこちへやっていくと、そのどれもに映る男女が並ぶ光景を見て、“何か”はか弱い少女の音を模倣するよう呟いた。

 

「いいな。楽しそう」

 

 かざす腕を下げ、映像が途切れていく。

 わずかな灯りが消え去って、水晶の水色のみの虚無が支配した。陰りも暗闇も見分けがつかない其処で“何か”は何処かへ歩き出すと、次の瞬間にも走り出す音がひたひた響き出し、床を蹴飛ばして跳躍したらしい短い音。そして、その先で起こった、大型の兵器が開閉する自動ドアのような、重量感ある駆動式の機械音——

 

 ——何も無い龍明の上空から、薄っすらと浮かび上がった透明の自動ドア。

 そこから飛び出した、小さな女の子。百五十五ほどの小柄な背丈の身長で、銀色のパーカーと青色のホットパンツ、黒色のソックスに、白色と黒色の運動靴という無難な格好の少女が姿を現していくと、重力に全てを委ねるかのような落下を始めていったのだ。

 

 脳天から、真っ逆さまと落ちていく少女。未だ風貌が完全に明かさないそのアングルを以てして、落下の運動を楽しむようくるくると回りながら落ちていくその存在は、そのまま煌びやかに光る大都市を目指して真っ直ぐ進むかのように、その運動に身を任せて落下し続けていったのだった——

 

 

 

 

 

 ——銀色に光る星が真っ直ぐと落ちていく、同時刻。

 

 街中で上がった悲鳴。モンスターが現れた叫び声を合図に颯爽と推参したのは、真紅のコートに身を包んだ謎のヒーローJUNO(ジュノー)の姿。

 宵闇が似合う紅の存在に野次馬が盛り上がっていくと、街を破壊する魚人のような巨大なモンスターを相手に、もはや一方的とも見て取れる圧巻の暴力を繰り広げてみせた。

 

 ヒレのような手の引っ掻き攻撃を鮮やかに回避し、残した真紅の軌跡に惑う相手へと、すべてを無に帰す拳で殴り飛ばしていく。そうして殴り飛ばしたモンスターへと即座に追い付いたJUNO(ジュノー)がモンスターの背に殴り掛かっていくと、またしても吹き飛ばされたモンスターという絵面が何度も何度も展開されていくのだ。

 

 それも、上空のヘリコプターから眺めると、飛ばされるモンスターの軌道は星型を描いている。これが紅の残像と共に地上に象られていくと、その星型の中央でJUNO(ジュノー)が降りかかり、これに押し潰されたモンスターがすぐにも持ち上げられて強烈なボディブローを一発。そして、打ち上げられたモンスターに向かって引き絞られた右腕と、突き出された右拳による、概念をも消し飛ばす規格外の一撃。

 

 放たれた瞬間にも歪んだ空間と、その歪みで生じた空間と空間のズレの狭間に送られるように、その場から消滅したモンスターの姿。これによって上空の雲がドーナツのように穴を開け、周囲の野次馬は、伝った衝撃によって全員が地上から浮き上がっていった。

 

 ——追加の耳鳴り。その拳は、一層と磨きがかかっている気がする。

 開けた街の中央に佇むJUNO(ジュノー)の姿。足元のクレーターを全く気にしない足取りでどこかへと歩き出していく、その最中で掛けられた男性からのとあるセリフ……。

 

「す、すみません……! あ、あの! ……今しかないと思って、あの……!」

 

 振り向く仮面。その視界に映っただろう、スマートフォンを手に持つ男性の姿。

 

 男性は、うかがうようにJUNO(ジュノー)へと言葉を続けていった。

 

「は、初めてテレビで見た時から、その強さに惚れました……! そ、それで、チャンスは今しかないと思って、つい、声を……! あの、写真、撮らせていただいても構いませんか……!?」

 

 差し出されたスマートフォン。だが、JUNO(ジュノー)は興味無いと言わんばかりにプイッとそっぽを向いて歩みを進めていく。

 

「お、お願いします……! 俺の彼女も、あなたのファンなんです……!」

 

 ピクッ。その足を止めた、気分屋の紅。

 

「俺の彼女も、前にあなたに助けられた者の一人でして。でも今は、モンスターに襲われた怪我の後遺症で、とても苦しんでいます。今も入院中の彼女なんですが、その彼女の病院先での唯一の楽しみが、あなたの活躍を生中継で観ることなんです! ——今も多分、俺の彼女はあなたのことを見守っております。そして俺は、そんな彼女の生きる希望でもあるあなたの写真を、どうか、手元に送ってあげたい。……今の俺達にとって、あなたは唯一無二の希望なんです。なので、どうか……撮影をお願いできませんか……?」

 

