奇超人JUNO   作:祐。

26 / 32
女上司の自宅に招かれて……【3235文字】※お色気シーン有

 業務を終え、定時で切り上げた葉山ユノと柏島歓喜。夕暮れも直に夜へと移り変わる時間帯の境目に、落ちる黄昏に照らされた二人は高級アパートの駐車場を歩み進めていた。

 

 厳重な防犯機能。モンスターの攻撃からも身を守る重厚な外壁。外部からの不安因子を徹底的に対策した鋼色の七階建てアパートは、建物から香る高級感溢れる材質の匂いと、可動しているエレベーターで縦に移動できるリッチな仕様で住民を迎え入れる。

 

 六階に位置する自宅の扉に手を掛けた葉山ユノ。そのままドアを開けて手で促していくと、柏島歓喜は軽く一礼しながら彼女の部屋へとお邪魔した。

 

 入口から、ホテルの一室のように穏やかな空気が流れ込む。灯らない電気にも関わらず自然なオレンジ色を放つこの空間は、午前中にも訪れた彼に再びの安堵を与えてくれた。

 部屋もまた、探偵事務所よりもスペースが広い。その内部もモダンな家具で統一されているものの、生活するのに最低限と必要になる物しか揃えていないことから、元々開けた空間が余計に広く感じられたものだ。

 

「……普通の物件に住んでいる自分が惨めに思えてきますよ。尤も、ユノさんのような、世間に夢と希望と未来を与えてくれる超人ヒーローのプライベートルームってことであるのなら、それじゃあいいかと抵抗なく心から頷けるとても素敵な自宅だと思いますが」

 

 明かりを点ける葉山ユノ。天井から下がる球体のランプが空間を煌びやかな白色で染めていき、柏島歓喜にモダンな椅子に腰を掛けるよう促していく。

 そして彼女は部屋の奥のダブルベッドにドカッと座っていき、脚を組んで優雅なサマを見せ付けながら彼へと言葉を掛けていった。

 

「上出来よ、柏島くん。期待以上に見違えた綺麗なお部屋、これからは安心して貴方にここの掃除を任せられそうね」

 

「俺、雑務とコックまできて、次は清掃員としての称号までもついてしまいましたか……。その分のお給料ってもちろん弾んでくれるんですよね?」

 

「うふふ」

 

 短い返答。もはや言葉でもないそれに、彼は「あ、これは給料増えないな」と確信する。

 そして、身に付ける衣類を脱ぎ始めた葉山ユノ。ライダースジャケットを脱ぎ捨てるようにベッドへ放り投げ、バイクパンツのベルトを緩めてぶら下げて、赤色のシャツのボタンを全て開けっ払うことでピンク色のインナーを晒していきながら、部屋の中を歩き出していく。

 

「飲み物を用意するわ。冷蔵庫の中に緑茶かぶどうジュースがあったはず」

 

「あぁいえ、冷蔵庫内の飲み物は全て賞味期限が過ぎておりましたので、廃棄してしまいました。——ですが、こちらに、ほら。同じ飲み物の新しいやつを用意しておきましたので、こちらをお飲みください」

 

「あら、気が利くじゃない」

 

 鞄から取り出した、購入したばかりの飲み物。そこから二人でぶどうジュースをいただくと、彼女は部屋を眺めながらそれを口にする。

 

「ここ最近は事務所で寝泊まりしていたから、ここに帰ってきたのは随分と久しぶりだわ」

 

「ユノさん、俺が事務所で働き出した頃からずっと事務所で寝泊まりしていましたよね。——こんなに綺麗なご自宅がお出迎えしてくれるというのに、ユノさんはどうして帰宅しようとは思わなかったんですか?」

 

 もはや、ボタン全開である彼女の格好にツッコまない柏島歓喜。そんな彼の問い掛けに葉山ユノはそう返していく。

 

「自宅から事務所までの移動が面倒なのよ」

 

「……ユノさんらしいと言えば、らしいですけど……。それで移動が面倒に思い、しばらく帰宅していないご自宅の掃除を俺に頼んだと……」

 

「そうね。近い内にも、バーで出会った女の子を二人ここに呼んで、おもてなしをする話になっているの」

 

「あー、そういう。……そういうことでしたか……」

 

 察した。彼は視線をダブルベッドへと投げ掛ける。

 ……高級な自宅を、ホテルのように扱うところ。一人暮らしでダブルベッドという贅沢に柏島歓喜は妙な納得をしていくと、彼が向けたベッドへと彼女は向かいだし、近くの棚をごそごそと漁り始めて何かを探し始めていくのだ。

