異世界はBTとともに   作:ユウキ003

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楽しんでいただければ幸いです。意欲がブーストしてるので、最近はこればっかり書いてます。


第12話 イーシェンへ

俺はある日、娼館に行こうとするもエルゼ達に尾行されていた事からそれを辞めた。しかし直後、スリの少女、レネを保護した。かつてのフロンティアの子供にそれを重ねた俺はレネを家で使用人見習いとして雇う事にした。更に、俺は訪れて居たミスミドの王都でリオンとオリガに遭遇。俺は、かつての経験をリオンに聞かせアイツの告白を後押しするのだった。

 

 

あの後、スゥを公爵の家に送り届けた俺とユミナ、アルファはゲートで家に戻った。

「お帰りなさいませ、旦那様。早速ですが、旦那様にお客様です」

「客?俺にか?」

と言うと、応接間の扉が開いて人影が現れた。

 

「ッ、リーン。お前だったのか?」

客というのは、数日前にミスミドで知り合った妖精族の長、リーンだった。

「ジャックさん?こちらの方とお知り合いなのですか?」

「あぁ。ミスミドでパーティーがあった時、俺一度席を外しただろ?あの時に知り合ってな。彼女はリーン。妖精族の長だ」

「え?妖精族の方なのですか?それにしては羽が……」

 

確かにユミナの言うとおり、今のリーンの背中には、あの時あった羽が無い。

「あぁ。羽は光魔法で隠しているのよ。こっちの国では目立つからね」

と言うと、リーンの背部に、まるで浮かび上がるように透き通った羽が現れた。成程、光学迷彩の一種、俺の使えるクロークと似たような原理だろう。

 

「それで、何だってリーンが俺の家に?」

「実は、ジャック達が数ヶ月前に戦った水晶の魔物、と言うのが気になってね」

「何?」

 

水晶の魔物、と聞いて思い浮かぶのは旧王都で戦ったあのコオロギみたいな奴だ。

「実はでたのよ。ミスミドにも」

「ッ、それで、どうなったんだ?」

「その事について話しても良いけど、立ち話もなんでしょ?」

「あ、あぁ。そうだな」

 

確かに長ったらしい話になりそうだったし、立ち話も何なので俺達は応接間に入った。するとそこにはエルゼ、リンゼ、八重がいた。どうやら3人には自己紹介がすんでいるようだ。

 

「さて、では改めて。あなた達が数ヶ月前に旧王都で戦ったと言う水晶で出来た魔物。それの同類と思われる物がミスミドにも現れたの」

「それで、どういった経緯で現れたんだ?」

 

「私に情報が届いたのはあなた達がベルファストに戻る前日。レレスという小さな村から急使が来たの。何でも村の近くに、空間に亀裂が走っていたそうよ」

「空間に亀裂だと……!?」

 

それを聞いて、俺は一瞬、フロンティアで見た『フォールド・ウェポン』を思いだした。あれの心臓とも言うべき『アーク』の近くでは、不規則な時間移動が発生したり、果ては時間停止まで経験した事がある。俺は一瞬、嫌な予感を感じていた。

 

『BT、この世界でサージ・エネルギーを観測しているか?』

『いいえ。時間の亀裂に関連するサージ・エネルギーは今の所確認されていません』

『そうか』

 

まさか俺が転生した余波で、とは思いたく無いが……。

「最初、村の近くの森で子供達が亀裂を見つけたの。触れないのに、確実にそこにある亀裂をね。そして次第にそれが大きくなっている事に気づいた子供達は大人にそれを伝え、そして村長が王都に急使を出した。興味を引かれた私は、王国の戦士団一小隊と村に向かったのだけど、そこで見たのは水晶の魔物に蹂躙され壊滅した村だったわ」

