シャンフロとか   作:ふゆみ

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浄鍵

 

 

 夜を彩る摩天楼の光彩は、彼女にとって懐かしさと違和感を同時に想起させる。

 この夢幻のような都市の最も高い場所―――ケイオースタワーのてっぺんから見下ろす夜景は、見覚えがあると同時に見覚えの無い、不思議な感慨を覚えるものだった。

 

「スタジアムはタワーの東側だったんですけどねぇ。まあ、地下鉄まで再現してたら、"ブロックごとのシャッフルが煩雑極まるだろう"し、仕方ないのか」

 

 どん、どどん。

 少女の呟きは、遠くのビルの陰から響き渡る、都会には相応しからぬ爆発の音に紛れて消えていく。

 まあ、"この街ではいつもの事"だ。

 

「ああいや、ヒーローとしては、地下に埋まる人がいなくていい、と思わなきゃ。あはは」

 

 タワーを彩るいくつもの回転灯の光が、剥き出しの支柱の縁に腰掛けている少女を照らし出す。

 そこは地上から666メートルの天空。少女の足元は何の遮るものもない宙空であり、眼下に広がる風景は、高所恐怖症ならずとも震え上がるような縮尺だった。

 

「今度は"おじさま"かな? ふふ。そうだといいな」

 

 が、少女はまったく構うことなく、その小さな足がギリギリ載るかどうかという支柱の上にひょいと立ち上がる。

 Japanの女学生が着るユニフォーム……セーラーではなくブレザースタイルをもう少し薄手にして体に貼り付けたようなヒラヒラとした格好だが、その極端に丈の短いプリーツスカートは、どれほど風に煽られようとその使命を全うし、中身を見せる事はなかった。

 

「さ、お仕事お仕事、と。レスキューヒーロー『ロックピッカー』、故郷に錦を飾りましょうか。もう何回目かは覚えてないですけど」

 

 緑色に光る手を何も無い目前の空間にかざし、トン、と軽い足取りで地上600メートルの空中に躍り出た少女は、『そこに開いていた扉に滑り込んで』忽然とその場から姿を消し―――次の瞬間には、攻撃態勢に移っていた。

 

「そいっ。飛び蹴りっ」

「ぬっ!?」

 

 "突然空中から現れた少女"の蹴りを太い腕でブロックし、そこかしこにランドリーの全自動洗濯だけでは取りきれないシミの残った白衣が翻る。

 

「うーん、ヤブ医者のおじさんですか。ハズレー」

「く、鍵開けの嬢ちゃんか! ちょうどいい、手伝ってくれ!」

「はいはい。救助ですかー……―――」

 

 少女の蹴りを受け止めたのは、手に携帯電話を持った、くたびれた白衣の男―――Dr.サンダルフォンという"同僚”だ。彼女の知るものより少し若返ってはいるが、多少の時空の歪みなんて、あのろくでなし(ギャラクセウス)に関わっていれば日常茶飯事だった。

 

 ましてや、このケイオースシティ(故郷のコピー)では。

 そう、巡りあうはずのなかった誰かと、再会する事も。

 

「―――……」

 

 このヤブ医者は、まだしも善人である。自ら爆発を起こす事はするまい。

 ならば、爆発を起こした者は別にいる。

 

「おい、嬢ちゃん?」

「あー。ごめんなさい、ドクター」

 

 横の道路で炎上していたバイクだか車だかが、一際激しく爆発する。その炎の暗幕の奥に揺らめくのは―――かつて見た、大きな大きな黒鉄の背中。

 

「私は、"鍵"を"開け"てあげなきゃ」

 

 おい!? とうろたえる闇医者の声を無視して、少女は無造作に爆発に近寄っていく。

 ぶおん、と炎のカーテンの中から振り抜かれた鉄の腕を、なかったかのように通り抜けながら。

 

「お久しぶりです、"おじさま"。とりあえずお近付きのしるしです。どうぞ」

 

 かざされた緑色の手―――"浄めの鍵"が、炎の中から現れた漆黒の鎧―――"呪われた牢獄"に触れて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-とある攻略記事より-

 

 変則的なトライアングル・トリニティが先の実装で、ベーシックなタッグマッチが今回のアップデート、というのを不思議に思ったゲーマーも多い事だろう。

 それもなるほど、新実装のキャラクターとの調整に手間取っていたのか、と納得するものだった。しかも、GH:C初の"有料DLCキャラクター"だ。

 

 しかし……うん、攻略記事としてあるまじき事ではあるのだが、このキャラクターについては、語る事自体が野暮のように思えてしまうのだ。なので、多くは語らず、注意点に終始しておこうと思う。

 

 まず一つ。今回の新キャラクターは、原作のギャラクシアン・コミックには欠片も存在しない、ゲームオリジナルキャラクターだ。

 二つ。有料コンテンツではあるが、他のキャラクターより性能がいい、というわけではない。いや、はっきりと弱いと言える。最大限好意的な評価を下したとして、テクニカルで扱いづらい、という表現に落ち着くだろう。敵やNPCとしては出現するので、課金衣装のようなものであると考えてほしい。

 三つ。このキャラクターが実装された経緯を察する事が出来る熱心なユーザーならともかく、とりあえずDLCは全部揃えておく、などでこのキャラを触る方々は、まずこの動画を見てほしい。

 

 https://ncode.syosetu.com/n6169dz/177/

 

 

 以上である。

 なお、全く関係のない話ではあるが、筆者も所属するクラン『栗きんとんちゃん尊い同盟』は随時隊員を募集中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・GH:Cオリジナルキャラクター『ロックピッカー』

 

 ブロンドの髪をなびかせたティーンの少女。

 手をかざすだけでありとあらゆる鍵を開ける能力、『浄鍵』を持つ。

 その力は、レトロ極まる南京錠から最新技術の電子錠まで苦もなく開き、果ては錠前などない完全に密閉された空間に『鍵を開けて』通り道を作ったり、地球全土を脱出不可能な密室と捉え、"鍵を開けて"外に出た後、外からまた"鍵を開けて"自在な場所に入り込む事で転移する、なんてことすら可能とする。

 なんとなれば稀代の大怪盗ヴィランともなれたであろうその能力の持ち主はしかし、人々を守るヒーローとなった。その能力は、災害で脱出困難となった人々を救出する事などに活かされている。

 

 それは彼女の原風景。"牢獄"を背負いながら、幼い自分を守ってくれた"おじさま"への憧れ。

 

 

 好きなものは栗きんとん味のアイスクリーム。嫌いなものはクマのぬいぐるみと流れ星。

 

 

 ―――其は呪われた牢獄すら解き放つ浄めの鍵。

 

 

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