 彼の言葉に偽りはない。それを確信する彼の真っ直ぐな瞳と向き合った寡黙なJUNO(ジュノー)は、彼に向き直ると共にその場で佇んでみせた。

 

「ッ! ——ありがとうございます……!!」

 

 すぐに駆け付ける男性。そしてスマートフォンで間近のJUNO(ジュノー)を撮影していくと、一区切りというところでJUNO(ジュノー)から男性へと歩み寄り出し、これに彼は眺め遣ることしかできずにいた。

 

 彼が手に持つスマートフォンを、JUNO(ジュノー)は取り上げた。突然のそれに男性が驚きで思考停止していくと、その間にもJUNO(ジュノー)は彼の横へと位置を変え、彼の肩に左腕を回して少し寄り掛かり、右腕を前にかざして右手で持つスマートフォンを向けていく。

 

 肩に回した左手でガントレットのピースサイン。彼も突然のそれに困惑しながら引きつり笑いをしていくと、直にもポチッと押されたカメラのボタンによって、二人はフラッシュの光を浴びていった。

 

 ——カシャッ。

 

 スマートフォンを返していく。これに男性が困惑のまま受け取ってお礼を言っていくと、JUNO(ジュノー)は彼の肩を数回と叩いてから上空を見上げていき、中継を繋ぐカメラに向かって軽く手を振ってみせてから、刹那の跳躍によって瞬く間とその場から姿を消していったのだ。

 

 それとほぼ同時にして、消え去った英雄の居た地点へと、我先にと便乗する野次馬の波が押し寄せた。

 ……世間に影響を及ぼし始めた紅の存在。正規の英雄ではない気分屋の救世主は龍明の屋根を飛び越え地上を渡り、そうすぐにもひと気の無い路地裏へと降り立っては待ち人の女性へと歩み寄っていく。

 

 紅の訪れに、女性は小走りで駆けつける。そうして茶色のロングスカートと黒い長髪を揺らしながら紅に近付くと、ひたっとくっ付くようにして寄り添った。

 

 くっ付く女性を、両腕で優しく抱いていくJUNO(ジュノー)。その温もりで頬を火照らせた女性は、何かのお礼らしき感謝のキスを仮面へと捧げていく。

 

 ……より一層と抱き寄せる紅の腕。背中に手を添えて女性を見下ろすその背丈と、女性の股にあてがうよう踏み込んだ美麗な右脚。そして、着用する仮面の下半分が突然とスライドするよう上半分へ格納されていくと、露わにした健康的な色白の肌と口元が、女性の口づけを求めだす。

 

 すぐにも顔を近付ける女性。だが、JUNO(ジュノー)は背に回していた手で女性の手を取っていくと、それをゆっくりと自身の胸へと当てていき、再度の確認を女性へと促したのだ。

 

 ……ふにっ。柔らかい弾力——

 

「…………え? 女の人……?」

 

 見開いて呆然とする女性。……微笑みながら頷くJUNO(ジュノー)の様子。

 

 それでも、本当にいいの? 寡黙を貫く“彼女”の確認。これに女性は少しばかりと考える様子を見せていくと、次にも下した決断と共にして、女性は吸い寄せられるように、“彼女”の唇を目指していった——

 

「……こんな不束者でよろしければ——」

 

 交わる唇。温もりを帯びた唾液の音と、女性の舌に絡まる“彼女”の舌。

 振るう拳に相応しい攻めの姿勢が、“彼女”のディープキスにも現れる。それでいて、“こちら”でも百戦錬磨な“彼女”の責めは、直にも女性の全身を撫で掛ける両手の愛撫となって本格的に始動する。

 

 路地裏の、建物の壁に女性を押さえ込んだ。そして“彼女”の両手が女性の手首を押さえて自由を奪い、股にあてがった脚で更に女性を愛撫しながら強引なキスで責め立てる。

 

 力を持つ者による、力ずくなシチュエーション。灯りの無い暗がりに二人、淫らな行為に及ぶ背徳感。

 溶けるように力が抜ける女性。そんな女性を“彼女”は寄り掛かるように一層と壁に押さえ付け、自身を覆ってくるような、自身を求めて迫ってくる力ある者から受ける抑圧に女性は昂りを見せていく。

 

 ——ロングスカートが湿り始める。温かなキスで顔を真っ赤にした女性を見下ろすようにして、“彼女”はその耳元に口元を近付けていくと、寡黙というルールを破るようにその静寂な問いかけを行ってきたのだ。

 

 暗がりに紛れた、口を動かすその様子。これによって女性は恥ずかしがるサマを見せていくと、そんなに時間をかけることなく頷いていって、“彼女”もまた恍惚な表情の口元を浮かべながら夜食を済ませていくのであった。

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