「……そうか。それで?」

「戦士団も戦ったのだけど、硬い上に魔法は効かないし再生する。その特性のために大勢が再起不能状態まで追い込まれたわ。物理的なダメージを与える魔法なら有効だと分かって、最後は土魔法で生み出した巨岩で真上から押しつぶしたけど。……村人もそうだけど、戦士団もかなりの被害だったわ。正直、あそこで倒せなかったらどうなっていた事か」

 

そう言ってため息をつくリーン。しかし……。

「硬い外殻に魔法を吸収する力。再生する体。それに水晶という事から考えて、やはり俺達が旧王都で戦った奴の同類だろう。しかし何故リーンはこっちへ?」

「元々はこの魔物の調査のためにシャルロッテを訪ねたのよ。そしたらこっちでも似たようなのが現れて、あなた達が倒したって話を聞いたから来たのよ」

「そうか。……ただ、俺達の見つけたあれは恐らくずっと前にこの世界に出現したのを、何者かが捕獲し秘匿していた可能性がある」

「どういうこと?」

 

「俺達があれを見つけた旧王都の地下で、俺達は正体不明の文字が刻まれた扉を発見した。その先で例の怪物を見つけた訳だが。………っと、そうだ。扉のデータがあるんだ。今出す」

 

俺の端末を操作して空中に、あの時扉をスキャンして入手した文字データを映し出した。

「どうだリーン。この文字に見覚えは無いか?」

「う~~ん。……無いわね。私にも分からないわ」

「そうか」

俺達よりも長寿のリーンが分からないのなら仕方ないか。

 

「それより、あなた達はどうやってあの魔物を討伐したの?」

「それについては俺の持つ中でも、一番破壊力のある武器を使った」

そう言って俺はクレーバーを召喚する。

 

「こいつは破壊力を第1に考えて作られた武器だ。小さな小屋なら一撃で粉砕出来るくらいの破壊力がある。こいつで2発。1発目で体を半壊させ、2発目でコアをぶち抜いた」

「成程ね。でもそれ、そんなに凄いの?」

と、首をかしげるリーン。まぁ、確かに銃の威力を分からない彼女からしたら疑問に思っても仕方無いだろう。

 

「見て貰った方が早いだろう。裏庭に来てくれ」

 

って事で、俺は裏庭にリーンとエルゼ達を連れて行き、土魔法であの時俺たちが戦った怪物と同程度の大きさの岩を創り出した。

「こいつの爆音は相当だからな。全員耳を塞いでおけ」

と言うと、リーンやユミナ達が耳を塞ぐ。それを確認した俺は狙いを定め……。

 

『ドパァンッ!』

一射。これで岩の半分が消し飛ぶ。

『カシャコンッ』

すぐさまコッキングし……。

 

『ドパァンッ!』

二射。残っていた岩半分が粉々に消し飛んだ。

 

それを確認した俺はマガジンを外し、コッキングで空薬莢を排出する。

「と、まぁこんな所だ」

そう言って振り返ると、リーンが珍しく苦笑を浮かべていた。

「あなたって、ホントに規格外ね」

「まぁな」

そして、俺も彼女の言葉に笑みを浮かべた。

 

で、応接間に戻る俺達。

「しかし、空間の亀裂から現れる水晶の魔物か。リーンは何か知らないのか?」

「昔、私が幼かった頃に妖精族の長老から聞いた話があるわ。ある時、世界に『フレイズ』という水晶で出来た不死身の悪魔が現れたそうよ。そして、世界はフレイズによって滅亡寸前まで追い込まれたそうよ。けど、同じようにある時突然フレイズはこの世界から去って行ったそうよ」

「水晶で出来た不死身の悪魔、と言うのは俺達やリーンが遭遇した個体と共通しているが、その話に信憑性は?」

「何とも言えないわね。長老はもう既に無くなっているし、彼自身もこの話を子供の頃聞いただけそうだから」

「そうか。……ただ、類似点がこれだけあるんだ。俺としてはあの怪物は十中八九フレイズだと考える。それに一々水晶の魔物ってのは不便だからな。類似性もある事だし、とりあえず奴らの事は『フレイズ』と呼ぶ事にしよう」

