奇超人JUNO   作:祐。

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押し寄せる動揺【2602文字】※お色気シーン有

「ただいま戻りましたー」

 

 報告と共に、高級アパートの玄関ドアを開ける柏島歓喜。それを「おかえりなさい」と言葉で迎えた葉山ユノは、ボタンを開けっ払った赤色のシャツのみを羽織る開放的な姿で佇んでいた。

 

 彼女が手に持つ、ぶどうジュースの入ったコップ。所々が汗だくながらも清々しい顔をした葉山ユノは、一方で疲れたような表情で帰ってきた彼にそれを問い掛ける。

 

「萎びたシイタケの茎の部分のような顔をしてるわ。貴方も聖なる夜を楽しんできたのかしら」

 

「何ともまぁ、ピンポイントな顔をしていますね俺……。それに、俺はユノさんほどアクティブにはなれませんよ……」

 

「それでも適度な発散は必要よ?」

 

「ほんと、ユノさんはその拳でモラルという概念も吹き飛ばしてしまったんですか?」

 

 椅子に座り、テーブルに鞄を置いていく柏島歓喜。彼の尋常じゃない消耗の様子に、葉山ユノは傍まで寄りながら訊ね掛けてくる。

 

「何かあったの?」

 

「何かあったどころではなく、何もかもありすぎて色々と疲れました。——あの、その格好で目の前に立たれるのも色々と困ります。主に、俺の身体に悪いので」

 

「男の人は、こういうので元気が出るんでしょう?」

 

「あのですね……まぁいいや」

 

 彼がこうして反撃を諦めると、葉山ユノはしてやったりといった具合にニヤァと笑みを浮かべてくる。しかし彼女のそれにさえも反応しない柏島歓喜は一息ついていくと、つい先の出来事をそう説明し始めたのだ。

 

「最寄りのコンビニエンスストアで、一人の少女が俺に絡んできました。その子はとても不思議な少女でありまして、なんともミステリアスな空気を身に纏った、この世の者ならざる神秘的な存在感で俺の前に現れたんです。俺はどうすればいいのか分からなくなって、取り敢えずその子をファミレスや見晴らしの良い公園に連れて行ったりしてみました。そしたらその子はとても満足そうにしてくれまして、その最中にも俺は、その子との他愛のない会話を交わしていく一時を過ごしていたものです」

 

「へぇ、羨ましい話」

 

「ユノさんはあの現場を見ていないものですから、そう言えるんですよ。俺はなんかもう、すごく疲れちゃいました……」

 

「それで、その子はご自宅に送り届けてきたの? ここに連れてきていない様子だけれども、ぜひともご尊顔を拝んでみたいものだわ」

 

 部屋を見渡す葉山ユノ。それも守備範囲であるがため彼女は彼の返答を心待ちにしていたものであったが、そう少しして、柏島歓喜は頭を抱えながらその返しを口にしていったのだ。

 

「その子は、その……。消えました」

 

「消えた?」

 

「はい……。二人で公園のベンチに座っておりまして、俺が夜景を眺めるためにちょっとだけ視線を外したら、次に振り向いた時には、隣にいたハズのその子が忽然と姿を消していまして……」

 

 少しずつ俯いていく柏島歓喜。その不思議体験で動揺する彼を葉山ユノが見つめていく中で、彼はふと彼女へと視線を投げ遣りながらそれを訊ね掛けていく。

 

「あの子は一体、何だったんでしょうか……? その子の口ぶりとかも、俺のような常人にとっては不気味に感じられてしまっていて、何を考えているのかも分からない、どんな性格なのかも分からない、あの子という存在について何もかもが分からない、この世ならざる何かに触れてしまったかのような言葉にし難い不思議な体験に、俺、なんかもう色々と分からなくなってしまいまして……」

 

「へぇ。——ぶどうジュースでも飲む?」

 

「あ、いただきます」

 

 コップを用意した葉山ユノ。そこにジュースを注いで柏島歓喜へと渡していく。シャツのみを羽織ったその姿のまま。

 彼はそれを一気に飲み干して、テーブルに置いていった。そしてふぅっとため息まじりの一息をついていくと視線を彼女に投げ掛けながら、改めてといった調子で彼はそれを問い掛けてみる。

 

「ユノさんだったら、この話を聞いてその子をどう捉えますか? 俺は、あの子は果たして超人だったのか、はたまたモンスターだったのか。それか、超人やモンスターが存在するこのご時世ですから、あの子はもしかしたら、それらには該当しない新たな種族——宇宙人とか……そういう常人ではない何かだったのかなってばかり考えてしまいまして……」

 

「情報がまだまだ不足しているから、断定するには時期尚早といったところかしら。とにかくお疲れ様。今日は私の自宅でゆっくり休んでいきなさい。ただ、ダブルベッドは男子禁制の特別な聖域だから、柏島くんの寝床は文字通りの床になるけれども」

 

「いやもう、こんなに高級なお部屋ですから、むしろ床で寝られるのもありがたいとすら思えてきますよ……」

 

 くたくたといった感じにイスから立ち上がる彼。そうして歩き出しながらダブルベッドを見遣っていくと、そこには昼に整えたシーツがくしゃくしゃになり、なんだか飛沫のような湿り気も感じさせる変わり果てた姿を目にしてセリフを口にする。

 

「……ユノさんもお疲れ様です」

 

「シーツを変えておいてちょうだい。あと綺麗に整えて」

 

「もう慣れたもんですよ、はい」

 

 と言ってシーツを剥がそうと手を掛けていく彼。で、シーツを引っ張っていくその中で、彼はシーツの上から転がってきた二つのピンク色を目撃することとなる……。

 

 ……ここには描写できない大人向けの玩具。だが、先ほど見た立派なそれとは異なるのであろう二つの物体に、これも処理するのかと柏島歓喜は掴もうとした。

 しかし、違和感を抱いた。——断面。真っ二つ? それを不思議に思った彼は二つのピンク色を手に取りながら振り返っていき、未だ下半身を露出したまま凛々しく佇む葉山ユノへと訊ね掛けていったのだ。

 

「あの、こちらの玩具も棚に戻しておきますよ」

 

「あぁ、いいえ。それは処分しなさい」

 

「処分?」

 

「えぇ、壊してしまったから使い物にならないわ」

 

 それを聞き、まじまじと見つめた柏島歓喜。

 

 と、二つのピンク色の断面を合わせてみた時、確かにそれは、“ナニ”の形となってピッタリくっ付いたのだ。

 

「少し熱中しすぎてしまって、力みすぎたのよ」

 

「ぇ……力みすぎて……?」

 

「そうよ。——なに、どうしたの?」

 

 見遣る葉山ユノ。その視線を感じ取った柏島歓喜は、途端に“自前”のソレが一気に縮み上がる感覚を覚えていった。

 

 ……堪ったもんじゃない。こんな真っ二つに……。

 最強の超人として名が知れ渡る彼女の力は、なにもその拳や脚だけではないという証明でもあったのだ——

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