 

 ——チラりと見える、棚の中身。

 ピンク色を主とした何かの玩具が、ゴロゴロと音を立てていく。そのどれもが自己満足の用途に使用される大人向けの代物であることから、彼はギョッとした目を剥いて思わずとツッコんでいった。

 

「な、何してんですかっ!?」

 

「何、もなにも、そういう気分だから済ませようと思っているの」

 

「だからって、どうしてナニを今しようとしてんですかッ!!?」

 

 ガタンッ。立ち上がる柏島歓喜。彼の様子も葉山ユノは全く気にしないでいると、取り出した一つの長い代物を抵抗感なく眺めていった。

 

 ここには描写できない形をしたもの。だが確実に言えることは、柏島歓喜もまた、その形を自前で持っているということだろうか。

 それにしても、随分とご立派な造形だ。葉山ユノはソレを手に持ってベッドへと座り込んでいくと、脱ぎ掛けのバイクパンツを下ろしてピンク色のショーツを晒しながら、彼へとそのセリフを言い放ってきたのだ。

 

「私は少しコッチに集中するけれども、柏島くんは気にせずゆっくりしていてちょうだい。それと、うるさかったら気兼ねなく言って。あと、臭いも気になるようだったら窓を開けたりして自分で調節してちょうだい」

 

「い、いやいやいやいやっ!!!! どう見たってそういう問題じゃないでしょうっ?! もっとこう、モラル的な部分で思う所とかありますよねっ!?」

 

 ナニが擦り付けられる様子。そして、ゆっくりと寝そべってリラックスし始めた彼女の動作に柏島歓喜は視線が挙動不審となっていくと、彼は慌てるように鞄を手に持ちながら、テーブルに置かれていた部屋のカギを拾い上げてそう叫び上げていく。

 

「おお、おおおお俺はちょっと外の空気を吸ぅってきます!!!! す、すぐ戻ってきますのでで、ユユユノさんは気にせずにどうぞっ!!!!」

 

 ドタバタドタバタ、ガチャッ!!

 ものすごい勢いで外に出ていった柏島歓喜。彼の慌てて出ていく背をその姿勢のまま見送った葉山ユノは、何とも思わない平然とした表情を見せていたものだった。

 

 

 

 

 

「勢いのままに飛び出してきちゃったけど、外に出たところで何をして時間を潰そうか……」

 

 夕暮れの余韻も残らない、完全な暗闇が街灯の光をもたらす外の空間。整えられた道が富裕層の住む区域であることを象徴するそれを、柏島歓喜は参ったなといった調子で歩き進めていく。

 

 それから少しばかりと夜の道を散歩していると、見慣れた年季の道路が彼を迎え入れてきた。

 いつもの龍明の街。特別感のないこの吸い慣れた空気こそが自分の居場所とも思わされる柏島歓喜は、目についたコンビニエンスストアへと立ち寄って中を物色し始める。

 

 雑誌コーナーへと赴くと、視界に映ったグラビアの水着姿。同時にして脳裏によぎった先ほどの光景を彼は思い出していくと、ひとり恥ずかしく思いながら引き返しつつ、こんなことを意識してしまう。

 

「……けっこう大きかったな。——アレを、ユノさんは今も使ってるって考えると……」

 

 手に取ったお菓子を、棚から出し入れする動作で硬直した彼。この煩悩を断ち切るべくお酒でも買っていこうかと考えてそのコーナーへと向かおうとした時に、彼はふと、引っ張られた裾の感覚に振り返っていったのだ——

 

「これがいい」

 

 チョコレートへと指を差していく小さな手。それは色素が薄い、生気をうかがわせない色白の肌。胸元辺りにまで伸びたもみあげに、緩く巻かれるよう絡まる黒色の紐のリボンが特徴である銀色のショートヘアーが彼の視界に映っていくと、次にも彼へと振り向いてきた水色の可憐な瞳が、柏島歓喜の目と合い始める——

 

 百五十五ほどの、小柄な背丈の身長。銀色のパーカーと青色のホットパンツで、黒色のソックスと、白色と黒色の運動靴という無難な格好をした一人の少女は彼と目が合うと、一ミリたりとも表情が変化しない可憐な容貌で、再びそれを口にしていった……。

 

「これがほしい」

 

「…………え? ——え??」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。