俺の提案に、ユミナ達4人が頷く。

 

「それとリーン。お前が一族の長老から聞いたって話、俺からベルファスト王に伝えるが、構わないか?」

「別に良いけど、どうして?」

「それだけフレイズを危険視してるって事さ。単独で何十人という兵士を相手に戦える存在だ。それに、お前が聞いた話の悪魔と俺達が遭遇したフレイズが同一の存在ならば、またこの世界を滅ぼしかねない存在って事だ。早めに警鐘を鳴らしておきたいのさ」

「成程ね。でもそれなら、あなたの持つ武器を量産すれば良いのでは無くて?遠距離から攻撃出来ているようだし」

「そいつは無理だな。この世界の今の製造技術でクレーバーをコピーして量産するのは恐らく何十年とかかる。俺は無属性魔法のモデリングが使えるから、パーツ単位で生産する事は不可能では無いが、それじゃ供給できる量などたかがしれてる」

 

せめて、生産工場でもあればな、と俺は内心思う。もし仮にフレイズが大挙して押し寄せてきた場合、真っ先に欲しいのは『タイタン』だ。この際BTと同レベルとは言わない。第1世代のアトラスやオーガ、ストライダーでも良い。完全武装のタイタンが数十機でもあれば違うだろうが、工業レベルに差がありすぎるこの世界でタイタンを建造出来る用にするとしたら、一体どれだけの技術革新が必要な事か。

 

と、内心頭を抱えていると……。

「そう言えば、彼女達から聞いたのだけど、ジャックは全属性の適性を持つそうね?しかも、無属性魔法も全て使えるとか?」

リーンが、まるで獲物を前にした蛇のような目で俺を見つめながら笑みを浮かべている。あぁ、これはあれだ。『欲しい玩具が見つかった』って感じの目だ。

 

「あぁ、そういやミスミドではその事話してなかったな」

「全く。本当ならあの時教えて欲しかったわね。全属性への適性の持ち主なんて、早々見つかる者じゃないわ。分かってたら強引にでも弟子にしたのに」

「おいおい。強引に、じゃあ俺も逃げるぞ?」

「冗談よ。でも、ジャックほどの逸材、逃すには惜しいわね」

「そう言っていただけて光栄だよ。と言うか、わざわざ俺を勧誘するためにここへ?」

 

「いいえ。フレイズ関係の話と、ちょっとした報告。あとはお願いをと思ってね」

「報告と願いってのは?」

「まず、報告というのは私、ミスミドの大使としてベルファストに滞在することになったからその連絡。それと最後にお願いなのだけど、ジャックはゲートを使えるわよね?それで連れて行って欲しい所があるの」

「ゲートでか?あれは明確なイメージが出来る、行った事のある所じゃないと無理だぞ?」

「それも大丈夫。無属性魔法の『リコール』と言うのがあるの。これで他人の心を読み取って記憶を回収すれば良いわ。あとは回収した記憶からゲートを開けば良いの」

「成程ね。それで?連れて行って欲しいってのはどこだ?」

 

「ここから遙か東、神国イーシェンよ。かの国にあるとされている古代遺跡を探しているの」

「イーシェン?それって八重の故郷の」

と、俺は八重の方に視線を向けた。

 

「そうよ。だから、彼女からリコールで記憶を回収してみれば良いの」

「成程ね」

「ちょっ!?待つでござるっ!記憶を読み取るって、拙者のをでござるか!?」

そう言って顔を赤くする八重。

「心配しないで。リコールは読まれたくない記憶までは読まないから」

「し、しかし」

と、顔を赤くする八重。

 

「リコールを発動するには二人が接触してる必要があるわ。接触と言えばそう、キスとかね」

「「「「えぇぇっ!?」」」」

リーンの言葉に女子4人が顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「冗談よ」

と、リーンはそう言って面白そうに笑みを浮かべている。ったくこいつは。

 

