シャンフロとか   作:ふゆみ

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リベンジャーズ/アンリミテッド・ウォー

 

 

 

『リベンジャーズ、全滅。』

 

映画史上最大の衝撃作!

ギャラクシア・レーベルが贈る全世界No.1シリーズの最新作がついに始動!

 

 

 

 

 

 

"ライト・キューブ"

 

"ダーク・キューブ"

 

"ニュートラル・キューブ"

 

"ロウ・キューブ"

 

"ケイオース・キューブ"

 

"ネイチャー・キューブ"

 

 

【アンリミテッド・キューブ】と呼ばれる6つの秘宝を手にした者は、不可能などない無限のパワーを手に入れると言われる―――。

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「この設定ケイオース・キューブからでっち上げただろ……」

「映画は静かに見ようよサンラク君」

「リアル映画館ならともかく、VR上映ならツッコミまくりながら見るもんだろ。こないだ見た『シャーコブラ』とか3分ごとにツッコまないと発狂しそうだったぞ」

「なにサンラクお前クソゲーだけじゃなくてクソ映画も主食なの?」

「よくわからん罰ゲームで見せられたんだよ……くっそまたムカついてきた雑ピめ明日は英語ポエム朗読の刑だ……」

「わたしC級サメ映画はちょっと……絶対見ないだろうから参考までに聞くけどどんな映画?」

「エジプトっぽいヘビのエラの広がってるところがサメになって毒牙で噛みついてきたかと思ったら、最後には戦闘ヘリと合体しだす映画」

「コブラでダブルミーニングにしたつもり!?」

「……ほんの少しだけ怖いもの見たさで見たいかもしれない……5分でギブアップしそうだけど」

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「くうっ……!」

「何というパワーだ……!」

 

【ゴールドエッジ】、【シルバージャンパー】、【ミーティアス】……。

全能存在ギャラクセウスの元に正義を体現したヒーロー達が、圧倒的な力の前に倒れ伏す。

 

「■■■■■■■■――――――――!!!!」

 

 ゴリラを三回りほど肥大化させて、ところどころを蛍光色に発光させ、肩や頭頂部を禍々しくいからせたようなエイリアンは、口を大きく……その頭よりも大きく開いて、深海魚のようなねじくれて鋭く尖った牙が並ぶ口腔内をむき出しにすると、字では到底表せない、空間そのものを揺らすような、ただただ原始的な咆哮を発した。

 

「【ゼノセルグス】……あの災害が地球に流れ着くとは……!」

「とにかく都市部から離さなければ! 仕留めきろうとすれば、こちらの攻撃でも被害が出てしまうぞ!」

「だがどうする? アレを運べるようなパワーはこちらには……」

 

 

 

「お任せでごわすぅぅぅ!!」

「「「!?!?」」」

 

 

 

 まっすぐ体を伸ばした小太りの人間の体が重力を無視して地面と平行に直進し、【ゼノセルグス】の脇腹に真横に突き刺さってたたらを踏ませた後、くるくると三回転してぴたりと着地を決めた。

 

「フン! 見たか『ハイパー百貫頭突き』!」

「リキシオン! 君か!」

 

 力士にして忍者にして錬金術師……存在自体がバグのようなヒーロー【リキシオン・コーガ・パラケルスス】が、ドゥルンと腹の肉を叩いて揺らし、塩を撒いた。

 

「各々がた! 我が『サイバー漢方』パワーをフルドライブさせて彼奴を街の外まで押し出し申す! 全てのエネルギーを使い果たします故、とどめをお頼みしますぞ!」

 

 リキシオンが90度真上まで上げた足をドンと振り下ろして四股を踏むと、その筋肉と脂肪で限界まで膨れ上がった肉体が黄金に輝き始め、1秒間に16連打の突っ張りを開始した!

 

「どすこぉぉぉぉぉぉい!!!」

「■■■■■■■■――――――――!!??」

 

 その圧倒的パワーの回転に、ゼノセルグスの巨体はなすすべなく突き出されていく!

 

「よし! ここまで来れば! はああああ!! 【ミーティア・ストライク】!!」

「【ゴルディオン・ヘッジホッグ】!!」

「【シルバー・キック】!!」

 

 そうして街の郊外まで押し出された【ゼノセルグス】に、ヒーロー達の超必殺技が炸裂し、宇宙ゴリラは大爆発の中に消えた。

 

「何とかなったか……って、リキシオン何してるんだ……?」

「エネルギーチャージの為のコズミックちゃんこ鍋を作っておりもうす。皆も食べなさるか?」

「……いただこうかな」

「うまいんだよなこのジャパニーズ・ポトフ」

 

