異世界はBTとともに   作:ユウキ003

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楽しんでいただければ幸いです。

それと、読者様からの感想にて、この作品のR18な描写、つまりHなシーンの描写がみたいとの事でした。実は自分は、他の作品においてHなシーンのみを別作品として投稿する、と言うのをやっていたので、同じようにこの作品内部でのR18シーンを別作品として投稿する予定です。ただ、まだジャックとエルゼ達が正式に交際していないので、アニメ版の終盤でもある告白後のストーリーを描き終えてからようやくR18な方を描けると思うので、かなり時間がかかると思います。


第11話 戦場を知る者

ミスミドにて、ミスミド王と戦った俺は改めて強くなる事への必要性を感じていた。その鍛錬の傍らで俺はユミナとリンゼに銃の扱い方を教えたりしていた。更に、セシルとラピスが実は王国の諜報機関のメンバーである事も知ってしまう。長期の依頼を終えてベルファストに戻った俺達は、数日後にスライム関係の依頼を受けるのだった。

 

 

スライム城での仕事も終わり、屋敷に戻ってきた俺達。今の俺の懐はかなり温かい。ちなみに、俺はエルド村での黒竜討伐の功績によってギルドからドラゴンスレイヤーの称号を貰っている。正直、BTが居たからこそ楽勝だったので何とも微妙な心境だ。

 

と、それは置いておいて。

「それじゃあ、しばらく仕事は休みにするか」

「賛成。あたしも少し休みたいわ~」

屋敷のリビングで話をしている俺達。そして俺の言葉にエルゼが同意する。

「なら、2~3日仕事は休みにするって事で」

俺の提案に皆が頷く。さて……。

 

「って事で、俺は少し出かけてくる」

「あら?どちらへ?」

「ちょっと王都の中をブラついてくる。王都に屋敷を持ったとは言え、ミスミドへ行ったりしてたから王都の様子はまだあまり覚えて無いんだ。何か新しい発見を求めて、って訳でも無いが改めて王都をブラつこうと思う。アルファに留守番を頼んであるから、何かあったらアルファから俺にテレパシーを飛ばして貰ってくれ。んじゃ」

 

と言って俺は1人で屋敷を出た。

 

ブラつく、と言って居たがあれはほぼ嘘だ。目的はある。娼館だ。正直、行くべきではないかもしれないが俺も男だ。それに、自分で処理するたってゴミを処分するのは俺じゃないんだ。セシルやラピス達に見つかれば何を言われることか。

 

って事で、俺は娼館に行くことにした。

 

~~~~

ジャックが屋敷を出て行った直後。

「な~んか怪しいわね~」

エルゼが他の3人の前で開口一番にそんな事を呟いている。しかし他の3人も、どこかジャックの様子に違和感を覚えて居た。

「確かに。散策と言っていたでござるが、何やら拙者たちに隠し事をしているようでござった」

「私達に隠し事って、何でしょう?男性のジャックさんが女性の私達に隠し事って?」

と、ユミナが口にした瞬間、リンゼはハッとなった。

「まさか、Hなお店に行く、とか?」

「「「あっ!!??」」」

リンゼの発言に、3人は声を上げて納得した。そして、すぐ傍で寝ているアルファを掴み上げた。

 

『のわっ!?な、何事ですか!?』

「アルファっ!今すぐジャックの居場所を言いなさいっ!」

『み、皆様、どうされたのですか!?怖いのですが……』

「「「「良いからっ!!」」」」

 

『は、はい』

 

怒った女は鬼よりも怖い、と言わんばかりの気迫に白帝であるはずのアルファは怯えながら頷く事しか出来なかったのだった。

 

 

~~~~

そして、アルファを使ってジャックに追いついた4人はそのままジャックの尾行をはじめたのだが……。

『彼奴ら、何してるんだ?』

それはばっちりジャックにバレていた。

 

『おいアルファ。なんでユミナ達が俺を尾行してるんだ?』

『そ、それが、我が主が娼館にでも行くのではと考えたようでして……』 

『ハァ。まさかバレてたのか』

『え!?わ、我が主、娼館に行かれるつもりだったのですか!?』

すると何やらアルファが戸惑った様子だ。

 

『当たり前だろ?俺だって男だぞ?溜まるモンもあるさ。かといって、彼女達に手を出せとでも?ユミナはまだ若すぎるし、以前に覚悟を聞いた3人にはまだ答えを貰っていない。そんな状況で肉体関係になれると思うか?だったら娼館に行くしか無いだろ?』