結局、俺は八重と手を繋ぎ、額を合わせながらリコールで記憶を回収した。俺の方は別になんとも無かったが、八重の方は終始顔を赤くし、ユミナとエルゼ、リンゼはどこか不機嫌そうだった。

 

 

その後、俺達は準備を整えてゲートを開いた。ゲートを抜けた先に広がっていたのは、林にある独特な建造物と石像がある場所。そこから俺達は八重の案内で町へと向かった。その道中。

 

「それで?リーンが探してる遺跡ってのはフレイズに関係あるのか?」

「いいえ全く」

「そうか。……まぁ、とは言え遺跡だ。俺も興味ある」

「あら?あなた考古学に興味があるの?とてもそんな風には思えないけど?」

「違うっての。……もし仮にフレイズが過去、この世界を滅ぼしかけたのなら古代人が警告のような物を残している可能性はあるからな。それに、思わぬ発見って奴もあるかもしれないだろ?」

「それもそうね」

「それより、遺跡について特徴か何か知らないか?」

「いいえ。分かっているのはニルヤの遺跡、と言う名前だけよ」

「そうか。とりあえず、八重や八重の家族にでも聞いてみるか」

 

と、そんな事を話しながら歩いていると……。

「見えてきたでござるっ!あれが拙者の故郷、『オエド』でござるっ!」

林を抜けた先、小高い丘から見下ろすには、俺がはじめて目にする街並みだった。

 

俺やエルゼたちにしてみれば、物珍しい街並みの中を歩きながら八重の話を聞いていた。このイーシェンには、一応国王は存在する。が、イーシェンは各地を9人の領主が収めており、領主間でも度々小競り合いが起こっているらしい。9人の領主は、徳川、島津、毛利、長宗我部、羽柴、織田、武田、上杉、伊達。とか言うらしいが、俺にはさっぱりだ。

 

八重の実家である九重家は、その9人の内の一人である徳川に仕えているらしい。が、しかし……。

 

「妙な雰囲気だな。町としての規模はそこそこ大きいが、道行く連中に生気や覇気を感じられない」

ふと周囲を見回すと、皆、何かを恐れているような、疲れているような表情をした連中ばかりだ。そんな連中を後目に、俺は嫌な予感を感じながら八重の後を追った。

 

そしてたどり着いたのはそこそこ大きな屋敷だった。

「誰か居るか!」

不思議な形の玄関から中に入り、八重が声を上げると……。

「はいはい、只今」

奥から声がして、和服姿の女性が現れた。

 

「まぁ、八重様っ!」

「綾音っ!久しいなっ!」

見た目からして、和風メイドと言った雰囲気の女が八重を出迎えた。

 

「おかえりなさいましっ!七重様ッ!八重様がお戻りにっ!」

アヤネ、と呼ばれた女が奥に声を掛けると、妙齢の女性が現れた。

 

「母上っ!」

「八重……!よくぞ無事に……!」

そう言って、八重の母親らしき女性は目尻に涙を溜める。そして二人はそのままハグを交わす。が、ナナエと呼ばれていた女性が俺達に気づいた様子だ。

 

「八重、こちらの方達は?」

「あ、この者達は拙者の仲間でござる。大変世話になっているでござるよ」

「まぁまぁ、それはそれは」

そう言って七重と綾音という二人が俺達に頭を下げる。対して俺達も会釈をする。

 

「時に母上。父上はどちらでござるか?城の方にでも?」

と、彼女が聞くと、何やら二人とも表情が陰る。

 

「父上はこちらには居りません。殿、家泰様と合戦場へ向かいました」

合戦、つまり戦争だと!?