 一つの戦いを終えたヒーロー達に、休息の時が訪れる……。

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「よくこんなシュールな絵面にOK通ったな……」

「緊迫感のあるシーンが多いから、こういうのも必要なんだってさ」

「アメコミ、リキシオンなら何でも許されるって思ってるところあるよね」

「野良でリキシオンに当たると、マジで笑わせてくるのを戦法に組み込んでくる奴がいるからな……いきなり『大相撲スターシリーズ』とかフリップ持っててリアルの相撲取りの細かすぎるモノマネ始めたやつは芸人極振りだったが」

「なにそれ超見たいんだけど」

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「なに!? 『ケイオース・キューブ』が奪われたじゃと!?」

「そーだよー! 『妖精郷』に安置されてた『ネイチャー・キューブ』も奪われちゃったの! それを追っかけてたら、ちょうどそっちが襲われるとこも見ちゃったのよー!」

 

 腰に二本の刀を差した袴姿の老人に、手のひらサイズの妖精がくるくると複雑に回転しながらまとわりつく。

 

「狙いは『アンリミテッド・キューブ』か……『ケイオース・キューブ』を管理していた『シルバージャンパー』に連絡をつけねばならんの」

「実行犯は消されちゃったみたい! ヒトの消し炭だけが残ってて残滓が途切れちゃって追っかけられないんだよー! ランゾーじーちゃん助けてー!」

「……見た目は夢の国なのに意外とエゲツないの、お主」

 

 現代に生きるサムライ『乱蔵』は、三回転半しながら己の全身を飛び回る妖精『ティンクル・ピクシー』の少し人間から外れた倫理観に一筋汗を垂らした。

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「ティンクル・ピクシーめっちゃヌルヌル動くな……」

「この部分のCGにもユートピア社の技術が入ってるとか何とか……」

「ガチじゃん。どんだけ羽虫好きが幅利かせてんの」

「シリーズ通して造形に力入ってたからねぇ……伝統なんでしょ」

「あんな中にワイヤー入ってそうな鋭角の魔女っ子スカートでくるっくる回転してて中身が全く見えないのも芸術点高いわ」

「お米の国だからかその辺厳しいよな……『ロックピッカー』のミニスカブレザーも、ゲームでは絶対見えないし」

「おやおやぁ? サンラクくんもそういうのキョーミあるんだぁ? なに? 地面に張り付いて嘗め回すように見たりしたの?」

どこぞのシモネタニア帝国(ディープスローター)みたいな事言ってんじゃねえよ……通常技を上空テレポートからの飛び蹴りにした運営に言え!」

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「クソテレビ! てめえか!」

「落ち着きなさいな、ヤブ医者さま ^^) _旦~~」

 

 その女性の、そっくりそのまま機械のモニターと化している顔の部分に、電光掲示板よろしく大きく顔文字が表示された。

 

「わたくしも、さすがに地球が爆発してしまっては困りますもの( ̄ヘ ̄)」

「黒幕の見当がついてるってえのか?」

「ええ、もちろん( *´艸`) この地球上でわたくしに見れないところなどございませんわ(´艸`*)」

「もったいつけねえでさっさと言え! ウゼエ新機能つけやがって!」

「あん。相変わらずせっかちなヤブだこと('3')」

 

 顔モニターに次々に切り替わる顔文字を表示させながら、狂人【Ms.プレイ.ディスプレイ】はくねくねとしなを作りながら、宿敵たるくたびれた白衣を翻す闇医者【Dr.サンダルフォン】に向かって合成音声を響かせた。

 

「【爆弾魔(ボマー)】と【商人(トレーダー)】ですわ(^ー^)」

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「……なあペンシルゴン、あれ……」

「ああ、JGEの時のキミの怪人面白フェイスちょっと面白かったから演出に進言してみた」

「お前……お前……!」

「いいじゃん別に。公には何にも擦ってないんだしさ。別にレイちゃんと仲良く並んでラーメン啜ってる隠し撮り画像を拡散したわけじゃあるまいし」

「おいこの場に関係ない人質を先出しするのはやめろマジで」

「えっなにこのクソゲー脳にもそういう情緒あったの? ちょっとその辺詳しく」

「「お前が言うなこの総受け野郎」」

「なにその息ぴったりのユニゾン!?」

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「おじさま?」

「フン。このユニバースは俺の舞台。この空は俺のものだ(・・・・・・・・・)。真っ暗なワンルームで目覚まし時計分解(バラ)してるギークなんぞの好きにさせるのは気に食わんな」

「はい。じゃあ行きましょ、おじさま」

 

 ギャラクセウス直々に力を封じた【呪われた監獄】に付き従うのは、ギャラクセウスの力及ばぬ混沌存在カオスに取り込まれたケイオースシティという『密室』から、『鍵を開けて』逃れた少女。