『そ、そう言う物なのですか?』

と、アルファの戸惑った声が聞こえる。

 

『まぁ良い。ここは……』

 

俺は歩きながら手早く視線を巡らせる。そして見つけた。建物同士の間にある細い路地へと入っていった。そして入ってすぐの所にあった木箱の陰に身を潜め、パイロットスーツを召喚して光学迷彩、クロークを発動する。そして数秒すると……。

 

「確かこっちに……!」

足音がして木箱の脇をリンゼ達が通り過ぎていく。

「あ、あれ?いない?」

しかし俺を見失ったのか足を止めてキョロキョロと周りを見回している。ハァ。

 

俺は内心ため息をつきながら、陰から出てクロークを解除する。

「おら、お前等何してるんだ?」

「「「「えっ!?」」」」

俺が後ろから声を掛ければ、4人とも戸惑った様子で振り返る。

 

「あ、あれジャック?ど、どうしたの~?」

「どうしたのはこっちの台詞だ。揃いも揃って、なんで俺を尾行してる?」

そうエルゼの言葉に問い返すと、4人とも冷や汗を浮かべている。そしてそのままそっぽを向いてしまう。

 

「ハァ。……もしかして、俺が娼館にでも行くと思ってたのか?」

「ふぇっ!?え、いや、その、あの、えっと……」

俺の言葉にリンゼが顔を赤くして戸惑っている。ったく。

 

「まぁ良いさ。実際その通りだからな」

「「「「………えぇっ!?」」」」

俺の言葉に4人が顔を真っ赤にする。

 

「じゃ、ジャック殿っ!?まさか本当に娼館に行こうとしていたのでござるか!?」

まるで、ありえないと言いたげな視線で俺を見つめる八重。

「あのなぁ。俺だって男だし、そもそも人間なんだぞ?そう言う欲求というか、性欲はあるんだよ」

そう言って、パイロットスーツを解除しポリポリと頭を掻く。すると……。

 

「で、でも……」

リンゼが、何故か今にも泣きそうな表情で俺を見上げている。

 

「ジャックさんが、他の女の人と、そんな事するのは、嫌、です」

 

そのリンゼの言葉に、俺は……。

 

「ハァ。……分かったよ。もう帰る」

そう言って俺は踵を返した。

「え?」

「気分じゃ無くなったって事だよ。適当にブラついてから帰るから」

「あっ!ちょっとジャックっ!」

 

俺は聞こえる彼女達の声を無視して歩き出した。

 

ったく。娼館に行きそびれたのは痛いが、リンゼにあんな顔されちゃぁなぁ。ハァ、自分でどうにかするかぁ。

 

なんて考えながら歩いていると……。

「おらっ、こっちに来い……っ!」

「ん?」

 

近くの路地裏から声が聞こえてきた。中をのぞき込むと、奥の方でガラの悪そうな男が2人、子供を路地の奥に連れ込んでいた。こいつは、不味いな。

そう考えた俺は路地に入り、サプレッサー装備のP2016を取り出す。

 

そのまま足音を立てずに進んでいくと、声が聞こえた。どうやらあの2人と子供も、どちらもスリのようだ。だが、子供が自分達のシマでスリをしている事と、そのせいで警邏が厳しくなったことに怒っているようだ。そして男がナイフを取り出した所で。

 

俺は飛び出した。

 

『パスパスパスパスッ!!』

「ぎゃっ!?」

「ぐあぁっ!?」

放たれた銃弾が男達の両肩を撃ち抜いた。俺としては別に殺しても良かったが、この前リオンに釘を刺されたのもあるし、王都で殺人事件は不味いか?と思って、無力化に留めた。

 

そして俺は呻く男達を殴って気絶させると、少し前に覚えた無属性魔法、『ストレージ』の中からお手製の『ハンドカフ』を取り出して男達を拘束する。

 

「これで良いか。おい、大丈夫か坊主」

俺は男達を拘束すると、傍で呆けていた子供に目を向けた。見た目はボロボロ。如何にもスラム育ちの子供と言った感じだ。

「あ、あの。助けて、くれたの?」

「勘違いするな。こいつらを倒したのは、今にもお前を殺しそうだったからだ。それに、お前もスリなんだろ?」

「うっ、そ、それ、は……」

俺の言葉に言い淀む子供。やっぱりか。

 