「合戦場へ!?して、相手は!?」

「武田です。数日前、突然進軍してきて。それを食い止めるため、旦那様と重太郎様はカワゴエの砦に」

 

重太郎?そういや八重には兄貴が居るって話を前に聞いたが、まぁ今は良い。

 

「割って入ってしまってすまないが、戦況は?」

俺は八重の隣に立ち問いかける。

「このままでは、カワゴエの砦が落とされるのも時間の問題、と。もっぱらの噂です」

「では、父上や兄上は……!?」

八重の表情が驚愕に染まるが、ここは仕方無い。

 

俺は即座にジャンプキットにアーマー、ヘルメットを装着する。それに七重たちが驚き声を上げるより早く。

 

「BT、サテライトスキャンでカワゴエの砦の周辺状況は分かるか?」

「了解。指定地域をスキャン中。……完了しました」

「よし。戦域の状況は?」

「徳川軍と思われる兵士達は現在も砦にて籠城戦を展開中。その砦を取り囲むように無数の武田軍兵士を確認」

「砦の防衛が突破されるまでの大凡の時間は分かるか?」

「戦況の様子から、保って今日1日が限界かと」

「となると時間は掛けてられないな。八重、そのカワゴエの砦の場所は分かるか?」

 

「はいっ!砦近くの峠に行ったことがあるので、そこまでならっ!」

「よしっ。事は一刻を争う。急ぐぞ」

俺はヘルメットを稼働させて素顔を晒し、八重と額を合わせる。

 

「『リコール』」

俺が呪文を唱えれば、見えた。砦を望む峠だ。

 

俺は八重から離れメットを元に戻す。と、その時。

 

「あ、あの。あなたは一体?」

七重が俺達の方を見つめ戸惑っていた。

「気にするな。俺は、ただの兵士だ」

 

それだけ言い残し、俺たちはゲートを潜った。

 

ゲートを抜けた先に見えるのは、周りで黒煙が上がっている戦場と、その先に見える砦だ。「あそこがその砦か」

「急いで行かねばっ!」

駆け出そうとする八重。

「落ち着け」

しかしそれを俺が制する。

 

「戦場で焦ってると死ぬだけだ。それにあの乱戦の中をくぐり抜けるのは至難の業だ。味方の徳川軍も火矢を放っている。あそこに飛び込んでも、囲まれて嬲り殺しにされるか運悪く味方の火矢を食らうだけだ」

「しかしそれではっ!」

「安心しろ。俺とBTで敵包囲網を突破する。中には行ったらゲートを繋げる。お前達はここで待て。BT」

 

「了解」

端末から声が聞こえた次の瞬間。俺の前に光のゲートが開き、そこからBTが現れる。そして現れたBTを、リーンが珍しく驚愕の表情で見上げている。しかし、すぐに苦笑を浮かべながら俺を見つめる。

「ジャック。あなたってホントに規格外ね。これは?」

「こいつはBT。俺の相棒だ。BT、リーンに挨拶を」

 

「了解。はじめましてリーン。私はBT―7274。パイロット、ジャック・クーパーの相棒です」

「ホント、あなたには何度も驚かされるわ」

そう言って苦笑するリーン。

 

「そいつはどうも。さぁ行くぞBT」

「了解」

 

と言うと、BTは俺の体を掴み、開いたコクピットの中へと押し込んだ。

「操縦権をパイロットに移行。装備は如何致しますか?」

「敵は密集してる。まとめて焼き払うぞ。スコーチのロードアウトで行く」

 

「了解。ロードアウト選択、スコーチ」

BTの声が響くと、BTは巨大なテルミットランチャーを両手で保持する。

「よしっ、行くぞっ!」

 

俺の叫びで駆け出すBT。BTは目の前の急な斜面を滑り降りていく。着地と同時に駆け出す。そしてすぐさま武田軍の後列を捉えた。

妙な鬼の面を被った連中が振り返るが、遅い。

 

「ファイヤーウォール、発動」

BTが左手を地面に叩き付けると、正面に向かって炎の壁が生まれ、無数の兵士を飲み込む。

 