 未曽有の危機に、可能性ゼロを覆すイレギュラー達が立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「擦ってくるじゃん」

「GH:Cの売り上げが青天井で伸びてて、アメコミ界隈激震らしいからね」

「海外だとシャンフロ出来ないから、GH:Cがポストシャンフロみたいになってるって聞いたけど」

「そうそう、もう海外勢はGH:C一色だよ。『名前隠し』を意地でも探し出したのも、『カースド・プリズン』の色がほのかにカボチャ色なのも、『ロックピッカー』の参戦も、大体その忖度らしいし」

「シャンフロおま国問題まだ燃えてんのか……」

「BB&ID動画で再炎上させた有名配信者様がぬかしおる」

「あの動画の後、海外から日本に移住してくる人が一割増しになったらしいよ」

「ヒューゥ! 日本の救世主様ァ!」

「くっそマジでアレ保存してミラーしやがった奴誰だ絶対許さねえ……!」

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「クフフ。これが『ケイオース・キューブ』……かの【カオス】の領域、『ケイオースシティ』に存在すると言われた『アンリミテッド・キューブ』ですか」

「ああ。高くついたよ。ウチの優秀なエージェントを何人か使い潰してしまった」

 

 空間投影モニターを通して語り合っているのは、二人の男女。

 映画からそのまま飛び出してきたような古めかしい燕尾服をさらりと着こなしている長身の女性と、シワ一つない最高級のオーダースーツに身を包み顔に自信を漲らせている髭面の男。

 

「いやぁ、よく持ち出せましたねぇ。かの【シルバージャンパー】が持ち帰っていたのでしょう?」

「ヒーロー様は金に屈さずとも、保管している施設の職員はそうではない、という事だ」

「それはそれは。ずいぶんと骨を折ったでしょう。その労にはしっかり報いねばなりませんねぇ」

「っ!?」

 

 どん、どどん、と、空中投影モニターを通して、男の側に断続的な爆発音が響く。

 

「な、なんだ!? 何が起こった!?」

「クフフフ。今までありがとう、武器商人くん。代金はすでに届けてありますので」

「きっ、貴様ァっ! クロックファイアァァァァ!!!」

「なに、お釣りはいりません。どうぞ遠慮なさらずすべて持っていってください」

 

 男装の麗人【クロックファイア】がパチン、と指を鳴らすと、空中投影モニターの先でボン! と炎の華が咲き、髭の男の焼け焦げた四肢が爆発四散した様子を写していたモニターが掻き消える。

 大陸における紛争の8割を牛耳り、彼に手に入らない兵器はないと謳われた死の商人【ショーウィンドウ】の、あっけない最期だった。

 

「くくっ……! はははっ……!! あーっはっはっはっは!!!」

 

 呵呵大笑。麗人の左の眼に埋め込まれている翠の宝石が妖しく光る。

 

「さあこれよりは、このクロックファイア、最期にして最大のショーにてございます。静謐なるこの宇宙に、我が最高傑作を美事打ち上げてみせましょう」

 

 爆弾魔は嗤う。ただただ自らの浪漫を夢見て。

 

「それでは『地球爆弾計画』の幕を開きましょう。地球にお住まいの皆々様におかれましては、どうぞそのまま特等席で最期までご覧くださいませ」

 

 手の中で弄んでいる6つの【アンリミテッド・キューブ】の力で、地球を爆弾にして宇宙を爆発させるために。

 

 

 

 

 

 

 ―――To be "Revengers:Finalgame".

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「いやぁー? 最初にメールが来たときは悪戯だと思ってたんだけどねぇー? 監督自ら極秘来日して対面でスカウトされたらさすがの私もねぇー? 考えないでもなかったっていうかぁー? はー超新星ハリウッド・スター『名前隠し(ノーネーム)』様に酒の一つも注げない男どもはこれだからぁー」

「なぁカッツォ、あの【クロックファイア】、全部本人のアドリブってマジ?」

「さすがにデマだってさ。実際は『ハイドロハンズ』の原作者がコレに合わせて脚本当て書きしたのをさらに全部直させたとか……」

「デマの万倍非道いじゃねえか畜生かよ」

「原作者もノリノリだったらしいよ。『やっぱリアルは違う!』とか叫んだらしい」

「ネジぶっ飛んだヴィランで有名な原作にリアルヴィラン度で感心されるとかさすが超新星()ですなぁ」

「君たち素直に祝福できないのかなぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに『顔隠し(ノーフェイス)』の連絡先結構しつこく聞かれたから、次回作にキミも呼ばれるかもね。やったぜハリウッドデビューだ!」

「えっ」

「鎧の中の人だから顔も出ないし万々歳じゃん。おめでとサンラク」

 

 

 

 

 

 

「…………嘘でしょ?」

 

 

 


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