「だったらお前もこいつら同様、憲兵にでも突出すだけで……」

『グゥゥゥゥゥゥゥッ』

と、俺の言葉を遮ったのは、目の前の子供の腹の虫だった。

「……お前、そんなに飯食ってないのか?」

盛大な腹の音に戸惑いそんなことを聞いてしまう。

 

「……3日も。その間は、ずっと水だけ」

「はぁっ!?3日もか!?」

おいおい、下手したらこいつ、あと数日で餓死するぞ。

 

 

その時、俺の中で前世の記憶が蘇る。

 

フロンティアは、戦争の真っ只中だった。両親と死別した子供なんて、珍しくも無い。だから、大半の子供達はスリになるかゴミを漁るか、或いは、変態趣味のクソ野郎に体を売るなどして、汚い金とくさい飯で命を食いつないでいた。そんな子供達を、俺はフロンティアで見てきた。

 

「……ほら、来い」

「え?」

「3日も飯を食ってないんだろ?憲兵に突き出した後、餓死されましたじゃ俺も寝覚めが悪い。何か奢ってやるから」

「ホントに!?ありがとうっ!」

 

子供は、目を輝かせ嬉しそうに立ち上がり俺の傍に駆け寄ってくる。が、その時こいつが目深に被っていた帽子が落ちてしまう。そして……。

『フワッ』

一体どれだけ帽子に押し込んでいたんだ、と思う程の髪が広がる。しかしその顔立ちに、体つきをよく見ると……。

 

「お、お前、女だったのか」

少年だと思って居たスリの子供は少女だった。

 

 

その後、俺は少女、『レネ』に治癒魔法を掛けた後、顔を濡れたタオルで拭いてやった。そして屋台で買った串焼きを食わせてやる。

 

そして適当な公園のベンチでレネから話を聞くことが出来た。今の彼女に定住場所は無く、両親も既に居ない。母親はレネを生んだ直後に他界。1人親で冒険者だった父も、1年前に魔獣の討伐に行ったきり戻ってきていないと言う。

その後、出会った旅のばあさんからスリの技術を学び、今日までスリで生きてきたと言う。

 

そんなレネの姿に、かつて俺はフロンティアで経験した『地獄』を思いだしていた。

街角に立ち、必死に自分を身売りする子供達。どれだけ汚れようと、一握りの食料を求めてゴミを漁る子供達。

 

戦争という悪魔が、子供達を地獄へたたき落とした。

 

彼奴らの目に光なんて物は無い。夢なんて物は捨て去り、生きる為に恥もプライドも、全てを捨てて地べたを這いつくばりながらも必死に藻掻く。全ては、生きる為に。

 

その地獄が、俺の頭の中でフラッシュバックする。

 

あの時の俺は、地位も権力も金も、何も無かった。だから救えなかったし、子供達に手を差し伸べてやる余裕も無かった。でも、今なら違う。

 

余裕もある。金もある。権力を持つ人達と繋がりがある。だから……。

 

「レネ。一つ提案があるが、聞くか?」

「え?何?」

「実はな、これでも俺は結構大きな家に住んでる。だがそこを管理する人間は少なくてな。そこでレネ。お前を使用人見習いとして雇っても良い」

「え?ほ、ホントに?」

 

「もちろんちゃんとした、適正価格の給金を出す。衣食住の面倒も見る。ただし、条件として今後一切犯罪、スリに手を染めない事。俺や上司の言う事をちゃんと聞いて真面目に働く事。これが条件だ。どうする?」

「う、うんっ!守るっ!約束守るよっ!だから、私に仕事をちょうだいっ!」

 

「よし。決まりだ」

 

 

と言う事で俺はレネを連れて屋敷に戻った。ライムに事情を話してから、とりあえずセシルとラピスに頼んでレネを風呂に入れて貰う。さて、後は……。

「ライム。少し王城に行ってくる」

「分かりました。しかし、何故?」

「子供と言ってもレネは元スリ、犯罪者だ。念のため報告と相談をな」

「分かりました」

 

と言う事で、俺は王城を訪ねた。幸い、アポが無くても俺の訪問を知るとすぐに国王陛下、ユエル王妃、それと運良く王城を訪れていた公爵殿下と話が出来た。

 

レネが罪を犯したことには間違い無いが、その境遇などから情状酌量の余地がある、と言う事で今回は見逃して貰えた。しかし、陛下は浮浪児が多い事を気にしていた。そして部下である諜報機関エスピオンのメンバーを呼び出すと、金の流れを洗わせるようだ。

 