「焼夷トラップ、射出」

更にBTの肩部からドラム缶のような物が発射され、曲線を描いて落ちる。かと思うとそこから怪しいガスが漏れ出す。

 

「そこだっ!」

ガスの溢れた場所にテルミットランチャーを放り込めが、ガスに引火して瞬く間に炎が広がり数十人の敵兵を焼き払う。

 

そして俺はBTを走らせた。タイタンはその巨体だ。足で蹴っ飛ばしたり踏み潰すだけで簡単に敵兵が死んでいく。だが……。

 

「パイロット、妙です」

「何が妙なんだ、BT!」

「敵、武田軍の歩兵の大半から生体反応が検出できません」

「あっ!?どういうことだBT!まさか、こいつらの殆どがゾンビだって言うのか!?」

「一言で言えばそうなります。一部は生体反応があるので人間かと思われますが、武田軍の半数以上はゾンビと定義出来る存在です」

「マジかよっ!魔法があるからまさかとは思って居たが、なぁっ!」

 

とにかく俺は敵兵を燃やし尽くしながら砦へと向かった。そしてあと少しで城壁という所でBTを止めて振り返り……。

 

「食らえっ!フレイムコア!」

「了解、フレイムコア、発動」

BTはランチャーを腰部背面にマウントすると、振り上げた両腕を地面に叩き付けた。すると幾重もの炎の壁が前に向かって走り、無数の武田兵を灰へと変えていく。

 

「今のうちにっ!」

そう言って俺はBTのハッチを開き、BTの頭の上から城壁にグラップリングフックを打ち込んだ。

「BTはそのまま敵兵を近づけさせるなっ!」

「了解。ガードモードに移行。現地点の確保を最優先」

そう言ってBTは再びランチャーとフレイムウォールで敵兵を焼き殺しはじめた。

 

俺はフックで城壁を越えると中の庭らしき部分に着地し転がった。直後。

「何だ貴様っ!」

「武田の手の者かっ!」

刀や槍で武装した連中が俺を取り囲んだ。俺はそれを見回した後。

 

「九重重太郎はいるかぁっ!」

思いっきり叫んだ。それに周囲の兵達が戸惑う。

 

「俺はお前の妹、九重八重の冒険者仲間だぁっ!彼女の願いもあって助けに来たっ!」

と、俺が叫ぶと……。

「私が、九重重太郎だ」

「右頬に走る傷。なるほど、アンタが八重の兄貴か。だったら話は早い。俺はアンタの妹の仲間だ。訳あって九重の家を訪ねたら、ここでピンチだと聞いて援軍に来た」

「貴様が?では外の巨人は?」

「あれは俺の相棒だ。心配無い」

 

「……ならば、お主が八重の仲間だという証拠はあるか?」

そう言って腰の刀に手を伸ばす重太郎。

「まぁ見てろ」

 

そう言うと俺はゲートを開いた。開かれたゲートを潜ってユミナやエルゼ、リンゼ、リーン、そして八重が現れる。

「ッ!八重っ!」

「兄上っ!よくぞご無事でっ!」

 

久しぶりの兄妹の再会。二人とも喜んでいる用だが、重太郎の方は俺達の方を気にしている。

「八重、この者達は?」

「皆、拙者の頼もしい仲間でござる」

そう言って笑みを浮かべる八重。さて、無事に合流出来たが……。

 

外はまだ敵の山だ。仕方無い。

「エルゼ、ユミナ、八重はここの連中を頼む。それとリンゼとリーンは負傷者に可能な限り回復魔法を頼む。俺は外の連中を蹴散らしてくる」

「はいっ!」

「OK!任せなさいっ!」

「分かりました」

「承知っ!」

 

4人の返事を聞き、歩き出そうとすると……。

「あっ!待たれよっ!彼奴らは普通の兵ではないっ!いくら倒しても起き上がってくるっ!報告では鬼の面を壊せば倒れるそうだが……」

と、重太郎は俺を心配しているようだ。だが……。

 