どうやら誰かが横領している可能性があるようだ。

「すまないなジャック殿。君の話がなければ、私は部下の悪行を見逃していたやもしれぬ」

「いえ。こちらとしても悪事が暴けたのなら幸いです。……それより、セベク男爵、でしたか?孤児院の基金管理を担当しているのは」

「あぁ、そうだが?」

 

「もし、王国で動きにくい自体になったら言って下さい。『暗殺』もある程度は自信があるので」

俺の言葉に、陛下たち3人は少しばかり眉をひそめた。

 

「君の申し出はありがたい。が、ジャック殿の手を煩わせる程の事では無い。横領はれっきとした罪だ。証拠さえあれば如何に貴族と言えど裁く事は出来る」

「……そうですか」

と、俺は陛下の言葉に頷く。

 

「相変わらず、正義感の強い男だな、君は」

「ふっ、そんなんじゃありませんよ、俺は。ただ、誰かの為に使われるはずだった金を横領して、自分の欲望を満たそうとする腐った連中が、俺は嫌いなだけですよ」

俺は公爵殿下の話にそう返す。

 

「ともあれ、俺はこれで失礼します。何か俺に出来る事があれば、連絡を下さい。戦う事くらいしか、取り柄の無い男ですが」

「あぁ。ありがとうジャック殿」

 

とりあえず、レネの処遇についてはこれでOKだろう。そして屋敷に戻ると、子供サイズのメイド服を着てすっかり綺麗になったレネがセシルやラピス、それにユミナ達に囲まれていた。

 

「あら、お帰りなさいジャックさん」

ユミナが俺に気づいて振り返る。

「あっ、ジャック兄ちゃんどこ行ってたの?」

「ん?ちょっと王宮にな。レネの事は正式にウチで預かる事になった。陛下からの許可も貰ってきた」

 

「え、えぇっ!?陛下って、王様っ!?ジャック兄ちゃん王様とも知り合いだったの!?」

「まぁな。って言うか、そこにいるユミナに至ってはこの国の王女だぞ?」

「え、えぇぇぇぇっ!?」

隣に居るユミナが王女だという事に驚いているレネ。

 

とまぁ、そんな事もありつつレネはウチで働く事になった。で、その後。俺はユミナ達とリビングでお茶をしながら話をしていた。

「それにしても驚いたわね~。まさかジャックが私達と別れた後に子供を拾ってくるなんて」

「スリの2人組に絡まれて危うく殺され掛かってたからな。それを助けて、身の上を聞いてしまうとな。……似たような子供達を、戦場の片隅で見てきた。……戦火で焼け野原になった町で、涙ながらに必死に瓦礫を退かし、家族を探す子供たち。泣きじゃくる妹の手を、自分も泣きながら引く兄貴。……そう言う子供達を、俺は何度も戦場で見てきた」

 

IMCの横暴なやり方で蹂躙された小さな村や町など数多く見てきた。そこで生き残ってしまった子供達も。

 

ふと視線を巡らせれば、皆暗い表情をしていた。些か、こいつらには重すぎる話題だったか。

 

「すまない。空気を悪くしてしまったな。忘れてくれ」

そう言って俺は席を立った。が……。

 

「どちらへ?」

「少しレネの様子を見てくる」

声を掛けてくるユミナにそう答え、俺は部屋を後にした。

 

 

~~~~

リビングに残された4人は……。

「なんて言うか、ジャックって、ホントに凄い環境で生き残ってきたのね」

エルゼの言葉に他の3人は静かに頷く。

 

「きっと、私達の想像も付かないような、過酷な所で生きていたのかもしれませんね」

「だからこそ、ジャック殿はあれだけ強いのかもしれないでござるな」

リンゼと八重も、小さく呟く。

 

「でも、だからこそ今のジャックさんがあるのだと私は思います」

しかしふと呟かれたユミナの言葉に、3人はそちらを向く。

「ジャックさんは、自分を優しい人なんて思ってないかもしれません。それでもジャックさんは多くを守り、多くを助け。そして、そんなあの人に私は、いいえ。私達は恋をした」

そんなユミナの言葉に、他の3人は頬を赤くする。そんな3人を見つめながらユミナは……。

 

「恐らくまだ、皆さんの中ではジャックさんのあの時の問いかけに対する答えが出ていないのかもしれません。でも多分、皆さんの出す答えは決まっているのでは?と私は思います。急かす気はありませんが、答えを出すのは早い方が良いと思いますよ?」

 

そんな彼女の言葉に、3人は顔を真っ赤にして俯くだけだった。

 

 

レネの一件から数日後。俺はスゥとユミナ、アルファを伴ってゲートでミスミドの王都へと来ていた。スゥのたっての希望だったし、別にやる事も無かったので俺はそれを承諾しこうして連れてきたと言う訳だ。

 

で、町中を散策しているとオリガの妹のアルマと偶然遭遇。アルマにスゥを紹介し、彼女も加えた4人とアルファで町中を巡っていたのだが……。

 

「ん?あれは、オリガとリオンか?」

道中、俺は町中を並んで歩くリオンとオリガを見つけた。

「えっ!?お姉ちゃんっ!?」

「あれは、デート中でしょうか?」

驚くアルマとその隣で首をかしげているユミナ。

 

「追いかけないとっ!」

「面白そうじゃっ!妾も行くのじゃっ!」

するとアルマとスゥが駆け出す。

「あっ!ちょっとっ!2人ともっ!」

慌ててそれを追うユミナ。俺も『やれやれ』と言わんばかりに首を振ってから3人の後を追った。

 

その後は、俺がBTの集音機能で店内の2人の会話を拾って盗聴まがい(いや実際に盗聴か)をしたり。道中、お忍びで町中に来ていたミスミド王とばったり遭遇したり。

 

そんな事がありつつ、俺達はオリガとリオンとデートを尾行していた。アルマは『お姉ちゃんの将来が掛かってますから』と乗り気で、スゥは面白半分。ユミナも興味ありげと来た。俺としては他人の恋路なんてそこまで興味も無いから、適当に欠伸の一つでもしていたのだが……。

 

どうやらトラブル発生のようだ。リオンとオリガが立ち寄った公園で、質の悪そうなチンピラが屋台を壊し持ち主に暴行を加えはじめた。それを見過ごせないのは騎士らしいリオンだが、多勢に無勢に加えてアイツは今私服姿で帯剣していない。

 

ここは……。

 

『バッ!』

真っ先に俺はジャンプキットやアーマーを召喚し飛び出した。そして取り出したパルスブレードをチンピラの1人の肩に投げて突き刺した。

「ぐあぁっ!?」

「な、何だこいつっ!?」

 

驚くもう1人の懐に飛び込み、腹部に痛烈な一撃を見舞う。

「おごぇっ!?」

「こ、こいつっ!?」

そこに後ろから1人のチンピラがナイフを手に襲いかかるが、素人だな。俺はそれをステップで避け、がら空きの背中に肘鉄を打ち付けて倒し、顔を蹴って気絶させる。更に、男が持っていたナイフを拾い上げ、走り出す。そしてチンピラの腕や脚、肩などをすれ違い様に切り裂く。更にナイフを持って向かって来た連中の攻撃を受け流し、カウンターで斬り付ける。

 

「ひ、ひぃっ!?」

あっという間に数人が血を流しながら倒れ、最後の1人が逃げ出す。だが、それも俺が投げたチンピラのナイフが腿に突き刺さり倒れた。

 

周囲を見回すが、これで終わりだな。

「あ、あなたは?ジャック殿?何故ここに」

すると、そこにリオンが近づいてくる。オリガもだ。

 

「ん?おぉリオン。久しぶり、でも無いか。悪いな『デート中』に」

「えっ!?で、ででデートってそんなんじゃっ!?」

そう言って顔を赤くするリオン。

 

「で、ですがジャック殿はどうしてここに!?」

「あぁ。実はスゥの願いでな、ミスミドの王都に行きたいって言うからユミナとアルファも連れて来てたのさ。そしたら道中、たまたまアルマと遭遇してな」

と言うと、近くの林からユミナとスゥ、更にアルマが出てくる。っと、ミスミド王の姿が無いな?お忍びで来てるのがバレないように戻ったのか?

まぁ良い。

 

「で、4人とアルファで町中を回ってたら、たまたま2人を見かけてな。悪いとは思ったがちょっと色々見させて貰った」