「彼奴らが不死身だろうが関係ないさ。……ミンチになっても動けるのなら別だがな」

「え?」

 

俺は戸惑う重太郎を他所に、俺はもう一度グラップリングフックで壁を越えてBTの元へと飛んだ。そしてその頭に着地すると頭部ハッチを開いて中へ体を滑り込ませる。

「おかりなさい、パイロット。操縦権を移行します」

「あぁ。それとBT、装備をスコーチからリージョンロードアウトへ変更だ」

 

「了解。リージョンロードアウトへ変更します」

BTの声が聞こえた直後、テルミットランチャーが光になって消滅し、代わりに巨大なガトリングガン、『プレデターキャノン』が現れる。そして、BTがキャノンを構えればギュラララッと砲身が回転し出し……。

 

『ドドドドドドドドドドドドッ!!!』

銃弾の雨が発射された。1マガジン100発を越えるリージョンのプレデターキャノンから放たれた徹甲弾は、容赦無く武田軍の兵士達の肉体をバラバラに引き裂いていく。

 

千切れた四肢や臓物と鎧の欠片が周囲に飛び散り、大地を真っ赤に染め上げていく。だが、まだまだだ。

 

「BT!スマートコアっ!行くぞっ!」

「了解、スマートコア、発動」

コアアビリティが発動され、プレデター、捕食者の名を冠する砲から放たれた弾は、ピラニアの如き勢いで獲物に群がり、その体を食い尽くす。

 

『ガガガガガガガガガガッ!!!』

ロックオンした相手に弾が飛んでいく。右から左へ、弾をばらまきながらキャノンをなぎ払えば、穿たれた兵士達から溢れ出た血飛沫が大量に噴き出し、赤い地面を更に朱く染め上げていく。

加えて、今のBTには特殊な強化が施されている。それはコアアビリティを際限なく使える事だ。前世のタイタンが装備するコアアビリティは大体時間制限がある。だが今のBTにはそれがない。だったらこっちのもんだっ!

 

そして、スマートコアを用いた殲滅戦が終わる頃には、大地は死者の血肉で真っ赤に染まっていた。大半の兵がやられたこともあってか、生身の僅かに生き残った連中が一目散に逃げていく。俺はそれを見送りながら、真っ赤に染まった大地を見つめていた。

 

「状況終了。八重たちの所へ行く。BTは念のため警戒を頼む」

「了解です」

俺はBTから降り、血を吸って朱く染まった泥を越えて、開かされた砦の門を潜って中に入る。そして、そんな俺を見る兵士達の目に映っているのは、俺に対する『畏怖』、『警戒』、『恐怖』だ。

 

きっと、今のこいつらには俺が悪魔にでも見えているのだろう。俺は八重たちの所に行く。

「外の武田軍は倒した。生き残りも敗走した。こっちはどうだ?」

「大体の怪我人は治せたわ。それにしても、凄いわね」

俺が声を掛けるとリーンが答え、彼女は窓の外に目を向ける。

 

ここに居ても漂ってくる。肉が焼ける臭いに血と硝煙の臭い。これこそが、戦場の臭いだ。

 

そして、兵士達はそれを纏った俺を前にして怯えている。

 

だが、それも分かる。俺も兵士になったばかりの時には、彼奴らのように怯える側だった。初めて戦場でパイロットを見た時、その動きに驚き、憧れると同時に『怯えた』。

 

『あんなのが敵にも居るのか』と。

パイロットがいるのは味方だけじゃない。敵であるIMC側にも当然居る。

 

そして、味方の人間離れした動きを前にした俺は少しだけ怯えた。パイロットという、人の限界を超えたような連中がいる事に。

 

まぁ、俺も今はその、限界を超えた一人なのだがな。

「失礼」

そこに八重の兄貴が声を掛けてきた。

 