「えぇっ!?と言う事は、その、我々の行動は……」

 

「すまん。アルマやスゥが興味津々だった事もあって、殆ど見てた」

「そ、そんな~~!」

俺の言葉に、羞恥心で顔を赤くしながらがっくりと肩を落とすリオン。するとちょうど、オリガの方にアルマやユミナ達が近づき何か話している。

 

……好都合か。

 

「リオン、少し良いか?」

「え?あ、はい」

俺が声を掛けると、がっくりと肩を落としていたリオンが俺の方に向き直る。

「リオン、お前。オリガの事が好きなんだろ?」

「うぇっ!?な、ななななっ!?ジャック殿突然何をっ!?」

「お前等のデートを見てりゃ分かる。……が、今の俺は別にお前等を茶化すつもりじゃない。ただ、『戦場を知る者』として、言っておきたい事がある」

 

「ッ!?」

俺の気配が変わった事を察してか、リオンは息を呑む。そして、俺は自分の経験を語った。

 

「俺と同じ部隊に配属された兵士がいた。俺は人々が自由で平和に暮らせる生活を守るために兵士になった。そいつは、女のために兵士になった。俺が育った場所じゃ、兵士でも無い限りそこそこ給料を稼げる仕事なんて無かった。まして、そいつには学が無かった。だから、愛する女のために金を稼ぐには、兵士になるしか無かった。そいつの女とは俺も少しだけ顔見知りでな。……将来を誓い合った仲だった。俺も仲間も、そいつらの事を本気で祝福してた。……戦争の真っ只中でも、女に飢えてる俺達でも。仲間の幸せを、本当に喜んでいた。……だが、そいつはある戦場で、命を落とした」

 

「ッ!?そ、そんな……」

「現実はそんなもんだ。望んだ通りになんて絶対進まない。……運が良かったのか悪かったのか、そいつの遺体を、回収する事が出来た。だが、それを引き取りにきた女は、アイツの死を受け入れられず、その骸に縋りながら大声で泣き続けた。何分も、何十分も。俺達が傍に居ようとお構いなしに。……そして数日後、遺書を残して女は首をつった」

「ッ!?」

 

「……知人だったからな、遺書の中身を、俺も読むことが出来た。そこには、アイツの居ないこんな世界で生きていたくない。だから死んで自分も彼の所に行く。……本当なら、アイツと貧しくても一緒に居たかった。そんな文章が遺書に綴られていた。……だがな、俺の知る戦場では、そんなこと日常茶飯事だ。……昨日一緒に飯を食った奴が死ぬ。数分前まで馬鹿話で大笑いしてた仲間が死ぬ。……戦争は人を地獄に墜とす。……それを俺は、戦場で学んできた」

 

「じゃ、ジャック殿」

「……まぁ、幸いこの辺りはまだ平和な方だ。ゴロツキが町で悪さしてるのなんざ、可愛いもんさ。……けどな」

俺はリオンの胸に、拳を突き付けた。

 

「リオン・ブリッツ。お前が国家や人々を守る騎士であると言う事は、万が一の際、真っ先に戦争へ行く人間だって事だ。そして今も、魔物や悪人の危機から誰かを守るために、下手をすれば死ぬかもしれない環境に身を置いている。……俺はお前を弱いと言ってる訳じゃない。だが、その腰に剣を下げ、騎士である限り。お前には戦いが。そして死がつきまとう」

「……」

リオンは黙って俺の話を聞いている。

 

「だからこそ、今のうちに彼女に想いを伝えておけ。死の間際、告白しておけば良かったなんて悔いが残らないように。……まぁ、お前が簡単に死ぬとは思ってないが」

「ジャック殿。…………ありがとうございます」

そう言ってリオンは俺の頭を下げた。

 

「ジャック殿のアドバイスのおかげで、決心が付きました」

「ふっ。気にするな。戦場を知る者としてちょっとアドバイスをしただけだ。……彼女を、幸せにしてやれよ。それが男の気概ってもんだろ?」

「はいっ!」

 

と、元気よく返事をするリオン。

「うっしっ。おら行ってこい色男っ!ガツンと告白してこいっ!」

そう言って俺はリオンの背中を叩いて送り出す。

 

そして、俺が見守る中でリオンはオリガに告白し、無事に2人は付き合う事になった。

 

しかし、そんな中で思う事が、俺にはあった。

 

「『彼女を幸せにしてやれ』、か」

 

こいつを、俺が言う資格はあるのだろうか。そして俺は右手を見つめる。そこにあるのは、血に濡れた右手だ。……もし、エルゼ達が俺の問いかけに答えを出したとき。

 

……その時、俺は彼女達を幸せにしてやれるのだろうか。

 

そんな疑問が、俺の中で膨らんでいくのだった。

 

     第11話 END

 




結構好き勝手にジャックの過去とか独自設定してますが、戦争真っ只中のフロンティアならジャックもこう言う経験あるんだろうな~とイメージしながら書いております。

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