「改めて、我が砦の窮地を救って下さった事、お礼申し上げる。つきましては、名をお聞きしても?」

「あぁ。俺はジャック。ジャック・クーパーだ」

「ジャック、クーパー殿か。……改めて、ありがとうクーパー殿。貴殿のおかげで砦は救われ、武田軍を退ける事が出来た」

「礼は要らない。俺は俺に出来る最善を尽くしただけだ。それに……」

 

俺が周囲を見回せば、兵士達は怯えた様子で体を震わせる。

「すまない。恩人にこのような……」

「気にするな。大きすぎる力はこうやって怯えられて当たり前だ。何より、自分の理解が及ばない力を使えばな。慣れてるから、気にするな」

そう言って俺は重太郎の肩を叩く。

 

「……それより、聞きたいんだが彼奴らはなんだ?倒した奴らの大半は死人だったぞ?」

「それについては、我々も多くは分かりません。倒しても起き上がる事と、後は仮面を壊せば動きが止まるそうですが……」

「この国にあぁ言うアイテムがある事は知っていたか?」

「いいえ。そのような話を私は聞いたことも……」

「となると、アーティファクトか?」

「あーてぃふぁくと?なんですかそれは?」

 

「俺もよくは知らんが、現代の技術では再現不能なレベルの、先史文明の遺産だそうだ。可能性として考えられると思ってな。まぁとにかく、今は負傷者の治療と飯だ。腹が減ってたら治る傷も治らん。それに、敵の警戒は俺の相棒に任せてくれれば良い」

「よ、よろしいのですか?」

「あぁ。俺の相棒は優秀だからな。……っと、そう言えば、八重の父親もここにいるんだろ?」

「っと。そうだった。すまないが私はこれから父上と殿の所へ行きます。ここで少々お待ちを」

 

と言って重太郎は去って行った。さて、俺はどうするか?

 

って事で、まだいた負傷者を治癒魔法で直していったが。そいつらの俺を見る目も、恐怖と畏怖を含んだ物だった。

 

そして治療が終わり、一人窓辺で外を見つめていた時。

 

「あ、あの、ジャック殿」

「ん?」

八重が、どこか申し訳なさそうな表情で俺に声を掛けてきた。

「その、同胞が大変失礼を……」

あぁ。どうやら八重は同じ国の人間が、俺を恐れている事に申し訳無く思ってるのだろう。

 

「気にするな。……パイロットはこれくらい慣れてる。俺達は恐怖すら武器にする。だから良いんだ」

「し、しかしっ!ジャック殿はこの砦を救った英雄っ!それを……!」

そう言って唇を噛む八重。

 

「良いんだよそんなの。……どうせ俺は、血に汚れた存在。今更それくらいで怒ったり悲しんだりする程、柔でもないしな」

「けど、こんなの……」

八重は今も、悔しそうな表情をしている。それを見つめた俺は……。

 

「大丈夫だ」

そう言って俺は八重の肩に手を置く。

「……例え、どれだけの人間から恐れられようと。……俺は、お前たちが傍にいてくれるだけで十分だ。それだけで、俺はどこまでも戦える」

「ッ」

八重は俺の言葉を聞いて俯いてしまった。

 

「……お前たちが、俺をどう思ってるのか、今は聞かない。それでも、俺はお前たちとの毎日に満足してる。だから、これだけは言っておこうと思ってな」

 

俺は一度深呼吸をし……。

 

「心配してくれて、ありがとう」

彼女の隣でそう呟いた。と、その時。

 

「ジャックさ~~ん!重太郎さんが呼んでますよ~!」

ユミナが俺たちを呼びに来た。

 

「あぁ。今行くっ。八重、先に行ってるぞ?」

俺は八重の肩を軽く叩くと歩き出す。

 

だから気づかない。八重が、頬を赤く染め俺の背中を見つめている事を。

 

      第12話 END

 




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